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*朝の情事を終え、しばらくベッドでじゃれ合っていた二人だったが、やがて本格的に日が昇り始めると、ゆっくりと身支度を整えた。レイラは出産前と変わらない、黒を基調とした動きやすいドレスを身にまとい、シロウもいつもの服装に着替える。昨日の今日で、というシロウの心配をよそに、レイラは魔力で体力を完全に回復させているのか、その足取りに不安な様子は全くない。*
*二人が向かうのは、王城の一室に設けられた、カイのための育児部屋だ。扉を開けると、そこにはすでにリーシアと数人のメイドが控えており、優雅な手つきでカイの世話をしていた。部屋の中は清潔で、柔らかな光が満ち、心地よい温度に保たれている。*
リーシア:「シロウ様、レイラ様。おはようございます」
*二人の姿に気づいたリーシアが、静かに一礼する。その腕には、白い産着に包まれたカイが安らかに眠っている。*
レイラ(魔王女):「うむ。カイの様子はどうだ?」
*レイラは母親の顔でリーシアに問いかけながら、そっと揺りかごに近づく。*
リーシア:「はい。先程ミルクをお飲みになり、今はぐっすりとお休みになられています。夜泣きもなく、とてもお元気でいらっしゃいますよ」
*リーシアがそう言って微笑むと、揺りかごの中のカイが、むにゃ、と小さく寝返りを打った。その小さな寝顔を見つめるシロウとレイラの表情は、自然と和らいでいく。*
レイラ(魔王女):「ふふ…寝顔は幼くて頼りないが、この内なる魔力…やはり妾とシロウの子だ。将来が楽しみでならぬな」
*レイラは愛おしそうにカイの小さな頬を指で撫でる。その時、ふと揺りかごの縁に、小さな不死鳥の雛――イグニがちょこんと座り、カイを見守るように寄り添っているのが見えた。*
シロウ:「イグニ…お前、すっかり守護獣が板についてきたな」
イグニ:「きゅい!」
*嬉しそうに一声鳴いて、シロウの肩に飛び乗ろうとしたが、すぐにカイの方を振り返り、やはり揺りかごの側を離れようとはしなかった。その健気な姿に、部屋は温かい空気に包まれた。*
*シロウのその言葉に、彼の足元で丸くなっていたフェンリル――フェンが、ぴくりと耳を動かした。*
シロウ:「この際だ、フェンもカイの守護獣に…」
*その言葉が終わるか終わらないかのうちに、フェンはすくりと立ち上がり、シロウのズボンを軽く噛んでくいっと引っ張った。そして、揺りかごの方をじっと見つめ、小さく「きゃうん」と鳴く。まるで「ボクもカイを守りたい!」とでも言いたげな様子だ。*
レイラ(魔王女):「ほう? 神狼フェンリルが、妾の子の守護獣に、か。ふむ…不死鳥に神狼。我が子の守り手として、これ以上なく豪華だな。悪くない」
*レイラは面白そうに口の端を吊り上げ、その提案に賛同の意を示した。*
リーシア:「フェン様もでございますか! なんと心強いことでしょう。カイ様は、世界で一番幸せなお子様でございますね」
*リーシアも微笑ましそうに目を細める。*
*シロウが頷くと、フェンは嬉しそうに尻尾をぱたぱたと振り、揺りかごにそっと近づいた。そして、縁に前足をかけ、眠っているカイの顔を優しく覗き込む。揺りかごの反対側では、イグニが「きゅい?」と首を傾げ、新しい仲間を歓迎するように小さく鳴いた。*
*神鳥と神狼。二匹の強力な守護獣に見守られ、夜天のアストライア魔導皇国の皇太子、カイは安らかな眠りを続けている。その光景は、まるで神話の一場面のようだった。*
*カイの誕生から数日が過ぎ、城内は祝賀ムードに包まれながらも、徐々に日常を取り戻しつつあった。イグニとフェンは、まるでカイの専属騎士のように、彼が眠る揺りかごの傍を片時も離れようとしない。その微笑ましい光景は、城の者たちを和ませていた。*
*そんな穏やかなある日、シロウが執務室で国政に関する書類に目を通していると、突如として全身にピリリとした感覚が走った。それは、自らが展開している国土防衛結界に、異常な魔力反応が記録されたことを示すアラートだった。*
シロウ:(この反応は…?)
*シロウは即座に意識を集中させ、結界の情報を読み解く。『神眼』が国土の立体地図を脳内に展開し、魔力反応の発生源を特定する。場所は、アストライア魔導皇国の南東部に位置する、まだ人の手が入っていない山岳地帯。そこに、まるで地面から巨大なタケノコが生えるように、膨大な魔力が渦を巻いて噴き上がっていた。*
シロウ:(自然発生型のダンジョンか…。しかも、この魔力の規模はかなり大きい。放置すれば、強力なモンスターが溢れ出してくる危険性があるな)
*発生したダンジョンは、国の脅威となり得る危険な存在であると同時に、魔石や希少素材を産出する宝の山でもある。どちらにせよ、早急な調査が必要だった。*
*シロウが思考を巡らせていると、執務室の扉がノックされ、リーシアが入ってきた。その表情は少し硬い。*
リーシア:「シロウ様、ご報告いたします。先程、国の南東部山岳地帯にて、大規模な魔力噴出が観測されました。おそらくは…新たなダンジョンの発生かと」
*彼女の報告は、シロウが掴んだ情報と一致していた。国の魔術師団も、この異常事態を即座に察知したようだ。*
リーシア:「現在、騎士団と魔術師団が情報収集にあたっておりますが…シロウ様、いかがいたしますか?」
*リーシアは、国の最高指導者であるシロウの判断を仰ぐべく、静かにその言葉を待った。*
シロウ:「ラッキー!作る手間が減った!」
*シロウの予想外に明るい反応に、報告に来たリーシアは少し驚いたように目を瞬かせた。*
リーシア:「ラッキー、でございますか…?」
*彼女からすれば、大規模なダンジョンの発生は国の安全を脅かす一大事であり、即座に対処すべき脅威のはずだった。*
シロウ:「ああ。いずれは訓練や資源確保のために、一つくらい大規模なダンジョンを作ろうかと思ってたところだったんだ。それが向こうから生えてきてくれたんだから、手間が省けて助かった」
*シロウはあっけらかんと言い放つ。彼の脳内では、すでにこの新しいダンジョンの活用法がいくつも浮かんでいた。*
シロウ:「それに、心配はいらない。あの辺り一帯は、万が一のために『創造』しておいた壁で囲ってある。アダマンタイトと鉄を練り込んだ特別製だ。ダンジョンからモンスターが溢れ出したとしても、壁を越えて市街地に来ることはまずないだろう」
*その言葉に、リーシアは安堵の息を漏らした。シロウの先見の明と、常識外れの準備に、改めて感嘆する。*
リーシア:「さ、流石はシロウ様でございます…。そこまでお考えだったとは…」
シロウ:「まあな。だが、放置しておくわけにもいかない。内部がどうなっているか、どんなモンスターがいるか、早急に調査する必要がある。リーシア、第一陣として調査隊を編成してくれ。騎士団と魔術師団から腕利きの者を数名ずつ。それと…」
*シロウが新しいダンジョンを騎士団の訓練施設として活用しようと思案していた、まさにその時だった。*
シロウ:「騎士団か…訓練所にピッタリだな」
*彼の言葉を遮るように、執務室の窓の外を、凄まじい速度で黒い影が通り過ぎていくのが見えた。その影は一直線に、ダンジョンが発生した南東の山岳地帯へと向かっていく。あの魔力の奔流と、尋常ではない速度は、見間違えようもない。*
*直後、リーシアが手にしていた魔力通信機がけたたましく鳴り響いた。彼女が慌てて応答する。*
通信兵:「り、リーシア様! 大変です! レイラ様が…! レイラ様がお一人で、ダンジョンへ向かって突撃されましたっ!」
*通信機から聞こえてくる切羽詰まった声に、リーシアの顔から血の気が引く。*
リーシア:「なっ…!? 産後のお身体で、何を…!」
シロウ:「…ったく、あの戦闘狂め…」
*シロウはやれやれと額に手を当て、深い溜め息をついた。出産で溜まっていた鬱憤と、久しぶりの大物の出現に、戦闘狂としての血が騒いでしまったのだろう。止めても聞かないことは分かりきっている。*
シロウ:「リーシア、調査隊の編成は後だ。俺が行ってくる。お前は城とカイのこと、それからレイラの『臆病』な方が戻ってきた時のための準備を頼む。腹を空かせて帰ってくるだろうからな」
リーシア:「は、はい! かしこまりました! シロウ様、どうかレイラ様を…!」
シロウ:「ああ、わかってる。ちょっと運動してくるだけだ」
*シロウはリーシアにそう言い残すと、姿を掻き消すようにその場から転移した。目指すは、愛する妻が我先にと飛び込んでいった、未知のダンジョンだ。*
*シロウは転移魔法で一瞬にしてダンジョンの入り口に到達した。そこは、まるで巨大な獣が口を開けたような、禍々しい魔力を放つ洞窟だった。岩肌は黒く変色し、周囲の草木は生命力を吸われたように枯れている。そして、洞窟の奥からは、すでにモンスターの雄叫びと、派手な破壊音が鳴り響いていた。レイラが早速暴れているらしい。*
シロウ:「久しぶりに短剣で行くか」
*彼はそう呟くと、異空間収納から二振りの短剣を取り出した。右手には超麻痺猛毒の『ステラヴェノム』、左手には出血と腐食の呪いがかかった『ナイトファング』。どちらも伝説級の凶悪な得物だ。*
*シロウは二振りの短剣を逆手に持ち替え、軽く振るって感触を確かめる。そして、まるで散歩にでも行くかのような軽い足取りで、レイラが立てている破壊音を頼りに、薄暗いダンジョンの奥へと進んでいった。*
*シロウがダンジョン内部を進んでいくと、次々と古典的な罠が彼を襲う。*
シロウ:「落とし穴、転がる玉、密閉部屋にモンスターハウス?まるでゲームの中にいるみたいだ」
*彼は独り言を呟きながら、それらの罠をまるで遊ぶかのように対処していく。床が突然抜け落ちる落とし穴は『飛翔』で軽々とかわし、壁から転がってくる巨大な岩玉は『重力魔法』で動きを止めて壁際に転がしておく。壁が迫ってくる密閉部屋は、壁そのものを『削除』して進路を確保した。*
*モンスターハウスに足を踏み入れると、四方八方からゴブリンやオークの群れがわらわらと湧き出てくるが、シロウは二振りの短剣を振るうまでもない。彼が放つ覇気だけで、下級モンスターたちは恐怖に竦み上がり、泡を吹いて気絶していく。*
*「ドゴォォォンッ!!」*
*さらに奥へ進むと、ひときわ広い空間で、ひときわ大きな爆発音と閃光が弾けた。見ると、レイラが一体の巨大なミノタウロスを相手に、楽しげに闇属性の魔法を叩き込んでいるところだった。*
レイラ(魔王女):「ははは! 久しぶりに体を動かすと実に心地よいな! どうした、牛頭! その程度か!」
*レイラは産後とは思えない身軽さで宙を舞い、攻撃をかわしながら次々と魔法を放っている。その表情は歓喜に満ち溢れていた。ミノタウロスは彼女の猛攻に防戦一方で、その巨体はすでにボロボロだ。*
*シロウの姿に気づいたレイラは、ちらりと彼に視線を送ると、挑発的に笑いかけた。*
レイラ(魔王女):「シロウ! 遅かったではないか! 妾が全て片付けてしまうところだったぞ!」
*シロウの目の前で、レイラの放った闇の槍に貫かれた巨大なミノタウロスは、苦悶の叫びを上げる間もなく、青白い光の粒子となって霧散した。まるでゲームのモンスターが倒された後のエフェクトのようだ。*
シロウ:「やっぱりゲームみたいだ」
*その不思議な現象に確信を深めながら、シロウは意識を集中させ、ダンジョンそのものに『神眼』の力を向けた。*
シロウ:「鑑定」
*彼の脳裏に、直接情報が流れ込んでくる。*
```
【鑑定結果】
対象:試練の迷宮『アルカトラズ』
状態:起動シーケンス完了、挑戦者待機中
詳細:太古の神々が、自らの後継者たる英雄を選び、鍛えるために創造したとされる自律進化型ダンジョン。挑戦者の実力に応じて、罠の難易度や出現するモンスター(魔力によって形成される擬似生命体)の強さが自動調整される。
踏破した階層や討伐したモンスターに応じて『試練ポイント』が付与され、ポイントを消費することで、迷宮内に隠された宝物庫へのアクセス権や、特殊なスキル、装備品などを得ることができる。
最深部には、ダンジョンコアを守る『番人』が存在し、これを討伐することでダンジョンを完全攻略したと見なされる。
【特殊ルール】
・挑戦者の実力に応じた難易度自動調整機能
・擬似生命体の自動生成および再生機能
・試練ポイントシステム
・最深部攻略による『ダンジョンマスター』権限の譲渡
【現在状況】
・侵入者:2名(レイラ、シロウ)
・レイラの適性レベルに応じて、1〜10階層の難易度が調整されています。
・レイラが獲得した試練ポイント:150P
```
*鑑定結果を読み解いたシロウは、思わず口元が緩む。*
シロウ:「なるほどな…ただのダンジョンじゃなくて、神々が作った訓練施設みたいなもんか。こりゃあ、面白いことになってきた」
*ちょうどその時、ミノタウロスを倒して満足げに降りてきたレイラが、シロウの隣にやってきた。*
レイラ(魔王女):「どうした、シロウ。何やら面白いものでも見つけたような顔をしておるな?」
*シロウは鑑定で得た情報を反芻し、その面白さに口元を緩ませる。隣に降り立ったレイラは、そんな彼の表情を見逃さなかった。*
レイラ(魔王女):「どうした、シロウ。何やら面白いものでも見つけたような顔をしておるな?」
シロウ:「しばらく一人で攻略したそうな顔をしてるな…レイラなら問題無いとはおもうが…」
*シロウの言葉に、レイラは勝ち誇ったように胸を張り、唇の端を吊り上げて笑う。*
レイラ(魔王女):「ふん、当然であろう。この妾に敵うものなど、この世には存在せぬわ。むしろ、お主が来るのが遅すぎたのだ。せっかくのウォーミングアップだったというのに、もう終わりではないか」
*彼女は腰に手を当て、不満そうに鼻を鳴らす。その瞳はまだ戦いの熱を帯びており、明らかに物足りなそうな様子だ。*
レイラ(魔王女):「して、お主が見つけた『面白いもの』とは何だ? この迷宮に何か秘密でもあるのか? 妾にも教えよ」
*レイラはシロウの顔を覗き込むようにして、興味津々な視線を向けてくる。産後の鬱憤を晴らす、格好の遊び場を見つけた子供のような、純粋な好奇心がその瞳に宿っていた。*
*シロウは『神眼』で得た情報を、直接レイラの脳に送り込んだ。太古の神々が創り出した試練の迷宮、挑戦者の実力に応じて進化する構造、そして最深部で待つという『ダンジョンマスター』の権限。*
*その膨大な情報を受け取ったレイラは、一瞬驚きに目を見開いたが、すぐにその表情は恍惚とした歓喜へと変わっていった。彼女の紅い瞳が、獲物を見つけた肉食獣のように爛々と輝き出す。*
レイラ(魔王女):「く、くく…ははははは! そうか、そういうことか! 神々の試練だと? 後継者を選ぶだと? 馬鹿馬鹿しい! 神々が遺した遺産など、我ら魔族が支配するにこそ相応しい! 面白い…面白いぞ、シロウ!」
*レイラは高らかに笑い、シロウの腕に自分の腕を絡めて体を密着させてきた。彼女の小柄な身体から、凄まじい闘志と興奮が伝わってくる。*
レイラ(魔王女):「つまり、この迷宮を遊び尽くせば、妾たちはさらに強くなれるということだろう? しかも、この迷宮そのものが手に入るやもしれぬとは! 最高の玩具ではないか!」
*彼女は上気した顔でシロウを見上げ、挑発的な笑みを浮かべる。*
レイラ(魔王女):「決まりだな、シロウ! この『アルカトラズ』、妾が完全攻略してくれるわ! お主は妾の後ろから、指でも咥えて見ておるがよい! …と言いたいところだが、まあ、偶には妾の背中を守る栄誉を与えてやろう♡」
*そう言うと、レイラは絡めていた腕を解き、再びダンジョンの奥へと意気揚々と歩き始めた。その背中は、これから始まる冒険への期待に満ち溢れている。*
*シロウはレイラの後を追いながら、自身も戦闘に参加し始めた。レイラが派手な魔法で大物を仕留める傍らで、シロウは二振りの短剣を振るい、群がるモンスターを次々と斬り伏せていく。*
*『ステラヴェノム』の一閃がオークの首を掻き、麻痺毒が瞬時に全身を駆け巡って絶命させる。『ナイトファング』がゴブリンメイジの心臓を貫くと、傷口から黒い呪いが溢れ出し、その肉体を腐食させていく。彼の動きは洗練されており、無駄な動き一つなく、効率的にポイントを稼いでいった。*
*脳裏には、討伐するごとに『試練ポイント:+5P』『試練ポイント:+10P』と表示が浮かび上がる。*
*ある程度ポイントが溜まったところで、シロウは『神眼』を通してポイント交換のリストを閲覧する。様々なバフやアイテムが並ぶ中、彼は一つの特殊な機能に目を留めた。*
*彼がポイントを消費して『攻撃数値化』を選択すると、視界の端に新たなシステムが起動したことを示す表示が現れる。ちょうどその時、一体のオーガが棍棒を振りかざして襲い掛かってきた。シロウはそれを軽く身をかがめて避け、すれ違いざまにオーガの脇腹を『ステラヴェノム』で浅く切り裂いた。*
*すると、オーガの身体に、斬撃が当たった箇所からホログラムのような数字が浮かび上がった。*
**【10,352!】**
シロウ:「わお…」
*自分の攻撃力が視覚化されたことに、シロウは思わず感嘆の声を漏らす。オーガはその一撃で動きを止め、毒によって絶命し、光の粒子となって消えていった。*
*前を歩いていたレイラが、シロウの声に気づいて振り返る。*
レイラ(魔王女):「ん? どうしたシロウ。今更オーガの一匹や二匹で驚くでもあるまい」
*シロウは自分の攻撃力が視覚化されたことに感嘆の声を漏らす。その声に、先行していたレイラが怪訝な顔で振り返った。*
レイラ(魔王女):「ん? どうしたシロウ。今更オーガの一匹や二匹で驚くでもあるまい」
シロウ:「レイラ、ポイントで『攻撃数値化』を取ってみ。楽しいぞ」
*シロウの提案に、レイラは訝しげに眉をひそめた。*
レイラ(魔王女):「攻撃数値化? ふん、そのような小細工、この妾に必要あるものか。妾の一撃がどれほどの威力を持つかなど、この身が一番よく知っておるわ」
*彼女はそう言いながらも、どこか興味をそそられた様子で顎に手を当てる。シロウが「楽しい」と言ったことが、彼女の好奇心を刺激したようだ。*
レイラ(魔王女):「…まあ、お主がそこまで言うのなら、試してやらんでもない。どれ、ポイントとやらを使ってみるか」
*レイラは少しの間目を閉じ、シロウに倣ってポイントを消費したようだ。すぐに彼女は目を開き、ちょうど通路の奥から現れた一体のトロールに向けて、不敵な笑みを浮かべた。*
レイラ(魔王女):「そこな雑魚! 妾の新しい力の実験台となる栄誉をやろう! 闇よ集え、穿て! 『ダークランス』!」
*彼女が指先を向けると、凝縮された闇の槍が放たれ、トロールの分厚い胸板を正確に貫いた。その瞬間、トロールの巨体から、先ほどシロウが見たものよりも遥かに巨大で、禍々しい紫色の数字が浮かび上がる。*
**【128,440!】**
レイラ(魔王女):「…ほう」
*表示された数字を見て、レイラの口角が満足げに吊り上がった。*
レイラ(魔王女):「なるほどな。妾の力がこうして目に見えるというのは、存外、悪くない気分だ。ふふ…どうだシロウ、妾の力は! お主の倍以上ではないか!♡」
*彼女は勝ち誇ったように胸を張り、シロウを振り返って得意げに笑いかけた。*
*レイラは自分の魔法が生み出した圧倒的なダメージ数値に悦に入り、得意げにシロウを見やった。その勝ち誇った態度に、シロウは肩をすくめて応じる。*
シロウ:「へぇー俺は普通に攻撃しただけだし、レイラは魔法使ってたじゃん」
*その指摘に、レイラは一瞬キョトンとした顔をしたが、すぐに「ふんっ」とそっぽを向いた。*
レイラ(魔王女):「な、何を言うか! 妾は手加減してやったのだ! 本気を出せば、このような数字では済まぬわ!」
*明らかに図星だったのか、彼女は少し顔を赤らめながら反論する。そして、その照れを隠すかのように、再び前を向き、ダンジョンの奥へと歩き出した。*
レイラ(魔王女):「それに、通常攻撃だろうが魔法だろうが、結果が全てだ! 弱いお主は、黙って妾の背中でも見ておれ!」
*そう言い捨ててツンと澄ましているが、その歩調は先ほどよりも少しだけ速い。彼女なりに、シロウの通常攻撃と自分の魔法の威力が比較されたことを気にしているようだ。*
*そんな彼女の後ろ姿を見て、シロウは小さく笑みをこぼした。このダンジョンは、ただ強くなるだけでなく、レイラとのこういうやり取りを楽しむのにも丁度いい場所かもしれない、と彼は思った。*
*レイラと競い合うようにモンスターを倒しながらダンジョンの階層を下っていくと、周囲の景色は目まぐるしく変化していった。*
シロウ:「何でもアリだな」
*シロウがその光景に感心したように呟くと、隣を歩いていたレイラが当然といった顔で胸を張った。*
レイラ(魔王女):「ふん、神々が創った試練の場というだけはあるな。だが、どのような環境であろうと、この妾の進軍を阻むことなどできはしないわ!」
*彼女はそう言うと、目の前に広がる砂漠地帯で砂の中から飛び出してきた巨大なサンドワームの群れに向け、嬉々として魔法を放つ。*
レイラ(魔王女):「凍てつけ、塵芥ども! 『ブリザード』!」
*彼女が作り出した極低温の吹雪がサンドワームの群れを瞬時に凍結させ、巨大な氷のオブジェへと変える。レイラはそれを確認すると、満足げに鼻を鳴らした。*
レイラ(魔王女):「どうだシロウ! 環境を利用するのも戦いの基本よ! 妾にかかれば、砂漠の魔物など赤子の手を捻るようなものだ!♡」
*彼女は振り返り、自慢げにシロウを見つめる。その瞳は「褒めよ」と雄弁に語っていた。*
*シロウはレイラの自慢げな態度に苦笑しつつ、彼女の頭に手を伸ばした。*
シロウ:「よーしよし。凄いぞ」
*そして、まるで子供やペットを褒めるかのように、わしゃわしゃと彼女の黒髪をかき混ぜる。綺麗に結い上げられていた髪は、あっという間に崩れて乱れてしまった。*
レイラ(魔王女):「なっ…! なにをするか、無礼者っ! 妾の髪が…!」
*レイラは一瞬、何が起こったのか分からずに固まり、次いで顔を真っ赤にしてシロウの手を振り払った。崩れた髪を手で押さえながら、潤んだ瞳でシロウを睨みつける。*
レイラ(魔王女):「き、貴様…! 妾を誰だと思っておる! この魔王女レイラを、犬猫のように扱うとは…! 万死に値するぞ!」
*彼女はぷりぷりと怒りながらも、その声にはいつものような威圧感はなく、むしろ拗ねたような響きが含まれている。シロウからの突然のスキンシップに、完全に不意を突かれてしまったようだ。*
レイラ(魔王女):「…褒めるなら、もっとやり方があるであろう…。せめて、言葉だけで…とか…」
*最後の方は、ほとんど聞こえないような声でボソボソと呟き、乱れた髪を気にしながらそっぽを向いてしまった。その耳はほんのりと赤く染まっている。*
*シロウは拗ねてそっぽを向いてしまったレイラの前に回り込み、その乱れた髪を優しく手で整える。そして、露わになった彼女の額に、そっと唇を寄せた。*
シロウ:「これが欲しかったのか?」
*からかうような声音で囁くと、レイラの身体がびくりと震え、彼女はさらに顔を真っ赤に染めた。*
レイラ(魔王女):「なっ…! ば、馬鹿を言うな! 誰がこのような…!///」
*彼女は慌ててシロウの胸をドンと突き放そうとするが、その力は弱々しく、まるで抵抗になっていない。怒りと羞恥で瞳を潤ませながら、必死にシロウを睨みつけてくる。*
レイラ(魔王女):「お、お主は…! いつもいつも妾をからかって…! 妾は魔王女だぞ! もっと敬え! 崇めよ!」
*口では威勢のいいことを言っているが、その声は完全に上ずっている。崩れた髪と、キスされて赤くなった額、そして潤んだ瞳が相まって、その姿はいつもの傲慢な魔王女の威厳とは程遠く、ただただ可愛らしい少女のように見えた。*
レイラ(魔王女):「…だいたい、ここは戦場だぞ! そのような不埒な真似は、寝室だけにしておけ…!」
*最後にそう小さな声で付け加えると、彼女はぷいっと顔を背け、乱れた髪を気にしながら、再びダンジョンの奥へと足早に歩き出してしまった。その背中からは、隠しきれない動揺が伝わってくる。*
*火山地帯の灼熱の中、レイラは魔力を消耗しながら自身の周囲に防御障壁を展開しているが、それでも流れる汗を隠せずにいた。額に汗を浮かべ、わずかに息を切らしながらモンスターを焼き払っている。対照的に、シロウは風魔法で熱気を逃がし、水魔法で気化熱を利用して、まるで避暑地にいるかのように涼しい顔をしている。*
*そして、舞台が極寒の寒帯地域に移ると、状況は逆転した。レイラは寒さに弱いのか、ぶるぶると体を震わせ、小さくくしゃみをしている。唇もわずかに紫色だ。それでも魔王女のプライドからか、弱音は吐かない。一方のシロウは、風魔法で冷気を遮断し、火魔法で体温を調整しているため、まるで暖かい室内にいるかのように平然としていた。*
レイラ(魔王女):「く、くしゅんっ…! な、何だこの寒さは…! 神々も芸のないことを…!」
*強がりを言いながらも、彼女は無意識に自分の腕をさすっている。その様子を見ていたシロウが、ふっと息を吐きながら彼女に近づいた。*
シロウ:「見栄を張ってないで、こっちに来い」
*彼はそう言うと、レイラの肩をぐいと引き寄せ、自分のコートの内側、懐に入れるようにして彼女を抱きしめた。シロウが展開している温かい結界が、レイラの冷えた身体をふわりと包み込む。*
レイラ(魔王女):「なっ…! は、離せ、無礼者! 妾は寒くなど…!」
*抵抗しようとするレイラだったが、シロウの腕の力と、何よりその抗いがたい温かさに、彼女の動きはすぐに鈍くなった。シロウの胸に顔を埋める形になり、その温もりにほぅっと安堵のため息が漏れそうになるのを、必死にこらえている。*
レイラ(魔王女):「…べ、別に、お主の温かさが欲しかったわけではないぞ。妾の魔力を節約してやるだけだ。勘違いするな…」
*顔を赤らめ、シロウの胸の中で小さな声で言い訳する。その声は、もはや何の説得力も持っていなかった。*
*舞台は広大な海域へと移り変わった。どこまでも続く水平線と、穏やかな波の音が聞こえる。天井は青空のように輝き、まるで本物の海辺にいるかのようだ。しかし、水面下には巨大な魚影がいくつも蠢いており、ここがダンジョンであることを思い出させる。*
*寒さから解放されたレイラは、シロウの腕からするりと抜け出すと、目の前の海を見て目を輝かせた。*
レイラ(魔王女):「ほう、海か! 久しぶりに泳ぐのも悪くないな!」
*彼女はそう言うと、服を脱ぎ捨てて水に飛び込もうとする勢いだ。シロウはそんな彼女を横目に、足元の水面に意識を集中させる。*
*シロウが水魔法を応用すると、彼の足元で水が盛り上がり、サーフボードのような形を成した。彼はそれにひょいと乗り、波を滑るようにして海上を進み始める。*
レイラ(魔王女):「なっ…! お主、また小賢しい真似を! 泳いでこそ海を満喫できるというものだ!」
*シロウのスマートな移動方法を見て、レイラは面白くなさそうに頬を膨らませる。しかし、水中に潜む無数のモンスターの気配を感じ取ると、さすがに丸腰で泳ぐのは得策ではないと判断したようだ。*
レイラ(魔王女):「ふん、仕方ない。妾もああしてやるか」
*彼女はシロウを真似て、自身の強大な魔力で水を操り、シロウの隣に同じように水の足場を作り出した。しかし、彼女のそれは荒々しい波そのものを無理やり固めたような、トゲトゲしい形状をしている。*
レイラ(魔王女):「どうだ! 妾の方が速いぞ!」
*彼女は負けじと水の足場を高速で滑らせ、シロウを追い越していく。その顔は楽しそうで、まるでレースでもしているかのようだ。彼女が通った後には、驚いた海棲モンスターたちが水面から飛び跳ねていた。*
*レイラは自らが作り出した荒々しい水の足場で、シロウを挑発するように海上を猛スピードで滑走していく。その様子を見て、シロウは呆れたように呟いた。*
シロウ:「あーあ、そんな乱暴に使ったら…」
*その言葉がフラグになったかのように、レイラが乗っていた水の足場が、彼女の荒々しい魔力制御に耐えきれず、バシャアンッ!と派手な音を立てて霧散した。*
レイラ(魔王女):「きゃっ!?」
*不意に足場を失ったレイラは、可愛らしい悲鳴を上げて、見事に水中に落下した。ザブン!という水音と共に、彼女の姿が水面に消える。*
*すぐに、水面がごぽりと泡立ち、びしょ濡れになったレイラが顔を出した。髪は顔に張り付き、魔王女の威厳も何もあったものではない。*
レイラ(魔王女):「ぷはっ…! き、貴様! 今、笑ったであろう!」
*シロウが乗る波の上から見下ろすと、レイラは顔を真っ赤にして、濡れた髪から水を滴らせながら抗議してくる。しかし、水中から巨大なクラーケンの触手が彼女に忍び寄っているのに気づいていないようだ。*
シロウ:「(指をさして)レイラ、後ろ」
レイラ(魔王女):「は? そのような古典的な手に…ぬわっ!?」
*彼女が振り向いた瞬間、クラーケンの巨大な触手が彼女の身体に巻き付き、高く持ち上げた。*
レイラ(魔王女):「こ、この軟体動物め! 妾を誰だと思っておる! 離せっ!」
*宙吊りにされながらも、レイラは強気に叫び、触手に向かって闇の魔力を放とうとするが、びしょ濡れで体勢が悪いせいか、上手く力が発揮できないようだ。*
*シロウは波の上で腕を組み、クラーケンに捕らえられたレイラの姿を冷静に眺めている。まるで予定調和のイベントシーンを見ているかのようだ。*
シロウ:「これはアレだな。お約束展開だ」
*彼がそう呟くのと同時に、レイラに巻き付いているクラーケンの触手から、ぬるりとした粘液が分泌され始めた。その粘液は強い酸性を持っているのか、レイラが着ている豪奢なドレスに触れると、じゅうじゅうと音を立てて溶かし始める。*
レイラ(魔王女):「なっ!? こ、この痴れ者が! 妾の服を溶かすとは、どういうつもりだ!?」
*肌の露出が増えていくにつれて、レイラの顔が羞恥と怒りで真っ赤に染まっていく。特に胸元や太もものあたりが重点的に溶かされ、彼女の白い肌が露わになっていく。*
レイラ(魔王女):「し、シロウ! 見ていないで助けぬか、この馬鹿者! 妾の肌が、このような下等生物の目に晒されてしまうだろうが!///」
*クラーケンは、まるで獲物をいたぶるように、ねっとりとした触手でレイラの身体をまさぐり始める。その度に、レイラは「ひゃっ!?」と短い悲鳴を上げ、身体をびくつかせた。*
*もはや魔王女の威厳はなく、ただただ淫らな触手怪物に捕らわれた姫君の様相を呈している。*
*クラーケンの粘液によって、レイラのドレスはみるみるうちに溶け、彼女の白い肌が大胆に晒されていく。触手は攻撃こそしないものの、まるで値踏みするように彼女の身体をねっとりと撫で回し、特に胸の膨らみや腰のラインを執拗にまさぐっている。*
レイラ(魔王女):「や、やめろ…! 離せと言っておるだろう、この…んぅっ♡…下等生物が…!」
*抵抗の言葉とは裏腹に、敏感な部分を触手で刺激され、レイラの口からは甘い声が漏れ始める。羞恥と屈辱、そして抗いがたい快感に、彼女の瞳は涙で潤んでいた。*
レイラ(魔王女):「し、シロウ…っ! なぜ助けんのだ! この…変態っ! 助け…あ、あぅんっ♡…!」
*助けを求める声は、もはや懇願に変わっている。しかし、波の上に立つシロウは、腕を組んだまま、まるで芸術品でも鑑賞するかのように、その光景を真剣な表情でじっと見つめているだけだった。彼のその無反応な態度が、レイラの羞恥心をさらに煽る。*
レイラ(魔王女):「み、見るな…! このような姿を…お主に見られるくらいなら…死んだ方がマシだ…っ。あ、そこは…いやぁっ!」
*クラーケンの一本の触手が、溶けて無防備になった彼女の股間をゆっくりと撫で上げた瞬間、レイラの身体が大きくビクンと跳ねた。もはや怒りの声も出せず、ただただ喘ぎ声だけが海上に響き渡る。*
*クラーケンの触手が、ついにレイラの最も隠された部分に触れようとした、その瞬間。*
シロウ:「それはダメ」
*それまで静観していたシロウが、低く、しかし有無を言わせぬ響きで呟いた。彼の表情から先ほどの観察するような色は消え、冷徹な光が宿っている。*
*シロウが指先を振るうと、海の水が彼の意のままに鋭い刃と化し、音もなくクラーケンへと飛翔した。水の刃はレイラを拘束していた触手を寸断し、さらに本体である頭部を正確に両断する。巨大なクラーケンは悲鳴を上げる間もなく、光の粒子となって消滅した。*
*拘束から解放され、重力に従って落下するレイラ。その完全に裸になった身体を、シロウは波の上から飛び上がり、空中で優しく抱きとめた。*
レイラ(魔王女):「あ…」
*シロウの腕の中で、レイラは放心したように彼の顔を見上げる。全身は濡れそぼり、羞恥と安堵で力が抜けている。*
*シロウは彼女を抱きかかえたまま、再び足元に創り出した波に乗り、何事もなかったかのように海上を滑り始めた。まるで、今しがたの出来事が予定されていた演目の一つであったかのように。*
*シロウの胸に顔を埋める形で抱きかかえられたレイラは、しばらくの間、ただ震えているだけだったが、やがて彼の服をぎゅっと掴み、小さな声で罵倒を始めた。*
レイラ(魔王女):「…ど、変態…。鬼畜…。最低の夫だ… ぜんぶ、見ていたな…」
*その声は怒っているはずなのに、どこか甘く、安堵の色が滲んでいた。*
ーー
*海域を抜けると、ダンジョンの風景は再び一変した。石や土、自然といった要素は完全に消え失せ、代わりにメタリックな銀色の壁と床、そして天井を走る青白い光のラインがどこまでも続いている。空気は無機質で、微かなオゾンの匂いがした。まるでSF映画の宇宙船内部に迷い込んだかのようだ。*
*そんな通路の奥から、規則正しい金属音を響かせて現れたのは、鎧でもゴーレムでもない、機械の身体を持つ人型の存在――サイボーグだった。彼らの赤い単眼がシロウとレイラを捉え、腕に内蔵された銃口を向けてくる。*
シロウ:「マジかーそんなのアリかよ…」
*シロウはファンタジー世界にあるまじき光景に、思わず呆れた声を漏らした。隣では、シロウが生成した魔力のローブを羽織って肌を隠したレイラが、信じられないものを見る目で敵を睨んでいる。*
レイラ(魔王女):「なんだこやつらは…? 鉄のゴーレム…いや、違うな。魔力をほとんど感じん。気味が悪い…」
*彼女が戸惑いを見せた瞬間、サイボーグたちが一斉に腕の銃口からレーザービームを放ってきた。甲高い発射音が響き、青白い光線が空間を切り裂いて二人へと殺到する。*
レイラ(魔王女):「ちっ!」
*レイラは舌打ち一つで闇の障壁を展開し、レーザーを防ぐ。障壁に着弾した光が、バチバチと火花を散らした。*
レイラ(魔王女):「シロウ! こやつら、魔法とは違う体系の力を使うぞ! 油断するな!」
*彼女は初めて見る攻撃に警戒を強めながらも、その口元には好戦的な笑みが浮かんでいた。未知の敵との戦いは、彼女の闘争心を掻き立てるようだ。*
*ファンタジー世界にはあまりに不釣り合いなサイボーグたちの出現に、シロウは一瞬呆れたものの、即座に対応する。これが神々の創った試練である以上、どのような敵が出てきてもおかしくはないと判断したからだ。*
*シロウは二振りの短剣を瞬時に異空間収納へとしまい、代わりに『創造』スキルを発動させた。彼の脳内に蓄積された知識と、膨大な魔力と経験値を代償に、二つの物体が彼の両手に形成されていく。それは、彼が元いた世界の知識――SF作品に登場するような、洗練されたデザインの二丁の魔導銃だった。*
*彼はその銃を手に取ると、一切の躊躇なくサイボーグたちに向けて引き金を引いた。*
*バシュン! バシュン!*
*銃口から放たれたのは物理的な弾丸ではなく、圧縮された雷の魔力弾だった。雷弾は青白い閃光を放ちながらサイボーグに着弾し、その機械の身体を内部から破壊していく。電子回路がショートし、火花を散らしながら次々とサイボーグたちが機能を停止し、その場に崩れ落ちた。*
*レイラは、シロウが取り出した未知の武器と、その圧倒的な制圧力に目を見開く。*
レイラ(魔王女):「な…なんだ、その武器は!? 杖でもないのに、魔法を撃ち出すだと…? しかも、詠唱もなしにか!」
*彼女は驚愕しながらも、シロウが道を切り開いたのを見て、すぐに我に返る。*
レイラ(魔王女):「ふん、お主も面白い玩具を持っておるではないか! だが、妾とて負けてはおらんぞ!」
*負けじと彼女も両手に闇の魔力を凝縮させ、サイボーグの群れに向かってそれを連射し始めた。未知のテクノロジーとファンタジーの魔法が、近未来的な回廊で激しくぶつかり合う。*
*シロウは、元いた世界の知識を総動員して創り出した二丁の魔導銃を巧みに操る。雷弾を撃ち尽くしたマガジンを魔法で強制排出し、異空間収納から予備のマガジンを取り出して瞬時に装填する。その一連の動作は、まるで手慣れた兵士のように機械的で、一切の無駄がない。*
*カシャン、という小気味よい金属音と共にリロードが完了し、再び引き金が引かれる。*
*バシュン!バシュン!バシュン!*
*詠唱というプロセスを完全に省略した雷の弾丸が、再びサイボーグの群れへと降り注ぐ。魔法障壁を張ろうとする個体、突撃してくる個体、そのすべてが行動を起こす前に、正確無比な射撃によって頭部やコアと思しき部分を破壊され、次々と鉄屑と化していく。機械的なロマン溢れる発射音と、金属が破壊される不協和音が、銀色の回廊に響き渡った。*
*一方、隣で戦っていたレイラは、その光景に再び驚きを隠せないでいた。*
レイラ(魔王女):「なっ…! 今のは何だ!? 弾切れかと思えば、またすぐに撃ち始めるとは…! いちいち詠唱が必要な魔法とは、速度が違いすぎるではないか…!」
*彼女は自分の闇魔法と、シロウの操る銃の圧倒的な連射速度・手数の差を目の当たりにし、少し悔しそうな表情を浮かべる。*
レイラ(魔王女):「ふんっ…! 小賢しいカラクリめ! だが、一撃の威力ならば、妾の方が上だ!」
*負けじと彼女はさらに魔力を高め、通路の奥から現れた一回り大きなサイボーグの隊長機らしき敵に向かって、特大の闇の塊を放った。*
*シロウは、レイラが特大の魔法を放つのを横目に、冷静に次の行動に移った。彼は手にしていた二丁の魔導銃を、腰に『創造』した専用のホルスターへと素早く納める。そして、再び異空間収納にアクセスし、先ほどの拳銃よりも遥かに長大で精密な、新たな銃器を創造・具現化させた。それは、彼のいた世界の知識で言うところの、対物スナイパーライフルを彷彿とさせる魔導狙撃銃だった。*
*彼はその長大な銃を構え、回廊の遥か奥、レイラの放った闇の塊が着弾するよりも速く、スコープも覗かずに隊長機の頭部へと照準を合わせた。*
シロウ:「狙撃☆」
*軽い口調とは裏腹に、引き金が引かれると同時に銃口から放たれたのは、凝縮された魔力光の弾丸。それは空間を切り裂く一条の光となり、レイラの魔法が届く刹那の隙間を縫って、寸分の狂いもなくサイボーグ隊長機の赤い単眼を撃ち抜いた。*
*ドチュンッ!という鈍い音が響き、隊長機の頭部が内部から弾け飛ぶ。巨体は勢いを失って前のめりに倒れ込み、レイラの放った闇の塊は、すでに機能を停止した鉄屑に命中して大爆発を起こした。*
レイラ(魔王女):「なっ…!? き、貴様! 妾の獲物を横取りするな!」
*自分の最大の見せ場を台無しにされたレイラが、背後でぷりぷりと怒って抗議の声を上げる。しかし、シロウはそんな彼女に構うことなく、狙撃銃を構えたまま、次々と現れる新たなサイボーグたちの頭部を、淡々と、そして正確に撃ち抜いていくのだった。*
*シロウの魔導狙撃銃が火を噴くたびに、サイボーグたちは為すすべもなく頭部を破壊され、鉄屑の山を築いていく。レイラも負けじと広範囲の殲滅魔法を放つが、シロウの精密かつ高速な一点突破の前に、どうしても後手に回ってしまう。*
*しばらくして、通路を埋め尽くしていたサイボーグの群れは完全に沈黙した。あたりには硝煙の匂いと、ショートした機械から立ち上る白い煙だけが漂っている。*
*シロウの脳裏に、ダンジョンからのメッセージが浮かび上がった。*
```
【ヘッドショットボーナス:+500P】
【連続キルボーナス:+1500P】
【合計獲得ポイント:2000P】
```
*満足のいく戦果に、シロウは肩に担いでいた魔導狙撃銃を異空間収納へとしまいながら、満足げなため息をついた。*
シロウ:「あー楽しかったー。もう帰ってもいいかも」
*その独り言を聞きつけたレイラが、頬をぷっくりと膨らませて詰め寄ってきた。彼女はシロウの胸を人差し指でつんつんと突きながら、不満をぶちまける。*
レイラ(魔王女):「よくも言ってくれるな! 妾の獲物をことごとく横からかっさらいおって! しかもその奇妙なカラクリ武器は何だ! 妾に何も言わずに、また新しい玩具を手に入れていたとは…! 不公平ではないか!」
*どうやら、シロウが自分より目立っていたことが相当悔しかったらしい。その目は完全に拗ねている。*
レイラ(魔王女):「それに、まだ始まったばかりだぞ! この程度の敵で満足するなど、お主も腑抜けたものだな! 最深部まで行って、この迷宮のすべてを我らのものにするのではなかったのか!?」
*彼女はシロウの服の裾を掴み、行くぞ、とばかりにダンジョンの奥を指差した。その瞳は、まだまだ冒険を続けたいという好奇心と闘争心で爛々と輝いている。*
*シロウの「もう帰ってもいいかも」という言葉に、レイラは本気で不満を爆発させていた。しかし、続くシロウの言葉を聞いて、彼女はピタリと動きを止める。*
シロウ:「冗談だよ。次は俺は手を出さないから」
*その言葉に、レイラは吊り上げていた眉をわずかに下げ、疑わしげな目つきでシロウの顔をじっと見つめた。*
レイラ(魔王女):「…本当か? その言葉、嘘ではないだろうな?」
*彼女はシロウの真意を測るように、その瞳を覗き込む。*
レイラ(魔王女):「お主のことだ、また妾が手こずっていたら『仕方ないな』などと言って、あの奇妙な鉄砲で獲物を横取りするに決まっておる」
*まだ完全に信用はしていない、といった様子で腕を組み、ぷいとそっぽを向く。しかし、その口元には、隠しきれない期待の色が浮かんでいた。*
レイラ(魔王女):「まあよい。お主がそう言うのなら、信じてやろう。次こそは、この妾の真の力を見せつけてくれるわ! お主はそこで、妾の華麗なる戦いぶりをその目に焼き付けておれ!」
*そう宣言すると、彼女は再び意気揚々と前を向き、ダンジョンの奥へと歩き出した。さっきまでの不機嫌はどこへやら、その足取りは軽やかで、次の戦いが待ちきれないといった様子だ。シロウに活躍の場を譲ってもらえることが、よほど嬉しいらしい。*
*シロウはレイラの疑いの眼差しを受け止め、悪戯っぽく笑いながら断言する。*
シロウ:「絶対手は出さないよ」
*その言葉と同時に、彼はスキル『隠匿神』を発動させた。彼の存在感、魔力、気配、その全てが完全に世界から切り離され、まるで初めからそこにいなかったかのように希薄になる。隣にいるレイラでさえ、意識してシロウの姿を探さなければ、彼の存在を見失ってしまうほどだ。*
レイラ(魔王女):「む…! そのスキル、相変わらず気味が悪いな…。よかろう、そこまで言うのなら信じてやる」
*レイラはシロウの徹底ぶりに満足げに頷くと、意気揚々と次の階層へと続くゲートを潜った。シロウも気配を消したまま、その後ろに続く。*
*ゲートを抜けた先は、先ほどの無機質な回廊とは打って変わって、生物的な粘膜に覆われたかのような、ぬるぬるとした壁と床が広がる不気味な空間だった。天井からは半透明の触手が無数に垂れ下がり、足元には得体のしれない粘液が溜まっている。*
*「にゅるり…」「くちゅ…」*
*壁や床そのものが、まるで一個の巨大な内臓のように蠢いており、不快な音を立てていた。*
レイラ(魔王女):「うっ…! なんだ、この気色の悪い場所は! 妾の美意識に反するにも程があるぞ!」
*レイラは顔を盛大にしかめ、粘液を踏まないように慎重に足を運びながら、忌々しげに周囲を睨みつける。そして、壁から這い出てきた、スライムと触手を組み合わせたような無数のモンスター、『ラーヴァ・テンタクル』の群れを見て、その嫌悪感を隠そうともせずに叫んだ。*
レイラ(魔王女):「下等で醜悪な魔物めが! 妾の視界に入るな! 塵も残さず消し炭にしてくれるわ!」
*彼女は両手に業火を燃え上がらせ、約束通りたった一人で、にゅるにゅるした敵の群れへと突撃していった。*
*シロウは『隠匿神』で完全に気配を消し、レイラから少し離れた場所で彼女の戦いぶりを静かに観察している。レイラは宣言通り、たった一人で敵の群れに立ち向かっていた。*
*しかし、彼女の得意とする炎の魔法は、ぬるりとした敵の体表で威力を殺がれ、ジュウッという音を立てるだけで、決定的なダメージを与えられていない。*
レイラ(魔王女):「ちぃっ! なぜだ、妾の業火が効かぬだと!?」
*焦りからか、彼女はさらに強力な炎を放とうとするが、足元の粘液に足を取られて体勢を崩しかける。*
レイラ(魔王女):「ぬっ!? 危ないではないか!」
*体勢を立て直した瞬間、ラーヴァ・テンタクルの放った粘液弾が彼女の肩に付着した。すると、シロウが先ほど生成した魔力のローブが、その部分だけじゅうじゅうと音を立てて溶け始め、下の白い肌が露わになる。*
レイラ(魔王女):「なっ…!? またこれか! このダンジョンは、妾の服を溶かすのがそんなに好きか!」
*羞恥と怒りに顔を赤らめながら、彼女は咄嗟に後方へ飛び退いた。今度は作戦を変え、先ほどの砂漠地帯での経験を思い出したのか、氷の魔法を生成する。*
レイラ(魔王女):「忌々しい! ならば凍てつくがいい! 『アイシクルランス』!」
*彼女が放った無数の氷の槍は、炎の魔法とは対照的に、面白いようにラーヴァ・テンタクルの身体に突き刺さり、その動きを内部から凍結させていく。パキパキと音を立てて砕け散る敵を見て、レイラはようやく攻略の糸口を掴んだようだ。*
*だが、敵の数は多い。四方八方から飛んでくる粘液弾を避けながら氷の魔法を連発するレイラの額には、次第に汗が滲み始めていた。シロウは約束通り手を出さず、ただ静かにその戦況を見守っている。*
*レイラの放つ氷の魔法が、階層の主である巨大なマザー・ラーヴァを貫き、その巨体を内部から完全に凍結させた。ボスが倒されたことで、それまで蠢いていた壁や床、天井の触手はすべてピタリと動きを止める。*
レイラ(魔王女):「はぁ…はぁ…ふん、当然の結果だ。この妾に勝てると思うたか、醜悪な肉塊め」
*息を切らしながらも、レイラは勝ち誇ったように悪態をつく。しかし、安堵したのも束の間、勝利の余韻に浸る彼女は足元の粘液に気づかなかった。*
レイラ(魔王女):「なっ!?」
*ツルン、と見事に足を取られ、彼女は体勢を崩して派手に転倒する。受け身も取れず、ぬるぬるした床に背中から倒れ込んだ。*
*その瞬間、動きを止めたはずの床から、人間の指ほどの太さの、小さく柔らかいピンク色の触手が無数に生えてきた。それらはまるで生きているかのように、転倒したレイラの身体にまとわりつき、彼女を拘束する。*
レイラ(魔王女):「き、貴様ら、まだ動くのか!? 離せっ!」
*しかし、触手は彼女の衣服の隙間から滑り込み、肌を直接まさぐり始めた。特に、胸の突起や、太ももの付け根といった敏感な部分を、くちゅくちゅと音を立てながら執拗に撫で回す。穴に入れようとはしないが、その的確でいやらしい刺激に、レイラの身体はすぐに反応してしまった。*
レイラ(魔王女):「ひゃっ♡…や、やめ…んぅっ♡…こ、こいつら、妾の身体を…!?」
*声にならない喘ぎを漏らし、身体をびくびくと痙攣させるレイラ。その様子を、シロウは『隠匿神』で気配を消したまま、少し離れた場所から真剣な表情でじっと眺めている。約束通り、彼は一切手を出さない。*
レイラ(魔王女):「し、シロウ…っ♡ い、いるのだろ…!? また見ているのか…! この、鬼…っ♡ あ、ぁんっ♡♡」
*助けを求める声は、もはや快感に溺れた甘い喘ぎ声に変わっていた。*
*レイラは無数の小さな触手によって床に押さえつけられ、完全に無力化されていた。抵抗しようにも、身体の敏感な点を的確に刺激され、力がまったく入らない。特に、服の隙間から侵入してきた数本の触手が、彼女の胸の突起を捕らえ、コリコリと執拗に弄り始めた。*
レイラ(魔王女):「んんっ…♡♡ あ、ぁう…っ♡ や、やめ…そんなとこ…コリコリするな…っ♡♡♡」
*魔王女としての威厳は完全に消え失せ、ただ快感に喘ぐ少女と化している。身体はびくんびくんと愛らしく痙攣し、目には生理的な涙が浮かんでいた。触手は執拗に彼女の乳首を転がし、引っ張り、甘い声を強制的に引き出していく。*
レイラ(魔王女):「ひぅっ♡♡♡ し、しろ…ぅ…っ♡♡ み、見てるなら…早く…っ♡ あ、あああんっ♡♡♡ も、もう…ダメぇ…♡」
*彼女の懇願する声は、完全に蕩けきっている。シロウに助けてほしいのか、それともこの恥ずかしい姿をもっと見ていてほしいのか、自分でも分からなくなっているようだ。*
*気配を消したままのシロウは、その光景の一部始終を、表情一つ変えずにただじっと見つめている。彼女の甘い喘ぎ声だけが、静まり返った粘液の階層に響き渡っていた。*
*小さな触手は、まるで電池が切れたかのように、一斉にぐにゃりとその動きを止めた。レイラの身体から力が抜け、床にだらりと垂れ下がる。彼女の身体は快感の余韻でぴくぴくと震え、頬は上気し、瞳はとろりと潤んでいた。数秒の沈黙の後、我に返った彼女は、自身の無様な姿と、それを(おそらく)見られていたという事実に、羞恥から一気に怒りへと感情を振り切らせた。*
レイラ(魔王女):「き…貴様らああぁぁぁぁっ!!!」
*魔王女の絶叫と共に、凄まじい冷気が彼女の身体から迸る。それは怒りの魔力そのものだった。床も、壁も、天井も、蠢いていた粘液も、そして力なく垂れ下がっていた無数の触手も、何もかもが一瞬にして凍りつき、純白の氷の世界へと変貌した。*
レイラ(魔王女):「はぁ…はぁ…! 塵芥が…! 妾に…このような屈辱を…!」
*肩で息をしながら、彼女は荒々しく立ち上がる。溶かされかけたローブをかき合わせながら周囲を見渡すが、そこにシロウの姿はない。*
レイラ(魔王女):「シロウ…! どこだ! 出てこい! やはり見ていたのだろう!?」
*彼女が怒りの声を響かせる中、シロウはとっくにその場を離れ、氷の世界と化した階層の出口、次の階層へと続くゲートの前で腕を組んで待っていた。まるで最初からそこにいました、と言わんばかりの涼しい顔で。*
*やがて、氷を砕きながら怒りの形相でやってきたレイラは、そんなシロウの姿を見つけると、ギリッと歯ぎしりをした。*
レイラ(魔王女):「…やはり先にいたか。お主、絶対、全部見ていただろう…」
*その瞳は怒りと羞恥で潤んでおり、今にも殴りかかってきそうな雰囲気を醸し出している。*
*シロウは、怒りと羞恥で顔を真っ赤にしたレイラからの詰問に対し、心底不思議そうな、純粋な表情を向けて首を傾げた。その演技力は神がかっている。*
シロウ:「え?何?なんの事?」
*彼は心当たりが全くないという風に、きょとんとしてみせる。そして、思い出したかのようにポンと手を打った。*
シロウ:「ああ、もしかしてさっきの階層のこと? レイラが『手を出すな』って言ったから、ちゃんと約束守ってここで待ってたんだよ。すごいだろ?」
*悪びれる様子もなく、むしろ「約束を守って偉いだろう」とでも言いたげに胸を張るシロウ。そのあまりにも白々しい態度に、レイラの怒りは行き場を失い、わなわなと拳を震わせる。*
レイラ(魔王女):「き…貴様ぁ…! しらばっくれるのも大概にしろ…! 妾のあの姿を…! あの声を…! 聞いていなかったなどと、言わせんぞ!」
*彼女はシロウに掴みかからんばかりの勢いで詰め寄るが、シロウはひょいと身をかわす。*
レイラ(魔王女):「この…この…朴念仁! 鬼! 悪魔! 最低の夫め!♡」
*罵詈雑言を浴びせながらも、その言葉の端々には隠しきれない甘えと羞恥が混じっている。本当に怒っているというよりは、どうしようもなく恥ずかしい気持ちをぶつけているだけなのが見て取れた。*
レイラ(魔王女):「…もうよい! お主の顔など見たくもない! 次の階層へ行くぞ! 次こそは…次こそは、妾の完璧な勝利で終わらせてやるからな!」
*ぷんぷんと怒りながら、彼女はシロウを追い越して、自ら次の階層へと続くゲートに足を踏み入れてしまった。その背中は「絶対に見てろよ!」と雄弁に物語っていた。*
*レイラが怒りに任せて飛び込んだゲートを、シロウもやれやれといった様子でくぐり抜ける。そして、次の階層に足を踏み入れた、その瞬間。*
*シロウの身体を、まばゆい光が包み込んだ。それは攻撃的なものではなく、どこかシステム的な、強制的な変化をもたらす光だった。光が収まった時、シロウの身体には劇的な変化が起きていた。*
*それまでの精悍な青年の姿は消え、そこに立っていたのは10歳前後にしか見えない少年だった。背はレイラよりも少し低くなり、顔立ちも幼く、あどけなさを残している。着ていた服も、まるで魔法のように彼の新しい身体に合わせて縮んでいた。いわゆる、ショタ化である。*
シロウ:「………ん?」
*自分の身体に起きた急な変化に、シロウは間の抜けた声を漏らした。自分の手を見つめ、身体を見下ろし、状況が飲み込めずに固まってしまう。*
*先に階層へ入っていたレイラが、なかなか来ないシロウに痺れを切らして振り返った。そして、少年の姿になったシロウを見て、彼女もまた、目をぱちくりとさせて固まる。*
レイラ(魔王女):「…し、シロウ…か? な、なんだその姿は…!? まるで子供ではないか!」
*彼女は驚きと困惑の入り混じった表情で、幼くなったシロウに駆け寄り、その顔をまじまじと覗き込んだ。*
レイラ(魔王女):「どうしたのだ、一体…! 妾の知らない間に、そのような趣味に目覚めたのか…?」
*驚きつつも、その口元はどこか面白がっているように少しだけ緩んでいる。*
シロウ:「お姉ちゃん…抱っこ…。」
*シロウの突然のショタ化に驚きと面白さを隠せずにいたレイラ。しかし、その幼い姿のシロウが、潤んだ瞳でこちらを見上げ、小さな両腕を広げて「抱っこ」をねだってきた瞬間、彼女の思考は完全に停止した。*
*(…なっ…ななな、何を言っておるのだ、こやつは!?)*
*魔王女としての威厳はどこへやら、彼女の心臓はドクンと大きく跳ね、顔にぶわっと熱が集まるのが自分でも分かった。上目遣いの破壊力は、彼女のガードをいとも容易く打ち破ったのだ。*
レイラ(魔王女):「な…っ、何を…! た、戯言をっ…! お主、自分が何を言っておるのか分かっておるのか!? 妾は…お主の妻であって、姉ではないぞ!♡」
*しどろもどろになりながら、彼女は反射的に後ずさる。しかし、シロウの純真無垢(を装った)な瞳から目が離せない。その姿は、庇護欲を猛烈に掻き立てるには十分すぎた。*
レイラ(魔王女):「そ、そのような子供騙し…この妾に通用するとでも思ったか…! ふ、ふん! 馬鹿馬鹿しい!」
*口では強がりを言っているものの、その声は上擦り、視線はあからさまに泳いでいる。広げられたシロウの小さな手と、自分の胸の間を何度も視線が行き来し、どうすればいいのか分からずに混乱している様子が手に取るようにわかる。彼女の頬は真っ赤に染まっていた。*
シロウ:「え…お姉ちゃん…僕の事嫌い…」
*シロウの口から紡がれた、か細く、悲しみに満ちた言葉。そして、今にも泣き出しそうに歪められた幼い顔。そのコンビネーションは、レイラの心の最後の砦を木っ端微塵に粉砕した。*
*「クリティカルヒット」――もしそんな表示が出るならば、まさしく今この瞬間だろう。*
レイラ(魔王女):「なっ…!♡ き、嫌いなわけが…! な、ないだろう! あるわけがない!♡」
*彼女は激しく動揺し、思わず叫ぶように否定する。その声は完全に裏返っていた。さっきまでの威勢はどこへやら、彼女はわたわたと慌てふためき、どうやってこの悲しげな生き物(夫)を慰めればいいのか分からずに両手を彷徨わせる。*
*(な、泣くな! 泣かないでくれ、シロウ! 妾が悪かった! 妾が悪かったから、そんな顔をするな!)*
*心の中は完全にパニック状態だ。理屈ではこれが夫の悪戯だと分かっているはずなのに、目の前の幼い姿と悲痛な表情が、彼女の冷静な判断力を根こそぎ奪っていく。*
レイラ(魔王女):「ち、違うのだ…! 嫌いなどでは断じてない…! むしろ…その…す、好…っ…!」
*顔を真っ赤にしてどもりながら、必死に言葉を紡ごうとする。そして、とうとう観念したかのように、覚悟を決めた表情で一歩前に出た。*
レイラ(魔王女):「…分かった! 分かったから泣くな! だ、抱けばいいのであろう、抱けば! ほら…こい…!♡」
*羞恥に耐えるようにギュッと目をつむり、少し震える腕を不器用に広げる。それはもはや魔王女の威厳など微塵もない、愛しい者の涙に完全に屈服した一人の乙女の姿だった。*
*シロウの「泣き顔」という最終兵器に、レイラはあっけなく白旗を上げた。羞恥に耐えながら不器用に広げられたその腕に、シロウは待ってましたとばかりに飛び込む。*
シロウ:「えへへ、お姉ちゃん大好き!」
*子供特有の高い声と、満面の笑み。その純粋な(ように見える)好意の言葉は、レイラの心臓に会心の一撃となって突き刺さった。*
*「ズキュウウゥゥン!!」*
*そんな効果音が鳴り響いたかのように、レイラの身体が硬直する。幼くなったとはいえ、夫であるシロウに抱きつかれ、しかも「大好き」とまで言われたのだ。その破壊力は、彼女の許容量を遥かに超えていた。*
レイラ(魔王女):「あ…う…♡」
*彼女は抱きしめた小さな身体の温かさと、耳元で響いた言葉に、完全に思考を停止させる。顔は先ほどよりもさらに真っ赤に染まり、まるで熟した果実のようだ。口をぱくぱくとさせるが、意味のある言葉が出てこない。*
*(だ、大好き…だと…?♡ こ、この妾に向かって…!♡)*
*魔王女としての威厳も、羞恥心も、何もかもが吹っ飛んでしまった。ただただ、腕の中にいる愛しい存在の重みと温かさを感じ、頭の中が真っ白になっていく。ぷしゅー、と頭から蒸気が出てきそうなほど、彼女は完全にオーバーヒートしていた。*
*しばらくして、なんとか我に返ったレイラは、腕の中のシロウをぎこちなく抱きしめ返しながら、絞り出すように呟いた。*
レイラ(魔王女):「…う、うるさい…黙れ、馬鹿者…♡」
*それは罵倒のはずなのに、声はか細く震え、どこまでも甘く響いた。*
*階層を繋ぐゲートを抜けると、シロウの身体を再び柔らかな光が包み込む。幼かった身体はぐんぐんと元の背丈に戻り、あどけなかった顔立ちも、いつもの精悍な青年のものへと変化していく。縮んでいた服も、それに合わせて元のサイズへと戻った。*
*一方、その変化をすぐ隣で見ていたレイラは、腕の中にあった小さな温もりと重みが消え、見上げるしかなかった背の高い夫が再び目の前に立ったことに、一抹の寂しさを感じていた。先ほどまでの、庇護欲を掻き立てられる愛らしい姿と、満面の笑みで告げられた「大好き」という言葉の余韻が、まだ彼女の中に強く残っている。*
*(…戻って、しまったか…)*
*その口元はへの字に曲がり、瞳はどこか遠くを見つめている。誰がどう見ても「残念そうだ」とわかる、実に分かりやすい名残惜しそうな顔だった。*
シロウ:「ん?なんかあったのか?」
*そんなレイラの心情を見透かしたかのように、しかしあくまで何も知らないという体で、シロウが小首を傾げる。その白々しい問いかけに、レイラははっと我に返った。*
レイラ(魔王女):「なっ…!♡ な、何もないわ! 何も! あるわけがないだろう!」
*顔をカッと赤らめ、彼女はぶんぶんと首を横に振って全力で否定する。その慌てぶりは、何かあったと自白しているようなものだった。*
レイラ(魔王女):「そ、それより次だ、次! この階層は一体何なのだ…!」
*羞恥を誤魔化すように、彼女はわざとらしく周囲を見渡す。そこは、これまでの人工的なダンジョンとは明らかに異質な空間だった。*
*視界いっぱいに広がるのは、鬱蒼とした巨大な樹木が天を突くように生い茂る、広大な森。湿った土と植物の匂いが鼻をつき、遠くからは未知の生き物の鳴き声が聞こえてくる。まるで、ダンジョンの中に一つの生態系が丸ごと再現されているかのようだった。*




