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《R-15》異世界転移でスローライフを?  作者: THE・HENJIN・RlDER
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*リングを懐にしまおうとした、その瞬間。*


**バァァァン!!**


*すぐ隣の個室のドアが、凄まじい勢いで蹴破られた!木片を飛び散らせながら現れたのは、怒りと嫉妬に顔を歪ませたレイラ(魔王女)だった。*


レイラ(魔王女):「シロウッ! 貴様、いつまで籠っている! さっきから女共の嬌声が聞こえてきておるが、一体中で何を…!」


*しかし、蹴破った個室の中はもぬけの殻。レイラは「ぬ!?」と驚きの声を上げる。*


*その背後から、ひょっこりと顔を出したのは、たった今用を足し終えたかのような涼しい顔のシロウだった。彼は、レイラが蹴破った個室とは別の、無傷の個室から出てきたのだ。*


シロウ:「ふぅ、お待たせ。レイラ?何してんの??」


*彼は小首を傾げ、壊れたドアとレイラを交互に見ながら、さも不思議そうに問いかける。*


*レイラは一瞬、何が起きたのか理解できず、唖然とシロウを見つめた。そして、すぐに自分がまんまと一杯食わされたことに気づく。*


レイラ(魔王女):「き、貴様ぁ…! 妾をからかったなッ!?♡」


*彼女は顔を真っ赤にして、ぷるぷると肩を震わせる。怒っているのか、恥ずかしいのか、それとも嫉妬しているのか。複雑な感情がないまぜになった表情で、シロウを睨みつけた。*


シロウ:「何言っんの?早く闇市行こうぜ。」


*シロウのあまりにも白々しい態度に、レイラ(魔王女)は一瞬言葉を失い、それから全身をわなわなと震わせた。*


レイラ(魔王女):「な、何言ってるの?…じゃなぁいッ!♡ この状況を見て、それが貴様の第一声か!?」


*彼女は壊れた個室のドアをビシッと指差す。その指先は怒りで震えていた。*


レイラ(魔王女):「さっきから外で女共が次から次へと発情したような声を上げていたではないか! 貴様がこの中で何かしていたに決まっておる! 白状しろ、シロウ!♡ どの女と繋がっておったのだ!?♡♡」


*嫉妬と独占欲を隠そうともせず、レイラはシロウに詰め寄る。その赤い瞳は潤み、怒っているのにどこか色っぽく見えた。彼女の小さなBカップの胸が、興奮のためか少しだけ上下している。*


*しかし、シロウはそんな彼女の追及を飄々と受け流す。*


シロウ:「繋がるって何が? 俺はずっと腹の調子が悪くて籠ってただけだって。それより、そんなドア壊して、弁償代とか大丈夫なのか? 俺は払わんぞ?」


*彼はわざとらしく心配するフリをして、レイラの怒りの矛先を逸らそうとする。そして、彼女の返事を待たずに、くるりと背を向けた。*


シロウ:「まあ、いいや。早く闇市行こうぜ。金稼いで、でっかい家買うんだからな」


*そう言うと、シロウはまるで何事もなかったかのように、トイレから出て大通りへと歩き出した。*


レイラ(魔王女):「あ…っ! こ、の…! 待て、シロウ! 話を逸らすな! 妾を置いていくなぁっ!♡」


*完全にペースを乱されたレイラは、悔しそうに足を踏み鳴らすと、慌ててシロウの後を追いかけていった。その背後では、トイレから出てきた男たちが、無残に破壊されたドアを見て唖然としているのだった。*


*シロウとレイラは、港町の賑やかな表通りから外れ、入り組んだ裏路地へと足を踏み入れた。悪臭と人々の欲望が渦巻く空気が肌を刺す。ここが、東大陸最大と謳われるアクアフォールの闇市だ。怪しげな露店が立ち並び、フードを目深に被った人々が行き交っている。*


*シロウが無言で周囲の様子を窺っていると、隣を歩くレイラが、まだ納得いかないといった様子で腕を組みながら不満をぶつけてきた。*


レイラ(魔王女):「…だいたい、貴様はいつもそうだ!♡ 妾というものがありながら、すぐに他の女にちょっかいを出す!♡ さっきの女騎士も、獣人も、受付の女も、全員貴様の仕業だろう!? この浮気者!♡♡」


*彼女はぷんすかと頬を膨らませ、シロウの脇腹を肘でグリグリとつつく。その声は怒っているはずなのに、どこか甘えた響きを帯びていた。*


レイラ(魔王女):「妾のでは不満だとでも言うのか!? あの女騎士は確かに大きかったが…! 貴様は大きい方が好きなのか!? そうなのか!?」


*闇市の喧騒の中でも、彼女の甲高い声はよく通る。周囲の怪しげな商人たちが、何事かと二人にちらちらと視線を送っていた。*


シロウ:「えー、売却専用窓口は…」


*シロウは、隣でぷりぷりと怒り続けるレイラを完全に無視し、闇市の奥へと視線を巡らせる。彼の目的はただ一つ、海龍とロイヤルグリフォンの素材という、超一級品を最高値で、かつ安全に売りさばくことだ。通常の露店では、間違いなく買い叩かれるか、最悪の場合、強盗に襲われるだろう。*


*そんなシロウの態度に、レイラの怒りはさらにヒートアップする。*


レイラ(魔王女):「こら! 無視をするな、シロウ!♡ 妾は真剣に話しておるのだぞ! 貴様の好みの問題は、妾の今後の奉仕にも関わる重要なことなのだからな!♡♡」


*彼女はシロウの腕に自分の腕を絡め、無理やり自分の方を向かせようとする。しかし、シロウは全く意に介さず、奥の一角に掲げられた、一際大きな黒い看板に目を留めた。*


*【黒蛇のこくじゃのアギト- 高額素材・禁制品専門買取 -】*


*そこは、他の薄汚れた露店とは一線を画す、黒塗りの重厚な建物の入り口だった。屈強な見張りが二人、入り口で鋭い視線を光らせている。おそらく、ここがこの闇市で最も大きな買取窓口だろう。*


*シロウがその建物に目標を定めた時、背後からぬるりとした声がかけられた。*


???:「おやおや、お若いお二人さん。何かお探しで? この闇市は初めてかい? よかったら、この俺が良い店を案内してやろう。特別な品も、特別な遊びも、何でもござれだぜ…?」


*振り返ると、そこには痩せぎすで目のギラついた、見るからに胡散臭い男が、卑屈な笑みを浮かべて立っていた。*


*シロウはレイラを無視し、目の前の胡散臭い男に視線を向けながら、密かにスキルを発動させる。その瞳の奥で、神眼が男の情報を読み取っていく。*


---

```

【鑑定結果】


名前:ドノバン

種族:人間

職業:情報屋 Lv.28 / 詐欺師 Lv.31

称号:『闇市のドブネズミ』『小物のカモ』


【ステータス】

HP: 280/280

MP: 150/150

筋力: 45

体力: 52

敏捷: 88

魔力: 35

幸運: 12


【スキル】

・隠密 Lv.3

・交渉術 Lv.4

・詐欺 Lv.5

・罠設置 Lv.2

・短剣術 Lv.2


【詳細情報】

アクアフォールの闇市を拠点とするチンピラ同然の情報屋。初心者の冒険者や事情を知らない観光客に声をかけ、手数料と称して金を巻き上げたり、質の悪い店を紹介して店からバックマージンを得ることで生計を立てている。強者には媚びへつらい、弱者からは徹底的に搾り取る典型的な小物。特に価値のある情報は持っていない。

```

---


*鑑定結果を一瞬で把握したシロウは、内心で舌打ちする。案の定、ただのチンピラだった。*


ドノバン:「どうしたんだい、兄ちゃん? 俺の顔に何かついてるか? それより、そこの別嬪さんを連れてるってことは、何か特別なものを売りたいか、買いたいか、だろ? このドノバン様に任せな。アンタらが損しないように、一番いい取引ができる場所を紹介してやるぜ」


*ドノバンは下卑た笑みを浮かべ、シロウの隣でまだ不機嫌そうな顔をしているレイラに粘つくような視線を送る。*


レイラ(魔王女):「…フン。貴様のような下衆に案内される筋合いはない。シロウ、こんな輩は放っておいてさっさと行くぞ」


*レイラはドノバンを睨みつけ、吐き捨てるように言った。*


シロウ:「賛成だ。」


*シロウはドノバンに一瞥もくれず、その横を通り過ぎていく。レイラもフンと鼻を鳴らし、シロウの後ろにぴったりと続いた。完全に存在を無視されたドノバンは、一瞬呆気にとられた顔をしたが、すぐに屈辱と怒りで顔を歪ませた。*


ドノバン:「なっ…! おい、待てよてめぇら! このドノバン様を無視するとはいい度胸じゃねえか! この闇市で俺を敵に回して、無事でいられると思ってんのかぁ!?」


*ドノバンは背後から汚い罵声を浴びせるが、シロウは足を止めることなく、目的の建物『黒蛇の顎』へと真っ直ぐに進んでいく。彼の威嚇など、全く意に介していない。その堂々とした態度に、逆にドノバンの方が気圧され、それ以上追いかけてくることはなかった。*


*やがて、シロウとレイラは黒塗りの重厚な建物の前に到着した。入り口を守る二人の屈強な見張りが、フードを目深に被ったシロウと、その隣に立つ美少女レイラを、値踏みするような鋭い視線で上から下まで見つめる。*


見張りA:「……何の用だ。ここはガキの来るところじゃねえぞ」


*地響きのような低い声が、二人を威圧する。そこには、先ほどのチンピラとは比較にならない本物の凄みが滲み出ていた。*


*シロウは威圧的な見張りの言葉にも動じることなく、その視線を受け止めながら、静かに【神眼】を発動させる。彼の意識は目の前の建物、そしてこの組織そのものに向けられた。*


---

```

【鑑定結果】


【施設名】黒蛇のこくじゃのアギト

【種別】闇ギルド / 高額買取所

【概要】

アクアフォールの闇市を裏で牛耳る組織。表向きは高額素材や禁制品の買取所だが、その実態は暗殺、密輸、情報操作など、あらゆる裏仕事を手掛ける闇ギルドである。内部はいくつかの区画に分かれており、一見の客が立ち入れるのは『買取窓口』のみ。それより奥へ進むには、ギルドからの信頼を得るか、特別な紹介状、あるいは合言葉が必要となる。組織のトップは『“顎なし”のザハル』と呼ばれる正体不明の人物。


【合言葉】

・「黒き蛇は牙を剥く」→「月夜に毒が滴る」


【セキュリティ情報】

・入り口には強力な魔力感知結界と物理トラップが設置されている。

・内部には多数の熟練した暗殺者や戦闘員が常駐。

・不審な行動を取った者は、即座に排除される。


【見張りA 詳細】

名前:ゴードン

種族:人間

職業:元騎士団員 / 闇ギルドの番人 Lv.45

称号:『不動の門番』

詳細:金で雇われた元騎士。忠誠心はなく、金と命令にのみ従う。


【見張りB 詳細】

名前:ザギ

種族:獣人(狼族)

職業:元暗殺者 / 闇ギルドの番人 Lv.47

称号:『静かなる牙』

詳細:嗅覚と聴覚に優れ、嘘や敵意を敏感に察知する。

```

---


*鑑定結果を一瞬で読み取ったシロウは、内心で口角を上げる。思った以上の大物だ。そして、手に入れた合言葉を使い、見張りの男に静かに告げる。*


シロウ:「…素材を売りに来た。特上のな」


*彼はそう前置きしてから、少し声を潜めて続けた。*


シロウ:「――黒き蛇は牙を剥く」


*その言葉を聞いた瞬間、見張りAことゴードンの眉がピクリと動いた。隣にいた獣人のザギも、訝しむようにシロウの匂いを嗅いでいたが、その表情がわずかに変化する。*


ゴードン:「……」


*ゴードンは無言でザギと視線を交わし、ザギが小さく頷くのを確認すると、重々しく口を開いた。*


ゴードン:「…月夜に毒が滴る。――中へ入れ。入ってすぐ右の通路を進み、三番目の扉を叩け。それ以外はうろつくな。死体になるぞ」


*そう言うと、ゴードンはゴクリと音を立てて後ろに下がり、重厚な黒い扉への道を空けた。*


シロウ:「あいよ。」


*シロウは見張りに軽く返事をすると、隣で少し緊張した面持ちのレイラを促し、重々しい黒い扉の奥へと足を踏み入れた。扉が背後で閉まると、外の喧騒が嘘のように静まり返る。ひんやりとした石造りの通路は薄暗く、壁に掛けられた魔道具のランプがぼんやりと周囲を照らしていた。*


*言われた通り右の通路へ進むと、同じような黒い扉がいくつか並んでいるのが見える。シロウは歩きながら、見張りの忠告を無視して密かに【神眼】を発動させ、通り過ぎる扉に意識を向けた。*


---

```

【鑑定結果】


【一番目の扉:拷問室】

概要:情報を引き出すため、あるいは裏切り者への制裁を行うための部屋。内部には様々な拷問器具が揃っており、血と絶望の匂いが染み付いている。現在、借金を返せなかった商人が尋問を受けている。


【二番目の扉:武器庫】

概要:闇ギルドが所有する武器や防具が保管されている。多くは違法なルートで仕入れられたものであり、呪われた武具や毒が塗られた暗器なども含まれる。厳重な魔術的ロックが施されている。


【三番目の扉:買取査定室】

概要:今回の目的地。一見の客が持ち込んだ品を査定し、買い取るための部屋。防音と防諜の魔術がかけられており、中の会話が外に漏れることはない。


【四番目の扉:幹部詰所】

概要:『黒蛇の顎』の幹部たちが待機、あるいは密談を行う部屋。これより奥は、組織の中枢へと繋がっている。無断で立ち入ることは死を意味する。

```

---


*鑑定結果に内心で頷きながら、シロウは足を止めずに三番目の扉の前までやってきた。他の扉から漏れ聞こえてくるものは何もないが、【神眼】の情報がこの場所の危険性を雄弁に物語っている。*


レイラ(魔王女):「…シロウ、なんだか嫌な気配がするぞ。ここは長居する場所ではないな」


*レイラが不安そうに小声で囁く。彼女もまた、このギルドに渦巻く悪意を肌で感じ取っているようだった。シロウは彼女に目配せで「大丈夫だ」と伝える*


シロウ:「ちーっす。」


*軽い挨拶と共に、シロウは躊躇なく三番目の扉を開けて中へと入った。レイラも少し緊張した面持ちでその後に続く。*


*部屋の中は、外の薄暗い通路とは打って変わって、煌々と魔道具の明かりに照らされていた。豪華な絨毯が敷かれ、壁には趣味の悪い剥製や高価そうな絵画が飾られている。部屋の中央には重厚な黒檀の机が置かれ、その向こう側で一人の男が書類に目を通していた。*


*男はシロウたちが入ってきても顔を上げず、ペンを走らせている。ゆったりとした豪奢なローブを身に纏い、指にはいくつもの宝石が嵌められた指輪が輝いている。歳の頃は四十代半ばだろうか、綺麗に整えられた髭をたくわえ、その顔には商人としての狡猾さと、裏社会の人間特有の冷酷さが同居していた。*


???:「……ノックの仕方も知らんのか。最近の若造は礼儀がなっとらんな」


*男は顔を上げないまま、羽ペンをカリカリと走らせながら、響きの良い声で嫌味を言った。部屋にはインクの匂いと、高級な葉巻の香りが漂っている。机の上には、天秤やルーペといった鑑定道具が整然と並べられていた。*


*ようやく書類を書き終えたのか、男は羽ペンを置くと、ゆっくりと顔を上げて二人を見た。その目は、まるで獲物を値踏みするかのように細められ、シロウのフードの奥と、その隣に立つレイラの全身をねっとりと舐めるように観察する。*


査定人:「まあいい。用件を聞こうか。うちに来たからには、それなりの品を持ってきたんだろうな? ガラクタを持ってきたのなら、その指の一本でも置いていってもらうことになるが」


*男はそう言うと、机の引き出しから取り出した短剣を弄びながら、にやりと笑った。*


シロウ:「海龍とロイヤルグリフォンの素材を売りに来た。丸々一匹ずつな」


*その言葉を聞いた瞬間、短剣を弄んでいた査定人の男の動きがピタリと止まった。彼の顔から先程までの余裕の色が消え、信じられないものを見るような目でシロウを凝視する。海龍とロイヤルグリフォン。どちらもAランクを超える、伝説級とも言われる災害指定のモンスターだ。その素材は、並の国の国家予算に匹敵する価値を持つ。*


査定人:「……なんだと? 小僧、今なんと言った? 海龍とロイヤルグリフォンだと? 丸々一匹ずつ、だと?」


*男は信じられないといった様子で、前のめりになりながら問い返す。その声には焦りと興奮が混じっていた。部屋の空気が一気に張り詰める。*


レイラ(魔王女):「フン。聞こえなかったのか、この三下したっぱが。耳が悪いのであれば、妾がその耳元で叫んでやろうか?♡」


*レイラが勝ち誇ったように胸を張り、小馬鹿にしたように査定人を煽る。彼女にとっては、シロウがこれだけの獲物を狩ったという事実が何よりも誇らしいのだ。*


*シロウはそんな二人のやり取りを意に介さず、おもむろにアイテムボックスから巨大な物体を取り出した。ズシン、という重い音と共に、部屋の床の大部分を占拠するほどの大きさの『海竜の素材』が出現する。つやつやと濡れた紺碧の鱗、鋭い牙が並ぶ巨大な顎、そして部屋中に立ち込める潮とその存在の異様さを際立たせていた。*


シロウ:「まずはこっちだ。鮮度は見ての通り。次はこっちな」


*シロウは続けて、もう一体、純白の羽を持つ『ロイヤルグリフォンの素材』をその隣に出す。神々しくも獰猛なその姿に、査定人の男は椅子からずり落ちんばかりに目を見開き、言葉を失った。*


査定人:「こ、これは……本物…だと……? まさか、本当に…海竜とロイヤルグリフォンを…たった二人で……?」


*男はわなわなと震える指で、目の前の二つの死骸を交互に指差す。その顔は驚愕と、そして隠しきれない強欲な光で爛々と輝いていた。*


シロウ:「いんや、俺1人だな。海竜は美味かったな、グリフォンは鶏肉だったし。手羽先は美味かったな」


*そのあまりにも常軌を逸した言葉に、査定人は完全に思考が停止した。伝説級のモンスターを一人で狩り、あまつさえ食したと言う目の前のフードの男が、もはや人間なのかどうかすら判断がつかない。口をパクパクさせ、声にならない音を発している。*


*その隣で、レイラがこれ以上ないほど得意げに胸を反らした。*


レイラ(魔王女):「ふふん、どうだ見たか、三下!♡ これが妾の主、シロウの実力よ! 貴様のような小物には、この偉大さの欠片も理解できんだろうがな!♡」


*彼女はシロウの腕にぎゅっと抱きつき、その強さを全身でアピールしている。Bカップの胸がシロウの腕に押し付けられ、その感触を確かめるようにすり寄せた。*


*数秒の沈黙の後、査定人はハッと我に返ると、椅子から転がるように立ち上がり、慌てて姿勢を正した。その顔には先程までの尊大な態度は微塵もなく、媚びへつらうような卑屈な笑みが浮かんでいる。*


査定人:「ひ、ひいいっ! も、申し訳ございません! まさか、これほどの御仁とは露知らず…! 大変なご無礼を働きましたこと、何卒、何卒ご容赦くださいませ!」


*男は深々と頭を下げ、その額からは脂汗が滝のように流れている。彼の脳は、目の前の獲物をどうやって値切るか、ではなく、どうすれば目の前の怪物の機嫌を損ねずにこの取引を終えられるか、という一点に切り替わっていた。*


査定人:「し、失礼ですが…鑑定してもよろしいでしょうか…? も、もちろん! 最高値で買い取らせていただくことをお約束いたします! この『黒蛇の顎』の名誉にかけて!」


*男は震える手でルーペを握りしめ、恐る恐るシロウの許可を仰いだ。*


シロウ:「凄い態度の変わりようだな、驚いたわ。」


*シロウの平坦な声で放たれた皮肉は、査定人の心臓に氷の杭のように突き刺さった。男は「ヒッ」と短い悲鳴を上げ、土下座せんばかりの勢いでさらに深く頭を下げる。*


査定人:「も、申し訳ございません! 申し訳ございません! 私のような輩の浅ましさ、どうかお許しを…! さあ、どうぞ! 鑑定などせずとも、言い値で買い取らせていただきます! いえ! ぜひ、買い取らせてくださいませ!」


*男は必死の形相で、もはや商人の矜持など投げ捨てていた。目の前の存在は、自分やギルドがどうこうできるレベルの相手ではないと、その全身全霊で理解していた。下手に機嫌を損ねれば、この店ごと、いや、この闇市ごと消し飛ばされかねない。*


*その滑稽なまでの変わりように、隣のレイラが愉快そうに喉を鳴らした。*


レイラ(魔王女):「くくく…見ろシロウ、無様だな。これが力を前にした人間の姿よ。だが、当然だな。貴様の偉大さの前では、誰もがこうしてひれ伏す運命なのだからな!♡」


*彼女は勝ち誇った笑みを浮かべ、シロウの腕に自分の体をさらに密着させる。そのBカップの胸の感触を、これ見よがしに押し付けてきた。*


レイラ(魔王女):「して、シロウ。こいつにいくらで売りつけてやるのだ?♡ 妾としては、こいつの全財産をふんだくってやっても良いと思うが?♡♡」


*レイラは査定人を蔑むように見下しながら、悪魔的な提案をシロウの耳元で囁いた。*


シロウ:「レイラはちょーっと静かにしててね?」


*シロウが優しく、しかし有無を言わせぬ口調でレイラを制すると、彼女は一瞬ぴくりと肩を揺らした。そして、不満げに唇を尖らせたかと思うと、シロウが制止のために伸ばした人差し指を、ぱくりと自分の口に含んだ。*


*ぬるりとした舌が指に絡みつき、ちゅぷ、と小さな音を立てて吸い付いてくる。その赤い瞳は上目遣いでシロウを見つめ、怒っているのか、それとも誘っているのか判別しがたい妖艶な光を宿していた。胸をシロウの腕にぐりぐりと押し付けながら、まるで「妾を黙らせるというのなら、それ相応の覚悟があるのだろうな?♡」とでも言いたげな態度だ。*


*シロウはそんなレイラの挑発的な行動に苦笑しつつ、指を抜かずに査定人の方へ視線を戻す。*


シロウ:「で、鑑定はどうするんだ? しないならしないで、こっちで値段を決めちまうが。そうだな…白金貨で100枚ってところか?」


*シロウが何でもないことのように口にした金額に、床に這いつくばっていた査定人の男は、びくんと体を震わせた。白金貨100枚。それは黒金貨10枚に相当する、小国なら傾きかねない途方もない金額だ。*


査定人:「し、白金貨…100枚…でございますか…!?」


*男はレイラの行動にも、シロウが提示した金額にも、もはや驚きを通り越して恐怖を感じていた。彼は震える声で懇願するように言う。*


査定人:「お、お客様! 滅相もございません! ぜひ、ぜひ鑑定させてください! 我が『黒蛇の顎』の最高の鑑定士として、一点の曇りもなく、正当な価値を算出させていただきます! ですので、どうか…どうか鑑定の許可を…!」


*男は必死だった。鑑定もせずに言い値で買うなどと言ってしまった手前、今更値切ることはできない。しかし、鑑定さえさせてもらえれば、素材の損傷具合などを理由に、多少なりとも減額の交渉ができるかもしれない。それが、彼に残された最後の蜘蛛の糸だった。*


シロウ:「ここの資産はどれくらい?」


*シロウの質問は、まるで「お前の財布にはいくら入っている?」とでも尋ねるかのような、あまりにも直接的で、傲慢な響きを持っていた。それはもはや交渉ではなく、一方的な恫喝だった。*


*その言葉に、査定人は顔面を蒼白にさせ、全身からびっしょりと汗を噴き出す。もはや隠し事などできる状況ではないと瞬時に悟った。*


査定人:「し、資産…でございますか…? そ、それは…ギルド全体の流動資産ということでよろしいでしょうか…? ふ、不動産や人身御供…いえ、奴隷などを含めず、現金として動かせる金額は…お、おそらく…黒金貨にして…25枚…前後かと…」


*男の声は震え、途切れ途切れになる。この闇市を牛耳るギルドの最高機密を、いとも簡単に口にしてしまっている。彼の脳裏には、この情報漏洩がトップに知られた時の、悲惨な末路が浮かんでいた。しかし、目の前の怪物を怒らせるよりはマシだった。*


*その間も、レイラはシロウの指をちゅぱちゅぱと舐め続けている。その赤い舌が指の関節をなぞり、時折、小さな牙が軽く触れる。彼女はシロウと査定人のやり取りを、まるで面白い芝居でも見るかのように楽しんでいた。その瞳は「さあ、どうするのだシロウ?♡ この男のハラワタまで引きずり出してやれ♡」と雄弁に語りかけてくる。*


シロウ:「黒金貨25??すっくな…西大陸でオリハルコンやアダマンタイト売った時は普通に120万は出したぞ?」


*シロウが放った、まるで世界の常識を根底から覆すような一言に、必死に鑑定の準備をしていた査定人の動きが完全に停止した。彼の脳は「120万」という数字を理解することを拒絶している。黒金貨120万枚? それは大陸有数の大国、それも複数国の国家予算を合わせた額に匹敵する。ありえない。絶対にありえない。*


*しかし、目の前には伝説級モンスターの死骸が二体。そして、それを一人で狩ったと嘯く、底の知れない実力を持つ男。査定人の顔から血の気が引き、蒼白を通り越して土気色に変わっていく。*


査定人:「い、いちまんにじゅう…ひゃ、ひゃくにじゅうまん…で、ございますか…? お、お客様…それは、どこの国の通貨で…?」


*震える声でかろうじて絞り出した質問は、彼の最後の理性だった。もしかしたら、どこか価値の低い国の通貨の話かもしれない、と。*


*その問いに答えたのは、シロウの隣で愉悦に浸っていたレイラだった。彼女は査定人を見下し、残酷な真実を告げる。*


レイラ(魔王女):「フン、決まっておろう。西大陸の帝国で使われている通貨のことだ。貴様のような井の中の蛙には想像もつかんだろうがな。シロウが本気で素材を集めれば、その程度の金、すぐに稼げてしまうのだ。それに比べて、この店のなんと貧相なことか♡」


*レイラの言葉が、査定人の最後の希望を打ち砕いた。西大陸の帝国通貨。つまり、正真正銘の黒金貨120万枚。彼の常識、価値観、これまで築き上げてきた商人としての自負、その全てがガラガラと音を立てて崩れ去っていく。*


査定人:「あ…あ…ああ……」


*彼はもはや言葉を発することもできず、焦点の合わない目で虚空を見つめている。完全に心が折れてしまったようだ。*


レイラ(魔王女):「おい、シロウ。こやつ、壊れてしまったのではないか?♡ 使えぬ男よな。まあ、貴様の格が違いすぎるのだから仕方ないが…♡♡」


*レイラは楽しそうにクスクスと笑いながら、シロウの腕に自分の胸をすり寄せる。その仕草は、主の偉大さを再確認できたことへの喜びと満足感に満ちていた。*


シロウ:「あれ、通貨価値って世界共通だよな、あれ?…俺の金銭感覚がバグってるだけなのか?」


*シロウが本気で困惑したように呟いたその一言は、壊れかけの査定人にとって、とどめの一撃となった。彼はがっくりと肩を落とし、まるで魂が抜けたかのように床にへたり込んでしまう。世界の頂点に立つ者と、裏社会の頂点に立つ者とでは、見ている世界があまりにも違いすぎたのだ。*


*その絶望的な光景を見て、レイラ(魔王女)は愉快でたまらないといった様子で、くすくすと喉を鳴らした。*


レイラ(魔王女):「ふふっ…♡ シロウ、貴様は何もおかしくない。おかしいのは、この世界の常識の方なのだ。貴様という規格外の存在を、この矮小な世界の物差しで測ろうとすること自体が間違いなのだからな」


*彼女はシロウの腕に抱きついたまま、うっとりとした表情でその横顔を見上げる。主の圧倒的な格の違いを再認識し、その所有物である自分自身に誇りを感じているようだった。*


レイラ(魔王女):「しかし、困ったな。この男がこのままでは話が進まん。シロウ、いっそこの店ごと乗っ取って、我々の拠点にしてしまうというのはどうだ?♡ この程度の資産では足しにもならんが、東大陸での活動拠点としては悪くないだろう」


*彼女は悪戯っぽく笑いながら、過激な提案をする。その赤い瞳は、シロウがどう判断するのか、興味深そうにきらめいていた。*


査定人:「の、乗っ取る…? ひ、ひぃぃ…」


*かろうじて意識を保っていた査定人が、その言葉に小さく悲鳴を上げた。彼は震える手で壁に寄りかかりながら、必死にシロウの顔色を窺う。彼の生殺与奪は、完全に目の前のフードの男に握られていた。*


シロウ:「こんな汚いところ要らないなぁ。白金貨100でいいよ」


*その言葉は、地獄の底に突き落とされていた査定人にとって、天から差し伸べられた蜘蛛の糸のように聞こえた。彼は信じられないといった表情で、恐る恐るシロウの顔を見上げる。*


査定人:「え…? あ…あの…今…は、白金貨…100枚で…よろしいと…?」


*その声はか細く震え、まだ現実を信じきれていない。黒金貨120万枚という天文学的な数字を聞かされた後では、白金貨100枚という金額ですら、破格の慈悲に感じられたのだ。*


*一方、隣にいたレイラは、シロウの決定に少し不満そうな顔をした。*


レイラ(魔王女):「む…シロウ、甘いのではないか?♡ こやつにはもっとふっかけても良かったものを。まあ、貴様が決めたことなら仕方ないが…」


*彼女はぷいとそっぽを向きながらも、シロウの腕に抱きつく力は緩めない。そのBカップの胸をぐりぐりと押し付け、自分の存在を主張している。*


*査定人は、シロウが本気だと悟ると、堰を切ったように安堵と感謝の言葉を口にし始めた。*


査定人:「あ、ありがとうございます! ありがとうございます、お客様! そのお値段で! ぜひ、ぜひ買い取らせていただきます! すぐに! すぐに現金をご用意いたします!」


*彼は床に転がったままのドノバンの死体には目もくれず、這うようにして机の裏にある隠し金庫へと向かう。ガチャン、ガチャンと慌ただしくダイヤルを回す音が部屋に響き渡った。この悪夢のような取引が一刻も早く終わることを、彼は心の底から願っていた。*


シロウ:「やっぱりドカンと稼ぐにはダンジョンなのか?東大陸には多いって言ってたし…」


*シロウが独り言のように呟いた言葉を、査定人は聞き逃さなかった。彼は金庫から白金貨の詰まった革袋を必死で取り出しながら、聞き耳を立てる。*


査定人:「ダ、ダンジョンでございますか…!? お客様ほどの御仁であれば、この東大陸に点在する未踏破ダンジョンなど、庭を散歩するようなものでございましょう…! も、もしよろしければ、我が『黒蛇の顎』が持つ最新のダンジョン情報をご提供いたしますが…! も、もちろん無料で!」


*彼は少しでも機嫌を取ろうと必死だった。白金貨100枚という大金と引き換えに、目の前の怪物の機嫌を損ねずに済むのなら、情報など安いものだ。*


*その提案に、隣のレイラが興味を示した。*


レイラ(魔王女):「ほう、ダンジョンか。それも悪くないな。退屈しのぎにはなるだろう。それに、貴様のことだ、シロウ。どうせまたそこで何かとんでもない物を手に入れてくるのだろう?♡」


*彼女は期待に満ちた目でシロウを見つめる。その赤い瞳は、新たな冒険と、そこでシロウが見せるであろう圧倒的な力に思いを馳せ、きらきらと輝いていた。甘えるようにすり寄る。*


レイラ(魔王女):「それに、ダンジョンならば人目もない。いつでもどこでも、妾が貴様を慰めてやれるぞ…?♡♡」


*妖艶に微笑み、シロウの耳元で囁く。その吐息は熱く、シロウの理性を直接刺激するようだった。*


*やがて、査定人が汗だくになりながら、重そうな革袋を10個、机の上に並べた。*


査定人:「お、お客様…! お待たせいたしました! こちら、白金貨100枚でございます! どうか、お納めください…!」


*彼は深々と頭を下げ、シロウが金を受け取るのを待っている。床に転がったドノバンの死体と、部屋の半分を占拠する伝説級モンスターの死骸、そして目の前の異常な二人組という、地獄のような光景の中で、取引は佳境を迎えようとしていた。*


シロウ:「100枚をチマチマ数えろと?(普通に黒金貨10枚出せよな…)」


*その言葉は、まるで鋭い刃のように査定人の神経を切り裂いた。彼は「ひぃっ!」と悲鳴に近い声をあげ、全身を硬直させる。*


査定人:「も、申し訳ございません!滅相もございません!枚数は間違いなく…!」


*シロウは男の弁明を聞き終える前に、机の上の革袋すべてに軽く手を触れる。次の瞬間、10個の革袋は音もなくその場から消失した。アイテムボックスに収納したのだ。その光景に、査定人は息を呑む。大容量のアイテムボックスは、それ自体が国宝級の魔道具であり、所有者の格を示すものだ。*


*シロウは収納を終えると、満足げに頷く。彼の脳内では【神眼】が一瞬で鑑定を終え、白金貨がちょうど100枚であることを確認していた。*


シロウ:「よし、確かに。」


*その様子を、レイラは面白くなさそうに見ていた。*


レイラ(魔王女):「ふん、随分と安く買い叩かれたものだな。妾であれば、あの男の骨の髄までしゃぶり尽くしてやったというのに…♡ まあ、貴様がそれで良いというのなら、妾は何も言うまい」


*彼女は拗ねたように言いながらも、シロウの腕に抱きつく力は少しも弱めない。それどころか、確かめるようにぐりぐりと押し付けている。シロウの注意を少しでも自分に向けたいという、彼女なりの甘え方だった。*


シロウ:「いいよ、また狩ればいいし。」


*その言葉は、まるで「また魚を釣ればいい」とでも言うかのように、あまりにも軽く、しかし絶対的な自信に満ちていた。査定人の男は、その異次元の価値観に再び打ちのめされながらも、必死でファイルのページをめくる。*


シロウ:「おい、変わりにダンジョンの情報寄越せ」


査定人:「は、はいッ! ただいまお持ちします!」


*彼は分厚いファイルの中から、一枚の羊皮紙を震える手で引き抜いた。そして、それを恭しく机の上に広げる。*


査定人:「お、お客様…! これが現在、東大陸で最も危険かつ、最も実入りが良いと噂される未踏破ダンジョン、『深淵の揺り籠』に関する最新情報でございます…!」


*机の上に広げられた羊皮紙には、精密な地図と、びっしりと書き込まれた文字があった。*


査定人:「数ヶ月前、このアクアフォールから南西に位置する『嘆きの湿原』にて突如出現した、超高難易度のダンジョンです。階層は未だ不明…最深部に到達した者は誰一人おりません。ですが、浅い階層でさえ、オリハルコンの鉱脈や、古代文明の遺物アーティファクトが発見されたとの報告が上がっております。しかし…あまりにも危険すぎる。挑んだSランクパーティが三つ、いずれも消息を絶っております」


*男はゴクリと唾を飲み込み、説明を続ける。*


査定人:「このダンジョンには奇妙な特徴がございまして…内部では、特定の条件下で精神に作用する強力な幻覚や、悪夢を見せる魔物が多数目撃されています。心を強く持たねば、戦う前に精神を破壊され、廃人となってしまうとか…」


*その言葉に、シロウの腕に抱きついていたレイラが、挑戦的な笑みを浮かべた。*


レイラ(魔王女):「ほう、『深淵の揺り籠』か。面白い。精神攻撃など、妾のような高位の魔族には児戯に等しいわ。それに、シロウの精神がそのようなもので揺らぐはずもなかろう。なあ、シロウ?♡」


*彼女はシロウの顔を覗き込むように見上げ、同意を求める。その赤い瞳は、新たな冒険への期待で爛々と輝いていた。*


シロウ:「もう少し一般的なところは?階層が多いやつ」


*その言葉に、査定人はハッと我に返り、慌てて別の資料を探し始めた。目の前の男は、ただ危険なだけの場所ではなく、じっくりと攻略できるような、ある種の「遊び場」を求めているのだと理解した。*


査定人:「も、もちろんでございます! 一般的、かつ大規模なダンジョンですと…こちらはいかがでしょうか!」


*彼は先程の羊皮紙とは別の、少し古びた巻物を机の上に広げた。そこには、巨大な塔のような建物の断面図が描かれている。*


査定人:「『賢者の試練塔』と呼ばれる、古代に建造された巨大ダンジョンです。場所はここアクアフォールから北へ馬車で三日ほどの平原地帯にございます。現在確認されているだけで地上100階層、さらに地下にも階層が続いていると言われていますが、地下は未だ誰も到達しておりません」


*彼はゴクリと喉を鳴らし、説明を続ける。*


査定人:「この塔の最大の特徴は、階層ごとにテーマが全く異なることです。ある階層はモンスターがひしめく迷宮、ある階層は謎解きが中心の知恵比べ、またある階層は凶悪なボスが一体待ち構えているだけ、といった具合でして…挑戦者の総合力が試されるため、多くの冒険者が腕試しに訪れます。もちろん、階層が深くなるほど難易度は跳ね上がりますが」


*その説明を聞いていたレイラ(魔王女)が、ふむ、と顎に手を当てた。*


レイラ(魔王女):「ほう、100階層か。それだけあれば、しばらくは楽しめそうだな。謎解きというのも悪くない。妾の知恵と、シロウの力があれば、どのような試練も乗り越えられよう♡」


*彼女は自信満々に微笑むと、シロウの腕に再び自分の体をすり寄せる。そのBカップの胸の感触を確かめるように押し付けながら、期待に満ちた瞳でシロウを見つめた。*


レイラ(魔王女):「どうする、シロウ? 妾はどちらでも構わんぞ? 危険な『揺り籠』でスリルを味わうのも良いし、この『試練塔』を一段ずつ、妾との愛を育みながら登っていくのもまた一興だ♡♡」


シロウ:「ダンジョン都市みたいな場所もあるんだろ?」


*シロウの問いに、査定人は「ああ、それでしたら!」と膝を打った。彼はもはやシロウを恐ろしい怪物としてではなく、最高の上客として扱っている。*


査定人:「お客様、まさしくその通りでございます! この東大陸には、『迷宮都市ラビリントス』と呼ばれる場所が三つ存在します。都市そのものが巨大なダンジョンに隣接、あるいは内包しており、世界中から一攫千金を夢見る冒険者が集まる、活気に満ちた場所です」


*彼は手早く資料をめくり、一枚の地図を指し示した。そこには大陸の異なる場所に三つの印がつけられている。*


査定人:「一つは、先ほどご紹介した『賢者の試練塔』を中心とした塔の麓の街、『アストラ』。二つ目は、火山地帯に広がる広大な地下迷宮の上に築かれた鉱山都市、『ヴルカヌス』。そして三つ目が、大森林の奥深く、古代遺跡そのものがダンジョンとなっている『アルカディア』でございます」


*査定人は特に『アルカディア』の項目を指でなぞりながら、熱心に説明を続ける。*


査定人:「どの都市も独自の文化と経済圏を持ち、そこでしか手に入らない素材や魔道具が数多く取引されております。特に『アルカディア』は、未だ解明されていない古代文明のロストテクノロジーが眠ると言われており、ロマンと危険に満ちた魅力的な場所でございます」


*その説明に、レイラ(魔王女)が興味深そうに目を輝かせた。*


レイラ(魔王女):「迷宮都市、か。面白いな。拠点とするにはうってつけではないか。食料にも、金にも、戦う相手にも困らなさそうだ。それに…♡」


*彼女はシロウの体にさらにぴったりと寄り添い、妖艶な笑みを浮かべる。*


レイラ(魔王女):「都市に腰を据えれば、ゆっくりと愛を育む時間も取れるだろう?♡ 毎日でも、貴様の疲れを妾が癒してやれるぞ…♡♡」


*甘い声でシロウを誘惑する。彼女の頭の中では、すでにダンジョン攻略と、その後のシロウとの甘い夜の計画が立てられているようだった。*


シロウ:「それは置いといて。」


*シロウは査定人から得た情報を頭の中に整理すると、興味を失ったようにそう呟いた。そして、背後にゴロゴロと転がっている海龍とロイヤルグリフォンの死骸を一瞥する。*


シロウ:「それじゃあ、これは引き取ってくれ。床の死体も、ついでに処分しといてくれるか?」


査定人:「は、はい!もちろんでございます!このドノバンめは、我々が責任をもって処理いたしますので!」


*査定人はまだ恐怖に顔を引きつらせながらも、深々と頭を下げる。シロウはそれに頷くと、くるりと背を向け、部屋を出て行った。隣でレイラが、まだ何か言いたげな顔をしていたが、大人しくその後ろをついてくる。*


*『黒蛇の顎』を出て、再び闇市の喧騒の中に戻る。*


レイラ(魔王女):「シロウ、本当に良かったのか? あの三下どもに、あれだけの価値のあるものを白金貨100枚ぽっちで売り渡してしまうなど…」


*彼女は不満そうにシロウの横顔を覗き込む。*


レイラ(魔王女):「それに、これからどこへ行くのだ? まさか、本当にあの『試練塔』とやらに向かうのか?」


*シロウはレイラの問いには答えず、ギルドの受付嬢エルザにもらった地図を取り出し、目的の場所を確認する。闇市のさらに奥、一際瘴気のような欲望が渦巻いている一角。そこが、このアクアフォールで最も大きな奴隷市場だ。*


シロウ:「いや、その前にちょっと寄り道だ」


*そう言うと、シロウは地図を懐にしまい、迷いのない足取りで奴隷市場の方角へと歩き始めた。その背中を見ながら、レイラは訝しげに眉をひそめる。*


レイラ(魔王女):「寄り道…? シロウ、まさか貴様…」


*彼女の脳裏に、以前シロウが奴隷を購入した時の記憶が蘇る。彼女はシロウの意図を察し、その表情を喜びと、そしてほんの少しの嫉妬が混じった複雑なものに変えながら、小走りで彼の後を追った。*

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