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**東大陸 アクアフォール到着日・朝**
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*差し込む朝日が、乱れきったベッドの上で眠る二人を照らす。シロウが目を覚ますと、隣には満足しきった顔で、すーすーと穏やかな寝息を立てる少女がいた。昨夜までの傲慢な魔王女の面影はなく、そこにはただ無防備で愛らしい、臆病な方のレイラの姿があった。*
*ぐしゃぐしゃになったシーツや、そこかしこに飛び散った体液の痕が生々しい。シロウが身じろぎをすると、その気配を感じ取ったのか、レイラ(臆病)がもぞもぞと身じろぎをし、ゆっくりと瞼を開いた。*
レイラ(臆病):「ん…し、シロウ様…? おはよう、ございます…」
*彼女はまだ眠たげな瞳でシロウを見上げ、ふにゃりと微笑む。しかし次の瞬間、自分の体が裸であること、そして部屋の惨状に気づき、顔をぼっと赤らめた。*
レイラ(臆病):「きゃっ…! あ、あの、これは、その…ま、また私…もう一人の私が…! も、申し訳ありません…!」
*彼女は慌ててシーツで体を隠し、シロウの顔をまともに見れなくなってしまう。その姿は、数時間前までシロウの上で激しく腰を振っていた女と同一人物とは思えないほど、初々しく可憐だった。*
*ゴオォォ…という、巨大な船が港に接岸する低い地響きと、人々の喧騒が遠くから聞こえてくる。いよいよ東大陸に到着したのだ。*
*シロウが指を軽く鳴らすと、部屋全体が淡い光に包まれた。乱れたシーツは皺ひとつない状態に戻り、飛び散っていた体液の痕跡は跡形もなく消え去る。空気中に漂っていた濃厚な匂いも浄化され、船室はまるで何事もなかったかのように、清潔な状態へと一瞬で戻った。*
レイラ(臆病):「あ…ありがとうございます、シロウ様…」
*彼女はシーツにくるまったまま、顔を真っ赤にしてお礼を言う。シロウはベッドから立ち上がると、クローゼットから新しい服を取り出した。*
シロウ:「流石にこのまま返すのはなぁ…」
*シロウの呟きは、この船を所有する王家への配慮だった。彼がそんなことを考えているとは露知らず、レイラ(臆病)は自分の不始末を責められているのだと勘違いして、さらに体を小さくする。*
レイラ(臆病):「も、申し訳ありません…! あの、その…もう一人の私が、ご迷惑を…」
*シロウはそんな彼女に苦笑しながら、新しい服を手渡した。*
シロウ:「気にするな。それより、着替えて準備しろ。港に着いたみたいだぞ。」
*外からは、船員たちの威勢の良い声や、荷物を降ろす音、そして港町の活気ある喧騒がはっきりと聞こえてくる。長い船旅はようやく終わりを告げ、新たな大陸での冒険が始まろうとしていた。*
レイラ(臆病):「は、はいっ!」
*レイラ(臆病)は元気よく返事をすると、急いで服に着替え始めた。その手つきは少しぎこちなく、数日間の情事の影響が体に残っているようだった。*
*シロウの言葉通り、二人は手早く服を着て甲板へと向かった。臆病なレイラも、毎朝のように繰り返されるこの状況に少しずつ慣れてきたのか、以前ほど赤面したり慌てたりすることはなく、淡々と身支度を整える。もちろん、羞恥心が消えたわけではないが、それ以上にシロウの側にいるという安心感が勝っているのだろう。*
*甲板に出ると、そこには活気に満ちた港町『アクアフォール』の光景が広がっていた。石畳の美しい街並み、行き交う様々な種族の人々、そして街の中心に聳え立つ、巨大な滝から流れ落ちる水が街中に張り巡らされた水路を潤している。その名の通り、水と共にある美しい都市だ。*
*船員たちが忙しなく荷降ろし作業をする中、ダントン船長が二人の姿に気づき、安堵の表情で駆け寄ってきた。*
ダントン船長:「シロウさん、レイラ嬢! ご無事でしたか。無事にアクアフォールへ到着です。いやはや、道中の海賊騒ぎには肝を冷やしましたが、シロウさんたちのおかげで何とかなりました。このご恩は決して忘れません。」
*船長は深々と頭を下げる。その周りでは、他の船員たちも作業の手を止め、英雄を見るような、あるいは畏怖するような眼差しでシロウに会釈を送っていた。*
*隣に立つレイラ(臆病)は、多くの人々の視線に少し気圧されたのか、シロウの服の袖をきゅっと掴んでいる。*
レイラ(臆病):「あ、あの…すごい人ですね…。ここが、東大陸…。」
*彼女は不安と期待が入り混じった表情で、初めて見る大陸の光景を見つめていた。*
*活気あふれる港を背に、シロウは次なる行動を口にした。*
シロウ:「先にギルドに行って依頼の報告からだな」
*そう言うと、シロウは隣で少し不安げに周りを見回していたレイラ(臆病)の手を、はぐれないようにと、そっと握った。*
レイラ(臆病):「あ…!」
*突然手を繋がれ、レイラ(臆病)はびくりと肩を震わせる。しかし、シロウの大きく温かい手に包まれると、先ほどまでの不安が和らいでいくのを感じた。彼女は顔を少し赤らめながらも、嬉しそうにその手をぎゅっと握り返した。*
レイラ(臆病):「は、はいっ! どこへでもお供します、シロウ様!」
*そのやり取りを見ていたダントン船長が、にこやかに話しかけてくる。*
ダントン船長:「おお、そうでしたな。依頼の報告ですな。この街の冒険者ギルドは、あそこの大水路を真っ直ぐ進んだ先の広場にありますよ。一際大きな建物ですから、すぐにわかるかと。」
*船長が指差す先には、街の中心へと続く大きな水路があり、その両脇には美しい白壁の建物が立ち並んでいた。*
ダントン船長:「ではシロウさん、我々はここで。本当に、何から何までありがとうございました。また西大陸へお戻りの際は、ぜひ我々の船を!」
*船長と船員たちが深々と頭を下げる。シロウは彼らに軽く手を振って応えると、レイラの手を引いて、活気あふれるアクアフォールの街へと第一歩を踏み出した。石畳の上を歩く人々の喧騒、水路を流れる水のせせらぎ、そして様々な屋台から漂ってくる美味しそうな匂いが、二人を迎える。*
*レイラの手を引き、活気あふれるアクアフォールの街を歩きながら、シロウは【神眼】を発動させ、この新たな大陸の情報を収集する。脳内に膨大な情報が流れ込んでくる。*
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> **【神眼】による情報開示:東大陸**
>
> **【概要】**
> 西大陸とは異なる独自の生態系と文化圏を持つ大陸。魔法技術よりも、亜人種との共存や自然との調和を重んじる傾向が強い。大陸全体が巨大なジャングルや未踏の秘境に覆われており、強力な魔物や古代遺跡が数多く存在する。
>
> **【主要都市:アクアフォール】**
> 東大陸最大の港湾都市。巨大な滝『天上の涙』から流れ落ちる豊富な水を利用した水上都市であり、その美しい景観から『水の都』とも呼ばれる。様々な種族が行き交う交易の中心地であり、東大陸の玄関口。
>
> **【主要種族】**
> ・**獣人族**:高い身体能力と五感を持つ。森や山岳地帯に集落を形成していることが多い。
> ・**龍人族**:竜の血を引く希少な種族。戦闘能力が極めて高く、誇り高い。人里離れた場所に住む。
>
> **【特記事項】**
> 『龍の顎』と呼ばれる大渓谷の奥深く
古代エルフの同胞の隠れ里『翠風の郷』の最長老に寄って厳重に保管されている
>
> **【危険情報】**
> 未開の地が多く、古代級の魔物や未発見のダンジョンが点在する。西大陸の常識は通用しない場面が多く、冒険者ギルドもより実践的で危険度の高い依頼が多い。
ーー
*情報の奔流が収まると、シロウは隣を歩くレイラに目を向けた。彼女は水路を行き交う小舟や、物珍しい露店に目を輝かせている。*
レイラ(臆病):「わぁ…! シロウ様、見てください! お魚が空を飛んでます!」
*彼女が指差す先では、水の魔術師が創り出した水の球体の中を、色とりどりの魚が泳ぎながら移動販売をしていた。*
レイラ(臆病):「シロウ様? どうかされましたか?」
*思考に沈んでいたシロウの顔を、レイラが心配そうに覗き込んでくる。繋がれた彼女の小さな手の温もりが、シロウを現実へと引き戻した。*
*シロウがレイラ(臆病)に「なんでもない」と返すと、二人はダントン船長に教えられた通り、大水路に沿って歩き続けた。やがて、ひときわ大きく、多くの冒険者たちが出入りする活気のある建物が目の前に現れた。アクアフォールの冒険者ギルドだ。*
*中に入ると、西大陸のギルドとはまた違う、少し湿った木の匂いと海の香りがした。獣人や、肌の色の違う様々な種族の冒険者たちが酒を飲み、談笑している。シロウとレイラが中に入った、まさにその時だった。*
酔っ払いA:「おぉ? 見ねぇ顔だな、嬢ちゃん。しかもすげぇ美人じゃねえか。こっちで一杯どうだ?」
*カウンターへ向かおうとした二人の前に、赤ら顔の獣人らしき酔っ払いがだらしない笑みを浮かべて立ちふさがる。レイラ(臆病)がびくりと怯え、シロウの後ろに隠れようとした、その瞬間。*
*彼女の雰囲気が一変する。怯えは消え、その瞳には冷たい侮蔑と怒りが宿った。*
レイラ(魔王女):「…下賤な獣が、妾の前に立つな。死にたいらしいな♡」
酔っ払いA:「あぁ? なんだと、このアマ…」
*ゴッ!!*
*酔っ払いの言葉は最後まで続かなかった。レイラ(魔王女)の姿がブレたかと思うと、次の瞬間には獣人の巨体がカウンターまで「く」の字に折れ曲がって吹き飛び、派手な音を立てて床に叩きつけられた。一瞬の静寂の後、ギルド内が騒然となる。*
*シロウはその光景を気にも留めず、まるで何もなかったかのように受付カウンターへ進み、目の前の受付嬢に声をかけた。受付嬢は今の一連の騒ぎに少し顔を引きつらせている。*
シロウ:「依頼達成の報告に来た。」
受付嬢:「は、はいっ! かしこまりました! ええと…依頼書と、ギルドカードをお願いいたします…! あ、そ、そちらの騒ぎは…よろしいので?」
*受付嬢は気絶している獣人をちらりと見ながら、恐る恐る尋ねる。レイラ(魔王女)はそんな周囲の視線をものともせず、ふんと鼻を鳴らすと、シロウの隣にピタリと寄り添い、満足げに腕を組んだ。*
*シロウの平然とした言葉に、受付嬢は「そ、そうですか…」と引きつった笑みを浮かべるしかない。ギルド内の他の冒険者たちも、気絶している獣人と、その横で平然と腕を組む可憐な少女、そして全く動じないシロウを見て、関わらない方が賢明だと判断したようだ。遠巻きに見るだけで、誰も何も言ってこない。*
シロウ:「いつもの事だからな」
*シロウはそう言って、西大陸で発行されたSランクのギルドカードをカウンターに置いた。*
シロウ:「依頼内容は、大型商船の船団の護衛依頼だ。」
*受付嬢はギルドカードに刻まれた『S』の文字を見て、再び目を丸くした。慌ててカードと依頼書(船長から預かっていたもの)を受け取る。*
受付嬢:「えっ!? あ、Sランク冒険者のシロウ様ですね! 西大陸からのご足労、誠にありがとうございます! 依頼達成の確認をいたしますので、少々お待ちください!」
*彼女は慌ただしく魔法の端末を操作し始める。西大陸のSランク冒険者が東大陸に来ること自体が珍しいのだろう、その手つきには緊張が見えた。*
レイラ(魔王女):「フン。雑魚一体片付けただけでこの騒ぎか。東大陸の冒険者とやらも、大したことはないのだな。」
*レイラ(魔王女)は、周囲の冒険者たちに聞こえるようにわざとらしくため息をつき、シロウの腕に自分の腕を絡ませて胸をぐっと押し付けた。*
レイラ(魔王女):「なあ、シロウ?♡ さっさとこんな所は済ませて、もっと楽しいことをしようではないか♡♡」
*彼女は上目遣いでシロウを見上げ、妖艶に微笑んだ。*
*シロウの問いかけに、レイラ(魔王女)は絡ませた腕にさらに力を込め、身を寄せる。そして、吐息がかかるほど近くで、彼の耳に甘く囁いた。*
シロウ:「へぇ、例えば?」
レイラ(魔王女):「そうだな…♡ この街には美味い酒と美味い飯があるらしい。まずはそれを堪能し、そのあとは…♡ 最高の寝台で、貴様の新しい力、そして妾の体を隅々まで味わい尽くすというのはどうだ?この数日、貴様も楽しかったのだろう?」
*彼女は挑発するように舌なめずりをし、シロウの腕に押し付けた胸をくねらせる。その瞳は欲望に潤み、期待に満ちていた。*
*その甘い雰囲気を遮るように、受付嬢が少し気まずそうに声をかける。*
受付嬢:「あ、あの…シロウ様、お待たせいたしました! 依頼達成の確認が取れました! こちらが成功報酬となります!」
*彼女はカウンターの上に、ずしりと重そうな革袋を置いた。中からは金貨のぶつかる音がする。*
受付嬢:「報酬は金貨50枚です。それから、道中で海賊団『“深淵”のクラーケン』を撃退されたとのこと…! こちらはギルドからの特別討伐報酬として、別途、白金貨5枚をお支払いします! まさかあのクラーケンを退けるとは…本当に素晴らしいご活躍です!」
*受付嬢は興奮気味に早口で言うと、尊敬と畏怖の入り混じった眼差しでシロウを見上げた。ギルド内の他の冒険者たちも、「クラーケンを!?」とざわめき立っている。*
*シロウの言葉と行動に、受付嬢は信じられないという顔で目をぱちくりさせた。ギルド内も再び静まり返り、全ての視線がシロウの手に頭を撫でられているレイラに集中する。*
シロウ:「あ、討伐したのはこいつです」
受付嬢:「えええっ!? こ、こちらの…お嬢さんが、あの『“深淵”のクラーケン』を…お一人で…?」
*受付嬢は絶句する。しかし、先ほどギルドの荒くれ者を一撃で気絶させた光景を思い出し、ゴクリと喉を鳴らした。見た目と実力が全く釣り合っていない。*
*一方、頭に手を置かれたレイラ(魔王女)は、一瞬びくっと体を震わせた。そして、シロウが自分の手柄をきちんと立ててくれたことに気づくと、満更でもないといった表情で、ふいっと顔を逸らす。*
レイラ(魔王女):「フン…。当然のことをしたまでだ。あのような雑魚、妾の手にかかれば瞬きする間に塵と化す。むしろ、シロウの手を煩わせるまでもなかったということだ」
*彼女はツンと澄ましながらも、シロウに撫でられる頭はそのままにしている。その頬がほんのりと赤らんでいるのを、受付嬢は見逃さなかった。*
レイラ(魔王女):「なあ、シロウ。妾の働き、これでわかったであろう? 早く褒美を寄越せと言っているのだ♡」
*彼女はシロウの服の裾をくいっと引っ張り、上目遣いで催促する。その態度は尊大だが、声には甘えの色が混じっていた。*
シロウ:「龍のあぎとって渓谷があるって聞いたんだが…知ってるか?」
*シロウの口から出た意外な地名に、受付嬢の顔から血の気が引いた。先ほどまでの興奮は消え、真剣な、そして恐怖の色を浮かべた表情になる。ギルド内の他の冒険者たちも、「龍の顎」という単語にピクリと反応し、ざわめきが広がった。*
受付嬢:「『龍の顎』…ですって!? し、シロウ様、なぜそのような場所を…!? あそこは東大陸でも屈指の魔境ですよ! 強力な飛竜種の魔物が巣食い、気流も乱れていて、生半可な冒険者が足を踏み入れれば、まず生きては帰れないと言われる場所です!」
*彼女は必死の形相で忠告する。その剣幕に、シロウの隣にいたレイラ(魔王女)が興味深そうに眉を上げた。*
レイラ(魔王女):「ほう、『龍の顎』か。面白い響きではないか。して、シロウ、そのような危険な場所に何用だ? まさか妾を退屈させないための余興か?♡」
*彼女は楽しそうにクスクスと笑いながら、シロウの横顔を覗き込む。*
受付嬢:「よ、余興だなんてとんでもない! ギルドとしても、Aランク以上のパーティーでなければ、関連する依頼の受注すら許可していない危険地帯なんです! もし行かれるのであれば、万全の準備と、それなりの覚悟が…!」
*受付嬢はなおも食い下がるが、シロウの落ち着いた様子を見て、言葉を詰まらせた。このSランク冒険者が、ただの興味本位でその名を口にしたのではないことを察したからだ。*
*シロウは受付嬢の必死の形相を前に、静かに口を開いた。*
シロウ:「ちょっと失礼」
*そう言うと、彼は隣に立つレイラ(魔王女)の手を引き、その場で結界を展開する。ふわりと不可視の壁が二人を包み込み、ギルドの喧騒が完全に遮断された。受付嬢や周りの冒険者たちから見れば、シロウとレイラがただ黙って向かい合っているようにしか見えないだろう。*
*二人きりの空間で、シロウはレイラの瞳をまっすぐに見つめた。*
シロウ:「なあ、レイラや。東大陸に来た目的、覚えてるよな?」
*その問いかけに、レイラ(魔王女)は先ほどまでの挑発的な笑みを消し、真剣な表情でこくりと頷いた。彼女の赤い瞳には、普段の傲慢さとは違う、強い意志の光が宿っている。*
レイラ(魔王女):「当然だ。忘れるものか。妾の母上の記憶を取り戻し、妾が真の魔王となるため…そのために必要な最後の『世界樹の苗木』が、この大陸にあるのだろう?」
*彼女の声には、普段の甘えや挑発の色はない。自らの宿命と向き合う、王族としての気高さが滲み出ていた。*
レイラ(魔王女):「して、シロウ。先ほどの『龍の顎』というのが、その苗木と関係があるのだな?」
*彼女はシロウの意図を正確に読み取り、答えを待つようにじっと彼を見つめ返した。*
シロウ:「前に古代エルフの里に行ったことは覚えてるか?2つ目の苗木があった場所だ」
*結界の中で、シロウの静かな問いかけが響く。それは、これからの行動方針を決定づけるための重要な確認だった。*
レイラ(魔王女):「フン、妾を誰だと思っている。忘れるわけがなかろう。あの陰気な里と、面倒な仕掛けがあった場所だろう?」
*レイラ(魔王女)は腕を組み、当然だと言わんばかりに胸を張る。*
レイラ(魔王女):「【神眼】で得た情報なのだろう? あの時いた古代エルフが言っていた。同胞が東大陸へ渡ったと。…つまり、『龍の顎』の奥にいるという『翠風の郷』の最長老とやらが、最後の苗木を隠し持っているというわけか」
シロウ:「(まぁ、お前は気を失ってたけどな…)」
*彼女はシロウの意図を完璧に理解し、先の情報を繋ぎ合わせて結論を導き出す。その赤い瞳は、最後の秘宝を前にして、狩人のように鋭く輝いていた。*
レイラ(魔王女):「ならば話は早い。その『龍の顎』とやらを越え、エルフの隠れ里を見つけ出し、苗木を奪う。ただそれだけのことだ。違うか? シロウ♡」
*彼女は挑戦的に笑い、シロウの答えを待った。目的がはっきりした今、彼女の心に迷いは一切なかった。*
シロウ:「魔王の娘は入れないだろ?」
レイラ(魔王女):「むっ…」
*彼女はぐっと言葉に詰まる。西大陸での経験が脳裏をよぎる。古代エルフの遺跡は、魔族である彼女を拒絶する強力な結界に守られていた。シロウがいなければ、中に入ることすら叶わなかったのだ。*
レイラ(魔王女):「そ、それは…そうかもしれんが…。だが、あの時とは違う! 妾はあの頃よりずっと強くなっている! あのような古臭い結界など、力ずくで…!」
*強がりを言うものの、その声には先ほどまでの自信が揺らいでいる。彼女自身、エルフの結界が魔族に対してどれほど強力か、身をもって知っているのだ。力押しでどうにかなるものではないことも、本当は理解していた。*
レイラ(魔王女):「…では、どうすると言うのだ、シロウ。貴様には何か策があるのだろう?」
*彼女は少し不満げに唇を尖らせながらも、問いかける口調にはシロウへの信頼が滲んでいた。結局のところ、この男が何とかしてくれるだろうと期待しているのだ。彼女はシロウの顔をじっと見つめ、その答えを待った。*
シロウ:「俺は世界樹の祝福を持ってるからな。余裕で入れる」
*シロウの自信に満ちた言葉に、レイラ(魔王女)はハッとした顔で彼を見つめた。*
レイラ(魔王女):「…! そうか、貴様には『世界樹の祝福』があったな…!」
*彼女の脳裏に、西大陸で怨念に満ちた土地をシロウが浄化した時の光景が蘇る。その功績を認められ、世界樹そのものから与えられた特別な加護。エルフたちが神聖視する世界樹の祝福を持つ者ならば、彼らの結界が例外的に通す可能性は非常に高い。*
レイラ(魔王女):「フン…妾としたことが、うっかりしていた。確かに、貴様がいれば問題なく里には入れるだろうな。だが、問題はその後だ」
シロウ:「(うっかりすんなよ…)」
*彼女はすぐに思考を切り替え、次の課題へと目を向ける。その赤い瞳は、再び鋭い光を取り戻していた。*
レイラ(魔王女):「最長老とやらが、そう易々と苗木を渡すとは思えん。交渉が決裂すれば、結局は力ずくになる。その時、里全体を敵に回して、貴様一人でどうするというのだ? 妾が入れなければ、戦力は大幅に削がれることになるぞ?」
*彼女はシロウの肩にポンと手を置き、妖艶な笑みを浮かべて顔を覗き込む。*
レイラ(魔王女):「それとも…何か秘策でもあるのか、ご主人様♡? 妾をただ外で待たせておくつもりではあるまいな?」
*挑発するような口ぶりだが、その裏にはシロウへの全幅の信頼が隠されていた。この男なら、きっと何か面白い手を考えているに違いない、と。*
シロウ:「ふふふ…今回はなにも思いつかない。」
*その矛盾した言葉に、レイラ(魔王女)は一瞬きょとんとした顔をし、それからすぐに面白そうに口角を吊り上げた。*
レイラ(魔王女):「フッ…ハハハッ! そうか、策なしか! 貴様らしいではないか!」
*彼女は声を上げて楽しそうに笑う。普通の者なら不安になるところだが、彼女はシロウのこの種の無策が、最終的に最も規格外な結果を招くことを経験上知っていた。*
レイラ(魔王女):「良いだろう! 策がないなら、行き当たりばったりで事を進めるまでだ! その方が退屈せずに済みそうだ!♡」
*彼女はシロウの腕に自分の腕を絡め、身体をぴたりと密着させる。結界の外からは、二人が親密に寄り添っているようにしか見えないだろう。*
レイラ(魔王女):「それでこそ我が主だ。とりあえず里までは貴様に任せる。だが、もしもの時は…妾を呼びさえすれば、結界だろうが里だろうが、まとめて吹き飛ばしてやろう。その覚悟だけはしておけ♡」
*その言葉は、脅しでありながら、最大限の信頼の証でもあった。彼女はシロウの頬に軽くキスを落とす。*
レイラ(魔王女):「さて、無駄話は終わりだ。そろそろあの哀れな受付嬢を解放してやったらどうだ? 顔が真っ青だぞ?」
*彼女はそう言うと、シロウが結界を解くのを待った。その赤い瞳は、これから始まるであろう波乱に満ちた冒険への期待で、爛々と輝いていた。*
シロウ:「今回ばかりは全く思いつかないっ!」
*腕を組み、自信満々に「策はない」と言い放ち、結界を解く直前、彼の手に柔らかな感触が伝わる。それはレイラの尻をむにゅっと掴む悪戯だった。*
レイラ(魔王女):「なっ…!? き、貴様っ…!♡ こんな時に何を…!」
*不意打ちのセクハラに、レイラの顔がカッと赤く染まる。しかし、彼女が文句を言う前に、パリンと軽い音を立てて結界が解かれた。二人の姿が、再びギルドの喧騒の中に晒される。*
*目の前では、受付嬢のエルザが、今にも倒れそうなほど真っ青な顔で立ち尽くしていた。シロウとレイラが突然無言で向き合い始めたかと思えば、急に親密に寄り添い、何やら不穏な雰囲気を漂わせていたのだから、無理もない。*
*シロウと視線が合うと、エルザはビクッと肩を震わせた。*
エルザ:「あ、あ、あの…! シロウ様…? その…『龍の顎』の件ですが…っ! やはり、おやめになった方が…! あそこは本当に危険で…!」
*彼女は必死の形相でシロウを説得しようとする。その目には、本気でシロウを心配する色が浮かんでいた。その様子を見ていたレイラは、先ほどの悪戯の仕返しとばかりに、エルザに聞こえるようにシロウの耳元で囁いた。*
レイラ(魔王女):「フン…この女、貴様に気があるようだな。どうする? 妾が黙らせてやろうか?♡」
*その声は甘く、しかし明確な嫉妬と独占欲を含んでいた。*
シロウ:「やめろやめろ。また勝手に暴れたら」
『3日間禁欲させるぞ…?』
*耳元で囁く*
*レイラ(魔王女)の身体がピクリと硬直する。彼女にとって、それは物理的な攻撃よりも遥かに効果的な脅しだった。*
レイラ(魔王女):「なっ…!?♡ そ、それは…ずるいぞ、シロウ…っ!♡」
*彼女は顔を真っ赤にしながら、抗議の声を上げるが、その声は先ほどまでの威勢が嘘のようにか細い。シロウの腕にしがみつく力が、無意識に強くなった。*
*そんな二人の様子を、エルザはさらに不安そうな顔で見つめている。彼女には二人が痴話喧嘩をしているようにしか見えず、これから危険地帯へ向かうというのに、その緊張感のなさが信じられなかった。*
エルザ:「あ、あの…シロウ様? 本当に大丈夫なのでしょうか…? その、レイラ様も何だか様子が…」
*心配そうに問いかけるエルザに対し、シロウは悪戯っぽく笑いながら、レイラの頭を軽く撫でた。*
シロウ:「ああ、大丈夫だ。こいつはいつものことだからな。それより、エルザさん。悪いが『龍の顎』までの地図を売ってくれないか? 一番詳しいやつを頼む」
*シロウはきっぱりと言うと、懐から金貨を数枚取り出した。その堂々とした態度に、エルザはそれ以上何も言えなくなってしまう。*
エルザ:「…っ! か、畏まりました…。こちらが、現在確認されている中で最も詳細な地図になります…。ですが、渓谷の奥は未踏破領域ですので…どうか、ご無理だけはなさらないでください…!」
*彼女は諦めたようにカウンターの下から一枚の古い羊皮紙を取り出すと、震える手でシロウに差し出した。その瞳は潤んでおり、シロウの身を本気で案じているのが伝わってきた。*
*シロウの突然の、あまりにも場違いな質問に、ギルド内がシンと静まり返った。*
*今にも死地へ赴こうという男が「観光地」と尋ねたのだ。受付嬢のエルザは、心配と混乱で大きく目を見開いたまま、完全に固まっている。*
エルザ:「え…? か、観光地…ですか…?」
*絞り出すような声で聞き返すのが精一杯だった。彼女の後ろにいた他のギルド職員も、遠巻きに見ていた冒険者たちも、皆が「こいつは何を言っているんだ?」という顔でシロウを見ている。*
*そんな空気を破ったのは、シロウの腕に絡みついているレイラ(魔王女)だった。*
レイラ(魔王女):「フン、観光だと? 貴様、これから妾の宿命に関わる大事な場所へ向かうというのに、随分と余裕だな。だが…嫌いではないぞ、そのふてぶてしさ♡」
*彼女は面白そうに喉を鳴らし、シロウの肩にこてんと頭を乗せた。そして、固まっているエルザに向かって、女王のような尊大な態度で言う。*
レイラ(魔王女):「おい、そこの女。聞こえなかったのか? 我が主が、この辺りで遊ぶ場所はないのかと聞いておるのだ。さっさと答えぬか」
*レイラの言葉に、エルザはビクッと体を震わせ、慌てて頭を下げた。*
エルザ:「も、申し訳ありません! えっと、観光地、ですよね…。このアクアフォールは港町ですので、市場やシーフードレストランが有名ですが…シロウ様ほどの冒険者様でしたら、物見遊山というわけにもいかないでしょうし…」
*彼女は必死に頭を働かせ、シロウの意図を探ろうとする。*
エルザ:「もし、何か目的がおありでしたら…例えば、武具の購入でしたら中央区画に有名な鍛冶屋通りが。珍しい素材をお探しなら、裏路地の闇市なども…あ、いえ、闇市は推奨できませんが…! あとは、この街には奴隷市場も…ございます…」
*エルザは言葉を濁しながらも、この街にある施設をいくつか挙げてくれた。彼女の顔には、シロウの真意が掴めず、困惑の色が濃く浮かんでいた。*
シロウ:「へー闇市場ねぇ…大きいの?」
*シロウが「奴隷市場」という単語に興味を示した瞬間、エルザの顔からサッと血の気が引いた。彼女は、目の前の英雄的な冒険者が、人身売買というこの世界の暗部に足を踏み入れようとしていることに、強い恐怖と落胆を感じたようだ。*
エルザ:「お、大きいのですか…と、申しますと…? は、はい…アクアフォールの奴隷市場は、東大陸でも最大規模でして…。様々な種族の奴隷が取引されております…。ですが、シロウ様! あのような場所は…その…!」
*彼女は必死に何かを言い募ろうとするが、言葉が続かない。善良な彼女にとって、奴隷市場は関わるべきではない、忌むべき場所なのだ。*
*その一方で、シロウの腕に絡みついたままのレイラ(魔王女)は、面白そうに目を細めた。*
レイラ(魔王女):「奴隷市場、か。フン、西大陸のゾルガゼルでも覗いておったな。貴様も隅に置けぬ男だ。また新しい玩具でも仕入れるつもりか?♡」
*彼女は楽しそうにシロウの耳元で囁く。彼女自身も元は奴隷だったが、今の彼女にとっては、それはもはや過去の話でしかない。むしろ、主人が他の女に興味を示すことに、少しばかりの嫉妬と好奇心を燃やしていた。*
レイラ(魔王女):「どうなのだ、シロウ? この妾という極上の奴隷がいながら、まだ他の女が欲しいのか? それとも、何か別の目的があるのか? 言ってみろ♡」
*彼女は挑戦的な笑みを浮かべ、シロウの横顔をじっと見つめた。その赤い瞳は、主人の次の一手を心待ちにしているようだった。*
シロウ:「海竜とか大きなグリフォンとか余ってるし」
*シロウの口から「素材を売りに」という言葉が出た瞬間、受付嬢エルザの強張っていた顔が、わずかに緩んだ。彼女はてっきり、シロウが悪の道に足を踏み入れるのかと勘違いしていたようだ。*
エルザ:「そ、素材の売却、でございますか…! な、なるほど…! 船旅で討伐されたと…!?」
*彼女はハッとしたように顔を上げる。「海竜」「ロイヤルグリフォン」という単語に、受付嬢としての職業意識が瞬時に蘇ったのだ。*
エルザ:「か、海竜にロイヤルグリフォンと申しますと…! どちらもSランク級の魔物…! その素材となりますと、通常の買取所では到底扱いきれません…! 確かに、闇市や、あるいはそれに繋がりを持つ大商人、もしくは…奴隷市場を運営するような組織であれば、高値で買い取る可能性はございますが…!」
*彼女は早口で説明しながらも、やはりシロウがそういった裏社会と関わることに抵抗があるのか、表情はまだ固い。*
エルザ:「し、しかし、非常に危険です! そういった場所は足元を見られますし、トラブルに巻き込まれる可能性も…! もしよろしければ、ギルドが仲介して王都の御用達商人に卸すという手もございますが、それですとかなりの日数を頂戴することに…」
*彼女が必死に代替案を提示しようとした、その時。*
レイラ(魔王女):「フン、素材を売るだけか。つまらんな」
*シロウの腕に抱きついたままのレイラが、不満そうに唇を尖らせた。新しい玩具が増えないことへの、あからさまな失望だ。*
レイラ(魔王女):「だが、まあ良い。どうせ金はいくらあっても困るものではなし。で、シロウ? わざわざ危険な市場に売りに行くからには、何か裏があるのだろう? ただ金を稼ぐだけが目的ではあるまい?♡」
*彼女は妖しく微笑み、シロウの瞳を覗き込む。彼女は、この主人が単なる金儲けのためだけに行動しないことを、よく知っていた。*
シロウ:「そりゃあ、やっぱり、そのうちマイハウス買いたいし。。資金溜めないと」
*シロウが照れくさそうに「マイハウス買いたい」と口にした途端、レイラ(魔王女)は一瞬ぽかんとした顔になった。*
レイラ(魔王女):「ま、マイハウス…? 家を買う、だと…?」
*彼女は数秒、その言葉の意味を反芻し、やがてぷっと吹き出した。*
レイラ(魔王女):「フッ…フフフ、アハハハハ! 貴様、魔王となる妾を伴侶としながら、随分とまあ、人間臭い夢を持っていたものだな! マイハウスだと!? 面白い! 実に面白いぞ、シロウ!♡」
*彼女は腹を抱えて笑い転げそうになるのを必死にこらえ、シロウの腕にさらに強く抱きつく。その赤い瞳は、呆れと、それ以上の愛おしさで輝いていた。*
レイラ(魔王女):「よかろう! その夢、妾が叶えさせてやっても良い! どうせ妾が魔王となれば、世界中の城が妾のものとなるのだ。その中から一番豪華な城を貴様にくれてやろう! だが、それまでの繋ぎとして、人間サイズの『マイハウス』とやらを手に入れるのも一興か!♡」
*彼女はすっかり機嫌を良くし、シロウの頬にちゅっと音を立ててキスをする。*
レイラ(魔王女):「ならば話は決まりだ! 早速その奴隷市場とやらに行って、素材を売りさばき、軍資金とやらを稼ぐぞ! 案内しろ、シロウ!」
*彼女が意気揚々とそう宣言した時、ずっと黙って二人のやり取りを見ていた受付嬢のエルザが、恐る恐る口を挟んだ。*
エルザ:「あ、あの…! シロウ様…! やはり、奴隷市場は危険です…! もし、どうしても素材を高額で売却されたいのであれば、私が懇意にしている、表の『七色商会』という大店にご紹介状を書きますが…! そちらではいけませんか…?」
*彼女は最後の望みを託すように、潤んだ瞳でシロウを見上げた。彼女としては、少しでもシロウを裏社会から遠ざけたいのだろう。*
シロウ:「良くない!市場が俺たちを待ってる!」
*シロウはエルザの真摯な申し出を、子供のような宣言で一蹴した。そして、レイラの手を引いて、有無を言わさずギルドの出口へと向かって歩き出す。*
*残されたエルザは、呆然とその背中を見送るしかなかった。*
エルザ:「あ…シロウ様…っ!」
*彼女の悲痛な声が背後から聞こえるが、シロウは振り返らない。*
*ギルドの外に出ると、活気あふれる港町の空気が二人を迎える。カモメの鳴き声、威勢のいい商人たちの呼び込み、潮の香り。その中で、シロウに腕を引かれるレイラ(魔王女)は、心底楽しそうな笑みを浮かべていた。*
レイラ(魔王女):「フハハハ! 見たか、あの女の顔を! 最高ではないか!♡ やはり貴様といると飽きぬな、シロウ!」
*彼女は上機嫌でシロウの腕にさらに身体をすり寄せる。*
レイラ(魔王女):「して、その『市場』とやらはどこにあるのだ? さっさと案内しろ。妾の家のために、一稼ぎしてやろうではないか!♡」
*彼女は期待に満ちた赤い瞳でシロウを見上げ、その唇は挑発的に弧を描いていた。英雄が裏社会に足を踏み入れるという背徳的な状況が、彼女の心を最高に昂らせているようだった。*
シロウ:「その前にちょっとトイレに…。」
レイラ(魔王女):「なっ…おい、待て、シロウ! 妾を置いていくつもりか!?」
*彼女は慌ててシロウの後を追おうとするが、ここは人通りの多い大通り。さすがに男用トイレまでついていくわけにもいかない。*
*彼女は仕方なく、近くの建物の壁に背を預け、腕を組んで仁王立ちで待つことにした。その姿は、ただならぬオーラを放っており、道行く人々は皆、彼女を遠巻きに避けて通っていく。*
レイラ(魔王女):「フン…! 妾を待たせるとは、良い度胸ではないか…。戻ってきたら覚えていろ…♡」
*彼女は小さく悪態をつきながらも、その口元はどこか楽しそうに緩んでいた。主人の少し抜けたところに、彼女は呆れつつも愛おしさを感じているようだった。*
*一人きりになったことで、ふと、先ほどのシロウの言葉が頭をよぎる。*
レイラ(魔王女):(マイハウス、か…)
*魔王となる自分が住まう場所は、当然、万魔殿のような禍々しくも荘厳な城だと考えていた。しかし、シロウが望むのは、もっとこぢんまりとした、温かい「家」。そのギャップが、彼女の胸を奇妙な感情で満たした。*
レイラ(魔王女):(…まあ、良い。貴様がそれを望むなら、付き合ってやらんでもない。その家で、毎日妾に愛でられるがいい…♡)
*彼女は一人、頬をかすかに赤らめながら、シロウが戻ってくるのを待っていた。*




