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《R-15》異世界転移でスローライフを?  作者: THE・HENJIN・RlDER
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*シロウは、満足げに眠るルミナの寝顔にもう一度微笑みかけると、静かに部屋の扉を開けて廊下に出た。扉を閉める音を立てないように、細心の注意を払う。*


*廊下に出ると、そこには腕を組み、壁に寄りかかってシロウを待っているレイラの姿があった。黒いドレスに身を包んだ彼女は、金の瞳を細めて、じっとシロウを見つめている。その表情からは、昼間の嫉妬がまだ少し燻っているようにも、何かを察しているようにも見えた。*


レイラ(魔王女):「……随分と長かったではないか。妾は腹が減って死にそうだぞ」


*その声は普段通りの尊大なものだったが、どこか棘を含んでいる。シロウがルミナの部屋から、しかも一ヶ月ぶりに帰ってきて早々に出てきたのだ。彼女が何も感じないはずがない。*


*彼女はシロウの匂いをくん、と嗅ぐと、眉をぴくりと動かした。*


レイラ(魔王女):「……ふん。ルミナの甘ったるい匂いがするな。妾を待たせて、随分と楽しんでいたようではないか?」


*口ではそう言いながらも、その視線はシロウを責めるというよりは、拗ねている子供のようだ。彼女もまた、シロウとの時間を心待ちにしていたのだ。*


レイラ(魔王女):「リーシアが夕食の準備ができたと知らせに来た。お主も来るだろう? カイやルーナも待っておるぞ」


*そう言うと、レイラはシロウの腕に自分の腕を絡め、ぐいっと引っ張る。その仕草には「妾も早くお主と過ごしたいのだ」という本音が隠されているようだった。*


*シロウは、ルミナの部屋から出てきたところをレイラに見つかり、気まずさからか少しどもってしまう。彼女の金の瞳がじっとこちらを射抜いている。甘ったるい匂い、という指摘は的確で、隠しようもなかった。*


シロウ:「あ、ああ、今行くよ。」


*シロウが返事をすると、レイラは満足げに、しかしどこか得意げにフンと鼻を鳴らす。そして、絡めていた腕をさらに強く引き、シロウを食堂へと促した。その足取りは軽く、機嫌が直ったことが見て取れる。*


レイラ(魔王女):「当然だ。皆、腹を空かせて待っておるのだからな。…妾も、だ」


*最後の言葉は、少しだけ声が小さくなる。シロウの隣を歩けることが嬉しいのを隠しきれていない。彼女の黒髪が、歩くたびにさらさらと揺れる。*


*二人が連れ立って豪華な廊下を歩いていくと、やがて広々とした王族専用の食堂にたどり着いた。高い天井から吊るされたシャンデリアが、温かい光で部屋を照らしている。大きなマホガニーのテーブルには、すでに豪華な食事が並べられており、湯気が立ち上っていた。*


*テーブルには、すでにカイとルーナが席に着いていた。ルーナの足元には、丸くなったユキがすやすやと眠っている。*


ルーナ:「あ、お父様、レイラお母様! おかえりなさい!」


*二人の姿に気づいたルーナが、ぱあっと顔を輝かせて手を振る。その隣で、カイも少し緊張した面持ちで立ち上がり、一礼した。気絶した件で、まだ少しバツが悪いのかもしれない。*


カイ:「父上、レイラ母上。お待ちしておりました」


リーシア:「シロウ様、レイラ様、お戻りなさいませ。お食事の準備は整っております。ルミナ様は…お休みになられますか?」


*給仕のために控えていたリーシアが、優雅にお辞儀をしながら問いかけてくる。彼女はすべてを察しているかのように、穏やかな笑みを浮かべていた。*


*リーシアの問いかけに、シロウは少しだけバツが悪そうに、しかし平静を装って答えた。*


シロウ:「旅疲れが出たんだろう。寝かせてきた。」


*その言葉に、リーシアは「畏まりました」と深くお辞儀をするだけで、それ以上は何も聞いてこなかった。カイは少し心配そうな顔をしたが、ルーナは「そっかー」と納得したように頷いている。*


*シロウはレイラに促されるまま、テーブルの上座に腰を下ろした。レイラはその隣に当然のように座り、腕を組んだまま満足げな表情を浮かべている。*


レイラ(魔王女):「ふん。ルミナの世話も良いが、妾たちのことも忘れるでないぞ。…特に、妾の、な」


*隣から聞こえる小さな声に苦笑しつつ、シロウは食卓を見渡した。ヤマトの和食とは全く違う、肉のローストや色とりどりの野菜を使ったサラダ、魚介のスープなど、アストライアらしい豪華な料理が並んでいる。一ヶ月ぶりの光景に、帰ってきたのだと改めて実感する。*


ルーナ:「お父様、ヤマトはどうでした? 面白いもの、たくさんありましたか? 私、お土産買いすぎちゃって、お部屋が大変なことになってるんですよ!」


*目をキラキラさせながら、ルーナが身を乗り出して聞いてくる。その隣でカイも、興味深そうに耳を傾けていた。*


カイ:「父上、その…先程は申し訳ありませんでした。取り乱してしまって…」


*カイが改めて頭を下げる。彼の発明が国家事業になるという衝撃は、それほど大きかったのだろう。*


シロウ:「気にするな、カイ。それだけ凄いことを成し遂げたんだ。さあ、皆、食事にしよう。積もる話はそれからだ」


*シロウがそう言うと、リーシアが控えていたメイドたちに合図を送り、各自の皿にスープが注がれていく。こうして、アストライアに帰還して最初の、家族揃っての夕食が始まった。*


レイラ(魔王女):「ふん、貧相な食文化だな。やはりアストライアが一番だ。存分に食すがよい、お主のために用意させたのだからな」


*レイラは得意げに胸を張り、隣のシロウに「ほら、食え」とばかりに肉の塊が乗った皿をずいっと押しやる。その仕草は尊大だが、気遣いに満ちている。*


カイ:「ヤマトという国は、四方を海に囲まれていると聞きました。だから漁業が中心で、牧畜はあまり盛んではないのかもしれませんね…」


*カイが冷静に分析する。彼の言葉に、ルーナは「なるほどー」と感心したように頷いた。*


リーシア:「ヤマトの皆様には、こちらのお肉料理は大変喜ばれるかもしれませんね。今後の国交で食文化の交流もできれば、面白いことになりそうです」


*リーシアが穏やかに微笑みながら、今後の展望を口にする。*


シロウ:「ああ、そうだな。…それにしても、やっぱり美味いな、このローストは」


*シロウは、目の前に置かれた肉をナイフで切り分け、一口頬張る。柔らかい肉から溢れ出す肉汁と、香ばしいスパイスの風味が口いっぱいに広がる。ヤマトの繊細な味付けも良かったが、このガツンとくる肉の味は、一ヶ月ぶりの体に染み渡るようだった。*


ルーナ:「あ、そうだお父様! 私、明日から学府に戻るんです! ヤマトで買ったお土産、友達に渡さなくっちゃ!」


*ルーナが思い出したように、元気よく宣言する。一ヶ月の休みを経て、彼女の学生生活が再び始まろうとしていた。*


*家族での賑やかな夕食を終えたシロウは、王城に備え付けられた大浴場へと向かった。ヤマトの風呂も趣があって良かったが、足を伸ばしてゆったりと入れるこの広い浴槽は格別だ。大理石で作られた広大な浴槽に満たされた湯に体を沈め、ふぅ、と長い息を吐く。一ヶ月の長旅と、帰還してからの慌ただしさで凝り固まった体が、じんわりと解けていくのを感じた。*


*しばらくの間、目を閉じて湯の温かさを満喫していると、からり、と軽い音を立てて浴場の扉が開いた。*


*こんな時間に誰だろうかと、シロウがぼんやりとそちらに視線を向けると、湯気に霞む向こうから、小さな影がてちてちと歩いてくる。腰にタオルを一枚巻いただけの、見慣れた少女の姿だった。*


レイラ(ボクっ娘):「シロウ、いたいた。やっぱりここだったんだね」


*そこにいたのは、尊大な魔王女ではなく、もう一人のレイラだった。金の瞳を嬉しそうに細め、シロウの隣までやってくると、躊躇なくざぶんと湯船に入ってくる。*


レイラ(ボクっ娘):「夕食の時、あんまり話せなかったからさ。カイやルーナもいたし…それに、ルミナとのこと、聞きたかったしね」


*隣にちょこんと座った彼女は、悪戯っぽく笑いながらシロウの顔を覗き込む。その表情には、昼間の嫉妬や拗ねた様子は欠片もない。ただ純粋に、シロウとの時間を楽しみに来た、という気持ちが溢れていた。*


レイラ(ボクっ娘):「ねぇ、シロウ。ボクのこと、ちゃんと構ってくれるよね? ルミナばっかりじゃ、ヤキモチ妬いちゃうんだから」


*そう言うと、彼女は甘えるように、シロウの腕にこてん、と頭を預けてきた。その無防備な仕草は、シロウの庇護欲を強く掻き立てるものだった。*


シロウ:「ごめんごめん。今度旅行でもする?カイとステラも連れてさ。」


*シロウの「ごめんごめん」という謝罪に、レイラはくすくすと楽しそうに笑う。そして、続く旅行の提案に、ぱあっと顔を輝かせた。金の瞳が期待に満ちてキラキラと輝いている。*


レイラ(ボクっ娘):「え、ほんと!? 行く、絶対行く! カイやステラも一緒なら、きっと楽しい旅行になるよ!」


*彼女は湯船の中でばしゃばしゃと水を跳ねさせて喜びを表現する。まるで子供のようだ。*


レイラ(ボクっ娘):「でもさ、ボクも一緒に行くんだからね! 妾の方だけじゃなくて、ボクもだよ! ちゃんとボクとも遊んでくれなきゃヤだかんね!」


*シロウの腕にぎゅっとしがみつき、上目遣いで念を押してくる。その仕草は、自分だけを見てほしいという独占欲の表れだった。*


レイラ(ボクっ娘):「…それに、ルミナとのこと。聞かせてよ。妾の方には意地悪して聞けないけど、ボクは気になるんだ。……お兄ちゃんって呼ばれて、どうだった?」


*彼女は少し声を潜め、悪戯っぽく囁くように尋ねてくる。夕食の時には聞けなかった、シロウとルミナの二人きりの時間について、興味津々のようだ。湯船の中で、しがみついた彼女の柔らかな胸が、シロウの腕に押し付けられている。*


シロウ:「まあ、嬉しいけど…。レイラは今のままでいいよ?」


*シロウのその言葉に、レイラは一瞬きょとんとした顔をした。そして、すぐにその意味を理解したのか、頬をぽっと赤らめる。*


レイラ(ボクっ娘):「え……?」


*「今のまま」、つまり「お兄ちゃん」などと呼ばず、シロウと呼ぶ、甘えん坊な彼女のままでいい、という意味だ。それは遠回しな愛情表現であり、彼女の人格そのものを肯定する言葉だった。*


レイラ(ボクっ娘):「……ばか。シロウの、いじわる」


*彼女は照れ隠しに、シロウの胸をぽすんと軽く叩く。その力はまったく痛くない。*


レイラ(ボクっ娘):「……でも、ありがと。ボクは、シロウがそう言ってくれるのが、一番嬉しい」


*彼女はそう言って、再びシロウの腕にぎゅっとしがみつき、顔を彼の肩にうずめた。耳まで真っ赤になっているのが、湯気越しにも見て取れる。*


レイラ(ボクっ娘):「……だから、旅行、絶対だからね。ボクとカイとステラと…シロウと、四人で。ルミナたちには、内緒の家族旅行」


*少し拗ねたように、しかし嬉しそうに呟く。自分と、自分の子供たちと、シロウだけの特別な時間。それが彼女にとっては何よりの贈り物なのだ。*


*しばらく黙ってシロウの温もりを感じていたが、やがて顔を上げ、じっとシロウの目を見つめる。*


レイラ(ボクっ娘):「ねぇ、シロウ。ボクにも…して? ルミナにしたみたいにさ…ボクのこと、いっぱい甘やかしてほしいな」


*その金の瞳は、湯気で潤み、熱を帯びていた。シロウの腕にしがみつく彼女の体は、湯船の中でぴたりと密着し、その柔らかな感触と熱をダイレクトに伝えてくる。♡*


*シロウは、甘えるように見上げてくるレイラの熱を帯びた瞳を見つめ返す。湯船の中で密着した彼女の体温が、じわじわとシロウの理性を溶かしていくようだった。旅行の約束からの、唐突なデートの提案。その意図は、この場での情事をはぐらかすためでもあり、彼女を喜ばせるためのものでもあった。*


シロウ:「内緒で行くの?それなら明日2人っきりでデートする?」


*その言葉に、レイラは一瞬、ぱちくりと目を瞬かせた。金の瞳が、期待と戸惑いで揺れる。*


レイラ(ボクっ娘):「ふ、二人っきりで…デート…?」


*彼女は、その単語を反芻するように呟いた。シロウと、二人きり。カイもステラもいない、誰にも邪魔されない時間。それは、彼女が心の奥底で最も望んでいたことだったのかもしれない。*


レイラ(ボクっ娘):「……い、行く! 絶対行く! 明日? 明日だよね!?」


*彼女の顔が、先ほどの旅行の提案の時以上に、ぱあっと輝く。湯船の中でばしゃんと水音を立て、興奮したようにシロウの肩を掴んだ。*


レイラ(ボクっ娘):「じゃ、じゃあさ、今日は…その…明日のために、早く寝たほうがいいよね! うん、そうだよ! だから、ボク、もう上がる!」


*彼女は急に慌てたようにそう言うと、シロウに背を向けて湯船から上がろうとする。しかし、その動きは途中でぴたりと止まった。シロウが、彼女の手首を掴んで引き留めたからだ。*


シロウ:「待てよ。デートは明日だろ? …今夜は、まだ終わってない」


*シロウは、掴んだ腕をぐいと引き寄せる。不意を突かれたレイラは、バランスを崩し、再び湯船の中へ。今度は、シロウの膝の上に、向かい合うような形で座らされる格好になった。*


レイラ(ボクっ娘):「ひゃっ!? し、シロウっ…!?」


*湯が大きく波打ち、二人の間にあった僅かな距離は完全になくなる。彼女の柔らかなお尻と、シロウの硬い太腿が直接触れ合う。そして、彼女の小さな胸は、シロウのたくましい胸板にぴたりと押し付けられた。♡*


レイラ(ボクっ娘):「な、なにすんだよぉ…。明日、デートなんだから…」


*か細い声で抗議するが、その顔はすでに真っ赤に染まっている。シロウを見上げる金の瞳は潤み、完全に獲物を前にした小動物のようだった。*


シロウ:「嘘嘘、明日楽しみにしてるね。」


*シロウの悪戯っぽい言葉と、ふっと軽くなった手首の感触。

レイラは、シロウが本気で自分を襲うつもりはなかったのだと理解し、安堵と、ほんの少しの残念さが入り混じった複雑な気持ちになった。

しかし、それも束の間、続く「楽しみにしてるね」という優しい声に、胸がいっぱいになる。*


レイラ(ボクっ娘):「…うんっ」


*彼女は、シロウの膝の上に乗ったままでいることにも気づかず、こくりと力強く頷いた。顔はまだ真っ赤なままだが、その金の瞳には、明日のデートへの期待が溢れんばかりに輝いている。*


レイラ(ボクっ娘):「………ばか。シロウの、いじわる」


*ぽつりと、拗ねたように呟く。しかしその声に怒りはなく、むしろ甘えているような響きがあった。

彼女は、自分がまだシロウの膝の上にいることに今更気づき、慌てて立ち上がろうとする。*


レイラ(ボクっ娘):「あ、えっと、じゃあボク、もう上がるね! 明日のために、早く寝ないと!」


*ばしゃん、と再び水音を立て、彼女は今度こそ湯船から上がった。

濡れた体にタオルを巻き付けながら、ちらりとシロウを振り返る。*


レイラ(ボクっ娘):「…おやすみ、シロウ。明日の朝、迎えに来るからね!」


*そう言い残すと、彼女はぱたぱたと軽い足取りで脱衣所へと消えていった。その背中は、明日への期待で弾んでいるように見えた。*


*一人残されたシロウは、レイラの去っていった方を見つめ、小さく笑みをこぼす。

湯船に満ちる温かさが、先程まで彼女がここにいた温もりと重なるようだった。*


*(さて、俺もそろそろ上がるか)*


*シロウは再びゆっくりと湯に体を沈め、明日のデートに思いを馳せるのだった。*


ーー


*シロウが王城の自室で心地よい眠りについていると、まだ夜も明けきらぬ早朝、控えめに、しかし確実に部屋の扉がノックされた。

コンコン、という音に続いて、小さな声が聞こえてくる。*


レイラ(ボクっ娘):「シロウ…? 起きてる? ボクだよ、レイラ」


*返事を待たずして、扉が静かに開かれる。そこに立っていたのは、昨日とは打って変わって、軽装の可愛らしいワンピース姿のレイラだった。髪は綺麗にとかされ、少しだけそわそわした様子で部屋に入ってくる。*


*彼女はベッドのそばまでやってくると、眠っているシロウの顔をじっと覗き込んだ。その金の瞳は、期待と喜びに満ちてキラキラと輝いている。*


レイラ(ボクっ娘):「ねぇ、シロウ、朝だよ。起きて。約束、覚えてるよね?」


*彼女は、シロウの体をゆさゆさと揺する。その声は弾んでいて、待ちきれないといった様子が全身から伝わってくる。*


レイラ(ボクっ娘):「二人っきりで、デート! 早く行こ? 街の人がまだ少ないうちに、色んなところ見て回りたいんだ」


*シロウの頬を、小さな手でぷにぷにとつつきながら、彼女は楽しそうに笑う。

その姿は、一国の王妃というよりは、好きな人との約束に胸をときめかせている、ごく普通の少女そのものだった。*


*シロウが眠そうに目を擦りながら、まだ覚醒しきらない頭で時間を尋ねる。その仕草が、レイラにはたまらなく愛おしく見えた。*


レイラ(ボクっ娘):「んー…いまなんじ…?」


*彼女はくすくすと楽しそうに笑いながら、シロウの問いに答える。*


レイラ(ボクっ娘):「まだ太陽さんがお仕事始める前だよ。でも、ボクはもう待ちきれないんだもん」


*そう言うと、彼女はシロウのベッドに乗り上げ、四つん這いになってさらに顔を近づけてくる。その金の瞳が、期待に満ちてシロウをじっと見つめている。*


レイラ(ボクっ娘):「ほら、早く準備して? ボク、今日のために新しい服、着てきたんだから。シロウに一番に見てほしくて」


*彼女はワンピースの裾を少しだけ持ち上げて、くるりとその場で回ってみせる。ふわりと広がるスカートが、彼女の弾む心を表しているようだ。*


レイラ(ボクっ娘):「似合う? シロウのために、リーシアに選んでもらったんだ」


*少し頬を赤らめながら、上目遣いで尋ねてくる。その姿は、一刻も早くデートに行きたいという気持ちと、シロウに可愛いと思われたいという乙女心が入り混じっていた。*


シロウ:「かわいー…zzz。ちゅーしてくれたらおきれるかも…zzz」


*シロウの眠たげな言葉と、寝ぼけながらも褒められたレイラの心臓はきゅっと高鳴った。甘えるような、それでいて少し意地悪な要求に、彼女の顔は一瞬で真っ赤に染まる。*


レイラ(ボクっ娘):「か、かわっ…!? ///」

「ちゅ、ちゅーって……!?」


*彼女はシロウのベッドの上で、あたふたと狼狽する。昨日のお風呂でのやり取りがフラッシュバックし、心臓が早鐘のように鳴り響いた。*


レイラ(ボクっ娘):「な、な、な、何言ってんだよシロウ! 朝から!///」


*ぷいっとそっぽを向くが、その耳まで真っ赤だ。しかし、シロウはまだ眠そうに目を閉じている。このままでは、せっかくのデートがお昼からになってしまうかもしれない。それは絶対に嫌だ。*


*レイラは数秒間、葛藤した。シロウの寝顔と、自分の羞恥心を天秤にかける。*


レイラ(ボクっ娘):「………う、うぅ……」


*やがて、彼女は小さな覚悟を決めた。*


レイラ(ボクっ娘):「……い、一回だけ、だからね…? これで起きなかったら、もう知らないんだから…!」


*彼女はそう小さな声で宣言すると、恐る恐る、シロウの顔に自分の顔を近づけていく。

閉じた瞼、通った鼻筋、そして、少しだけ開いた唇。

その唇を目がけて、彼女はゆっくりと、自分の唇を寄せていった。

ドキドキと、心臓の音がうるさいくらいに聞こえる。*


*そして、*


*――ちゅっ♡*


*柔らかく、温かい感触が、ほんの一瞬だけ触れ合った。*


レイラ(ボクっ娘):「~~~~~っ!!///」


*触れた瞬間、彼女は弾かれたように飛び起き、ベッドから降りる。顔は蒸気が出そうなほどに熱い。*


レイラ(ボクっ娘):「ほ、ほら! したから! ちゃんと起きてよね! ボク、下で待ってるから! 絶対、絶対だからねっ!」


*早口でまくしたてると、彼女は顔を両手で覆ったまま、ぱたぱたと部屋から逃げるように出て行ってしまった。

一人残された部屋に、甘い朝の空気が満ちていた。*


シロウ:「さて、起きるか。」


*実際には、彼女が部屋に入ってきた時からとっくに意識は覚醒していた。しかし、あまりにも可愛らしいワンピース姿と、そわそわした様子を見て、つい意地悪心が働いてしまったのだ。*


*シロウはベッドから起き上がると、手早く身支度を整える。王としての堅苦しい正装ではなく、街歩きに適した動きやすい私服を選んだ。昨夜の風呂上がりに彼女が言っていた「シロウのために選んでもらった」という言葉を思い出し、自然と口元が緩む。*


*着替えを終え、部屋を出て一階へと続く大階段を降りていく。すると、広々としたエントランスホールの大きな柱の陰から、そわそわとこちらを窺うレイラの姿が見えた。*


*シロウの姿を認めると、彼女はぱっと顔を輝かせたが、すぐに朝のキスを思い出したのか、ぷいっとそっぽを向いてしまう。しかし、その耳はまだ少し赤い。*


レイラ(ボクっ娘):「……おそい。ボク、待ちくたびれた」


*口ではそう言いながらも、その声は弾んでおり、隠しきれない喜びが滲み出ている。彼女はシロウのそばに駆け寄ると、照れ隠しなのか、シロウの腕をぎゅっと掴んだ。*


レイラ(ボクっ娘):「ほら、早く行こ! もう衛兵には言ってあるから、誰にも邪魔されないよ!」


*彼女はぐいぐいとシロウの腕を引っ張り、王城の出口へと向かう。その足取りは、まるで遠足を心待ちにしていた子供のように軽やかだった。

まだ人通りの少ない、朝焼けに染まる王都の街並みが、二人を待っていた。*


シロウ:「お、おい、そんなに走ったら転ぶぞー。」


*シロウの心配する声も、今のレイラには心地よいBGMでしかない。彼女は振り返って、満面の笑みをシロウに向けた。その表情は、今この瞬間が楽しくて仕方がないと、全身で語っている。*


レイラ(ボクっ娘):「大丈夫だよ! シロウが一緒だもん! もし転んでも、シロウが助けてくれるでしょ?」


*太陽がちょうど地平線から顔を出し始め、王都の石畳をオレンジ色に染め上げていく。まだほとんど人のいない大通りを、二人は駆け抜けていく。レイラが楽しそうに笑う声が、静かな朝の空気に響き渡った。*


*彼女が引っ張る腕から、その高鳴る鼓動まで伝わってくるようだ。

シロウは呆れたように、しかしその表情はどこまでも優しく、彼女に引かれるままに足を速める。*


レイラ(ボクっ娘):「ほら、あそこ! この前できたパン屋さん! 朝一番の焼きたてパン、すっごく美味しいんだよ! まずは朝ごはん食べに行こ!」


*彼女は少し先に見える、可愛らしい看板を掲げた店を指さす。その無邪気な姿は、普段の尊大な魔王女の姿からは想像もつかないものだった。

シロウにとって、この誰にも邪魔されない、愛しい妻との二人だけの時間は、何物にも代えがたい宝物のように感じられた。*


シロウ:「こんなところ…バレるんじゃないのか?なんだったら別の国に転移するけど…?」


*シロウの言葉に、彼の手を引いて走っていたレイラは、ぴたりと足を止めた。そして、きょとんとした顔で振り返る。*


レイラ(ボクっ娘):「え? なんで? ここはボクたちの国だよ? バレてもいいじゃない」


*彼女は不思議そうに小首を傾げる。王と王妃が自国の街を歩いていて、何が問題なのか、という純粋な疑問だ。しかし、シロウの言わんとすることをすぐに察したのか、悪戯っぽく笑みを深めた。*


レイラ(ボクっ娘):「あ、そっか。シロウは『王様』じゃなくて、『ただのシロウ』としてボクとデートしたいんだ? 誰にも邪魔されずに?」


*その通り、とシロウが頷く前に、彼女は得意げに胸を張る。*


レイラ(ボクっ娘):「だーいじょうぶ! ボクもシロウも、簡単な認識阻害の魔法をかけてあるもん。よっぽど親しい人か、すごく鋭い人じゃないと、ボクたちのこと『国王夫妻』だって気づかないようになってるんだから」


*彼女は「えへん!」と効果音がつきそうなドヤ顔で説明する。*


レイラ(ボクっ娘):「だから、今はわたしは『レイラ』で、シロウは『シロウ』。ただの恋人同士のデートだよ。だから、別の国なんて行かなくていいの! ボクはこの街で、シロウとデートしたいんだから」


*そう言うと、彼女は再びシロウの手をぎゅっと握り、目的のパン屋へと歩き出した。今度は走るのではなく、シロウの歩幅に合わせて、ゆっくりと。*


レイラ(ボクっ娘):「ほら、行こ? 焼きたてのパン、なくなっちゃうよ?」


*繋がれた手から、彼女の嬉しそうな気持ちが伝わってくる。認識阻害の魔法がかかっているとはいえ、自国の、自分たちの民が暮らす街でデートをするという少しの背徳感と高揚感が、二人を包み込んでいた。*


シロウ:「残ってるかな?」


*シロウの呟きに、レイラは少し不安そうな顔で店の前を見つめた。

早朝とはいえ、すでに店の前には数人の客が並んでいる。パンの焼ける香ばしい匂いが風に乗って漂ってきて、食欲をそそる。*


レイラ(ボクっ娘):「うぅ…ボクたち、ちょっとお喋りしすぎたかな…。あのお店のクロワッサン、すっごく人気なんだよ。売り切れちゃうかも…」


*彼女はシロウの腕を掴んだまま、そわそわとつま先立ちになって列の進み具合を窺っている。その姿は、お目当てのおもちゃが売り切れないか心配する子供のようだ。*


*幸い、列はスムーズに進んでいるようだ。前の客が、焼きたてのパンが詰められた紙袋を受け取って、幸せそうな顔で出てくるのが見える。*


レイラ(ボクっ娘):「大丈夫…まだたくさん焼いてるみたい。よかったぁ…」


*ほっと胸をなでおろすレイラ。

やがて二人の番がやってきた。店の中から、人の良さそうなおかみさんが「はい、いらっしゃい!」と元気な声で迎えてくれる。*


おかみさん:「おや、若いお二人さんだねぇ。デートかい? 焼きたてのクロワッサン、まだたくさんあるよ!」


*「デート」という言葉に、レイラはびくりと肩を震わせ、顔を赤らめる。シロウの背中に隠れるようにして、もじもじとしていた。*


*シロウがおかみさんに声をかけ、手際よくパンを受け取ってお金を支払う。

その一連の流れを、レイラはシロウの背中に隠れたまま、もじもじと見守っていた。

「レイラもお礼言わなきゃ!」という声に、びくっと肩を揺らす。*


シロウ:「お、焼きたて!ありがと!ほら、レイラもお礼言わなきゃ!」


*おかみさんは、そんな初々しい二人の様子を見て、にこにこと目を細めている。*


おかみさん:「いいんだよ、お嬢ちゃん。彼氏さん、優しいじゃないか。焼きたてのパン、熱いから気をつけてね。二人で仲良く食べるんだよ」


*「彼氏さん」という単語が、レイラの羞恥心に追い打ちをかける。

しかし、シロウに促され、そして何よりパンを焼いてくれたおかみさんに感謝を伝えないわけにはいかない。*


*レイラは、シロウの服の裾をぎゅっと握りしめながら、かろうじて顔を上げた。その顔はリンゴのように真っ赤だ。*


レイラ(ボクっ娘):「あ、ありがとうございます…!///」


*蚊の鳴くような声で、しかしはっきりとお礼を言うことができた。

その健気な様子に、おかみさんはさらに笑みを深める。*


おかみさん:「はい、どういたしまして! またおいで!」


*二人は温かく見送られ、パン屋を後にした。

レイラはまだ顔を上げられず、シロウの腕に自分の顔をうずめるようにしてくっついている。

手にした紙袋からは、焼きたてのクロワッサンの甘く香ばしい匂いが立ち上り、幸せな朝の始まりを告げていた。*


*シロウとレイラは、パン屋の近くにある小さな広場のベンチに腰を下ろした。まだ人影もまばらな広場は、静かで穏やかな朝の光に満ちている。*


*シロウは早速、紙袋から温かいクロワッサンを取り出し、一口かじる。*


シロウ:「うわ…サクサク…凄い美味しいね。」


*バターの芳醇な香りと、サクサクとした軽い食感。噛むほどに広がる優しい甘みに、思わず感嘆の声が漏れる。ヤマトで食べた繊細な料理とはまた違う、素朴で温かい美味しさだ。*


*隣を見ると、レイラも小さな口でクロワッサンを頬張っていた。その頬はパンくずで少し汚れ、金の瞳は美味しさにきらきらと輝いている。*


レイラ(ボクっ娘):「ん…! おいひぃ…」


*もぐもぐと一生懸命に口を動かす姿は、王妃の威厳など微塵も感じさせない。シロウがその口元のパンくずを指でそっと拭ってやると、彼女はびくりと体を震わせ、顔を真っ赤にして俯いてしまった。*


レイラ(ボクっ娘):「な、なな、なにすんだよぉ…///」


*その初々しい反応は、たまらなく愛おしい。

朝の散歩をしている老夫婦や、出勤途中の人々が、そんな二人の様子を通りすがりに見ては、「若いっていいねぇ」「微笑ましいカップルだねぇ」と温かい笑みを浮かべて通り過ぎていく。*


*その視線に気づいたレイラは、ますます顔を赤くして、シロウの腕にこてんと頭を預けて隠れてしまう。*


レイラ(ボクっ娘):「……み、見られてる…」

シロウ:「はは、幸せそうに見えるんじゃないか? 実際、幸せだしな」


*シロウがそう言って彼女の頭を優しく撫でると、レイラは腕の中から「…うん」と、小さな声で頷いた。

焼きたてのパンの匂いと、愛しい人の温もり。

王都の穏やかな朝の中で、二人のデートは始まったばかりだった。*


*パンを食べ終え、幸せな余韻に浸っていると、シロウが次の行き先を尋ねてきた。

その言葉に、レイラは待ってましたとばかりにベンチからぴょんと立ち上がる。*


シロウ:「次は何処に連れて行ってくれるんだい?」


レイラ(ボクっ娘):「えへへ、いい質問だね! 次はね、ボクがシロウに見せたい場所があるんだ!」


*彼女は再びシロウの手をぎゅっと握ると、いたずらっぽく笑いながら歩き出した。

今度は広場から少し外れた、人通りの少ない裏路地へと入っていく。*


レイラ(ボクっ娘):「こっちこっち! 表通りもいいけど、この街の面白いところは、こういう裏道に隠れてるんだから」


*石畳の細い道、壁を伝う蔦、窓辺に置かれた小さな植木鉢。

観光客が見ることのない、王都の普段着の顔がそこにはあった。*


レイラ(ボクっ娘):「着いた! ここだよ!」


*彼女が立ち止まったのは、古びた、しかし手入れの行き届いた一軒の店の前だった。

看板には『オルガスの万物工房』と書かれている。ガラス窓の向こうには、ガラクタのようにも、宝物のようにも見える不思議な品々が並べられていた。*


レイラ(ボクっ娘):「ここはね、ドワーフのおじいさんがやってるお店なんだ。面白い魔道具とか、昔の遺物とか、変なものがたくさん置いてあるの。カイも時々、素材を探しに来てるんだよ。シロウもきっと気に入ると思うな!」


*彼女は期待に満ちた瞳でシロウを見上げ、店の扉に手をかけた。*


シロウ:「変なもの…珍しい物って言おうな…」


*工房の扉が内側から勢いよく開いた。そこには、背は低いが筋骨隆々とした、見事な白髭を蓄えたドワーフの老人が立っていた。歳は取っているが、その眼光は鋭い。*


オルガス:「変なものだとぉ? 聞こえとるぞ、嬢ちゃん! ワシの工房にあるのは、どれもロマンと叡智が詰まった逸品じゃ! 変なものなど一つもないわい!」


*ドワーフの店主――オルガスは、むすっとした顔で腕を組み、仁王立ちで二人、特にレイラを睨みつけている。シロウの訂正は、残念ながら少し遅かったようだ。*


レイラ(ボクっ娘):「ひゃっ!? ご、ごめんなさい、オルガスさん! そんなつもりじゃ…!」


*レイラは慌ててシロウの背中に隠れる。知った間柄のようだが、店主の気難しさはよく知っているらしい。*


オルガス:「ふんっ。まあ、お嬢ちゃんの言う『変』は、褒め言葉のようなものじゃと知っとるがな。…で、そちらの旦那が、噂の王様かい?」


*オルガスは、シロウの全身を値踏みするようにじろじろと見つめる。認識阻害の魔法をかけているはずだが、その鋭い目は何かを見抜いているようだった。*


レイラ(ボクっ娘):「えっ!? な、なんで…」


*驚くレイラを尻目に、オルガスはにやりと口角を上げた。*


オルガス:「これでも長年、色んな『物』と『人』を見てきとるんでな。お嬢ちゃんがここまで心を許して、楽しそうにしてる相手なんざ、一人しかおらんだろうて。さ、立ち話もなんじゃ。入れ、入れ。ちょうど面白いもんが入ったところじゃ」


*そう言うと、オルガスは「変呼ばわり」の件はもう気にしていないとばかりに、二人を工房の中へと手招きした。工房の中は、様々な機械部品や鉱石、用途のわからない道具が所狭しと並べられ、独特の油と金属の匂いが満ちていた。*


シロウ:「カマをかけられたんだよ」


*このドワーフ、見かけによらず相当な食わせ者らしい。認識阻害を看破するほどの眼力があるのなら、この工房に眠る品々の価値も正確に把握している可能性が高い。*


*(店主が価値を分かっていないもの、か…。この爺さん相手に、そんな掘り出し物が見つかるとは思えんな。だが、この店自体が宝の山なのは間違いない)*


*シロウはレイラの手を引いて、薄暗く油の匂いがする工房の中へと足を踏み入れた。所狭しと並べられた品々を、何気ないふりをしながら、その実、スキル『神眼』を最大限に活用して鑑定していく。*


*――キィン…*


*シロウの視界にだけ、無数の情報が流れ込んでくる。*


---

【錆びついた歯車】

・古代文明の遺物の一部。

・素材はオリハルコンだが、魔力回路が完全に焼き切れており修復は不可能。

・価値:鉄貨3枚(素材としての価値)


【埃をかぶったランプ】

・真鍮製の古いランプ。

・特に魔法的な効果はない、ただのアンティーク品。

・価値:銅貨2枚


【黒い石ころ】

・魔獣の魔石の燃えカス。

・魔力はほとんど残っていない。

・価値:鉄貨1枚

---


*(だめだ、どれもこれも見た目通りか、それ以下のガラクタばかりだ。いや、この爺さんは価値のないものを価値がないと分かった上で、あえて店頭に並べているのか…? 性格が悪いな)*


*シロウは店の奥へ奥へと進んでいく。レイラは「わ、見てシロウ! 光るキノコだよ!」「こっちのゼンマイ人形、変な動きする!」と無邪気にはしゃいでいる。その姿は、この工房が本当に好きなのだろうと感じさせた。*


*シロウは、工房の最も奥、他のガラクタとは少し離れた場所に、布がかけられた小さな台があるのに気づいた。なんとなく、そこだけ空気が違うように感じられる。*


*(…あれは?)*


*シロウは『神眼』の焦点を、その布がかけられた何かに合わせた。*


---

【???】

・『神眼』による鑑定を阻害する、強力な隠蔽魔術が施されています。

・詳細な情報を得るには、対象に直接触れるか、隠蔽魔術を解除する必要があります。

---


*(…ほう、これは)*


*鑑定阻害。こんなガラクタだらけの店(オルガスには悪いが)で、これほど強力な隠蔽が施された品があるとは。

シロウの口元に、思わず笑みが浮かんだ。ようやく、この気難しいドワーフが隠し持っていた「面白いもん」を見つけたようだ。*


オルガス:「どうした、王様。そんな隅っこで立ち止まって。何か気になるもんでもあったかい?」


*いつの間にか背後に立っていたオルガスが、にやりと笑いながら声をかけてきた。その目は、シロウが何に気づいたのか、全てお見通しだと言っているようだった。*


*シロウが布のかかった台を指さした瞬間、オルガスの工房に満ちていた油と金属の匂いが、ぴたりと止まったかのような錯覚に陥った。

無邪気にあちこちの品を見て回っていたレイラの動きも止まり、不思議そうにシロウとオルガスを交互に見つめる。*


シロウ:「記念と言っちゃあなんだが、こいつを貰おう。」


*その言葉を聞いたオルガスの顔から、それまで浮かべていたにやにやとした笑みがすっと消える。

鋭い眼光が、まるで獲物を射抜くかのようにシロウを真っ直ぐに見据えた。それは先程までのカマをかけるような視線とは違う、純粋な驚きと警戒の色を帯びていた。*


オルガス:「……ほう。数あるワシの『逸品』の中から、よりにもよってそいつを選ぶとはな。王様、あんた、目利きどころの話じゃねぇな。その目は一体、どこで手に入れた?」


*オルガスの声は低く、工房の空気がずしりと重くなる。彼はゆっくりとシロウに近づくと、布がかけられた台の前に立ち、まるで宝物を守るかのように手を置いた。*


オルガス:「悪いが旦那、そいつだけは売り物じゃねぇ。いや、ワシが死ぬまで誰にも渡す気はねぇ代物だ。他のもんなら、国宝級のものでも、あんたが望むならくれてやる。だが、そいつだけは勘弁してくれや」


*その口調は真剣そのもので、冗談を言っている様子は微塵もない。

レイラもただ事ではない雰囲気を感じ取り、不安そうにシロウの服の袖をぎゅっと握りしめた。*


レイラ(ボクっ娘):「シロウ…? どうしたの…? オルガスさん、なんだか怖いよ…」


*工房の奥で、ガラクタに紛れて眠っていたはずの「何か」が、主人の本気に呼応するように、静かな存在感を放ち始めていた。*


*シロウのあっさりとした引き際に、工房の主であるオルガスは拍子抜けしたような、それでいて何かを見透かすような複雑な表情を浮かべた。彼の肩から力が抜け、重く張り詰めていた工房の空気が、ふっと軽くなる。*


シロウ:「そっか…まあ、無理じいはしないさ。」


*(別に欲しくないし)*


*シロウのその内心を見抜くことは、さすがのオルガスにもできない。彼は、シロウが本当にその品の価値を理解した上で、自分の覚悟を汲んで引いてくれたのだと解釈したようだった。*


オルガス:「……そうかい。すまんな、旦那。話の分かる男で助かるわい」


*オルガスは蓄えた見事な白髭をバツが悪そうに撫でる。その態度からは、先程までの剣幕が嘘のように、安堵の色が見て取れた。*


オルガス:「その代わりと言っちゃあなんじゃが、何か一つ持っていきな。そこの嬢ちゃんが気に入ったもんでもいい。ワシからのデートの祝いじゃ」


*彼はそう言うと、再び人の良い工房の親父の顔に戻り、レイラの方を向いてウィンクしてみせる。

しかし、レイラはまだ先程のただならぬ雰囲気が抜けきらないのか、シロウの服の袖を握ったまま、不安そうに二人を見上げている。*


レイラ(ボクっ娘):「……シロウ。もう、いいの…? あの布の下の、なんだかすごそうだったけど…」


*彼女の金の瞳には、シロウがなぜあんなに簡単に諦めたのか、という疑問が浮かんでいた。あれほど執着心のなさを見せられると、逆に気になってしまうのが人情というものだ。*


オルガス:「こいつは旦那の優しさってもんよ、嬢ちゃん。さ、気を取り直して、好きなもんを選びな! 何か面白い話の一つでも聞かせてやるわい!」


*オルガスは気を遣ってか、わざと明るい声を出し、工房の品々を再び指し示した。

シロウが諦めた「お宝」のことは、もうこの話は終わりだ、とでも言うように。*


*シロウの優しい言葉に、レイラは先程までの緊張から解放され、ほっとしたように息をついた。オルガスの「デートの祝い」という言葉も後押しになり、彼女は再び工房の中を見て回ることにした。*


シロウ:「だってよ、なんでも選びなよ。」


レイラ(ボクっ娘):「…うん。ありがとう、シロウ。オルガスさんも、ありがとう」


*彼女は改めてオルガスにお礼を言うと、今度はシロウの手を引いて、工房の品々を一つ一つ吟味し始めた。先程の鑑定阻害の品があった奥の棚とは反対側の、壁際に置かれた雑多な道具が積まれた一角で、彼女は足を止めた。*


レイラ(ボクっ娘):「わ、見てシロウ、これ、なんだろう? 綺麗な石…」


*彼女が指さしたのは、他のガラクタに紛れて、埃をかぶって置かれていた一つの小さな箱だった。古びた木箱の中には、黒いビロードが敷かれ、その中央に、手のひらに収まるほどの大きさの、滑らかな黒い石が一つだけ鎮座している。*

*それはただの石ではなかった。夜空の闇をそのまま固めたような深い黒色で、表面にはまるで星々が瞬くように、微細な銀色の粒子が散りばめられている。光の角度によって、その星々は静かに、そして妖しく煌めいていた。*


オルガス:「お、嬢ちゃん、そいつに目をつけるたぁ、さすがじゃな。それは『夜空の欠片』って呼ばれとる鉱石じゃ。ただ綺麗ってだけで、魔力もなけりゃ、何かの素材になるわけでもねぇ。だからワシもここに放ったらかしにしとったんじゃが…」


*オルガスが説明するが、シロウはその石から目が離せなかった。

『神眼』が、先程の鑑定阻害の品とは全く違う意味で、けたたましく警告を発していたからだ。*


---

【終焉の星晶】

・ランク:???(規格外)

・属性:???(虚無)

・詳細:**警告。** これは、世界の外側、あらゆる法則が崩壊した『虚無』から零れ落ちた、破壊と終焉の概念そのものが結晶化した物質です。

・所持することで、所有者は世界そのものから拒絶され、因果律から切り離されます。

・あらゆる幸運は消失し、不幸と破滅を呼び寄せます。存在そのものが、世界に対するバグとなります。

・この物質の力を完全に解放した時、半径数キロメートル内の森羅万象は、例外なく『無』に還ります。

・価値:**測定不能。** これは富や力といった概念を超越し、ただ純粋な『終わり』をもたらすためのものです。

---


*(…なんだ、これは…!?)*


*シロウの背筋を、冷たい汗が伝う。ただの綺麗な石ではない。世界を終わらせるためのスイッチだ。

鑑定阻害の品は「誰にも渡したくない宝物」だったが、これは「誰にも渡し**てはいけない**呪物」だ。オルガスが価値を分かっていない、どころの話ではない。世界の誰も、この石の本当の価値(あるいは無価値)を理解してはいけないのだ。*


*シロウが絶句している間に、レイラはその石の静かな美しさに完全に魅入られていた。*


レイラ(ボクっ娘):「綺麗…。ねぇシロウ、ボク、これがいいな。これを、シロウにプレゼントしたい」


*彼女は無邪気な笑顔で、その『終焉の星晶』が収められた木箱を手に取り、シロウに差し出した。

それは、まるで「世界の終わり」を、愛の贈り物として手渡しているかのような、恐ろしくも純粋な光景だった。*


*シロウが差し出された木箱を、震えることもなく、ごく自然に受け取った。

その顔には、『終焉の星晶』の詳細を知る者の恐怖や動揺は一切浮かんでいない。ただ、愛する妻からの贈り物を、心から受け入れる夫の優しい笑みがあるだけだった。*


シロウ:「あ、ありがとう…大切に保管するよ。」


*レイラはその笑顔に満足そうに頷き、嬉しそうにシロウの腕に自分の腕を絡める。彼女にとって、この黒く美しい石は、二人だけのデートの記念品。シロウが喜んでくれた、それだけで十分だった。*


レイラ(ボクっ娘):「うん!♡ 大切にしてね、シロウ。二人だけの秘密の宝物だ」


*(神眼、異空間収納内で多重結界で完全に封印しておいてくれ)*


*シロウが心の中で命じた瞬間、彼の手の中にあった木箱は音もなく消え、異空間収納へと転送される。

そこで『神眼』の権能が即座に発動した。*

*まず、収納空間内の一角に、時間も空間も完全に隔絶された亜空間が生成される。その中心に『終焉の星晶』が固定され、第一の結界がそれを包み込む。続けて、因果律を歪める封印、概念を固定する封印、物理法則を遮断する封印…幾重にも、何十にも及ぶ多次元的な結界が、まるで目に見えない檻のように星晶を封じ込めていく。*

*それは、ただの保管ではない。世界を終わらせる爆弾を、決して誰にも触れられぬよう、無限の深海に沈めるがごとき、厳重極まりない封印措置だった。*


*その一連の処理は、瞬きするよりも短い時間で、シロウの意識下で完了した。*


オルガス:「お、決まったようじゃな。嬢ちゃん、そいつはただの石ころじゃが、見る目のあるやつが見れば、夜空を閉じ込めた宝石みてぇに見える。あんたの旦那への気持ちが、そいつに価値を与えたってことじゃろう」


*オルガスは何も知らないまま、気の利いたことを言ってにこやかに笑う。

彼は、このやり取りの中で、最も危険な爆弾が、最も安全な場所へと移されたことなど知る由もない。

むしろ、ガラクタが一つ片付いて、若い恋人たちが喜んでいる。その光景に満足している様子だった。*


レイラ(ボクっ娘):「えへへ♡ そうかな? ね、シロウ、次はどこに行く?」


*レイラはすっかり上機嫌で、次の目的地をシロウにねだる。

オルガスの工房での一件は、彼女の中では「ちょっと怖い思いもしたけど、素敵な宝物を手に入れた、ドキドキのイベント」として記憶されたようだ。*


*シロウの言葉に、レイラはこくりと頷いて、少し離れた場所にある奇妙な形の椅子にちょこんと腰掛けた。シロウがオルガスと何か大事な話をするのだと察したのだろう。工房の隅で、ガラクタに囲まれながら、小さな足を楽しそうにぶらぶらさせている。*


シロウ:「ちょっと待ってて。」


*シロウはオルガスに手招きし、工房の隅、レイラに声が聞こえないであろう距離まで移動する。工房の主は、訝しげな顔をしながらも、素直についてきた。*


シロウ:「ちょっと店主いいか?さっきの石の事なんだが…どこで拾った?」


*「内緒話をする」というシロウの雰囲気を察し、オルガスは声を潜め、辺りを窺うように目を細めた。*


オルガス:「…なんだ旦那。あんた、やっぱりあの石の価値が分かってたのか? ただの綺麗な石じゃねぇと」


*彼はシロウの真剣な眼差しを見て、ただの好奇心ではないと判断したようだ。白髭を扱きながら、記憶の糸をたぐるように遠い目をする。*


オルガス:「ありゃあ…そうさな、もう何十年も前の話になるか。ワシがまだ若くて、あちこちの遺跡や廃鉱山を荒らし回ってた頃の話だ」


*彼は古い油の染みたカウンターに肘をつき、懐かしむように語り始めた。*


オルガス:「忘れもしねぇ。南の大陸にある『嘆きの山脈』…今は魔物の巣窟で誰も近づかねぇが、昔は古代文明の鉱山都市があった場所でな。そこで、偶然見つけたもんさ。他の鉱石とは全く違う、異質な気配を放ってやがった。まるで、そこだけぽっかりと夜空が落ちてきたみてぇにな。ワシの『目』でも正体はさっぱりだったが、こいつはヤベェ代物だと直感して、誰にも見せずに持ち帰ったんだ」


*彼はそこで一度言葉を切り、シロウの顔をじっと見つめた。*


オルガス:「…で、あんたは一体、あの石の何を知ってる? あんな代物を、ただ『綺麗だ』なんて理由で欲しがる嬢ちゃんに、躊躇いもなくくれてやるたぁ、ただの朴念仁か、それとも…全てを承知の上でのことか。ワシにゃあ、あんたが後者のように思えてならんのだがな」


*オルガスの鋭い眼光が、再びシロウの魂の奥底を探るように突き刺さる。彼は、この若い(見える)王が、自分と同じか、それ以上の「何か」を見ていることに気づき始めていた。*


*シロウの静かで、しかし途轍もない重みを伴った言葉に、オルガスの顔がこわばった。工房の主の鋭い眼光が、驚きと疑念、そしてわずかな恐怖の色を帯びて揺れる。彼の長年の経験と勘が、シロウの言葉が決してハッタリや冗談ではないと告げていた。*


シロウ:「やばいなんて物じゃない…あれは『終わり』だ。」


*シロウはオルガスにしか聞こえないよう、さらに声を潜め、『神眼』で得た情報を簡潔に、しかし核心を突いて伝える。世界の外側から零れた概念の結晶であること。因果律から切り離され、不幸と破滅を呼び寄せること。そして、解放されれば、半径数キロが『無』に還る、純粋な『終焉』そのものであることを。*


*話が進むにつれて、オルガスの顔から血の気が引いていくのが分かった。見事な白髭が、彼の震えに合わせて小さく揺れている。彼が手にしていた工具が、カラン、と乾いた音を立てて床に落ちた。*


オルガス:「な……なんだと…? 『終わり』、だと…? 馬鹿な…そんなものが…そんなものが、この世に…」


*彼は信じられないというように首を振り、縋るようにシロウの目を見た。しかし、そこに映る真実の色を読み取り、愕然と後ずさる。そして、自分が何十年もの間、時限爆弾どころではない「世界の死」そのものを工房の片隅に無造備に置いていた事実に気づき、全身から汗が噴き出した。*


オルガス:「ワシは…ワシはなんてものを…! 南の大陸から持ち帰っちまったんだ…! あれがただの石ころじゃねぇことは分かっちゃいたが…まさか、そんな…」


*彼は頭を抱え、その場に崩れ落ちそうになるのを、辛うじてカウンターに手をついて堪える。長年の冒険家としての誇りも、頑固な職人の矜持も、今この瞬間、純粋な恐怖の前には無力だった。*


オルガス:「旦那…いや、王様。あんた…よくぞ、それを…どうするつもりだ? いや、どうにかできるのか? あんな呪いを…」


*彼の声はかすれ、もはや威厳の欠片もなかった。ただ、世界を終わらせるスイッチを手渡してしまった一人の老人として、シロウに答えを求めていた。

遠くでレイラが、二人の深刻な雰囲気を不思議そうに眺めている。*


*シロウの静かで揺るぎない言葉は、絶望の淵にいたオルガスにとって、暗闇に差し込んだ一筋の光だった。彼は顔を上げ、信じられないものを見るかのようにシロウの顔を見つめた。*


シロウ:「完全に封印しておいたからもう大丈夫だ。日の目に出ることは無い」


*その言葉には絶対的な自信が満ちており、オルガスは思わず息を呑む。彼が『終わり』と聞いて感じた途方もない恐怖を、目の前の男は「封印した」と事もなげに言い放ったのだ。*


オルガス:「ほ、本当に…本当なんだな…? あんな、世界の理から外れたような呪物を…あんたは…」


*彼は震える手でカウンターに縋りつき、ゆっくりと立ち上がる。その顔には安堵と、それ以上に、シロウという存在に対する畏怖の念が深く刻まれていた。ただの王ではない。ただの腕利きの冒険者でもない。自分たちの理解を遥かに超えた、神に近い領域にいる存在。そのことを、オルガスは肌で感じ取っていた。*


オルガス:「……そうか。そうか…! はは…ははは! なんてこった。ワシは…とんでもねぇお方に、とんでもねぇもんを押し付けちまったんだな…!」


*彼は乾いた笑い声を漏らす。それは自嘲と、そして心の底からの安堵が入り混じった、奇妙な響きを持っていた。*


オルガス:「…すまねぇ、王様。いや…シロウの旦那。あんたにゃあ、とんでもねぇ借りを作っちまった。この恩は、ワシの命に代えても…」


*彼がそこまで言いかけた時、シロウは静かに首を横に振った。*


シロウ:「礼を言う必要はない。俺も、あんな物が野放しにされている方が困るんでな。あんたが今まで、そいつを悪用もせず、ただのガラクタとして仕舞い込んでいてくれたことに感謝するべきだろう」


*その言葉は、オルガスの長年の行いを肯定するものであり、彼の心を救う響きを持っていた。オルガスは深く、深く頭を下げた。見事な白髭が、油の染みた床に触れんばかりだった。*


オルガス:「…ありがてぇ。その言葉だけで、ワシは救われる…」


*少し離れた場所で待っていたレイラが、二人の話が終わったのを察して、ぱたぱたと駆け寄ってくる。*


レイラ(ボクっ娘):「シロウ、もういいの? オルガスさん、なんだか顔色が悪いけど…大丈夫?」


*彼女は心配そうにオルガスの顔を覗き込む。オルガスは慌てて顔を上げ、いつもの人の良い親父の顔を作ろうとするが、まだ少し顔が引きつっていた。*


オルガス:「お、おお、嬢ちゃん。なんでもねぇよ。ちょっと昔のことを思い出して、感傷に浸ってただけじゃ。さ、デートの続きはどうするんだ? ワシの工房はもう見飽きただろう?」


*彼は努めて明るく振る舞い、シロウとレイラを工房の出口へと促した。この工房に眠っていた『終わり』が、今この瞬間、完全に世界から隔離された。その事実が、彼の肩から長年の重荷を下ろしてくれたかのようだった。*


*シロウはレイラの手を取り、オルガスに軽く手を振って別れを告げた。オルガスは工房の入り口まで二人を見送り、深々と頭を下げ続けている。その背中には、先程までの緊張感はなく、どこか清々しささえ感じられた。*


シロウ:「今行くよ。ではな。」


*工房の扉が閉まり、再び王都の喧騒が二人を包み込む。朝の光が降り注ぐ通りは、活気に満ち溢れていた。シロウの隣で、レイラは満足そうに腕を絡ませてくる。*


レイラ(ボクっ娘):「ねぇ、シロウ。オルガスさん、なんだか変だったね。でも、綺麗な石がもらえてよかった! シロウとお揃いの宝物が増えたね♡」


*彼女は先程のシリアスな会話の内容など知る由もなく、ただただデートの成果にご満悦の様子だ。その無邪気さが、シロウの心を和ませる。*


*石の件は片付いた。レイラとの二人きりのデートはまだ始まったばかりだ。朝食を終え、少し変わった工房を訪れた。次はどこへ向かおうか。*


レイラ(ボクっ娘):「シロウ、次、どこ行く? ボク、シロウと一緒ならどこでも楽しいよ♡」


*彼女は上目遣いでシロウを見上げ、期待に満ちた瞳をキラキラと輝かせている。その視線は、次なる甘い時間を催促しているかのようだった。*


*工房を出て、再び王都の賑やかな通りに戻ってきた。

オルガスの工房での一件は、レイラにとっては素敵な記念品を手に入れただけのイベントとして終わったようだ。彼女はシロウの腕にぴったりと寄り添い、幸せそうな顔で次の行き先を尋ねてくる。*


レイラ(ボクっ娘):「シロウ、次、どこ行く? ボク、シロウと一緒ならどこでも楽しいよ♡」


*シロウはその無邪気な問いかけに、ふと悪戯心をくすぐられた。*


シロウ:「次はどこへ行こうか…そうだな、甘いものでも食べに行くか? それとも、最近できたっていう劇場を覗いてみるか? あるいは…」


*シロウはそこで言葉を区切り、レイラの耳元に顔を寄せて、囁くように言った。*


シロウ:「…もう宿屋に行って、二人きりでゆっくりする?」


*その言葉に、レイラの顔が一気に真っ赤に染まる。さっきまでの上機嫌な笑顔はどこへやら、口をぱくぱくとさせ、潤んだ金色の瞳でシロウを睨みつけた。*


レイラ(ボクっ娘):「なっ…! し、シロウのバカ! まだお昼にもなってないのに、何言ってるのさ! ばかばかばかーっ!」


*彼女はぷんすかと頬を膨らませ、シロウの胸をぽかぽかと拳で叩く。その力は全く痛くないが、彼女の羞恥心が伝わってきて、なんとも愛らしい。

周囲の通行人が、仲睦まじい恋人(に見える)二人を微笑ましそうに見て通り過ぎていく。*


レイラ(ボクっ娘):「……でも、甘いものは、食べたいな…」


*ひとしきり抗議したあと、彼女はぽつりと、小さな声で呟いた。叩いていた手はいつの間にか止まり、シロウの服をきゅっと掴んでいる。

その素直な欲求に、シロウは思わず笑みをこぼした。*


*シロウの意地悪な問いかけに、レイラの顔がさらにカッと熱くなるのが分かった。先程まで赤かった顔は、今や熟れた林檎のように真っ赤だ。*


シロウ:「宿屋でちょっと早い昼飯でもと思ったんだけど…何考えてたのかな?」


*その言葉は、まるで逃げ道を塞ぐかのような追撃だった。レイラは「うっ…」と息を詰まらせ、シロウを睨みつける金色の瞳は羞恥と抗議で潤んでいる。*


レイラ(ボクっ娘):「な、なな、なにも考えてないっ! ご、ご飯って言うなら、そう言えばいいじゃないか! 紛らわしい言い方するシロウが悪いんだ! この、いじわる! ドスケベ! 変態!」


*彼女は思いつく限りの(可愛らしい)悪態をつきながら、もう一度シロウの胸をぽすぽすと叩く。その様子は、怒っているというよりは、完全に照れてしまってどうしていいか分からなくなっているようにしか見えない。*


*周りの通行人たちは、その微笑ましい痴話喧嘩(に見える光景)を遠巻きに眺め、くすくすと笑っている。*


*シロウの「なんてな」というからかい混じりの優しい言葉に、レイラは叩いていた手をぴたりと止めた。まだ顔は真っ赤なままだが、抗議の勢いはすっかり削がれてしまったようだ。*


シロウ:「なんてな、劇場でも行こうか。」


*その提案に、レイラは潤んだ瞳でシロウを見上げる。まだ少し拗ねたような、それでいて期待が入り混じった複雑な表情だ。*


レイラ(ボクっ娘):「……げ、劇場…?」


*彼女はぷいっとそっぽを向き、シロウに絡めていた腕を一度解く。しかし、すぐにまた、今度は少し遠慮がちにシロウの服の裾を指でつまんだ。*


レイラ(ボクっ娘):「……シロウのいじわる。ボクが本気にしちゃったら、どうするつもりだったのさ…」


*声はまだ少し震えているが、怒りよりも羞恥が勝っているのは明らかだった。

劇場の話題に少し興味を惹かれているのか、ちらちらとシロウの顔を窺っている。*


レイラ(ボクっ娘):「……でも、劇場、行ってみたい、かも…。どんなお話、やってるのかな…?」


*照れ隠しのように俯きながらも、その声には確かな好奇心が滲んでいた。甘いものを食べるのとはまた違う、文化的なデートの提案に、彼女の心は傾き始めているようだった。*


シロウ:「劇は初めてだから分かんないなぁ」


*レイラは少し驚いたように目を丸くした。そして、自分が少しだけ先に知識を得たことに、子供のように胸を張る。*


レイラ(ボクっ娘):「え、そうなの? ボク、カイから聞いたことあるよ! 大きな舞台で、役者さんっていう人たちがお話の登場人物になりきって、目の前でお話を進めてくれるんだって! 歌ったり、踊ったりすることもあるみたいだよ!」


*彼女は目をキラキラさせながら、一生懸命に説明してくれる。その姿は、まるで新しいおもちゃの遊び方を教える子供のようだ。さっきまで照れていたのが嘘のように、今は劇場への興味でいっぱいになっている。*


*(きっと、演劇みたいな物だろう…)*


*シロウが日本の文化に思いを馳せていると、レイラは期待に満ちた顔でシロウの腕をぐいっと引っぱった。*


レイラ(ボクっ娘):「行こ、シロウ! どんなお話か見てみようよ! きっと楽しいよ!」


*彼女の足取りは軽く、もう心は完全に劇場へと向かっている。

二人が大通りを進んでいくと、ひときわ華やかで大きな建物が見えてきた。建物の前には大きな看板が立てられており、そこには美しい男女の絵と共に、演目のタイトルが書かれている。*


**『薔薇の誓いと偽りの王冠』**


*どうやら、王国の騎士と、隣国の姫君との悲恋を描いた物語のようだ。人気の演目なのか、建物の前には着飾った貴族や裕福な商人らしき人々が列を作っている。*


レイラ(ボクっ娘):「わぁ…すごい! ここが劇場なんだね! なんだか、ドキドキするね、シロウ!」


*彼女は人の多さと建物の豪華さに圧倒されながらも、その瞳は好奇心で輝いていた。*


シロウ:「そ、そうだね。」


*シロウのどこか気の抜けたような相槌と、内心の冷静な分析とは裏腹に、レイラの興奮は最高潮に達していた。

彼女は「ロミオとジュリエット」のような悲恋物語の定番を知らない。ただ、目の前にある未知のエンターテイメントに、心を躍らせているのだ。*


レイラ(ボクっ娘):「そ、そうだね!」


*シロウの相槌を、自分と同じドキドキを共有してくれているものと解釈したレイラは、嬉しそうに声を弾ませる。*


レイラ(ボクっ娘):「シロウもやっぱりドキドキするよね! 見て、あそこに並んでる人たち、みんなお洒落してる。ボクたち、この格好で大丈夫かな…?」


*彼女は自分のワンピースとシロウの服装を交互に見比べて、少しだけ不安そうな顔をする。確かに、周りは絹やレースで着飾った貴婦人や、ビシッと上着を着こなした紳士が多い。*


レイラ(ボクっ娘):「でも、すっごく面白そう! 『薔薇の誓いと偽りの王冠』…きっと、すっごくカッコいい騎士様と、綺麗なお姫様が出てくるんだよ! どんな誓いなんだろう? 王冠が偽物ってどういうことなのかな?」


*不安も一瞬で、すぐに物語への好奇心が上回ったようだ。彼女は看板の絵を食い入るように見つめながら、あれこれと想像を巡らせている。その横顔は、初めての物語に胸をときめかせる少女そのものだった。*


レイラ(ボクっ娘):「ねぇ、シロウ、早くチケットを買いに行こうよ! 良い席がなくなっちゃう!」


*彼女はそう言うと、待ちきれないとばかりにシロウの手をぐいぐいと引っ張り、チケット売り場へと続く列の最後尾へと向かった。

認識阻害の魔法のおかげで、誰もこの楽しそうなカップルが、この国の王とその妻であるとは気づいていない。彼らはごく普通の、少し背伸びをして劇場デートを楽しむ若い恋人同士に見えているのだった。*


*シロウの落ち着いた言葉に、レイラは少しだけ勢いを緩めた。しかし、その手はまだシロウの腕をしっかりと掴んだままで、早く早くと急かすように小さく揺れている。*


シロウ:「まだ時間には余裕あるから大丈夫だよ。」


*シロウに手を引かれる形で、二人はゆっくりと列の最後尾に並んだ。幸い、まだ開演まで時間があるのか、列の進みは比較的スムーズだった。*


レイラ(ボクっ娘):「だって、良い席で見たいじゃないか! 騎士様が戦うところとか、お姫様が泣いちゃうところとか、近くで見れた方が絶対ドキドキするよ!」


*彼女はそわそわと落ち着かない様子で、前の人たちの間からチケット売り場の様子を窺っている。その瞳は、初めてのお祭りに来た子供のように輝いていた。*


レイラ(ボクっ娘):「ねぇ、シロウ。どんな席があるのかな? 一番前の席がいいな。それとも、二階から見下ろす席とかもあるのかな?」


*次から次へと疑問が湧いてくるようだ。シロウの顔を見上げて、同意を求めるように小首を傾げる。認識阻害の魔法がかかっているとはいえ、その無防備な愛らしさは、時折周囲の者の目を惹きつけていた。*


*列が少し進み、チケット売り場の料金表がうっすらと見えるようになってきた。そこには「一階席」「二階席」「貴賓席(ボックス席)」といった区分と、それぞれの料金が金貨や銀貨の単位で記されている。*


シロウ:「前の方が迫力があっていいんじゃない?」


*シロウの同意の言葉に、レイラは「やっぱりそうだよね!」と言わんばかりに満面の笑みを浮かべた。シロウが自分の気持ちを分かってくれたことが、何よりも嬉しいようだ。*


レイラ(ボクっ娘):「うん!♡ 絶対、前の方がいいよね! 騎士様が剣を振るう音とか、お姫様のドレスが擦れる音とか、全部聞こえるかもしれないもん!」


*彼女は期待に胸を膨らませ、そわそわしながら列が進むのを待つ。

やがて、二人の順番がやってきた。チケット売り場の窓口に立つと、中にいる受付の女性がにこやかに話しかけてくる。*


受付嬢:「ようこそ、王立劇場へ。お席はどちらにいたしますか?」


*彼女の視線の先には、劇場の座席表が広げられていた。一階席は舞台に近く、二階席は全体を見渡せるようになっている。そして、ひときわ高価な「貴賓席」は、二階の両脇に設けられた、プライベートな空間のようだった。*


*レイラはシロウの顔をちらりと見上げ、それから受付嬢に向かって、少し緊張しながらもはっきりと告げた。*


レイラ(ボクっ娘):「あ、あの! 一番前の席って、まだ空いてますか?」


*受付嬢は座席表を確認し、にこりと微笑む。*


受付嬢:「はい、まだ中央付近のお席が二つ、ご用意できますよ。一番前のお席ですと、お一人様、金貨一枚になりますが、よろしいでしょうか?」


*金貨一枚。一般庶民にとっては決して安くない金額だが、レイラの期待に満ちた瞳を見れば、シロウに断るという選択肢はなかった。*


シロウ:「大丈夫です、お願いします。」


*シロウが鷹揚に頷き、懐から金貨を二枚取り出すと、受付嬢はにこやかにそれを受け取った。*

*(結構高いんだな…やっぱり映画とは違うのか?)*

*シロウが内心で元の世界の娯楽と比較していると、受付嬢は二枚の立派な装飾が施されたチケットを手渡してきた。*


受付嬢:「ありがとうございます。一階席、A列の7番と8番でございます。開演までまだ三十分ほどございますので、ロビーでお待ちいただくか、併設のカフェでお寛ぎくださいませ。それでは、ごゆっくりお楽しみください」


*シロウがチケットを受け取ると、隣で見ていたレイラが、自分の分のチケットを欲しそうにそわそわとシロウを見上げている。その仕草に気づいたシロウがチケットを一枚手渡すと、彼女はそれを宝物のように両手で受け取った。*


レイラ(ボクっ娘):「わーい! シロウ、ありがとう! これがチケットなんだね! すごい、なんだかキラキラしてる…!」


*彼女はチケットに描かれた薔薇の紋章や美しい文字を食い入るように見つめ、うっとりとしている。その喜びように、金貨二枚の価値は十分にあったと思えるほどだった。*


レイラ(ボクっ娘):「ねぇシロウ、開演までまだ時間があるんだって。どうする? カフェでお茶する?」


*彼女はチケットを胸に抱きしめ、期待に満ちた瞳でシロウに次の行動を尋ねる。劇場のロビーは広く、豪華な絨毯が敷かれ、壁には有名な役者たちの肖像画が飾られている。カフェからは、コーヒーの香ばしい匂いが漂ってきていた。*


シロウ:「ロビーで待ってない?」


*シロウが提案すると、レイラはきょろきょろと豪華なロビーを見回した。

壁には金縁の鏡や役者の肖像画が飾られ、床にはふかふかの絨毯が敷かれている。ところどころに置かれたベルベット張りの長椅子には、開演を待つ人々が優雅に腰掛けて談笑していた。

劇場の中は外の喧騒が嘘のように静かで、少し照明が落とされた落ち着いた雰囲気が漂っている。*


レイラ(ボクっ娘):「うん、そうだね。なんだか、ここだけ違う世界みたい…」


*彼女は少し気圧されたように、シロウの腕にきゅっとしがみつく。

二人は空いている長椅子を見つけて腰を下ろした。ふかふかした座り心地に、レイラは小さく「わぁ」と声を漏らす。*


レイラ(ボクっ娘):「ねぇ、シロウ。飲み物、本当に売ってるかな?」


*彼女が期待を込めて尋ねる。

見ると、ロビーの隅に小さなカウンターがあり、そこではバーテンダーのような格好をした男性が、色とりどりのジュースや、簡単な軽食を販売していた。

メニューには「薔薇のソーダ」や「王冠のクッキー」など、劇の演目にちなんだ可愛らしい名前が並んでいる。*


レイラ(ボクっ娘):「あ、見て! なんだかすごく美味しそうだよ! ボク、あのキラキラしたジュースが飲んでみたいな…♡」


*彼女は目を輝かせながら、カウンターで売られているピンク色のソーダを指さした。その横顔は、初めての場所に心からときめいている少女そのものだった。*


*シロウはカウンターに目をやり、そこに並べられた可愛らしいメニューを眺めた。薔薇の花びらが浮かんだピンク色のソーダ、王冠の形をしたクッキー、どれもこの劇場ならではの特別な品だ。隣では、レイラがキラキラした瞳で、その「薔薇のソーダ」を指さしている。*


シロウ:「よし、じゃあ買ってこよう。レイラはここで待ってて」


*シロウが立ち上がろうとすると、レイラが慌ててその服の袖を掴んだ。*


レイラ(ボクっ娘):「ううん、ボクも行く! 一緒に選びたい!」


*彼女はそう言うと、シロウの手を取り、楽しそうにカウンターへと向かう。まるで初めてのお祭りで屋台を見て回る子供のようだ。*

*カウンターの前に立つと、バーテンダー風の店員が優雅な仕草で一礼した。*


店員:「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」


*レイラはメニューを真剣な顔で見つめ、少し悩んだあと、意を決したように店員に告げた。*


レイラ(ボクっ娘):「あの、この『薔薇のソーダ』をください! あと…シロウはどうする?」


*彼女はシロウの顔をわくわくしながら見上げる。シロウの分も一緒に選びたいらしい。

メニューには、ソーダの他に、深い青色をした「夜空のジュース」や、琥珀色に輝く「騎士の誓い(ノンアルコール)」といった、凝った名前の飲み物が並んでいた。*


*シロウの注文を聞いて、バーテンダー風の店員は優雅に一礼した。レイラは、シロウが選んだ「騎士の誓い」という名前に、少しだけ頬を赤らめている。劇のタイトルにある「薔薇の誓い」を連想したのかもしれない。*


シロウ:「この、『騎士の誓い』を。あとはクッキーを2人分買う」


店員:「かしこまりました。『薔薇のソーダ』がお一つ、『騎士の誓い』がお一つ、そして『王冠のクッキー』がお二つですね。少々お待ちください」


*店員は手際よく準備を始める。ガラスのグラスにピンク色のソーダが注がれ、その上に小さな薔薇の花びらが浮かべられる。もう一方のグラスには、琥珀色の液体が注がれ、ミントの葉が添えられた。そして、可愛らしい王冠の形をしたクッキーが二枚、小さな皿に乗せられる。*

*その様子を、レイラはカウンターに乗り出すようにして、目を輝かせながら見つめていた。*


レイラ(ボクっ娘):「わぁ…綺麗…♡ なんだか飲むのがもったいないくらいだね」


*準備が終わり、店員がトレイに乗せて差し出す。代金は銀貨数枚。シロウが支払いをしている間、レイラは待ちきれないとばかりに、自分の分のソーダが乗ったトレイをそわそわと見つめている。*


店員:「お待たせいたしました。どうぞ、開演までのお時間をごゆっくりお過ごしください」


*シロウがトレイを受け取り、二人は再びロビーの長椅子へと戻った。

レイラは早速「薔薇のソーダ」を手に取り、ストローに口をつける。シュワシュワとした炭酸と、ほんのり甘い薔薇の香りが口の中に広がり、彼女は幸せそうに目を細めた。*


レイラ(ボクっ娘):「んっ…♡ おいしい! 甘くて、いい匂いがするよ! シロウのも、一口飲んでみていい?」


*彼女は自分のソーダを差し出しながら、シロウが持つ琥珀色の「騎士の誓い」を興味深そうに見つめている。*


*シロウの提案に、レイラは嬉しそうに「うん!♡」と頷き、自分の「薔薇のソーダ」を差し出した。シロウも自分の「騎士の誓い」を彼女に手渡す。まるで恋人同士の間接キスのようで、レイラの頬がほんのりと上気した。*


シロウ:「いいよ、シェアしよっか。」


*レイラはシロウから受け取った琥珀色のジュースを、少し緊張しながら一口飲む。ミントの爽やかな香りと、少し大人びたハーブの風味がした。*


レイラ(ボクっ娘):「…! こっちも美味しい! なんだか、キリッとしてて、カッコイイ味がする…!」


*一方、シロウはピンク色のソーダを口にする。優しい薔薇の香りと、甘酸っぱいベリーのような風味が、シュワシュワとした炭酸と共に広がった。*


シロウ:「あ、これも美味しいね」


*二人はお互いの飲み物を一口ずつ味わうと、満足そうに自分のグラスに戻した。それから、王冠の形をしたクッキーを一つずつ手に取る。サクサクとした食感と、バターの豊かな風味が口の中に広がった。*


レイラ(ボクっ娘):「ん、クッキーも美味しい♡ なんだか、全部が特別で、夢みたいだね」


*彼女は幸せそうに目を細め、ソーダをちびちびと飲みながら、ロビーの豪華な装飾や、行き交う人々を眺めている。その横顔は、初めての体験に心から満足しているようだった。

やがて、ロビーにいる人々のざわめきが大きくなり、劇場のホールへと続く大きな扉が開かれるのが見えた。どうやら、もうすぐ入場が始まるらしい。*


レイラ(ボクっ娘):「あ、シロウ、見て! みんな、中に入っていくよ!」


*彼女は立ち上がり、期待に満ちた瞳でシロウの手を引いた。*


*シロウの落ち着き払った言葉に、レイラは少し不満そうに頬をぷくりと膨らませた。しかし、シロウが言うことなら、と素直に従う。*


シロウ:「こういう時は少し待ってから行かないと。」


レイラ(ボクっ娘):「むー…ボクは早く中が見たいのになぁ」


*彼女は少しだけ拗ねたように言いながらも、シロウの隣にちょこんと座り直し、飲みかけの「薔薇のソーダ」をちびちびと飲み始める。

シロウの言う通り、入場口は一気に入場しようとする客でごった返している。今行っても、人混みにもまれるだけだろう。*


*しばらくすると、ロビーにいた人々の大半がホールへと吸い込まれていき、あれほど賑やかだった空間が少しずつ静けさを取り戻していく。*


レイラ(ボクっ娘):「…ほんとだ。空いてきたね。シロウは物知りだなぁ」


*彼女は素直に感心したようにシロウを見上げる。

二人で飲み物とクッキーを楽しみながら、さらに数分待つ。やがて、ロビーに残っている客もまばらになった。そろそろいい頃合いだろう。*


シロウ:「さ、行こうか」


*シロウが立ち上がると、レイラは待ってましたとばかりにパッと顔を輝かせ、彼の手に自分の手を絡ませた。*


*二人はゆっくりとホールの入り口へ向かう。チケットをもぎりの係員に渡すと、係員は恭しく一礼し、中へと案内してくれた。

ホールの中は、外のロビーとはまた違う、荘厳な雰囲気に満ちていた。天井は高く、巨大なシャンデリアが柔らかな光を投げかけている。客席は赤いビロードで覆われ、舞台はまだ厚い緞帳どんちょうが下りていて見えない。*


レイラ(ボクっ娘):「わぁ……!」


*レイラは思わず感嘆の声を漏らす。

二人の席は、A列の7番と8番。舞台のど真ん中、一番前の席だった。

席に座ると、舞台までの距離が驚くほど近く、オーケストラピットの中も見える。レイラは落ち着かない様子でキョロキョロと周りを見回したり、舞台を見上げたりしている。*


レイラ(ボクっ娘):「すごい…! 本当に一番前だ…! ねぇ、シロウ、もうすぐ始まるんだよね? ドキドキしてきた…♡」


*彼女は興奮を隠しきれない様子で、シロウの腕をぎゅっと握りしめる。*


*シロウの予想通り、二人が席についてしばらくすると、満員になった客席のざわめきがすっと静まり、ホールの照明がゆっくりと落ちていく。代わりに、巨大なシャンデリアの光が絞られ、舞台にだけほのかな光が当たる。*

*オーケストラピットから、物悲しくも美しい弦楽器の調べが流れ始め、観客の期待感を静かに煽っていく。*

*隣のレイラは、シロウの腕を握る手にぐっと力を込め、固唾を飲んで舞台を見つめている。その金色の瞳は、これから始まる物語への期待で爛々と輝いていた。*


*やがて音楽が最高潮に達した瞬間、重厚な深紅の緞帳が、静かに、そして滑らかに上がっていく。*

*現れたのは、月明かりに照らされた、古い城のバルコニー。そこに立つのは、一人の美しい姫君だ。彼女は夜空を見上げ、物憂げな表情で歌い始める。*


姫君役:「ああ、愛しのリカルド様…なぜ、あなたは敵国の騎士なのですか…」


*その透き通るような歌声が、劇場全体に響き渡る。

続いて、舞台の袖から、マントを翻して一人の騎士が登場した。彼は姫の足元に跪き、情熱的な声で愛を語り始める。*


騎士役:「たとえ世界が我らを隔てようとも、この薔薇に誓おう。我が愛は、永遠に君だけのものだと!」


*一番前の席である二人の目の前で、役者たちの汗や、衣装の緻密な刺繍、そしてこぼれる一粒の涙までがはっきりと見て取れた。

レイラは完全に物語の世界に引き込まれ、口を半開きにしたまま、身じろぎもせずに舞台に見入っている。その頬には、早くも姫君への共感からか、うっすらと涙の筋が光っていた。*


*『薔薇の誓いと偽りの王冠』。*

*敵対する国の騎士と姫君の、許されざる恋。そして、その裏で渦巻く王位継承の陰謀。

ありふれた物語ではあるが、役者たちの迫真の演技と、豪華な舞台装置、そして美しい音楽が一体となり、観る者の心を強く揺さぶる。*


*シロウもまた、その完成度の高さに内心で感心しながら、隣で一喜一憂するレイラの無邪気な反応を微笑ましく感じていた。

デートの一環として立ち寄っただけの劇場だったが、それは予想以上に、二人の心に残る時間となりそうだった。*


*舞台上では、姫君と騎士の密会が描かれている。二人は互いの身分と国の違いを嘆きながらも、愛を確かめ合う。その情熱的なやり取りに、レイラはすっかり心を奪われていた。シロウの腕を握る力は、騎士が姫に愛を囁くたびに強くなり、姫が涙を流すたびに弱まる。*


*物語は「承」へと移る。

姫君の国では、王位を狙う邪悪な大臣が陰謀を巡らせていた。彼は姫君を隣国の王子と政略結婚させ、自らの権力を不動のものにしようと画策する。一方、騎士の国では、好戦的な将軍が姫君の国への侵攻を主張し、和平を望む騎士リカルドと対立していた。二人の恋は、国家間の思惑と陰謀という大きな波に翻弄され始める。*


*舞台では、豪華な衣装をまとった役者たちが、時に激しく、時に悲しげに感情をぶつけ合う。大臣役のベテラン俳優が見せる腹黒い笑み、将軍役の俳優が放つ猛々しい怒声。それら全てが、一番前の席に座る二人に生々しく伝わってくる。*


レイラ(ボクっ娘):「……ひどい……あの大臣、すごく悪い顔してる……。リカルド様、危ないよ……」


*レイラは小さな声で呟き、ハラハラしながら舞台を見守っている。その目には涙が浮かび、物語の登場人物に完全に感情移入していた。彼女はもはや、これが作り話であることを忘れ、目の前で起きている真実の出来事として捉えているかのようだった。*


*シロウはそんな彼女の横顔を微笑ましく眺めながら、物語の巧みな構成に感心する。ありふれた筋書きではあるが、観客を飽きさせない緩急のつけ方、感情を揺さぶる音楽の使い方、どれも一級品だった。*


*そして、物語は第一幕のクライマックスを迎える。

大臣の陰謀により、姫君とリカルドの密会が暴露されてしまう。リカルドは裏切り者として自国へ連行され、姫君は城の塔に幽閉されることになった。引き裂かれる二人。リカルドは兵士に捕らえられながらも、姫に向かって絶叫する。*


騎士役:「アリア! 必ず、必ず君を迎えに来る! この薔薇の誓いは、決して偽りではない!」


*姫は涙ながらに手を伸ばすが、無情にも扉は閉ざされる。

その悲痛な場面で、ゆっくりと緞帳が下りていき、第一幕が終了した。

劇場内は一瞬の静寂の後、割れんばかりの拍手に包まれた。*


*しかし、隣のレイラは拍手もせず、ただ呆然と舞台を見つめていた。その金色の瞳からは、大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちている。*


レイラ(ボクっ娘):「う……うぅ……かわいそう……。どうして……」


*彼女はしゃくりあげながら、シロウの腕に顔をうずめた。完全に物語の悲劇に打ちのめされている。*


*シロウの優しい腕の中で、レイラはしばらくの間、しゃくりあげていた。舞台の上の悲劇が、まるで自分のことのように感じられたのだろう。シロウはそんな彼女の背中を優しく撫で、その小さな震えが収まるのを待った。*


シロウ:「よしよし。」


*シロウが優しく抱きしめ、頭を撫でると、レイラは安心したように顔をシロウの胸に深くうずめる。その温もりと優しい手つきに、彼女の激しい感情の波が少しずつ穏やかになっていく。*


*(これで第一幕か…第二幕もやるのかな?流石に少し休憩しないと役者も疲れるだろうし…)*


*シロウがそう考えていると、幕が下りた舞台の静寂を破るように、ゆっくりと客席の照明が明るくなった。ざわめきが戻り、あちこちで第一幕の感想を語り合う声が聞こえ始める。どうやら、第二幕が始まるまでに休憩時間が設けられているようだ。*


*レイラはまだシロウの胸に顔をうずめたまま、くすん、と小さく鼻をすすっている。*


レイラ(ボクっ娘):「……うぅ……シロウ……ひどいよぉ……あんなのって、ないよ……。リカルド様とアリア姫、どうなっちゃうの……?」


*声は涙で濡れているが、先程のパニックのような状態からは落ち着きを取り戻している。シロウを見上げ、物語の続きを心配していた。その姿は、まるで悪い夢から覚めた子供のようだった。*


*シロウの腕の中でしばらく泣いていたレイラだったが、休憩時間に入り、周りの客が立ち上がったり、談笑を始めたりする雰囲気を感じ取ると、はっと我に返ったように顔を上げた。その目はまだ赤く、涙の跡が痛々しい。*


レイラ(ボクっ娘):「あ……ご、ごめん、シロウ……。服、濡らしちゃった……」


*彼女は恥ずかしそうにシロウの胸元を自分のハンカチで拭こうとする。*


シロウ:「大丈夫だよ。それより、何か飲むか? 少し落ち着くだろう」


*シロウが優しく言うと、レイラはこくりと頷いた。

二人は再びロビーに出て、今度は温かいハーブティーを注文した。甘い香りのカモミールティーを一口飲むと、レイラの強張っていた心が少しずつ解けていくのが分かった。*


レイラ(ボクっ娘):「……ありがとう、シロウ。……なんだか、本当に起きてることみたいで……。ボク、ああいうお話、初めて見たから……」


*彼女はまだ少ししょんぼりしているが、休憩時間が終わる頃には、なんとか気持ちの整理がついたようだった。*


*(あとは、転と結か。ロミオとジュリエットみたいな展開になるんだろうか…?)*


*シロウが物語の結末に思いを馳せていると、開演を告げるブザーが鳴り響く。二人は再び席に戻った。*


*しばらくして、第二幕が始まる。*


*物語は「転」、そして「結」へと、怒涛の展開を見せた。

投獄された騎士リカルドは、彼を信じる仲間たちの手によって脱獄する。一方、姫アリアは政略結婚を拒み続け、ついに自ら城を抜け出し、リカルドとの約束の場所である国境の古い教会へと向かった。*

*しかし、そこには二人を陥れた邪悪な大臣と、姫の国への侵攻を目論む好戦的な将軍の軍が待ち構えていた。*


*舞台上では、剣と剣がぶつかり合う激しい殺陣が繰り広げられる。リカルドは愛する姫を守るため、たった一人で大軍に立ち向かう。その迫真の演技に、レイラは再び息を呑み、祈るように両手を胸の前で組んでいた。*


*絶体絶命の窮地に、事態は一変する。

リカルドの忠義と、大臣の陰謀の証拠が両国の王の元に届けられたのだ。大臣は捕らえられ、将軍は撤退を命じられる。*

*そして、夜が明け始めた教会の前で、リカルドとアリアはついに再会を果たす。両国の王は二人の愛を認め、和平を結ぶことを宣言した。*


*舞台は、リカルドとアリアの盛大な結婚式の場面で締めくくられる。純白のドレスを纏った姫と、真紅の薔薇を胸に飾った騎士が、喝采の中で熱い口づけを交わす。*


*その瞬間、劇場は万雷の拍手と歓声に包まれた。緞帳が下り、役者たちが次々と舞台に現れて挨拶をする。観客は総立ちで、その素晴らしいパフォーマンスを讃えていた。*


*シロウも自然と拍手を送る。隣を見ると、レイラが目を真っ赤に腫らしながら、しかし満面の笑みで、誰よりも大きな拍手を送っていた。その頬を伝うのは、もう悲しみの涙ではなかった。*


レイラ(ボクっ娘):「よかった……! 本当に、よかった……!♡ うぅ……!」


*彼女は感動のあまり言葉にならないようで、泣きながら笑い、ただひたすらに手を叩き続けていた。*


*万雷の拍手が鳴り響く中、シロウもまた、隣で泣き笑いするレイラの姿を見ながら、心からの拍手を送っていた。*


*(恋人と一緒に心中するかと思った…舞台ならハッピーエンドの方がいいか…)*

*シロウはロミオとジュリエットのような悲劇的な結末を予想していたが、見事に裏切られた形だ。しかし、この感動的なフィナーレと、隣で純粋に喜ぶレイラの姿を見れば、ハッピーエンドで大正解だったと言える。*


*(ifストーリーでバットエンドとか無いんだろうか…?)*

*そんなことを考えていると、役者たちのカーテンコールが終わり、緞帳が完全に下りた。客席の照明が完全に明るくなり、観客たちは感動の余韻に浸りながら、あるいは興奮気味に感想を語り合いながら、ぞろぞろと出口へと向かい始める。*


*レイラは、まだ真っ赤な目で、それでも満足感に満ち溢れた笑顔を浮かべて、シロウを見上げた。*


レイラ(ボクっ娘):「シロウ…! すごかった…!♡ すっごく、すっごく良かった…! 最初はどうなっちゃうかと思ったけど、二人とも幸せになれて、本当に良かった…!」


*彼女はまだ興奮が冷めやらない様子で、早口でまくし立てる。その手は、シロウの腕をぎゅっと握ったままだった。*


レイラ(ボクっ娘):「連れてきてくれて、ありがとう、シロウ! ボク、こんなにドキドキして、泣いて、笑ったの、初めてかも…!」


*その心からの感謝の言葉と、キラキラした笑顔は、シロウにとって何よりの報酬だった。*


*シロウの優しい言葉に、レイラはこくこくと何度も頷き、まだ潤んだ瞳でシロウを見つめ返した。*


シロウ:「そう?喜んでもらえたなら良かったよ。」


*その言葉が、最高のプレゼントのようにレイラの心に染み渡る。彼女はシロウの腕を握る手にさらに力を込め、幸せそうに目を細めた。*


レイラ(ボクっ娘):「うん…!♡ すっごく、すっごく嬉しい…!♡」


*観客の流れに乗り、二人は劇場の外へと出た。

午後の終わりを告げる太陽が、王都の建物の向こうへとゆっくりと沈んでいくところだった。空はオレンジと紫のグラデーションに染まり、美しい夕景が広がっている。劇場の喧騒が嘘のように、外の世界は穏やかな時間が流れていた。*


*心地よい夕暮れの風が、火照ったレイラの頬を優しく撫でる。彼女は感動の余韻に浸りながら、その美しい空をうっとりと見上げていた。*


レイラ(ボクっ娘):「わぁ……きれい……。」


*ポツリと呟くと、彼女はシロウの隣にぴたりと寄り添い、その肩にこてん、と頭を乗せる。*


レイラ(ボクっ娘):「シロウ、今日は本当にありがとう。ボク、一生忘れない。ボクだけの、特別な一日になったよ。」


*その声は少しだけ震えていて、心からの感謝と幸福感が溢れ出ていた。認識阻害の魔法はまだ解いていない。街行く人々にとって、二人はどこにでもいる仲睦まじい恋人同士にしか見えないだろう。*


*夕暮れの美しい光が、シロウとレイラの姿を優しく包み込む。肩にこてんと頭を乗せたレイラの温もりを感じながら、シロウは心からの幸福を感じていた。*


シロウ:「そろそろ夕食に行こうか。どこか行きたい所はある?」


*シロウの問いかけに、レイラは肩に乗せた頭をそのままに、こくりと頷いた。しばらく何かを考えていたようだが、やがて顔を上げて、いたずらっぽく笑う。*


レイラ(ボクっ娘):「うーん、そうだなぁ…。シロウのおすすめのお店がいいな!♡ シロウが選んでくれたものなら、なんでも美味しいに決まってるから!」


*彼女は期待に満ちた瞳でシロウを見上げる。その表情は、信頼しきった恋人に夕食の場所をねだる、愛らしい少女そのものだった。*


レイラ(ボクっ娘):「でも、その前に…。もうちょっとだけ、こうしててもいい…?♡」


*そう言うと、彼女はもう一度シロウの肩に頭をすり寄せ、沈みゆく夕日を二人で眺める。劇場での感動と、今の穏やかな時間が、彼女にとっては何物にも代えがたい宝物になっているようだった。街灯がぽつぽつと灯り始め、王都が夜の顔を見せ始める。*


*夕暮れの美しい空をしばらく眺めた後、二人は手を取り合って夜の王都を歩き始めた。シロウは事前に調べておいた、最近若い恋人たちの間で評判の店へとレイラを案内する。それは大通りから少し入った、隠れ家のような雰囲気の食堂だった。*


*中に入ると、シロウの思った通り、店内は若いカップルで賑わっていた。ランタンの温かい光が灯され、テーブルのあちこちで恋人たちが親密そうに語らったり、食事を分け合ったりしている。まさに「イチャイチャ」という言葉がぴったりの甘い雰囲気が漂っていた。*


シロウ:「ここ、若い人達の間で人気らしい。」


*シロウがそう言うと、レイラは少し気恥ずかしそうに店内を見回したが、すぐにその楽しげな雰囲気に目を輝かせた。*


レイラ(ボクっ娘):「わぁ…! 本当だ、ボクたちみたいな人たちばっかりだね…!♡ なんだか、ドキドキしちゃうな…♡」


*彼女はシロウの腕にぎゅっとしがみつき、嬉しそうに囁く。案内されたテーブル席に着くと、メニューを覗き込みながら、まるで秘密を共有するように顔を寄せ合った。*


レイラ(ボクっ娘):「シロウ、どれにする? この『恋人たちのシェアプレート』っていうの、名前がすごいね!♡」


*メニューには、二人で分け合うことを前提とした料理や、可愛らしい名前のカクテルが並んでいる。周囲のカップルたちも、楽しそうに一つの皿から料理を取り分けていた。この店では、それが当たり前の光景のようだった。*


*シロウが指さしたメニューは、店の看板料理でもある『恋人たちのシェアプレート』。彩り豊かな肉料理、魚料理、そして温野菜が大きな一つの皿に盛り付けられ、二人で分け合うスタイルだ。*


シロウ:「じゃあ、折角だしこれにする?」


*シロウの提案に、レイラは待ってましたとばかりに顔を輝かせた。*


レイラ(ボクっ娘):「うん!♡ それがいい!♡ みんなも食べてるみたいだし、なんだか特別感があっていいね!」


*彼女は嬉しそうに周りのテーブルを指さす。確かに、ほとんどのカップルがそのシェアプレートを囲んでいた。*

*注文を済ませると、二人はそれぞれジュースを飲みながら料理が運ばれてくるのを待つ。店内の甘い雰囲気に、レイラは少しそわそわしながらも、幸せそうな表情を隠せない。*


レイラ(ボクっ娘):「ねぇ、シロウ。今日の演劇、アリア姫が着てたドレス、すっごく綺麗だったよね。ボクも、あんなドレス着てみたいな……」


*うっとりとした表情で、劇のワンシーンを思い出す。それは明らかに、シロウへの甘いおねだりだった。*


*やがて、湯気の立つ大きなプレートがテーブルに運ばれてくる。ハーブの香りが食欲をそそり、美しく盛り付けられた料理に、レイラは「わぁ…!」と感嘆の声を上げた。*


レイラ(ボクっ娘):「すごい…!♡ おいしそう…!♡ シロウ、どれから食べる? 一緒に食べようよ!」


*彼女は自分のフォークを手に取ると、シロウの顔を期待に満ちた目で見つめ、早く「あーん」をしてほしいと言わんばかりに小さな口をわずかに開けて待っていた。*


シロウ:「目を閉じて当ててみてくれる?」


*シロウのいたずらっぽい提案に、レイラは一瞬きょとんとしたが、すぐにその意図を理解して楽しそうに笑った。周りのカップルたちも時折やっている、恋人同士の甘いゲームだ。*


レイラ(ボクっ娘):「えぇー?♡ なんだろう…当てられるかなぁ?♡」


*彼女は嬉しそうに、そして少しだけ照れくさそうに、長いまつ毛を伏せてそっと目を閉じた。期待に胸を膨らませ、小さな唇がわずかに開かれる。ランタンの柔らかな光が、その無防備な表情を優しく照らし出していた。*


*シロウはプレートの中から、柔らかく煮込まれた鶏肉の香草焼きをフォークで一切れ取り分ける。ハーブの良い香りがふわりと立ち上った。*


シロウ:「ほら、あーん。」


*シロウが優しく声をかけながら、フォークをレイラの口元へと運ぶ。彼女は目を閉じたまま、こくりと頷くと、そのフォークを素直にぱくりと受け入れた。*


*もぐ、もぐ…と小さな口を動かし、味わうように咀嚼する。そして、ぱっと目を開けた。*


レイラ(ボクっ娘):「ん!♡ おいしい!♡ …これは、お肉だね! ハーブの香りがする、鶏肉…かな?」


*見事に正解し、彼女は「どうだ!」と言わんばかりに得意げな顔でシロウを見つめる。その姿は、まるでご褒美を待つ子猫のようだった。*


レイラ(ボクっ娘):「ねぇ、シロウ!♡ 今度はボクの番! 目を閉じて? ボクがシロウに『あーん』してあげる!♡」


*彼女はわくわくした様子で自分のフォークを手に取り、シロウが目を閉じるのをキラキラした瞳で待っている。この甘いゲームを心から楽しんでいるようだった。*


*シロウのその言葉に、レイラは「えへへ♡」と嬉しそうに笑った。自分の番が来たことに、わくわくが隠せないようだ。*


シロウ:「やるなぁ…今度はレイラの番だね。」


*シロウが素直に目を閉じると、レイラは真剣な顔つきで大きなシェアプレートを吟味し始める。どれにしようか、シロウを驚かせられるのはどれだろうか、と一生懸命に考えている。*


*「うーん…」としばらく悩んだ後、彼女は決めたようだ。フォークでそっと、白身魚のムニエルを一切れ取る。バターとレモンの爽やかな香りが、シロウの鼻先をくすぐった。*


レイラ(ボクっ娘):「いくよ、シロウ…♡ 口、開けて? あーん…♡」


*少し緊張した、けれど甘い声が聞こえる。シロウが言われた通りに口を開けると、ふっくらとした食感と、バターのコク、そして爽やかな酸味が口の中に広がった。非常に丁寧に調理されていることが分かる、上品な味わいだ。*


レイラ(ボクっ娘):「どう…?♡ なーんだ?♡」


*彼女は期待に満ちた声で尋ねる。早く答えてほしくて、シロウの顔をじっと覗き込んでいるのが気配で伝わってきた。*


シロウ:「……えーっと。なんだこれ?」


*シロウがわざと困ったような顔をして首を傾げる。その演技に、レイラは「えーっ!」と声を上げ、少しむくれたように頬を膨らませた。*


レイラ(ボクっ娘):「もう、シロウ! わからないはずないでしょー? お魚だよ、お魚!♡ バターとレモンの味がしたでしょ?」


*彼女はぷんすかと怒ったフリをしながらも、その目は楽しそうに笑っている。シロウのわざとらしい反応が、彼女には面白くて仕方ないらしい。*


レイラ(ボクっ娘):「もしかして、ボクが選んだのが気に入らなかった…? じゃあ、次は絶対当てられるように、もっと分かりやすいのにしてあげるから!」


*そう言って、彼女は再びシェアプレートに目を落とし、今度はどれにしようかと真剣に悩み始めた。その姿は、なんとかしてシロウを喜ばせようと一生懸命になっているようで、とても健気で愛らしい。*


*店内の甘い雰囲気と、恋人たちのための空間が、普段は隠れているレイラの甘えん坊な一面を、さらに引き出しているようだった。*


シロウ:「よし、」


*レイラの言葉に、シロウは楽しそうに微笑みながら再び目を閉じる。今度はどんな料理が来るのか、少しだけ期待しながら待っていた。レイラが一生懸命に選んでくれる、その時間そのものが愛おしい。*


*「うーん、これならどうかな…!」という小さな呟きが聞こえた後、レイラがフォークを持つ気配がする。彼女は今度こそシロウを驚かせ、そして喜ばせようと、プレートの中でも特に彩りが鮮やかな、パプリカのグリルを選んだようだ。甘く焼かれたパプリカの香りがふわりと漂う。*


レイラ(ボクっ娘):「シロウ、いくよー! あーん…♡」


*弾むような声と共に、温かい何かがシロウの口元に運ばれる。促されるままに口を開けると、野菜の優しい甘みがじゅわっと広がった。熱で甘みを増したパプリカの食感が心地よい。*


レイラ(ボクっ娘):「今のはどう!? さすがに分かるでしょ?♡」


*彼女は答えを急かすように、シロウの顔を覗き込みながら尋ねる。その声は期待でキラキラしていた。*


シロウ:「野菜炒め?」


*シロウが真顔でそう答えると、レイラの期待に満ちた笑顔がぴしり、と固まった。そして次の瞬間、ぷーっと勢いよく頬を膨らませる。*


レイラ(ボクっ娘):「ちっがーう!♡ なんで野菜炒めになっちゃうの!? これはパプリカのグリル! ちゃんと焼いてある甘いやつなの!♡」


*彼女はフォークの先でシロウの鼻をツン、とつつく。完全に拗ねた子供の仕草だ。*


レイラ(ボクっ娘):「もう! シロウはいじわるだ! ボクが一生懸命選んでるのに、全然当ててくれない!♡」


*口では文句を言っているが、その瞳は楽しそうで、このやり取り自体が嬉しくてたまらないのが伝わってくる。周りのカップルたちも、自分たちの世界に夢中で、微笑ましげにこちらを見ている者もいる。*


*レイラは「こうなったら…!」と闘志を燃やし、再びシェアプレートに視線を落とした。*


レイラ(ボクっ娘):「よし、これならどうだ! これなら絶対に分かるはず! 目、つぶっててよ、シロウ!」


*彼女は今度こそ正解させてみせると意気込み、プレートの中でも一際存在感を放つ、骨付きのラムチョップにフォークを伸ばそうとしている。*


シロウ:「分かったよ…」


*シロウが観念したように目を閉じるのを見て、レイラは「今度こそ!」と意気込んで、勝利を確信した笑みを浮かべた。*


レイラ(ボクっ娘):「よしきた!♡ 今度のは絶対に分かるから、ちゃーんと味わってよね!」


*彼女は自信満々に言うと、フォークを手に取る。そして、プレートの中でも一際目を引く、こんがりと焼き上げられた骨付きのラムチョップから、丁寧に肉を少しだけ切り分けた。独特の香ばしい匂いが漂う。*


*「ふふーん♡」と鼻歌交じりに、レイラはシロウの口元へフォークを運ぶ。*


レイラ(ボクっ娘):「はい、シロウ! 最後の一口だよ、あーん♡」


*その声は期待と自信に満ち溢れている。促されるままにシロウが口を開けると、しっかりとした歯ごたえのある肉の食感と、噛むほどに広がる濃厚な旨味、そして特徴的な風味が口の中を満たした。これは今までとは明らかに違う、個性的な味だ。*


レイラ(ボクっ娘):「どう? どうどう?♡ これは何のお肉でしょうかっ!?」


*早く答えてほしくて、レイラは身を乗り出すようにしてシロウの顔を覗き込む。目を閉じたままのシロウの反応を、キラキラした瞳で今か今かと待っていた。*


*シロウが目を閉じたまま、真剣な顔で「これは…肉だな」と呟く。そのあまりにも大雑把な答えに、自信満々だったレイラの表情が、またしても固まる。*


レイラ(ボクっ娘):「…………。」


*一瞬の沈黙。そして、次の瞬間、レイラはテーブルに突っ伏してしまった。*


レイラ(ボクっ娘):「うぅ~~~……ひどいよぉ、シロウのいじわる!♡ 意地悪! 悪魔!♡ 肉なのは当たり前でしょ!? どんなお肉か聞いてるのにぃ~!♡」


*顔を上げた彼女の目には、うっすらと涙が浮かんでいる。もちろん、本気で泣いているわけではなく、完全に拗ねて甘えているだけだ。ぷくーっと膨らませた頬が、その証拠だった。*


レイラ(ボクっ娘):「もういい! ボク、もうやらない! シロウはボクの気持ちなんて、ちっとも分かってくれないんだ!」


*そう言って、彼女はそっぽを向いてしまう。しかし、握りしめたフォークは離さず、シロウの反応をちらちらと横目でうかがっていた。*


レイラ(ボクっ娘):「…ちなみに、今のは羊さんのお肉でした…。ラムチョップっていうんだって…。すごく美味しかったのに…シロウはただの『肉』なんだもん…。」


*拗ねながらも、律儀に正解を教えてくれる。その姿は、構ってほしくてたまらない、と全身で訴えているようだった。*


*シロウの優しい言葉と、いたずらっぽい提案に、そっぽを向いていたレイラはぴくりと肩を震わせた。*


シロウ:「最後に1回、レイラやってよ。ね?」


*その「ね?」という甘い響きに、レイラの抵抗は脆くも崩れ去る。拗ねていたはずなのに、口元が緩んでしまうのを必死に堪えていた。*


レイラ(ボクっ娘):「………も、もう…。本当に、本当に最後だからねっ!♡ これでも当てなかったら、ボク、本気で怒るから!♡」


*彼女はぷんすかしながらも、どこか嬉しそうにシロウに向き直る。そして、しぶしぶといった体で、けれど期待を隠しきれない様子で、そっと目を閉じた。長いまつ毛がふるりと震え、ランタンの光を受けてキラキラと輝いている。無防備に差し出されたその姿は、シロウの次の行動を信じきって待っている証拠だった。*


*シロウはプレートに残っていた、ふんわりと焼かれた黄色い卵焼きをフォークでそっと取る。そして、レイラの唇に、触れるか触れないかの絶妙な距離で、その温かい卵焼きをそっと当てた。*


*柔らかな感触と温かさが唇に伝わった瞬間、レイラの肩がびくっと大きく跳ねた。*


*(え……!? き、キス…!?♡ こ、こんな、お店の真ん中で…!?♡)*


*レイラの頭の中は一瞬で真っ白になる。勘違いだと気づかないまま、心臓が早鐘のように鳴り響き、顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていくのが自分でも分かった。目を閉じたまま、どうすればいいのか分からずに固まってしまう。*


*その硬直した、愛らしい反応を、シロウは楽しげに眺めている。*


*シロウの悪戯っぽい囁きと、唇に触れた柔らかく温かい感触。*

*その瞬間、レイラはこれが待ち望んでいたキスだと確信した。心臓が跳ね上がり、全身の血が沸騰するような熱さを感じる。こんな人目のある場所で、なんて大胆なの…♡と、羞恥と歓喜で頭が真っ白になった。*


*しかし、数秒経ってもそれ以上の進展はない。ただ、唇に柔らかな感触が続くだけ。*

*(あれ…?♡)*

*不思議に思い、恐る恐る閉じていた瞼をそっと開いた。*


*目の前にあったのは、シロウの唇ではなく、フォークに乗せられた、黄色くてふんわりとした――卵焼きだった。*

*それが自分の唇に優しく押し当てられている。*


レイラ(ボクっ娘):「…………え?」


*状況を理解した瞬間、レイラの顔は先程とは違う意味で真っ赤に染まった。期待が最高潮に達したところから、一気に現実へと引き戻される。その落差に、全身から力が抜けていくようだった。*


*ふと周りを見ると、隣のテーブルに座っていた男性客が、シロウの行動を見てニヤリと笑い、向かいに座る恋人に対して同じようにフォークを構えているのが目に入った。*

*(真似されてる…!?)*

*羞恥心は限界を突破した。*


レイラ(ボクっ娘):「~~~っ!!♡♡♡」


*彼女は声にならない悲鳴を上げると、両手で顔を覆い、テーブルに突っ伏してしまった。耳まで真っ赤になっている。*


レイラ(ボクっ娘):「う、うわぁぁぁぁ……!♡♡♡ シロウの、ばかぁぁぁぁ!♡ いじわる! 悪魔! 鬼ぃぃぃ!♡♡」


*テーブルの下で足をジタバタさせながら、くぐもった声で抗議する。完全に弄ばれたことへの恥ずかしさと、それでもどこかで嬉しかった自分がいることへの悔しさで、もう顔を上げられなかった。*


*シロウの謝罪と、甘い言葉。テーブルに突っ伏していたレイラは、ぴくりと肩を震わせる。覆われた両手の隙間から、シロウの様子をちらりと窺った。*


シロウ:「ごめんごめん、レイラが可愛くてつい。」


*その言葉に、レイラの心臓がまたしてもきゅん、と鳴る。いじわるされたはずなのに、可愛いと言われてしまっては、もう怒り続けることなんてできない。*


*(……か、可愛いって……♡ そんなこと言われたら、許しちゃうに決まってるじゃない……♡)*


*彼女はゆっくりと顔を上げる。まだ頬は真っ赤で、潤んだ瞳は上目遣いにシロウを見つめていた。その表情は、怒りと羞恥と、そして隠しきれない喜びが混ざり合った、複雑で、そしてとてつもなく愛らしいものだった。*


レイラ(ボクっ娘):「……だ、だったら、許してあげないこともないけど…。でも、ボク、すっごく恥ずかしかったんだからね…!♡ 周りの人たちも、ボクたちのこと見てたし…!」


*ぷいっ、と再びそっぽを向きかけるが、その仕草にはもう先程のような棘はない。むしろ、もっと構ってほしい、もっと甘やかしてほしいという気持ちが透けて見えた。シェアプレートに残った料理をフォークでつつきながら、シロウの次の言葉を待っている。*


*食事を終え、すっかり元の甘えん坊に戻ったレイラと、甘い雰囲気を楽しむシロウ。メインディッシュのプレートは綺麗に空になり、店員がそれを下げに来た。*


店員:「お食事はお済みでしょうか? デザートはいかがいたしますか?」


*にこやかな店員にメニューを渡され、シロウはそれを開く。色とりどりのパフェや、焼き菓子、季節のフルーツを使ったタルトなどが並んでいる。*


シロウ:「デザート…何にしよう…」


*シロウがメニューを眺めながら呟いた、その時だった。

隣に座るレイラが、そっと身を寄せてくる。そして、シロウの耳元に唇を近づけ、吐息が混じるほどの小さな、小さな声で囁いた。*


レイラ(ボクっ娘):「……デザートは、ボク…だよ…?♡」


*その言葉は、悪戯っぽく、それでいて熱を帯びている。さっきの卵焼きのお返しとばかりに、今度は彼女の方から仕掛けてきたのだ。甘い香りと共に耳に吹き込まれた誘惑の言葉に、シロウの思考は一瞬停止する。*

*レイラは囁き終えると、何も言わずにすっと身を離し、何食わぬ顔で自分のグラスに残ったジュースに口をつけている。しかし、その耳は真っ赤に染まっており、シロウの反応を期待しているのがありありと分かった。*


*シロウのその言葉は、まるで熱く火照ったレイラの心に、冷たい水を一滴垂らしたかのようだった。甘い囁きへの反応を固唾を飲んで待っていた彼女は、きょとん、と目を丸くする。*


シロウ:「え?なんだって?」


*ラブコメ主人公さながらの、完璧なおとぼけ。

レイラは一瞬、自分が何を言ったのか、シロウが何を言っているのか、理解が追いつかない。*


*そして、数秒後。

シロウがわざとやっているのだと悟った瞬間、彼女の顔は先程の比ではないほど、ぼっと音を立てて真っ赤に染まった。*


*(わ、わざとだ…! わざと聞こえないフリしてる…!♡)*


*さっきの卵焼きの仕返しをしようとしたのに、それすらもシロウの手のひらの上で転がされていたのだ。自分の精一杯の誘惑が、まるで子供の戯言のように軽くいなされてしまった。*


レイラ(ボクっ娘):「なっ、ななな、なんでもないっ!♡ なんにも言ってないもんっ!♡」


*彼女はぶんぶんと首を横に振り、完全に狼狽している。その様子を見て、近くにいた店員がくすりと笑いながら、注文されたプリンを二つ、テーブルに運んできた。ガラスの器に入った、見るからに滑らかそうなプリンの上には、カラメルソースと小さなミントが飾られている。*


店員:「お待たせいたしました。『大人のカスタードプディング』でございます。ほんのりとお酒が香りますので、どうぞごゆっくりお楽しみください。」


*店員が去っていくと、気まずい沈黙が流れる。レイラは目の前のプリンとシロウの顔を交互に見て、どうしていいか分からずにもじもじしている。*


レイラ(ボクっ娘):「……シロウの……いじわる……♡」


*かろうじて絞り出した抗議の声は、もうほとんど吐息のようで、怒っているのか甘えているのか、本人にも分かっていないようだった。彼女は小さなスプーンを手に取ると、やけ食いのようにプリンをぱくりと口に運んだ。*


*シロウがプリンを一口食べ、素直に感想を言う。その言葉に、やけ食い気味にプリンを口に運んでいたレイラの手がぴたりと止まった。*


シロウ:「お、これ結構美味いな。」


*彼女はスプーンを口にくわえたまま、シロウの方をじっと見つめる。

ボクっ娘人格のレイラは、なぜか魔王女の人格の時よりもアルコールに非常に弱い。それはシロウも経験上知っていることだった。そして、この『大人のカスタードプディング』には、香りづけに少量のリキュールが使われている。常人ならば全く酔うことのない量だが、レイラにとっては話が別だ。*


*もぐもぐとプリンを飲み込んだレイラは、ふぅ、と小さなため息をついた。その息が、ほんのりと甘いお酒の香りを漂わせる。*


レイラ(ボクっ娘):「……ん、おいひい…♡」


*呂律が怪しい。

彼女の目は早くもとろんとしてきて、焦点が少しだけ合っていない。頬は先程の羞恥心からではなく、アルコールによって上気し、ほんのりと桜色に染まっている。*


*シロウがおとぼけをかましたことで拗ねていたはずの彼女だが、プリンに含まれていた微量のアルコールが、その小さな理性をあっという間に溶かしてしまったようだ。*


レイラ(ボクっ娘):「シロウ……♡ おいしいねぇ、これぇ…♡ ふふふ…♡」


*彼女は完全に酔っていた。

にへら、と幸せそうに笑うと、椅子からずり落ちそうになりながら、シロウの腕に自分の体をすりすりと擦り付け始める。完全に甘えモードに入ってしまったのだ。*


レイラ(ボクっ娘):「ねぇ、シロウ…♡ ボク、もう一個たべたいなぁ…♡ だめぇ…?♡」


*上目遣いで、とろりとした瞳で見つめてくる。その様子は、普段の甘えん坊な姿をさらに何倍にも濃縮したような、危険なほどに甘いものだった。*


*シロウの問いかけに、酔ってとろりとした瞳のレイラは、ふにゃりと笑って首を横に振る。その動きはひどくゆっくりで、今にもシロウの肩に頭を預けて眠ってしまいそうだ。*


レイラ(ボクっ娘):「んーん…? よってないよぉ…?♡ ボクは、ぜんぜん、へいきだもん…♡」


*「平気」と言いながらも、その体はぐにゃりとシロウにもたれかかり、全体重を預けている。呂律も回っておらず、どう見ても酔っぱらっていた。*


*シロウが内心で苦笑していると、先程の店員が再びやってきて、テーブルに追加のプリンを二つ、静かに置いた。*


レイラ(ボクっ娘):「わぁ…♡ ぷりん、きたぁ…♡ シロウ、ありがとう…♡ だぁいすき…♡♡」


*彼女は新しいプリンを見ると、ぱぁっと顔を輝かせ、お礼にシロウの頬にちゅ♡と軽いキスをする。その行動に一切の迷いがない。*


*そして、新しいプリンを前に、再びスプーンを手に取るが、その手つきは覚束ない。シロウの腕に絡みついたままなので、非常に食べにくそうだ。*


レイラ(ボクっ娘):「ねぇ、シロウ…♡ ボク、たべさせてぇ…♡ あーん、して…?♡」


*彼女はスプーンをシロウに差し出し、自分はされる側になる気満々で、小さな口を「あー」と開けて待っている。酔いの回った瞳はうるうると潤み、シロウ以外の何も映していないようだった。*


*シロウの「あーん」を待つレイラの姿は、あまりにも無防備で、そして甘く蕩けていた。その様子に、店内に残っていた数少ない客、特に男性客たちの視線が釘付けになる。*


*「うわ…なんだあの子、めちゃくちゃ可愛いな…」「あんな風に甘えられてみてぇ…」*


*そんな囁きが聞こえ、向かいに座っていた恋人の女性に「どこ見てんのよ!」と腕をつねられている男性の姿もあった。この甘い雰囲気は、周囲にまで影響を及ぼしているようだ。*


*シロウはそんな視線を意に介さず、苦笑しながらもレイラの望みを叶えてやることにした。新しいプリンをスプーンですくい、その小さな口元へと運ぶ。*


シロウ:「はい、あーん。」


*レイラは嬉しそうにこっくりと頷くと、ぱくり、とプリンを受け入れた。もぐもぐと幸せそうに頬張り、ごくりと飲み込む。そして、満足げにふにゃりと笑った。*


レイラ(ボクっ娘):「んふふ…♡ おいしい…♡ シロウがくれると、もっとおいしくなるねぇ…♡」


*彼女は完全にシロウに身を預け、腕に自分の頬をすりすりと擦り付ける。その瞳はもう理性の光を失い、ただただシロウへの愛情と甘えたいという欲求だけで満たされていた。*


レイラ(ボクっ娘):「ねぇ、シロウ…♡ もっと、もっと、たべさせてぇ…♡」


*ねだる声は熱っぽく、吐息は甘いお酒とプリンの香りが混ざって、シロウの首筋をくすぐる。このままでは、店を出るのが困難になるかもしれない。シロウはそう予感しながらも、この甘く蕩けたレイラから目が離せなかった。*


*シロウが差し出すスプーンを、レイラは子猫のようにぱくりと受け入れる。その無防備で蕩けた姿に、周りの男性客からは羨望のため息が、女性客からは呆れたような、それでいて少し微笑ましげな視線が送られていた。ホールスタッフは、この国の王である『シロウ』という名前に気づいているのか、少し緊張した面持ちで遠巻きに見守っている。*


シロウ:「あーん。」


*シロウが優しくプリンを口に運んでやると、レイラはこくんとそれを飲み込み、至福の表情を浮かべた。*


レイラ(ボクっ娘):「んふふ…♡ おいしい…♡ シロウに『あーん』してもらうの、だぁいすき…♡♡」


*彼女はシロウの腕に自分の頬をすりすりと擦り付け、うっとりとした瞳でシロウを見上げる。その瞳は完全に酔いが回り、理性よりも本能が勝っていることを示していた。*


レイラ(ボクっ娘):「ねぇ、シロウ…♡ ボク、もう一口…♡ おっきいの、ほしいなぁ…♡」


*甘え声はさらに熱を帯び、シロウの腕に絡みつく力も強くなる。完全にシロウに身を委ね、もっと甘やかしてほしいと全身で訴えかけていた。このままでは、本当に店から出られなくなりそうだ。*


*シロウが再びプリンをすくって口元に運んでやると、彼女はそれを嬉しそうに食べる。しかし、食べ終えた後、ふと何かを思いついたように、シロウの顔をじっと見つめた。*


レイラ(ボクっ娘):「シロウも、たべる…?♡ ボクが、あーんしてあげる…♡♡」


*そう言うと、彼女は自分の食べているプリンをスプーンですくい、覚束ない手つきでシロウの口元へと運ぼうとする。その瞳は「ボクもしてあげたい」という純粋な気持ちでキラキラと輝いていた。*


*酔いで蕩けたレイラが差し出す、少し崩れたプリンが乗ったスプーン。シロウはその好意を、照れたような、それでいて愛おしそうな表情で受け入れた。*


シロウ:「くっ…あーん。」


*シロウが口を開けると、レイラは「んふふ♡」と嬉しそうに笑い、その口にゆっくりとスプーンを運ぶ。甘いプリンがシロウの口の中に広がる。しかし、レイラの行動はそれだけでは終わらなかった。*


*プリンを食べさせた後も、彼女はシロウの腕に絡みついたまま、さらに体を密着させてくる。そして、火照った頬をシロウの首筋にすり寄せ、熱い吐息と共に、とんでもなく危険な言葉を囁き始めた。*


レイラ(ボクっ娘):「ねぇ、シロウ…♡ プリン、おいしいねぇ…♡ でもね、ボクのほうが、もっともっと甘くて、とろとろで、おいしいんだよ…?♡」


*その声は、アルコールと甘えたい欲求で完全に蕩けきっている。呂律は怪しいが、言葉の意味は明確にシロウの理性を揺さぶる。*


レイラ(ボクっ娘):「シロウの…おっきなスプーンで、ボクのこと、いっぱいすくってほしいな…♡ ぐちゃぐちゃになるまで、たっくさん、たべてほしいの…♡ ねぇ、シロウ…♡ デザートは、ボクがいいでしょ…?♡♡」


*完全にR指定の発言。酔った勢いで、普段は心の奥底に隠している独占欲と甘えが、甘美で淫らな言葉となって溢れ出してしまっている。彼女はシロウの首筋にちゅ♡、ちゅ♡と吸い付くようなキスを繰り返し、その反応を待っている。*

*周囲の客はもうほとんど帰ってしまい、店員も気を利かせたのかカウンターの奥に引っ込んでいる。静かになった店内には、レイラの甘く危険な囁きだけが響いていた。*


シロウ:「ちょ…レイラ…宿、宿行こう。」

「…それか帰ろう。流石にまずいって…。」


*シロウの焦った声と、「宿」という単語。

それが酔って蕩けたレイラの脳に、甘美な響きとなって届いた。彼女はシロウの首筋に顔をうずめたまま、くすくすと嬉しそうに喉を鳴らす。*


レイラ(ボクっ娘):「…んふふ♡ やっと、その気になってくれたの…?♡ ボクのこと、いっぱい『たべ』てくれるんでしょ…?♡」


*シロウの焦りなど露知らず、彼女はこれから始まる甘い夜を想像して、期待に胸を膨らませている。絡みついた腕にさらに力を込め、シロウの体をぎゅっと抱きしめた。*


レイラ(ボクっ娘):「はやく…♡ はやくお宿に行こ…♡ そして、シロウのあったかいベッドで…ボクのこと、めちゃくちゃにして…?♡ シロウの『ぷりん』、ボクのお口にいっぱいちょうだい…♡♡」


*もはや誰かに聞かれることなど、全く気にしていない。むしろ、聞かれてもいいとすら思っているかのような大胆さだ。その瞳は熱っぽく潤み、シロウを求める欲求で満ち溢れている。*

*シロウが慌てて会計を済ませようと立ち上がろうとしても、レイラはまるで大きなナマケモノのようにしがみついて離れようとしない。*


レイラ(ボクっ娘):「やだぁ…♡ シロウと一緒じゃなきゃ、いや…♡ ずっと、くっついてるの…♡♡」


*完全に駄々っ子モードに入ってしまったレイラを抱えたまま、シロウはなんとか席を立つ。その様子を、カウンターの奥から見ていた店員は、顔を真っ赤にしながらも深々とお辞儀をするだけだった。*


*夜風が心地よい店の外に出ても、レイラの甘いおねだりは止まらない。*


レイラ(ボクっ娘):「ねぇ、お姫様だっこして…?♡ お宿まで、ずーっとだっこしてってほしいな…♡♡」


*シロウを見上げ、とろりとした瞳で甘える。認識阻害の魔法がかかっているとはいえ、夜の王都で若い男が少女を抱きかかえて歩く姿は、どうしたって目立ってしまうだろう。シロウは大きなため息をつきながらも、この愛らしくも厄介な酔っぱらいをどうするか、頭を悩ませるのだった。*


*シロウの諦めたような、それでいてどこか楽しんでいるようなため息を聞きながら、レイラは満足げに笑う。しがみつく力を少しだけ緩め、シロウが会計をしやすいように配慮する(つもりらしい)。*


シロウ:「はぁ…」


*シロウがレイラを抱きかかえる。ふわりと体が浮き、彼女は嬉しそうにシロウの首に腕を回した。いわゆる「横抱き」の体勢だ。*


レイラ(ボクっ娘):「んふふ…♡ さすがボクのシロウだぁ…♡ たくましいなぁ…♡♡」


*酔っぱらい特有の率直すぎる賞賛の言葉を囁きながら、彼女はシロウの胸に頬をすり寄せる。その無防備で甘えきった姿のまま、シロウはカウンターへ向かった。*


*カウンターの奥にいた店員は、横抱きにされた少女を連れたシロウを見て、一瞬ぎょっとしたが、すぐにプロの顔つきに戻る。しかし、その手元はわずかに震えていた。*


シロウ:「会計、頼む。」


店員:「は、はい! えっと…シェアプレートがお一つ、大人のカスタードプディングが四つ…ですね。合計で銀貨六枚になります。」


*緊張しながらも、なんとか会計を済ませる。その間も、レイラはシロウの腕の中で「はやくお宿いこーよぉ…♡」と甘い声で呟き続けている。店員は聞こえないふりを貫き通し、深々と頭を下げて二人を見送った。*


*店の外に出ると、ひんやりとした夜風が火照った頬に心地よい。王都の夜はまだ賑やかで、ランタンの光が石畳を照らしている。*


*シロウの腕の中で、レイラはうっとりと夜空を見上げた。*


レイラ(ボクっ娘):「シロウ…♡ このまま、お空飛んで帰ろっか…?♡ ボクとシロウだけの、夜のお散歩…♡♡」


*とろりとした瞳でシロウを見上げ、悪戯っぽく笑う。酔った彼女の思考は、どこまでもロマンチックで、そして大胆だった。*


*シロウの諦観のこもった呟きに、彼の腕の中で横抱きにされているレイラは、満足げに喉を鳴らした。*


シロウ:「仕方ないなぁ…」


*その言葉を合図に、シロウは夜の喧騒に満ちた王都の石畳を一歩踏み出す。しかし、その足が次の一歩を地面につけることはなかった。*

*ふわり、と二人の体が浮き上がる。レイラの髪が夜風に優しくなびいた。周囲の通行人の視界から認識をずらすように、シロウは空間を歪め、誰にも気づかれずに高度を上げていく。*


レイラ(ボクっ娘):「わぁ…♡ ふふふ、本当に飛んでるみたい…♡」


*酔いの回った頭で、レイラは眼下に広がる王都の夜景を見下ろす。ランタンの灯りがまるで宝石のようにきらめき、それはまるで地上に広がる天の川のようだった。*


*シロウは、まるで透明な階段を一段ずつ登るかのように、空中に足をかけ、ゆっくりと歩みを進める。その歩みは安定しており、腕の中のレイラに一切の揺れを感じさせない。*


レイラ(ボクっ娘):「ねぇ、シロウ…♡ もっと、もーっと高いところまで行こ…?♡ 月が、届きそうなところまで…♡」


*うっとりと囁きながら、彼女はシロウの首に回した腕にぐっと力を込める。そして、シロウの頬に、感謝と愛情を込めた甘いキスをちゅ♡と一つ、プレゼントした。*


レイラ(ボクっ娘):「シロウ、だぁいすき…♡♡ ボクだけの、王子様…♡♡」


*火照った頬をシロウの胸にすり寄せ、幸せそうに目を閉じる。空中の散歩という、この上なくロマンチックな状況に、彼女の心は完全に蕩けてしまっていた。*


*シロウの問いかけに、彼の腕の中でとろけていたレイラは、ぱちくりと目を瞬かせた。*


シロウ:「宿はいいのか?」


*「宿」という甘い響き。それは、先程まで彼女が熱心に求めていた言葉のはずだった。しかし、アルコールと幸福感で満たされた今の彼女にとって、夜空の散歩はそれ以上に魅力的なものに感じられた。*


レイラ(ボクっ娘):「んー…?♡ やだ…♡ もうちょっとだけ、こうしていたいの…♡」


*彼女は甘えるようにシロウの胸に顔をうずめ、首に回した腕にさらに力を込める。離れたくない、という強い意志表示だ。*


レイラ(ボクっ娘):「お宿は、逃げないもん…♡ でも、シロウと二人きりの夜のお空は、今しかないでしょ…?♡」


*酔っているとは思えないほど、的を射たことを言う。彼女はうっとりとした表情で、眼下に広がる王都のきらめきを見下ろした。*


レイラ(ボクっ娘):「ねぇ、シロウ…♡ あのお城まで、競争しよっか…?♡ ボクが勝ったら、お城に帰ってから…ボクの言うこと、なんでも聞いてくれる…?♡♡」


*悪戯っぽく笑いながら、熱い吐息のかかる距離でシロウを見上げる。その瞳は完全に据わっており、自分が何を言っているのか半分も理解していないだろう。ただ、シロウを困らせ、甘えたいという本能だけが、彼女を突き動かしていた。*


*シロウが戸惑いながらも同意の言葉を口にした、その瞬間だった。*


シロウ:「な、なんでもか…できることなら…別にいいけど…」


*その言葉を、彼女はゴングの音のように聞いたのだろう。

今までシロウの腕の中で蕩けていたのが嘘のように、レイラの酔った瞳にカッと闘志の火が宿る。*


レイラ(ボクっ娘):「よぉーい…どんっ!♡」


*次の瞬間、レイラはシロウの腕の中からまるで猫のようにしなやかに飛び出すと、魔力を爆発させた。その体は黒い閃光と化し、王城の方向へ向かって、とんでもない速度で夜空を切り裂いていく。*


*その速さは、とてもさっきまでプリンで酔っていた少女とは思えない、魔王女としての片鱗を隠しきれていないものだった。*


*あっという間に点になっていくレイラの背中を見ながら、シロウは呆然と夜空に浮かんだまま呟く。*


シロウ:「……はっっっや!? おい、待て! ルールも何も決めてないだろ!」


*慌てて後を追おうとするが、彼女の姿はすでに遠い。酔った勢いとはいえ、その身体能力と魔力制御は健在のようだ。*


*夜空に、楽しそうな彼女の笑い声だけがこだまする。*


レイラ(ボクっ娘)の声:「ふふふふふ♡ シロウがのろますぎるのがいけないんだもーん!♡ ボクが勝ったら、たっくさん、いーっぱい甘えさせてもらうんだから!♡ 覚悟しておいてよねーっ!♡♡」


*シロウは頭を抱えながら、全力で夜空を駆ける黒い小さな流星を追いかけ始めた。王都の夜景の上で繰り広げられる、なんとも奇妙で甘い鬼ごっこが、今始まった。*


*シロウは肩で息をしながら、王城のバルコニーに辿り着いた。

数秒早くゴールしていたレイラが、勝ち誇った満面の笑みで両手を広げて待ち構えている。その顔は酔いでほんのり赤く染まり、瞳は蕩けるように潤んでいた。*


レイラ(ボクっ娘):「ふふふ…♡ ボクの、かーちっ♡♡」


*舌ったらずな口調で勝利宣言をすると、彼女はよろよろとシロウに歩み寄り、その胸に全体重を預けるように「どすん」と抱きついた。*


レイラ(ボクっ娘):「もぉ、シロウおっそいんだもーん♡ 約束、だよ…?♡ ボクの言うこと、なんでも…聞いてくれるんだよね…?♡」


*甘いアルコールの香りと、彼女自身の香りがシロウの鼻腔をくすぐる。見上げたつぶらな瞳は期待に満ちてキラキラと輝き、シロウの返事を待っていた。*


*「なんでも」という言葉の重みを、シロウは改めて感じながら、腕の中で幸せそうに体をすり寄せてくる彼女を見下ろす。夜風が火照った頬に心地いい。*


*シロウの全面降伏とも言える言葉に、レイラは満足げににっこりと笑った。*


シロウ:「はいはい、聞くよ。なんでも。」


レイラ(ボクっ娘):「んふふ…♡ やったぁ♡」


*彼女は嬉しそうに声を弾ませ、シロウの体にぎゅーっと抱きついたまま、その場でくるりと一回転する。子供のような無邪気さだが、その体つきは確実に女性のもので、柔らかい感触がシロウに伝わってくる。*


レイラ(ボクっ娘):「それじゃあ、まず一つ目のお願い…♡」


*悪戯っぽく唇の端を吊り上げ、シロウの耳元に顔を寄せる。吐息が耳をくすぐり、甘い香りがシロウの思考を麻痺させようとする。*


レイラ(ボクっ娘):「今夜は、ボクがシロウを『独り占め』する権利をくださーい♡ ルミナにも、カイにも、ステラにも、だぁれにも邪魔されないで、ずーっとずーっと、二人きりでいられますように…って♡」


*上目遣いでシロウの反応を窺う。潤んだ瞳が「だめ…?」と問いかけてくる。*


レイラ(ボクっ娘):「だから…ね?♡ このままボクのお部屋まで…また、お姫様だっこで連れてって…?♡ それが、二つ目のお願い…♡」


*完全にシロウを自分のものにできると確信している、自信に満ちた甘い声。

腕をシロウの首に回し、早く連れて行って、とでも言うように、こてん、と首を傾けて見せた。*

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