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《R-15》異世界転移でスローライフを?  作者: THE・HENJIN・RlDER
11/117

15



**翌朝。**


*コンコン、と控えめなノックの音でシロウは目を覚ました。*


リアム:「シロウ様、リアムです。お目覚めでしょうか?」


*扉の外から、少し緊張したようなリアムの声が聞こえる。約束通り、昼前に迎えに来たようだ。窓の外は、すでに日が高く昇っている。*


*シロウは扉の向こうから聞こえてくるリアムの声に、昨夜の出来事を思い出して小さく笑った。リアムがノックしているのは、マリアとセーラが眠っている(であろう)部屋だ。*


シロウ:「残念、隣の部屋なんだな。」


*独り言を呟きながらベッドから起き上がると、いつの間にか綺麗に洗濯され、畳んで置かれていた自分の服に袖を通す。昨夜の淫靡な残り香も、汚れも一切ない。誰かが夜中のうちに処理してくれたのだろう。おそらく、回復したマリアあたりだろうと見当をつける。*


*身支度を整え、シロウは自室の扉を開けた。*


シロウ:「おはよう、リアムくん。」


*扉を開けると、隣の部屋の扉の前で不思議そうな顔をして首を傾げていたリアムが、驚いて振り返った。*


リアム:「シロウ様!? あ、おはようございます! そちらのお部屋でしたか、失礼いたしました。昨夜の侍女の方々がこちらから出てこられたので、てっきり…。」


*彼は慌てて頭を下げ、シロウに敬礼する。その視線は、シロウの隣の部屋の扉に一瞬向けられたが、すぐに目の前のシロウに戻った。昨夜、宴の後に何があったのか、何となく察しているのかもしれない。その表情はどこかぎこちない。*


リアム:「ご準備はよろしいでしょうか。街をご案内いたします。」


シロウ:「ああ、行こうか。」


*シロウが応じると、リアムは「はい!」と力強く頷き、背筋を伸ばした。彼はシロウの一歩後ろを歩くようにして、別邸の玄関へと先導し始める。*


ーー


**別邸の廊下を歩いていると、前から昨日のメイド、マリアとセーラが歩いてくるのが見えた。二人はシロウとリアムの姿を認めると、慌てて廊下の脇に寄り、深く頭を下げた。**


マリア:「シロウ様、おはようございます。昨夜は、お楽しみいただけましたでしょうか…♡」


*マリアは顔を上げると、潤んだ瞳でシロウを見つめ、意味ありげに微笑んだ。その顔色は普段通りだが、どこか艶が増しているように見える。彼女の隣では、セーラが真っ赤な顔で俯いたまま、小刻みに震えている。シロウと目を合わせられないようだ。*


リアム:「(ゴクリ…)」


*リアムは二人の様子と、シロウの泰然とした態度を見て、何かを察したのか、生唾を飲み込んで気まずそうに視線を逸らした。*


ーー


**玄関を出ると、ユノハナの活気ある街並みが広がっていた。石畳の道を行き交う人々、立ち並ぶ土産物屋や宿屋。湯けむりが街のあちこちから立ち上り、硫黄の匂いが鼻をくすぐる。**


リアム:「こちらです、シロウ様。冒険者ギルドはこの先のメインストリートを抜けた先にあります。」


*リアムは少し緊張した面持ちで、しかし誇らしげに街を案内し始めた。彼は昨日までの傲慢さが嘘のように、シロウに対して従順な態度を示している。*


リアム:「ユノハナは温泉地として有名ですが、同時に周辺の山々には薬草や鉱石も豊富でして。それらを求めて、多くの冒険者が集まってくるんです。ですので、ギルドもかなり規模が大きいんですよ。」


*彼は時折シロウの顔色を窺いながら、一生懸命に説明を続けている。*


*シロウが鉱石という言葉に反応したのを見て、リアムは待ってましたとばかりに少し得意げな顔で説明を始めた。*


リアム:「はい、その通りです! このユノハナの北に位置するグレンデル火山には、大規模な鉱山があります。主に鉄や銅ですが、稀にミスリルや金、さらには魔力を帯びた『魔光石』なども採掘されることがあるそうです。」


*彼は活気のある大通りを指差しながら、さらに言葉を続ける。*


リアム:「あの通りを見てください。武器屋や防具屋が多いでしょう? あれは皆、グレンデル鉱山で採れた鉱石をドワーフの職人たちが加工しているんです。ユノハナは温泉だけでなく、武具の産地としても名高いんですよ。特に、ここのドワーフたちが打つ武具は質が高いと評判です。」


*彼の説明からは、この街に対する愛着と誇りが感じられた。シロウが星屑鋼という未知の金属の武器を使っていたことを思い出し、もしかしたら興味を持つかもしれないと考えているようだ。*


リアム:「もしご興味があれば、鍛冶屋街にもご案内しますが…まずはギルドへ向かいましょう。ギルドマスターに会えば、その辺りの詳しい情報も手に入るかもしれません。」


シロウ:「武器は間に合ってるからいいかな。ギルドへ行こう。」


*シロウのそっけない返事に、リアムは少し残念そうな顔をしたが、すぐに気を取り直して力強く頷いた。シロウの持つ規格外の武器を思えば、当然の返答だったかもしれない。*


リアム:「承知いたしました! では、こちらです。」


*リアムに先導され、二人は活気あふれるメインストリートを抜ける。通りには様々な種族の人々が行き交い、獣人やドワーフ、そして少数ながらエルフの姿も見られた。道の両脇には露店が立ち並び、香ばしい食べ物の匂いや、威勢のいい呼び込みの声が響いている。*


*しばらく歩くと、ひときわ大きな建物が目に入ってきた。二振りの剣を交差させた意匠の看板が掲げられており、屈強な冒険者たちが出入りしている。ここが目的の冒険者ギルドのようだ。*


リアム:「ここがユノハナの冒険者ギルド支部です。…奥様が仰っていた通り、少し変わった場所かもしれませんが…。」


*リアムは何かを思い出したのか、少しだけ顔をしかめた。*


*シロウが建物の中に足を踏み入れると、むわりとした熱気と酒の匂い、そして男たちの汗の匂いが混じり合った独特の空気が鼻をついた。中は広く、酒場が併設されているようで、朝だというのにカウンターやテーブルで酒を飲んでいる冒険者たちの姿がちらほらと見える。壁には依頼書クエストボードがびっしりと貼られていた。*


*ほとんどの冒険者たちが、シロウとリアムを一瞥すると、すぐに興味を失ったように自分たちの会話に戻っていく。しかし、その中でひときわ異彩を放つ存在がいた。*


*一番奥にあるギルドの受付カウンター。その中央で、一人のエルフの女性が、肘をつき、心底つまらなそうな顔で座っていた。長く美しい銀髪を無造作に束ね、尖った耳にはいくつものピアスが光っている。露出度の高い革鎧からは、しなやかで引き締まった体が覗いていた。彼女の前には、半分ほど中身が残った酒瓶とグラスが置かれている。おそらく彼女が、噂のギルドマスターなのだろう。*


*リアムは彼女の姿を認めると、小さく溜息をつき、シロウにだけ聞こえる声で囁いた。*


リアム:「…あれが、ギルドマスターのフィオナ様です。見ての通り、朝から飲んでらっしゃいますね…。」


*シロウの呟きに、リアムは苦虫を噛み潰したような顔で、こっそりと頷いた。*


リアム:「ええ…。俺が知る限り、ギルドが開いている時間は、いつもあんな感じです。機嫌が悪いと、カウンターに誰も近づけません。今日は…どうでしょうか。」


*彼の視線の先では、ギルドマスターのフィオナが、カウンターに置かれた酒瓶を掴むと、グラスにも注がず、そのままラッパ飲みを始めた。こくこくと喉を鳴らし、ぷはーっと満足げに息をつく。その一連の動作には、一切の気品も淑やかさも感じられない。*


*その時、一人の若い冒険者(おそらくFランクかEランクだろう)が、おずおずとフィオナのいるカウンターに近づいていった。*


若い冒険者:「あ、あの、ギルドマスター。依頼の報告に…」


*フィオナは、ちらり、と面倒くさそうにその冒険者に視線を向けた。そして、ゆっくりと口を開く。*


フィオナ:「……あ? 報告? そんなもん、そこの空いてる姉ちゃんにでも渡しとけ。こちとら今、いい気分なんだ。邪魔すんな、クソガキ。」


*彼女の口から放たれた、エルフの美しい見た目からは想像もつかない汚い罵声に、若い冒険者はビクッと体を震わせ、顔を青くして後ずさった。そして、そそくさと別の受付嬢の元へと駆けていく。*


*フィオナはその様子を鼻で笑うと、再び酒瓶に口をつけようとした。*


*その光景を見ていたリアムが、シロウの隣で顔を青くして囁く。*


リアム:「し、シロウ様…今日はどうやら、ご機嫌が最悪の日のようです…。別の日に出直した方が…。」


*リアムは本気で撤退を進言している。下手に近づけば、何をされるか分からない、という恐怖がその表情にありありと浮かんでいた。*


シロウ:「く、クソガキ…ギルマスがそんな事言っていいのか…? あの新人可哀想に…」


*シロウの呆れたような呟きに、隣のリアムは顔面蒼白のまま、こくこくと必死に頷いた。*


リアム:「ええ…フィオナ様はSランクの冒険者を引退されてから、ずっとあのような調子で…。腕は確かなのですが、とにかく気分屋で口が悪いことで有名なんです。実力のない者や、気に入らない者には容赦がありません。下手に逆らって、この街で依頼を受けられなくなった冒険者もいると聞きます。」


*リアムはフィオナから視線を逸らし、まるで蛇に睨まれた蛙のように体を強張らせている。本気で帰りたそうだ。*


*一方、シロウの視線はカウンターのフィオナに注がれていた。彼女は周囲の視線など全く気にする様子もなく、新しい酒瓶のコルクを雑に引き抜き、またラッパ飲みを始めようとしている。その退廃的で投げやりな態度、しかし全身から隠しきれていない強者のオーラ。*


*シロウは、アメリア夫人が言っていた「変わった方」という言葉の意味を、今まさに実感していた。そして同時に、強い興味を抱いていた。*


*周りの冒険者たちは、皆フィオナのカウンターを避けるように、遠巻きにしている。誰も彼女に話しかけようとはしない。まさに腫物扱いだ。*


*リアムはそんな空気を読んで、再度シロウに撤退を進言しようと口を開いた。*


リアム:「シロウ様、ですから、ここは一度…」


*しかし、その言葉は途中で遮られることになる。シロウが、まっすぐにフィオナのいるカウンターへと歩き出したからだ。*


リアム:「えっ!? し、シロウ様!? お待ちください!」


*リアムの静止の声も届かず、シロウは臆することなく、ギルド中の注目を集めながら、ギルドマスターの正面へと向かっていく。酒場のざわめきが、一瞬にして静まり返った。誰もが固唾を飲んで、無謀な挑戦者(に見えるシロウ)と、不機嫌なギルドマスターの邂逅を見守っていた。*


シロウ:「処理、よろしく。」


*ギルド内の全ての視線が、カウンターに突き刺さる。酒を飲んでいた者も、仲間と談笑していた者も、依頼書を眺めていた者も、全員が動きを止め、信じられないものを見る目でシロウを見ていた。あのギルドマスター、フィオナの真正面に立ち、あまつさえ命令するかのような口調で話しかけたのだ。リアムはカウンターから少し離れた場所で、顔面蒼白のまま固まっている。*


*シロウが依頼書をカウンターに置くと、フィオナはゆっくりと、億劫そうに顔を上げた。その翡翠色の瞳は完全に据わっており、アルコールと不機嫌さで濁っている。彼女は目の前のシロウを頭のてっぺんから爪先まで舐めるように見ると、心底面倒くさそうに、そして侮蔑を隠そうともせずに口を開いた。*


フィオナ:「……あぁ? てめえ、今なんつった?」


*地を這うような低い声。その声色だけで、何人かの冒険者が息を飲んだ。*


フィオナ:「『処理よろしく』だぁ? どこの馬の骨とも知れねえガキが、アタシに命令してんじゃねえぞ、コラ。死にてえのか?」


*彼女は手に持っていた酒瓶を、ドンッ!とカウンターに叩きつけた。中身が飛び散り、強いアルコールの匂いが辺りに立ち込める。その目は獲物を前にした獣のように、鋭くシロウを射抜いていた。ギルド内の空気は氷のように張り詰め、誰もが次に何が起こるのかを固唾を飲んで見守っている。*


フィオナ:「その依頼書ってのは、ゴブリン退治か? スライム掃除か? ああ? そんなクソみてえな雑用、そこの姉ちゃんにでも回せっつったのが聞こえなかったのかよ。」


*彼女は顎で別の受付嬢の方をしゃくり、完全にシロウを格下の雑魚冒険者だと断定して言い放った。*


シロウ:「じゃあ、処理お願いします?」


*シロウが口調を僅かに変え、しかし挑発的な態度を崩さずにそう言うと、フィオナの眉がぴくりと動いた。彼女は目の前の男が、自分の威圧に全く動じていないことに気づき、初めて興味深そうな、それでいて不愉快そうな表情を浮かべた。*


フィオナ:「……へぇ。てめえ、ちょいと骨があるじゃねえか。私が誰だか分かっててその口の利き方か?」


*彼女はカウンターに置いていた酒瓶を手に取ると、立ち上がった。その身長はエルフらしくすらりと高い。革鎧がきしみ、彼女がただの酔っ払いではない、歴戦の戦士であることが窺える。ギルド内の緊張は最高潮に達し、遠巻きに見ていた冒険者たちの中には、いつでも逃げ出せるように腰を浮かせる者もいる。*


*フィオナはカウンターからゆっくりと出てくると、シロウの目の前まで歩み寄り、その顔を覗き込むようにして言った。アルコールの匂いと、微かな血の匂いが混じって漂ってくる。*


フィオナ:「いいだろう。てめえがそこまで言うなら、この私が直々に『処理』してやるよ。だがな、その依頼書が私の手を煩わせるに値しねえ、ただのゴミ拾いみてえな内容だったら…」


*彼女はそこで言葉を切り、にやり、と獰猛な笑みを浮かべた。*


フィオナ:「――その首、胴体から『処理』してやっから、覚悟しとけよ?」


*殺気。本物の、凝縮された殺意がシロウに向けて放たれる。並の冒険者なら、その場で失禁していてもおかしくないほどのプレッシャーだ。リアムは既に顔色を通り越して土気色になり、壁際で小さくなっている。*


*フィオナはシロウの肩を乱暴に掴むと、カウンターに置かれたままの依頼書をひったくるように手に取った。*


フィオナ:「さて…どんなつまんねえ依頼で、私に喧嘩を売ってくれたんだ…? ああ?」


*彼女は依頼書に目を通し始めた。その口元には、獲物をいたぶる捕食者のような、残忍な笑みが浮かんでいた。しかし、依頼書の内容を読み進めるにつれて、その笑みが徐々に消えていく。*


*そして、依頼主である「ファルケン子爵家」の名前と、依頼内容の「子爵夫人アメリアの護衛」、そして討伐対象の「ホブゴブリン・ジェネラルを含む大規模な群れ」、最後に、その依頼を完遂したことを証明するアメリアのサインとファルケン家の印章を見た瞬間――フィオナの動きが、完全に止まった。*


フィオナ:「…………は?」


*信じられない、というように、彼女は依頼書とシロウの顔を二、三度見比べる。その翡翠色の瞳から、先ほどまでの酔いと侮蔑の色が、急速に引いていくのが分かった。*


シロウ:「言いたいことは?」


*その言葉は、静まり返ったギルドの中に、やけにクリアに響き渡った。シロウの落ち着き払った声を聞いて、フィオナはハッと我に返った。彼女はもう一度、依頼書に書かれた「ホブゴブリン・ジェネラル」の文字と、アメリア・ファルケンの流麗なサインを凝視する。間違いではない。ファルケン子爵夫人が直々に発行し、その完遂を証明している。*


*フィオナの顔から、血の気が引いていくのが分かった。酔いは、とっくに醒めている。彼女は目の前の、まだ若く見える男を改めて観察した。何の変哲もない冒険者のような格好。しかし、その佇まいは、自分が放った殺気を受けても微動だにしなかった。そして、この実績。ホブゴブリン・ジェネラルは、Bランクパーティーでも苦戦する難敵だ。それを、この男が? 一人で?*


*フィオナは数秒間、何かを考え込むように黙り込んだ後、手に持っていた依頼書を丁寧にカウンターに戻した。そして、シロウに向き直ると、先ほどの無礼な態度が嘘のように、深く、深く頭を下げた。その美しい銀髪が、床につくほどに。*


フィオナ:「…………申し訳、ありませんでした。」


*その光景に、ギルド内がどよめいた。あのフィオナが、頭を下げた。信じられない、という囁きがあちこちから聞こえてくる。壁際で震えていたリアムも、あんぐりと口を開けて固まっている。*


*フィオナはゆっくりと顔を上げると、先ほどまでの濁った瞳ではなく、真剣な眼差しでシロウを見つめた。*


フィオナ:「この度は、我がギルドの依頼を達成いただき、誠にありがとうございます。そして、私の非礼、無礼の数々…。大変、申し訳ございませんでした。このフィオナ、Sランク冒険者の名折れにございます。いかなる処分も、お受けいたします。」


*彼女は再び頭を下げた。その態度は、先ほどの酔っぱらいとはまるで別人だった。強者に対する、戦士としての敬意と、自らの非を認める潔さがそこにはあった。*


フィオナ:「…願わくば、お名前をお聞かせ願えませんでしょうか。そして、この依頼の詳細を…お聞かせいただきたい。」


*シロウは自分では説明する気がないとばかりに、背後に控えていたリアムに話を振った。突然の指名に、リアムは「えっ!?」と素っ頓狂な声を上げ、蒼白だった顔にサッと血が上った。ギルド中の注目が、今度は彼一人に集まる。*


シロウ:「リアムくん。説明をお願い。」


リアム:「わ、私、ですか!? し、しかし、シロウ様…!」


*狼狽えるリアム。彼の視線の先には、元Sランク冒険者で、このギルドの支配者であるフィオナが、真剣な眼差しで彼を待っている。そのプレッシャーは尋常ではない。リアムはごくり、と喉を鳴らし、助けを求めるようにシロウを見たが、シロウはただ黙って彼を見ているだけだ。*


*これは、命令だ。そして、試されている。そう理解したリアムは、覚悟を決めたようにぎゅっと拳を握りしめ、一歩前に出た。*


フィオナ:「…ファルケン子爵家の…リアムか。お前もこの依頼に同行していたのか。ならば、話は早い。何があった。道中のゴブリンの群れは、どうやって退けた。なぜアメリア様が直々に、この男の功績を認めている。洗いざらい話せ。」


*フィオナの矢継ぎ早の質問に、リアムは一度深く息を吸い込むと、震える声を抑えながら、旅の道中での出来事を語り始めた。*


リアム:「はっ…! ご報告します! 我々がユノハナへ向かう途中、ゴブリンの群れに襲撃されました。その数、およそ50…! さらには、指揮官個体であるホブゴブリン・ジェネラルも確認。我々は絶望的な状況に…」


*リアムは必死に言葉を紡ぐ。彼の脳裏には、あの時の絶望的な光景が蘇っているようだ。*


リアム:「…しかし! そこに立たれたのが、シロウ様でした! シロウ様はただ一人で、瞬く間に…まるで、幻を見ているかのようにゴブリンの群れを蹂躙し…ホブゴブリン・ジェネラルの首を、一撃の下に…!」


*リアムの話は次第に熱を帯びていく。恐怖と混乱、そして最後には畏敬に変わった、あの時の感情が彼の言葉に乗り移る。彼の話を聞いていた周囲の冒険者たちから、「なんだと…?」「一人でジェネラルを?」「馬鹿な…」という驚きの声が漏れ始めた。*


*フィオナは腕を組み、黙ってリアムの話を聞いている。その翡翠色の瞳は、一切の感情を排し、ただ冷静に事実を分析しているようだった。そして、リアムが全てを語り終えると、彼女は静かに口を開いた。*


フィオナ:「…なるほどな。話は分かった。…リアム、ご苦労だった。下がっていい。」


*解放されたリアムは、全身から力が抜けたようにふらつきながら、壁際まで後ずさった。*


*フィオナは再びシロウに向き直ると、カウンターの奥から一枚の黒いギルドカードを取り出した。そして、それをシロウに差し出す。*


フィオナ:「シロウ、と言ったか。ランクは?」


*彼女の声には、もう侮蔑の色はない。ただ、一人の強者に対する純粋な興味と敬意だけがあった。*


シロウ:「Dランクだ。」


*シロウは懐から簡素な銅のギルドカードを取り出し、フィオナの目の前に提示した。そこに刻まれた文字は、紛れもなく「D」。駆け出し冒険者を示すランクだ。*


*そのカードを見た瞬間、フィオナは息を呑んだ。リアムの話が真実ならば、目の前の男の実力は少なくともAランク、いや、それ以上だ。それが、Dランク? 何かの冗談か?*


*しかし、シロウの表情は真剣そのものであり、冗談を言っているようには見えない。フィオナは混乱した表情で、シロウの顔とDランクのカードを交互に見比べた。ギルド内の他の冒険者たちも、信じられないといった様子でざわついている。*


フィオナ:「……Dランク、だと…? てめえ…いや、貴公、本気で言っているのか? その実力で、なぜDランクに甘んじている…? どこかのギルドでヘマでもしたのか?」


*彼女は眉間に深い皺を寄せ、何かを測るようにシロウを睨みつける。強すぎる力を持つ者が、その力を隠して下位ランクに留まる。それには必ず理由があるはずだ。他国からの密偵か、お尋ね者か、あるいは単なる変わり者か。*


*フィオナはしばし考え込んだ後、何かを決心したように顔を上げた。*


フィオナ:「…いや、理由は聞くまい。人にはそれぞれ事情がある。だが、Dランクの貴公がホブゴブリン・ジェネラルを討伐したという事実は、ギルドとして見過ごすわけにはいかん。」


*彼女はシロウが提示したDランクのカードを受け取ると、それをカウンターの奥に放り投げた。そして、先ほど取り出した黒いカード――ミスリルで縁取られた最高位のカードを、改めてシロウの前に置く。*


フィオナ:「今この場で、特例昇級を認める。貴公をSランク冒険者として登録する。異論はあるか?」


*その言葉に、ギルド内は先ほど以上の衝撃に包まれた。「Sランクだと!?」「ギルマス正気か!」「いきなり最高ランクに!?」という声が飛び交う。Sランク冒険者は、国に数えるほどしか存在しない、英雄級の存在だ。それを、今日初めて会った男に、即日で与えるという。前代未聞の事態だった。*


*フィオナは周囲の喧騒を意にも介さず、ただまっすぐにシロウを見つめて、その返事を待っている。*


シロウ:「大ありだ。目立つじゃないか。」


*シロウが面倒くさそうに、あっさりとそう言い放った瞬間、熱狂に包まれていたギルドは水を打ったように静まり返った。Sランク。全ての冒険者が夢見る栄誉。それを、目の前で提示されて、いらない、と。しかも「目立つから」という、ふざけた理由で。誰もが自分の耳を疑った。*


*フィオナも、さすがにこの返答は予想していなかったようだ。彼女は美しい眉をひそめ、呆れたような、信じられないような、複雑な表情でシロウを見つめた。*


フィオナ:「……はぁ? てめえ、今なんつった? 目立つ…? ふざけてんのか? Sランク冒険者っつーのが、どれだけの栄誉か分かってんのか!?」


*怒声が飛ぶ。しかし、その声には先ほどのような殺気はなく、純粋な困惑と苛立ちが混じっていた。*


フィオナ:「貴公ほどの実力者が身分を隠す理由があるのは理解してやる。だがな、ギルドにはギルドのルールがあるんだ! ジェネラル級を単独で討伐した者を、Dランクのままにしておけるか! そんなことをすれば、ギルドの信用問題に関わるんだよ!」


*彼女はカウンターをドン、と叩いた。酒瓶がカタカタと音を立てる。*


フィオナ:「目立ちたくないなら、Bランク。いや、アメリア様からの依頼書だ、最低でもAランクだ。それ以下は絶対に認めん! どっちか選べ。Aか、Sか。これ以上ごねるなら、私が貴公を『指名手配』してでも無理やりランクを上げる。そうなれば、もっと目立つことになるぞ?」


*フィオナは半ば脅すように、しかしその目にはどこか懇願するような色も浮かべていた。彼女にしてみれば、規格外の実力者を持て余し、どう扱っていいか分からず頭を抱えている、というのが本音なのだろう。*


*彼女はため息を一つつくと、シロウの前に2枚のギルドカードを並べた。一枚は、先ほどのミスリルで縁取られた黒いSランクカード。もう一枚は、精金オリハルコンでできたAランクのカードだ。*


フィオナ:「…さあ、選べ。これが私の最大限の譲歩だ。これ以上、私を困らせるな。」


シロウ:「Aで。」


*シロウが短くそう答えると同時に、彼の瞳が微かに光を帯びた。その瞬間、フィオナは肌に走る、まるで内臓の奥まで見透かされるような、奇妙で不快な感覚に眉をひそめた。しかし、その感覚は一瞬で消え去り、彼女は何が起きたのかを正確には把握できなかった。*


**【鑑定:神眼】**


```

名前:フィオナ・シルヴァリエ

種族:ハイエルフ

職業:ギルドマスター / 元Sランク冒険者『銀閃』

Lv.85


【ステータス】

HP: 28,500/28,500

MP: 35,000/35,000

STR: 1,800

VIT: 1,650

AGI: 3,500

INT: 2,800

DEX: 3,200

LUK: 150


【称号】

剣聖、精霊の寵姫、龍殺し、酒乱


【スキル】

ユニークスキル:

 ・精霊眼 Lv.MAX:精霊や魔力の流れを視認し、干渉できる。

戦闘スキル:

 ・剣術 Lv.MAX → 進化可能

 ・弓術 Lv.MAX → 進化可能

 ・縮地 Lv.8

 ・無拍子 Lv.7

 ・魔力付与 Lv.9

補助スキル:

 ・危機察知 Lv.MAX

 ・気配遮断 Lv.8

 ・鑑定 Lv.9

魔法スキル:

 ・風魔法 Lv.MAX → 進化可能

 ・精霊魔法 Lv.MAX → 進化可能

耐性スキル:

 ・物理攻撃耐性 Lv.7

 ・魔法攻撃耐性 Lv.7

 ・精神攻撃耐性 Lv.9

 ・毒耐性 Lv.8

 ・麻痺耐性 Lv.8


【説明】

ユノハナの冒険者ギルドマスターを務めるハイエルフ。元Sランク冒険者で『銀閃』の異名を持つ。

その実力は現役を退いた今も健在で、特に剣術と風魔法を組み合わせた高速戦闘を得意とする。

精霊に愛されており、高位の精霊魔法を操ることができる。

若い頃に仲間を失った過去があり、それ以来、酒に溺れることが多くなった。

気分屋で口は悪いが、強者には敬意を払い、実力のある者を見抜く目は確か。根は仲間思いで面倒見が良い。

```


*シロウがAランクのカードを選んだのを見て、フィオナは大きく、これ見よがしにため息をついた。*


フィオナ:「…チッ。まあ、いいだろう。Aランクだな。Sランクを蹴った物好きは、後にも先にもてめえだけだろうよ。」


*彼女はどこか不服そうな顔をしながらも、安堵したようにも見えた。Sランクのカードを名残惜しそうにしまい、Aランクのカードを手に取る。*


フィオナ:「名前はシロウでいいな。ファミリーネームは?」


*彼女はカウンターの奥から魔道具のペンを取り出し、登録手続きを始めようとする。その手際は、先ほどの酔っぱらいの姿からは想像もできないほどに迅速で正確だった。*


フィオナ:「Aランク登録には、身元の簡単な確認が必要になる。出身地と、簡単な経歴を話せ。…まあ、てめえのことだ。どうせロクな経歴じゃねえだろうし、嘘でも構わんがな。ただし、後でバレたら面倒なことになるぞ。」


*彼女はそう言うと、ジロリとシロウを睨みつけた。強者の実力は認めるが、その素性が知れない以上、完全には信用していないという態度だった。*


シロウ:「東の田舎村から来た。登録したのは2ヶ月前だ。」


*シロウは、特に悪びれる様子もなく、淡々とそう答えた。その言葉を聞いたフィオナは、手に持っていた魔道具のペンを止め、訝しげな目をシロウに向ける。*


フィオナ:「東の田舎村…ね。ずいぶんと曖昧な言い方だな。2ヶ月前に登録したDランクが、たった2ヶ月でジェネラル級を単独討伐ねぇ…」


*彼女は鼻でフンと笑った。明らかに信じていない。しかし、それ以上追及する気もないようだ。彼女が知りたいのは、目の前の男の過去ではなく、現在の実力と、ギルドに与える影響だ。*


*内心で(鑑定したところで神眼に弾かれるだろうな)とシロウが考えていることなど露知らず、フィオナは再びペンを走らせ始めた。*


フィオナ:「まあいい。言いたくないならそれでいい。出身『東方の村』、登録日2ヶ月前、ランクDより特例昇級にてAランクとする。これで文句はねえな?」


*彼女は一通り書類に書き込むと、オリハルコン製のAランクカードをシロウに差し出した。カードには既に「シロウ」という名前が刻まれている。*


フィオナ:「これが新しいギルドカードだ。Aランクになれば、受けられる依頼の質も報酬も桁違いになる。ただし、それに伴う危険と責任もな。しくじるんじゃねえぞ。」


*事務的な口調でそう言うと、彼女はカウンターの引き出しから小さな革袋を取り出し、重々しい音を立ててカウンターに置いた。中から金貨のぶつかる音が聞こえる。*


フィオナ:「こいつは今回の依頼の成功報酬だ。依頼主のファルケン子爵家からは既に支払い済みだが、これはギルドからの特別報酬だ。ジェネラル討伐の功績はそれだけの価値がある。」


*革袋の中には、金貨が数十枚は入っていそうだ。*


フィオナ:「それと…」


*彼女は少し言い淀んだ後、シロウから視線を逸らし、ぶっきらぼうに言った。*


フィオナ:「…さっきは、悪かったな。私の非礼を詫びる。今夜、奢らせろ。一番高い酒と美味い料理を食わせてやる。どうだ?」


*それは、Aランク冒険者に対するギルドマスターとしての対応であり、同時に、一人の戦士が別の強者に敬意を示すための、彼女なりの誘いだった。*


シロウ:「それはどうも。是非行きます。」


*シロウが快諾すると、フィオナは少し意外そうな、しかし満足げな表情を浮かべた。彼女は「そうか」と短く呟くと、照れ隠しのようにカウンターの上の酒瓶を片付け始める。*


*その一瞬、シロウの『神眼』が再びフィオナを捉え、その膨大なスキル情報の中から特定のデータを抜き取っていく。*


**【システムメッセージ】**

**『神眼』の効果により、対象『フィオナ・シルヴァリエ』からスキルをコピーします。**

**・『剣術 Lv.MAX』のコピーに成功しました。**

**・『弓術 Lv.MAX』のコピーに成功しました。**

**・『縮地 Lv.8』と所有スキル『縮地 Lv.1』が統合され、『縮地 Lv.8』に進化しました。**

**・『風魔法 Lv.MAX』のコピーに成功しました。**

**・『物理攻撃耐性 Lv.7』のコピーに成功しました。**

**・『魔法攻撃耐性 Lv.7』のコピーに成功しました。**


**所有スキルが10個を超えました。ユニークスキル『スキル整理』を習得します。**

**『スキル整理』が発動し、スキルリストが自動的に整理されます。**


**【鑑定:神眼】**

```

名前:シロウ・ニシキ

種族:人間

職業:冒険者

Lv.45

称号:鑑定士、森の再生者、呪いを浄めし者、淫魔の女王を支配せし者

所持金:白金貨2枚、金貨552枚、銀貨5枚、銅貨2枚


【ステータス】

HP: 7,000/7,000

MP: 10,500/10,500

STR: 900

VIT: 850

AGI: 1,300

INT: 1,500

DEX: 1,200

LUK: 500


【ユニークスキル】

 ・神眼 Lv.3

 ・世界樹の祝福

 ・スキル整理 Lv.1 (NEW)


【戦闘スキル】

 ・剣術 Lv.MAX (NEW)

 ・弓術 Lv.MAX (NEW)

 ・短剣術 Lv.9

 ・体術 Lv.6

 ・縮地 Lv.8 (UP)


【補助スキル】

 ・魔力操作 Lv.8

 ・筋力増強 Lv.5

 ・隠密 Lv.MAX → 絶無

 ・気配遮断 Lv.MAX → 無影

 ・眷属支配 Lv.1


【魔法スキル】

 ・風魔法 Lv.MAX (NEW)

 ・水魔法 Lv.5

 ・火魔法 Lv.1

 ・土魔法 Lv.1

 ・氷魔法 Lv.1


【耐性スキル】

 ・精神攻撃無効

 ・物理攻撃耐性 Lv.7 (NEW)

 ・魔法攻撃耐性 Lv.7 (NEW)


【眷属】

 サキュバス・クイーン "セレナ"

```


*膨大な情報と技術が脳内に流れ込み、シロウの肉体と魔力回路が瞬時にそれに適応していく。特に『縮地』は既存のスキルと統合され、レベルが飛躍的に向上した。一瞬ふらつきそうになるが、シロウは顔色一つ変えずにその情報の奔流を受け止める。*


フィオナ:「よし、決まりだな。今夜、日が落ちたらギルドの隣にある『銀竜亭』に来い。一番いい個室を予約しておく。それまで、依頼でも探すなり、街でも見て回るなり好きにしろ。」


*フィオナはそう言うと、シロウに背を向け、ギルドの奥にある執務室へと歩いていく。その背中は、先ほどまでの荒れた雰囲気はなく、どこかスッキリとした、歴戦の戦士のものに戻っていた。*


*彼女が去った後、静まり返っていたギルド内が、爆発したように騒がしくなる。*


冒険者A:「おい、見たかよ…あのフィオナ様が頭を下げて、飯に誘ったぞ…」

冒険者B:「Aランクだっていきなり…しかもSランクを蹴ったってマジかよ…」

冒険者C:「あいつ、一体何者なんだ…?」


*賞賛、嫉妬、畏怖。様々な感情が渦巻く視線がシロウに突き刺さる。壁際で全ての顛末を見ていたリアムが、恐る恐る、しかし興奮を隠しきれない様子でシロウに駆け寄ってきた。*


*シロウが内心で『神眼』に命令を下した瞬間、脳内にシステムメッセージが響き渡る。*


**【システムメッセージ】**

**『神眼』の権能を行使し、進化条件を満たしたスキルを進化させます。**

**・『剣術 Lv.MAX』が『剣神』に進化しました。**

**・『弓術 Lv.MAX』が『弓神』に進化しました。**

**・『風魔法 Lv.MAX』が『嵐魔法』に進化しました。**


**【スキル整理】**

**『無影』:自身の姿と魔力を完全に隠蔽し、物理的にも光学的にも観測不能状態になる。**

**『絶無』:自身の存在そのものを希薄化させ、あらゆる探知・感知スキルを無効化する。**

**『剣王』:全ての斬撃武器の扱いに極致。攻撃速度・威力・精度が大幅に向上し、武器に宿る力を最大限に引き出す。**

**『弓神』:全ての射出武器の扱いに極致。射程・威力・精度が大幅に向上し、魔力を矢として放つことが可能になる。**

**『嵐魔法』:風魔法の上位互換。天候を操り、局地的な嵐や巨大な竜巻を発生させることが可能になる。**


---


シロウ:「では、リアムくん。俺は依頼を見に行くから。」


*スキルの進化による情報の奔流を顔色一つ変えずに受け流し、シロウは興奮冷めやらぬリアムにそう告げた。リアムはハッとして、慌てて背筋を伸ばす。*


リアム:「は、はい! シロウ様! あの、本日は本当に、その…なんとお礼を申し上げたら…!」


*リアムは感極まった様子で、何度も頭を下げようとする。シロウはそれを軽く手で制した。*


シロウ:「気にするな。それじゃあ。」


*短くそう告げると、シロウはリアムに背を向け、依頼書が張り出されている掲示板の方へと歩き出した。周囲の冒険者たちは、シロウが近づくとモーゼの海割りのようにサッと道を開け、畏怖と好奇の入り混じった視線で遠巻きに見つめている。*


*リアムはその場に立ち尽くし、Aランク冒険者の証であるオリハルコンのカードを手に掲示板へ向かうシロウの後ろ姿を、憧れの眼差しで見送っていた。*


***


*シロウが掲示板に近づくと、そこにはランクごとに分けられた依頼書がびっしりと張り出されていた。G〜Eランクの雑用依頼、D〜Cランクの一般的な討伐や護衛依頼。そして、ひときわ数が少なく、特別なインクで書かれたBランク以上の高難易度依頼。*


*シロウは迷わずAランクの掲示板の前に立つ。そこには、数枚の依頼書しか貼られていない。*


**【Aランク依頼】**

* **依頼①:『灼熱の洞窟』最深部調査**

* **内容:** グレンデル火山地帯に存在する未踏破ダンジョン『灼熱の洞窟』の最深部へのルート確保と、生息するモンスターの調査。

* **討伐対象:** ファイアードレイク(目撃情報あり)、その他多数の炎属性モンスター

* **報酬:** 白金貨5枚〜(成果に応じて変動)

* **備考:** 推奨パーティー人数4名以上。高レベルの火耐性必須。


* **依頼②:ワイバーンロードの討伐**

* **内容:** 北部山脈に巣食い、近隣の村や商隊を襲っているワイバーンロードの討伐。

* **討伐対象:** ワイバーンロード 1体、ワイバーン 5〜10体

* **報酬:** 白金貨8枚

* **備考:** 飛行能力を持つ敵との戦闘経験必須。


* **依頼③:古代遺跡のアーティファクト回収**

* **内容:** 『忘れられた都』の深部に眠るとされる、古代文明のアーティファクト『星詠みの宝珠』の回収。

* **討伐対象:** ゴーレム系、アンデッド系など多数。強力な守護者の存在が予測される。

* **報酬:** 白金貨10枚

* **備考:** 遺跡内の罠解除、古代語の解読知識が推奨される。危険度不明。


シロウ:「あ、あった。」


*Aランクの依頼が並ぶ掲示板に見向きもせず、シロウはすぐ隣にあるC〜Dランク向けの掲示板に移動した。そして、討伐や護衛といった血生臭い依頼書には目もくれず、その中から一枚の地味な依頼書を手に取った。*


**【Dランク依頼】**

* **依頼:グレンデル鉱山の鉱石採掘**

* **内容:** グレンデル火山麓にある鉱山で、指定された鉱石(鉄鉱石、銅鉱石)を採掘する。

* **納品物:** 鉄鉱石 10kg、銅鉱石 10kg

* **報酬:** 銀貨5枚

* **備考:** 採掘道具ツルハシなどは各自で用意すること。鉱山内には低級モンスター(コボルト等)が出現する可能性あり。


*その光景を見ていた周囲の冒険者たちは、三度みたび、絶句した。*


*「……は?」*

*誰かが、間の抜けた声を漏らした。*


*Aランクに特例昇級したばかりの、ホブゴブリン・ジェネラルを単独で討伐したとされる実力者が、今まさに手に取ったのは、駆け出し冒険者が日銭を稼ぐために受けるような、単純な採掘依頼。報酬は、たったの銀貨5枚。*


*先ほどのフィオナとのやり取りで高まった緊張感は完全に霧散し、代わりに、理解不能なものを見るかのような、困惑した空気がギルド全体を支配した。*


*シロウは周囲の反応など全く意に介さず、その依頼書を持って受付カウンターへと向かう。そこには、先ほどのフィオナとのやり取りを遠巻きに見ていた、若い女性職員がいた。彼女はシロウが近づいてくると、ビクッと肩を震わせ、緊張した面持ちで直立不動になる。*


ギルド職員:「あ、あ、あの…な、なにか御用でしょうか、シロウ様…!」


*完全に萎縮しきっている女性職員に対し、シロウは手に持っていた採掘依頼の依頼書をカウンターに置いた。*


シロウ:「これ、受ける。」


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