海とサメの子 上
この世界の海は、まだ97%しか探索されていない。
なので、その海の中には未知がたくさんある。
これは、そんな97%の海に住むサメの子と、
ただのカメラマンが、この世界の海の謎を2%ぐらい解き明かしてしまう物語。
*
「くっそ…あのリス逃げ足早いなぁ…」
俺___琴島琉兎は、今ものすごい場面に直面している。それが、
「ミケリスはマジで撮っておかないとやばい…」
そう。この世界で一番美しいリスとされている、
ミケリスだ。今現在、俺は東南アジアの方 (タイらへん)にきている。日本では見られない動物を撮っておこうと思い、すこし貯金をかなり削って来た。
そこで出会ったのがこのリス。
黒と白とオレンジがくっきり分かれているのが特徴のリス。日本では絶対見られないから、必ず撮っておきたい…
「にしても蒸し暑いなぁ…ここ…」
基本、ミケリスは熱帯雨林に生息しているため、
長時間人間が同じ体制でいると蒸し暑くなってくるのは当たり前だと思っている。
するとリスがきのみを食べ始めた。
「チャンス!今だ!」
パシャ
「きたぁぁ…!やっぱりリスはかわいいなぁ…」
無事ミケリスを撮った後、俺はすぐに森を出て、
街に引き返そうとした。
その時、
「あれは…人?」
今俺が来ている森は、少し高い崖の上にあり、そこから海を一望できる。
しかし、よく海辺を見てみると、人らしき影が見えたのだ。
「遭難したのかも…一応行ってみるか…」
俺はめっちゃボロいレンタカーにのり、
人影が見えた海辺を目指し車を走らせた。
*
「あぁ…あつい…」
私はただのサメの子。普通に足があって、
手もあって、尻尾もある。ごく普通の女の子だ。
しかし、やはり海から出る判断は本当に
ミスった…完全な迷子になっちゃった…
その時、目の前から海辺を猛スピードで走ってくる…確かあれは「くるま」だったはず。
こっちに向かってくる…え、怖い…
「おーい!大丈夫かぁ?」
「?!」
あれ完全な人だ。人はみてるけど、男の人は久々に見たかも…けどどうして私の元へきたんだろう…
その時、その男の人の車が目の前で止まった。
「って…裸?!サメの尻尾!?こんなところでどうした?!」
「はだか?どうゆう意味なの…?」
「待ってくれとりあえずこれを…」
その男の人は、なぜか大きな黄色い布を被せてきた。なんでこんなことするんだろう…?
「裸はやばいからとりあえずきてくれ…」
「はだか…これ、ふく?」
「そう服!って…君日本人?日本語喋ってるけど…」
「にほん語?クメ語ならあるよ。」
「クメ語…?」
突然の出来事と、謎の言葉で私めちゃくちゃ混乱しちゃってる…
服はわかったけど…はだかがまだわからない…
とりあえず服は着るものだからと親から教わったのできてみた。
「よし…まずいろいろ聞きたいことがあるんだが…
まず…そのクメ語?とやらを話してみてくれないか?」
「わかった。♪〜」
「歌い始めた…?というより、鼻歌だな…」
「今なんて言ったかわかる?」
「わからないな…日本語じゃないとわからない…」
*
「うーむ…参ったなぁ…」
どうやら、このサメ尻尾の女の子は、
この目の前に広がる海のどこかから来たらしい…
しかも、喋る言語については、
「日本語」というものは知らないが、この陸の世界で伝わる言葉と親?から教わったらしい…
しかしその言葉も、単語一つ一つの理解が曖昧で、
文脈や発音だけわかっているという状況に見える…
俺が砂の上で仰向けになって悩んでいると、
サメの子が喋った。
「私、迷子?なの?」
「迷子…まあそうだな。というか自分では
今の状況わかってるんだろ?それを一回
声に出してみろよ。」
「…? こう…? 〜♪」
俺は彼女の鼻歌をよく聞いてみることにした。
すると…
「なんか聞き心地がいい…」
なぜかめちゃくちゃ聞き心地がいい歌声だ。
…まさかこれ…多分わかった。
俺も一回歌で返してみよう。
そう思い、俺は息をしっかり吸い、
「〜♪」
「…!?」
するとその子が急に歌うのをやめた。
そして明らかな驚愕の顔でこちらをみている。
「わかるの…?これ…」
「俺が今歌ったのは、俺たち人間で言う、
「ドイツ音階」と「コード」だ。」
そう。彼女が歌っていたのは、ドイツ音階とコードを使った話し方をしている。
主に曲を作る時に使われている音の和音や単体の名称で、FやAなどがあり、それらのアルファベットを組み合わせることで、この子は喋っていたのだ。
そして、俺は「SAME」サメと言ったのだ。そして彼女は____
そう思った矢先、海の方から轟音が響いた
「!?」
「〜♪!?」
多分彼女は、今、「渦巻!?」と叫んだのだろう。
ここからは、当時の歌声を思い出しながら、
読者に分かるように翻訳していこうと思う。
もちろん。俺も歌声で受け答えをしているから、
そちらも翻訳していこうと思う。
*
「サメ」
「!?」
私はものすごく驚いた。なせかって?
それは、急にこの人が喋り出したのだ。
もちろん、最初から話していたのだろうが、
いまいち意味がわからなかった。けど、急に
私の話している言葉を理解したかのように…
というより、もう理解していると思う。
彼は確実に、サメと言ったのだ。
「わかるの…?これ…」
私は恐る恐る聞いてみた。
すると、
「俺が今歌ったのは、俺たち人間でいう
「ドイツ音階」と「コード」だ。」
どいつおんかい?こーど?さっぱりわからないが、
歌に関しての話をしているのはわかった。
その時、海の方から轟音が鳴り響いた。
その方向を見てみると、水面に小さい渦ができているのがわかった。
「渦巻!?」
*
「なんでこんなところに?」
「これ、ただの渦巻じゃない…!」
その時、渦巻の中心から吸い込まれるような風が吹き始めた。
「やばい、とりあえずくるま?のなかに!」
俺たちはすぐさま車に乗り込み、
安堵していたその瞬間、
ガコンと音が鳴った。
「怖いですね…なんの音でしょう?」
「というか…なんか車傾いてないか?」
「え?」
なんと、車がどんどん海の方に引きずられ、
浜辺から落ちそうになっていたのだ。
「…やばいやばいやばい!落ちる!捕まって!」
そのまま車は渦巻の方へ吸い込まれ、
渦巻の中心へと姿を消してしまった。
*
__丈夫ですか?!
なにか聞こえる…
「大丈夫ですか!?」
「はっ!?まさか、俺気を失ってた?」
「そうですよ。」
「というか…ここどこ?」
渦巻に吸い込まれた後、俺たちは
謎の空間に来ていた。
見た目は明らかな洞窟。しかし周りには水が
あり、なんとガラスのようなもので海が見えるようになっているなんとも不思議な空間だ。
「ここは私たちが住んでる場所よ。」
「?!」
後ろから突然声が聞こえたので、振り向いてみると
そこには…
「海とサメの子 下」へ続く