とある心霊写真
ありがたいことに、私はこんな職業をしている中では食える方の人間ではあるのだろうと思う。
こんな仕事、なんて言い方をすれば波風も立つかもしれないが、ホラー限定のライターと情報を加えることで、その波風も凪いでいくだろう。
それも、創作ではなく、実話系限定のライターだ。
まあ、そんなことはおいておいてだ。こんな仕事をしていて食えるということの理由の一端、というか主な理由は、それなり以上にホラーに纏わる話が私のもとに集まってきてくれることにある。
ありとあらゆるタイプの怖い話。
オカルトであったり、ヒトコワであったり、本当に玉石混交ではある。
その中でも、最近多いものが、怖い写真──ナニかが写り込んでしまった写真だ。
今日の取材対象も、そういう写真を不幸にも──好事家にとっては幸運なのかもしれないが──手に入れてしまったAさんという女性だった。
「東京に行っていたんです」
Aさんは、どちらかといえば地方と称される側の地方に住んでいたという。
「だからまあ、その時の写真は、高校時代の友人との旅行だったんですけど」
東京で、ひと通りありとあらゆる観光地と呼ばれるような所は巡ったそうだ。Aさんの地元はどちらかというと、緑の比率が高い方の地域だったそうで、目に映る東京の景色は全て物珍しかったそうだ。
「そのうち、友人たちで集まって、なんてことない集合写真みたいなものを撮ったんですよ。自撮りだったんですけど」
旅の中の1枚。思い出の品の一つ。
それに、写り込んてしまったのは。
「腕が──腕が一本、多いんです」
肩に一つ、手が。
本来なら5人だから、腕は10本までだ。
それが、一つ多くて。
「いわゆる──ピースをしているように、見えませんか」
そういって、彼女が見せてくれた写真。これから垢抜けていくのだろう少女たちが、カメラに向かってぎこちなくも楽しげに微笑んでいて。
その写真の真ん中はAさん。問題の腕は、ちょうどその隣の人物の肩に、あった。
一本多く。
そして。
「ギャルピースなんです」
肩から伸びた腕は、逆を向いていて、そして下向きにピースをしているように見える。
「まあ、別にこの友人がその後何かがあったとかは、まったくないんですけど。強いて云えば、化粧の趣味が変わったくらいで」
幽霊。それも、その地に縛られる幽霊というのは、何か想いが残っていて。
生前の行動を思わずしてしまうのだという。
ならば、写真を撮られたら、思わずピースをしてしまう幽霊がいてもおかしくはないのかもしれない。
それにしてもだ。
「ギャルピースって…………アゴを隠すピースのことじゃないんだ……………」
ジェネレーションギャップって、怖い。いつか、普通に山姥してるギャルの幽霊も、本物の山姥として間違われてしまうのだろうか。
遠くでカラスが、鳴きながら空を飛んでいった──。