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科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜  作者: 難波一


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第7話 迅 vs. リディア——科学と魔法の融合③

「じゃあ、そろそろ反撃してもいいよな?」


迅がニヤリと笑いながら、リディアの正面に立つ。


「……!」


リディアはわずかに身構えた。


(彼がどんな手を使ってくるのか……警戒しないと)


「俺が今使えるのは、"フレア・リィス"だけだが……」


迅は手のひらを開き、炎の魔法を生み出す準備を整える。


「風を操る魔法相手に、火の魔法なんて使っても意味がないわ。」


リディアは冷静に言い放つ。


「その通り。だから、火自体は攻撃に使わねえよ。」


「……?」


リディアが眉をひそめた、その瞬間——


「…"炎矢フレア・リィス"」


迅が呪文を詠唱し、掌上に炎が生まれる。


「…させない!"風刃エア・ブリッツ"!!」


咄嗟にリディアも風魔法を迅へと放つ準備をする。

しかし……


ゴォッ——!


迅の"炎矢フレア・リィス"が地面に向けて放たれた。


「地面に……?」


リディアが疑問を抱く間もなく、炎が訓練場の砂を焼き、その場に熱を蓄える。


(何を……? ただ地面を燃やしただけじゃ……)


だが——。


ビュオオオオオッ!


「えっ!?」


突如として、訓練場に強い風が巻き起こった。

吹き上げる風が"風刃エア・ブリッツ"の軌道をあらぬ方向へと追いやる!


リディアの銀髪が、風圧にあおられて揺れる。


(こ、この風……! まさか……!)


「気づいたか?」


迅は満足そうに笑う。


「火で地面を熱して、上昇気流を作ったんだよ。」


上昇気流——。

リディアは息を呑む。


迅の足元で燃えた炎は、砂を温め、熱気を生み出していた。その熱い空気は自然と上昇し、周囲の冷たい空気を巻き込んで風を生み出している。


「火が風を生む……?」


「そうだ。火炎魔法を地面に撃つことで、そこに空気の流れを作れるんだ。温かい空気は上昇し、冷たい空気がその隙間を埋める。」


「……っ!」


リディアの脳内で、今までの戦況が繋がる。


「私の”風刃エア・ブリッツ“の流れが……乱されてる!?」


魔法を撃とうとした瞬間、風の刃の軌道がわずかに逸れた。


「つまり……!」


リディアは驚愕しながらも、理解した。


迅は火を使って、私の魔法の軌道を“操作”している!


「風は空気の流れでできてる。だから、火で風をコントロールすれば、お前の魔法の精度は落ちる。」


「そんな……!」


今までの模擬戦とは一転、リディアは不利な立場に追い込まれた。


迅はこの状況を見逃さなかった。


「——今だ!」


風の流れが乱れた隙を突き、迅がリディアの懐に飛び込む!


「しまった!」


リディアの瞳が見開かれる。

この距離では魔法が撃てない!


彼女の杖が振り上げられる前に、迅の手が先に動く——!



(っ……殴られる!?)


リディアは反射的に目を瞑った。


しかし——。


「……?」


何も起こらない。


恐る恐る目を開けると、そこにはニヤリと笑う迅の顔があった。


「女の子を殴るわけねぇだろ。」


「……っ!?」


リディアの頬が、一瞬で赤く染まる。

そして——。


「……うわ、ヤバ……魔力切れ……」


バタリ。


迅はそのまま後ろに倒れ込んだ。


「えっ?」


リディアは思わず戸惑う。


「ちょっ……! ちょっと、何よ!?」


「いやぁ……模擬戦に夢中になっててさ……考えてみたら、俺、魔力ほとんど残ってなかったわ……」


「そんなこと、もっと早く言いなさいよ!!」


リディアは思わずツッコミを入れる。


「仕方ねぇだろ……俺、さっき初めて、魔法使った……ばっかりなん……だから………。」


それだけ呟くと、迅は砂の上に大の字になったままスー…スー…と寝息を立て始める。



周囲の魔法士たちが、静寂の後にどっと笑いに包まれた。


「はははっ……勇者殿、最後の最後で自滅か……」

「まったく、なんておかしな人なのかしら……」

「だが、使用魔法を制限してたとは言え、まさか本当にリディア様と互角に戦うとは……」


リディアは倒れた迅を見下ろし、息をついた。


(こんな戦い方、初めてだった……)


彼女の胸の奥で、何かがはじけるような感覚があった。


(こんな男の子、初めて出会った……!)


彼女はそっと、倒れた迅を見つめる。


「……本当に、面白い人ね。」


ぽつりと呟くその声は、優しさに満ちていた。


——こうして、リディアの中で、九条迅という存在が確かなものへと変わっていった。


それは、異世界の天才魔法士が、“ある男”に心を許す最初の瞬間だったのかもしれない。


そして、それは九条迅にとっても、新たな仲間との出会いとなったのだった——。

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