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科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜  作者: 難波一


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第51話 科学の一閃、砕ける魔法の盾

"黒の賢者"アーク・ゲオルグは、戦場の中心で静かに佇んでいた。


目の前には、勇者・九条迅くじょうじん


彼は両手を掲げ、今まさに二重詠唱による攻撃魔法を完成させようとしている。



(なるほど……)



アークは薄く微笑んだ。


並列詠唱。それ自体は、魔王軍の魔導士の中にもできる者が極小数ながら、いるにはいる。


だが、迅のやり方は異質だ。


“詠唱による魔法発動”と“無詠唱による魔力操作”を同時に行う。


(まるで……魔法を“計算”しているかのようですね。)


迅の構えを見る限り、彼の狙いは明白だった。



——純粋な魔力収束砲の強化版。



片方の手で火属性の魔力を極限まで収束させ、

もう片方の手で同じ魔法を準備することで、二重の魔力収束砲を放つ。


二発同時発射、あるいは、片方の魔力をブースターのように加速させ、単一の魔法の威力を二倍以上に引き上げる算段か。


(確かに、興味深い戦法ですが……)


アークは、冷静に片手を持ち上げた。


——その掌の先に、闇の魔力球が生じる。


この球こそ、彼の魔導工学が生み出した“可変防御シールド”。


直前の戦いで、迅の魔力収束砲が高温の熱線であることはすでに分析済み。


それならば、“耐熱性の高い物質”へと変質させるだけでいい。


前回と同じように“あの金属”を使う。


(……やはり、"タングステン"…と言いましたか? あのような特性を持つ魔力変質体が適切でしょう。)


更にこれに上乗せして、耐熱魔法を付与する。

これで、いかなる熱線であろうと防げる。


「さあ、勇者殿——」


アークは静かに、仮面の奥から見下ろすように言う。


「——あなたの研究の成果を、見せていただきましょう。」


迅がわずかに口角を上げた。


「——ああ、見せてやるよ。」




——その瞬間、閃光が走った。




——瞬間、世界が白く染まる。




アークは一瞬、視界が真っ白になるのを感じた。



そして、次の瞬間——



バリアのように彼を覆っていた“防御球”に、ヒビが入り砕け始める。



「……な……っ!?」



戦場に衝撃が走る。


魔王軍の兵士たちは、何が起こったのか理解できず、驚愕の声をあげる。


リディアとロドリゲスも、目を見開いていた。



「これ……本当に魔力収束砲……!?」


リディアが信じられないという顔で呟く。



アークの防御球は、確かにタングステンのような高耐熱性を持つ物質に変質していた。


それなのに——


貫かれた。


アークの脳内で、一瞬にして分析が走る。


(何が起こった……!?)


通常の魔力収束砲の威力ではない。


質量を持っている——?


(まさか……!)


それに気づいた瞬間、迅の手のひらにまだ残る魔力を見た。


彼の魔力の中に、確かに“土属性”の魔力が混じっていた。


(これは……“鉄”……!?)


その時、アークの脳裏に、過去の記憶が蘇る。



——幼少期、父が見せてくれた小さな"炎色反応・・・・"。

——赤く燃える鉄粉の粒子。

——そして、科学という未知の概念への憧れ。



(……まさか……)


アークは迅を見た。


迅は、すでに次の行動へ移ろうとしていた。


彼は口元をわずかに歪め、ニヤリと笑った。


「……どうした、アーク?」


「お前の“シールド”……ちょっとばかし貫いちまったけど、大丈夫か?」


アークは沈黙した。


久しく感じたことのない——“誤算”だった。


「…………」


アークはゆっくりと、仮面の奥で目を細めた。


(——これは、思っていた以上に……)


(興味深い。)


彼はゆっくりと、片手を掲げる。



——そして、彼を覆う"防御球"のヴェールが完全に砕け散ったその瞬間。



第三の魔力球(・・・・・・)”が、発生した。

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