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科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜  作者: 難波一


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第47話 超速の迅雷、戦場を駆ける

ズガァァァァン!!!



爆風が荒れ狂い、大地が抉れ、戦場に火花が散った。



「……クソッ!」



迅は煙の中を駆け抜けながら、アークの掌に浮かぶ魔力球を見据える。


一見、ただの黒い球体に見えるが、実際には常に形を変え、魔力の物質化という未知の技術で様々な攻防を繰り広げる“戦闘ユニット”だ。



「あの球体…!厄介すぎるだろ……!」



迅は舌打ちしながら、次の一手を考えた。


——正攻法じゃ、突破できない。


魔力収束砲も、"雷槌サンダー・ボルト"も、ことごとく防がれた。


このままではジリ貧になる。


(なら……リディアと連携して、手を変えて攻めるしかねぇか)


迅はリディアへと視線を送ろうとした——その時。



戦場の熱気が肌を焼く中、静寂が走った。



アークはゆっくりと手を掲げ、そこに浮かぶ黒い魔力球をじっと見つめていた。



「さて……」



彼は、まるで指揮者がタクトを振るように、その指を軽く動かす。


すると、魔力球が微かに歪み、黒槍へと変形した。

そして────



「………おい、お前。何を……」



黒槍の穂先が向きを変えていく様子に、迅の声に僅かに焦りの色が宿る。



「そろそろ、あなた方の実力を、もう少し深く知りたいところです。」



その言葉と共に、槍の形となった魔力球が、一瞬で"リディアの方向(・・・・・・・)"へと飛んだ。



——ビュンッ!!



「……!」



リディアは即座に察知し、回避行動を取ろうとした。


だが——


(——しまった……!)


彼女の直感が告げた。


避けられない。

他の兵の相手に気を取られ過ぎた。


その槍は、彼女が魔法を発動するよりも、脚を踏み出すよりも速く——


まるで、既に運命が定められたかのように、彼女の心臓を貫かんとしていた。



(──駄目……!……回避できない!)



彼女は、全身が硬直するのを感じた。

息が詰まる。"死"という圧倒的実感が、その身に突き刺さる。



(──私……ここで……死ぬのかな。)



戦場に出てから何度も死線を潜り抜けてきたはずの彼女が、これほどまでに圧倒的な“死”を感じたのは初めてだった。



「リディア!!」



迅の叫びが響く。



(──ごめん、じん。もう一緒に夢、叶えられないかも……。)



心の中で呟き、最後に彼の方に視線を送る。

だが、リディアの目に映ったのは——




黒槍が、自身の胸に迫る、まさにその瞬間。




——終わる。




その確信が胸を貫こうとした、その瞬間——




——ズバァァァンッ!!!!!




「……!!??」


空間が、一瞬だけ歪んだ。


突如として視界が揺れ、全ての動きがスローモーションのように感じられた。


しかし、それは錯覚ではなかった。


実際に、リディアの体が浮き上がり——


気がつけば、誰かに抱きかかえられていた。



「え……?」



ふわりとした浮遊感。


目の前には、見慣れた少年の顔。


じん……?」


リディアが目を瞬かせると、彼女の目に映ったのは “変化” した迅の姿だった。



彼の瞳は、淡く青白い光を帯びていた。



彼の全身から発される魔力は、今までとはまるで違う波長を持っていた。



「……間に合った、か。」



迅の低い呟きが、耳元で響く。


——迅は、信じられないほどの速度でリディアを抱え、槍の攻撃を回避していたのだ。


それも、人間の動体視力や反応速度の限界を超えた速さで。



「……どういう……こと……?」



リディアが震える声で尋ねる。


しかし、迅は彼女の言葉には答えず、そのまま地面に軽やかに降り立った。



「おいおい、アーク。さすがにレディに対しては、もうちょい手加減してやれよ。」



迅は飄々とした口調のまま、アークへと視線を向ける。


その顔には、余裕 すら漂っていた。


「……ふむ。」


アークはそんな迅を静かに見つめながら、口元に手を添えた。


「……これは、驚きました。」


仮面の奥に隠された瞳が、わずかに揺らいだ。


彼は今の出来事を目で追っていたはずだった。


だが——


(……私は、“いつ” 彼がリディア嬢の元へ移動したのかを認識できなかった……?)


それほどの超反応、超速度。


アークの思考が、無意識のうちに動揺する。



「……何なのですか、今の魔法は?」



彼が迅に向かって問いかけた時——


迅の口元に、僅かに 愉快そうな笑み が浮かんだ。



「さあな。」



——戦場の空気が、一変する。


次なる展開が、始まろうとしていた。

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