表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜  作者: 難波一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/70

第36話 密度制御の応用と、新たな壁

魔力の密度を意識的に高める訓練が、王宮魔法士たちの間で始まってから数日が経過した。


訓練場には、熱心に魔法の圧縮に取り組む魔法士たちの姿があった。


「……はぁっ!」


ガルツが叫びながら"炎矢フレア・リィス"を撃つ。


——ボンッ!!


圧縮された炎の矢は、通常よりも鋭い軌道を描き、訓練用の的を吹き飛ばした。

それを見たガルツは、興奮した表情で拳を握る。


「やった! 今の、いつもの倍くらいの威力があったぞ!」


「すげぇ……ガルツまで出来るようになったのか……。」


ビネットとエドガーが驚いた表情で彼を見つめる。


「うん、でもまだリディア様ほどじゃないな。」


「そりゃリディア様と比べたら誰だって見劣りするさ。」


「確かにな……。」


エドガーが苦笑しながら肩をすくめると、リディアがすぐ側で"風刃エア・ブリッツ"を試しているのが目に入った。


彼女は目を閉じ、静かに魔力を溜める。


——シュバッ!!


鋭い風の刃が空を裂き、的に直撃する。


——ズドン!!


一瞬の遅れで、的が完全に粉砕された。


「……」


ガルツ、ビネット、エドガーがぽかんと口を開ける。


「ま、またリディア様が限界を突破した……。」


「リディア様がやると、普通の魔法とはもう別物みたいになるよな……。」


リディア自身は、周囲の反応には気付かずに満足げに微笑んでいた。


「ふふ……なるほどね。確かに、魔力の密度を高めることで、魔法の威力を格段に上げられるわ。」


「おいおい、まるでとっくに知ってたみたいな顔してんな……。」


迅が苦笑しながら彼女に声をかける。


「でもさ、どうして今まで誰もこのやり方を思いつかなかったんだろうな?」


「……おそらく、魔法は長い歴史の中で、“こういうもの”だと固定観念ができあがってしまったのね。」


リディアが思慮深げに呟く。


「詠唱、魔力の量、発動……この基本要素だけで魔法が成立するから、みんなそれを当たり前として疑わなかった。でも、あなたみたいに外の視点を持っていれば、違う角度から物事を見られる。」


「……なるほどな。」


迅は頷きながら、自分の仮説を整理した。


「つまり、“密度を高める”って発想がなかったから、みんな大雑把に魔法を撃ってたわけか。」


「ええ。魔力を“圧縮する”という概念が、そもそも魔法の教育には存在していなかったんだと思うわ。」


「……それにしても、なんかおかしくねぇか?」


「え?」


「お前、めちゃくちゃすんなりこの理論を理解して、即実践してるけど、普通そんな簡単にできるか?」


「……!」


リディアは、一瞬言葉に詰まる。


確かに——

自分はこの技術をほぼ直感的に、当然のように扱えている。


「リディア様は天才だからな!」


「そりゃそうだ! 俺たちが何日もかけてようやくできることを、半日でやってしまう!」


ガルツとビネットが納得したように頷く。


「まあ……そういうことにしときましょう。」


リディアは微笑んで誤魔化すが、心の奥では少し引っかかっていた。


(まるで、この技術を私は最初から知っていたかのように使える……)


その違和感は、まだ言葉にできるほど明確ではなかった。




 ◇◆◇




「さて、密度制御の第一段階は成功ってことでいいな。」


迅は訓練場の中心に立ち、腕を組んで全体を見渡した。


「だけど、ここからが本題だ。今は単に魔力を圧縮しただけだけど、どうやってその圧縮をさらに自在にコントロールするかが次の課題になる。」


「コントロール……?」


エドガーが首をかしげる。


「具体的には、どういうことだ?」


「単純に密度を高めるだけじゃなくて、魔法の形や特性を変えるってことだよ。」


迅は黒板にいくつかの図を描きながら説明を始めた。


「たとえば、火魔法の場合、ただ炎を放つんじゃなくて、極限まで圧縮して一点集中で撃てば、レーザーのような高熱のビームになるかもしれない。」


「な、なるほど……!」


「風魔法なら、刃の形をさらに鋭利にすることで、空間すら切り裂くような技術ができるかもしれない。」


「確かに……今までは魔法の形を変えるなんて、詠唱を工夫するか、魔道具を使うしかなかった。でも、自分の魔力量とコントロールでそれができるようになったら……!」


ガルツが興奮したように言った。


「だが、勇者殿。どうやってその制御方法を編み出すのじゃ?」


ロドリゲスが腕を組んで尋ねる。


「……実際に試してみるしかねぇよな。」


迅はにやりと笑った。


「科学でも同じだ。仮説を立てたら、実験する。うまくいかなくても、データを取って修正する。そうやって、より精度の高い技術にしていくんだ。」


「……あなたって、本当に面白いわね。」


リディアが小さく呟いた。


「お、おう……?」


「こうやって、魔法がまるで学問のように発展していくなんて……こんなに楽しいこと、今までなかったわ。」


「……そりゃ何よりだ。」


リディアは微笑んで頷いた。


「じゃあ、やることは決まったな!」


迅は拳を軽く握りしめる。


「次の課題は、“魔法の形を変える”ことだ!」




こうして、王宮の魔法士たちは次のステップ——

魔法の形状変化という新たな領域へと踏み込むことになる。


しかし、それはまた別の驚くべき発見と、さらなる混乱をもたらすことになるのだった——。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ