表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SUMMER HEAT! 俺が目指すのは主人公っぽい幼馴染の一番の悪友キャラ  作者: みちなり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/43

24.サンキュー・ポリスマン

 地方大会までの鈍色の日々。はあ。本当はその日は、地元の花火大会の日だったのに。

 花火大会と言えば浴衣だろ? 希夢ちゃんの浴衣姿……見たかったな……光流を誘ってればきっと一緒に来ただろうに。


「自分の限界を自分で決めるな、1cm先の水を掴め、プッシュの最後の一払いまで気を抜くな、夏平! お前はもう2cm前に出られるんだ!」


 鬼の罵声が背中に降り注ぐ。その度に俺は痺れる筋肉に鞭打ち、クロールの腕の最後の一掻きの動作に力を込める……このプッシュがタイムを縮める、そんな事は解ってる……俺はひたすらに泳いで、泳いで、泳いだ。



 そして地方大会を翌日に控えた日。この日の練習はミーティングのみで午前だけで終わり、午後は休養となった。俺は実際に昼前に帰宅して飯を食い、小一時間の仮眠を摂った。


 それから俺は自転車で出掛ける……キャンプで使う炭や何かの買い出しを終えておきたかったのだ。

 だけどキャンプは今の所男しか来ない予定だ。光流の他に誘ってる男子数名……来ると明言してるのは光流だけ……何だかなあ。


 女の子が来ないキャンプなんて……ん?


 ゴスロリというのだろうか。この暑い最中にフリフリヒラヒラした服を着た女の子が、道を走っている。大きな鞄を抱えて、何だか大変そうだな。だけどあのツインテールの長い髪は希夢ちゃんを彷彿とさせる。もしかして希夢ちゃんだったりして……だけどあの子はこんな服着ないよな?


「! 元気くん!」


 しかし自転車で追い越してみると、それは本当に希夢ちゃんだった! 嘘ぉお!? ネタみたいな服だけど希夢ちゃんが着るとシャレにならん程可愛い、何だこれ、本物の天使か!?


「おっす希夢ちゃん、元気?」


 俺はギリギリ冷静さを取り戻し、そう言った。希夢ちゃんはこっちを見た……うわああ!? 希夢ちゃん半泣きじゃないか、何があったんだ!? そして可愛い、半泣きの希夢ちゃんはあまりにも可愛すぎる!!


「元気だけどあの、お願い元気くん自転車に乗せて! 私どうしても二時半の新幹線に乗らないといけないの、助けて!」


 えっ……ええええ!? 何そのイベント!?

 しかし困惑する俺を他所に希夢ちゃんは駆け寄って来て俺の自転車の荷台に横座りして……俺の腰に抱きつく!? うおおお!? 俺は今、学園一の美少女に抱き着かれている!?


「早く! 駅まで連れてって!」

「りょ、了解ッス!」


 ちょっと待て何これ、サル顔のモブ悪友に過ぎない俺が、メインヒロインの、希夢ちゃんを自転車に乗せて走る、そんな事があっていいのか!?


「行くぞォォ十万馬力ィイ!」


 力が! 力が漲る! 学園一の美少女を乗せた俺は! ペダルを! 漕ぎまくる! 夏平元気、夢の超特急だああ!


「きゃあああ! 速い速い、速いよ元気くん! でもお願い急いで、私四時までに飯田橋に着かないといけないの、元気くんお願い!」

「任せとけェェ! ぜってえ間に合わすからよォォ!」


 俺は希夢ちゃんを乗せ、ペダルを漕いで、漕いで、漕いだ。新幹線が止まる駅へ。

 ああああーマジかぁあ、これマジなのかァァ!? 希夢ちゃんめっちゃ俺の腰に抱き着いてる、あの大きな胸も絶対俺の背中に当たってる! やべーやべーどうすんだこれ俺どうすんだ!? 飯田橋ってどこなの? 何なら俺そこまで走っちゃおうか!? 四時までによォォ!


 商店街を駆け抜け! 人々の間を縫って! 俺はペダルを漕いで、漕いで、漕いだァア!!



「きゃあああ間に合いそう! ありがとう元気くん!」


 駅のコンコースの前で自転車の荷台から降りた希夢ちゃんは……俺の右手を両手で取り、ぎゅっと握りしめてそう言った! ぎゃあああ俺この手二度と洗えねぇええ!


「ほんとに急ぐから今日はこれでごめん、また今度ね!」


 大きな鞄を抱え希夢ちゃんは最後にもう一度振り返って手を振り、駅の階段を駆け上がって行った……はああ……全部夢だったらどうしよう……いやもう夢でもいいわ俺……


「ふふっ、可愛い子じゃないか」


 幸せに浸る俺の肩を誰かが叩く。振り返ると、そこにはとても体格の良い笑顔のおまわりさんが居た。


「は、はい……友達なんです……」

「うん、うん。青春だね! じゃ、ちょっとそこの交番まで一緒に行こうか」



 交番に連れて行かれた俺はそこで交通安全教本を音読させられ、自転車で二人乗りが許されるのはどんな場合に限るのか、それ以外だとどんな法律に触れるのか、二人乗りがどんな事故に繋がるか、それが同乗者や歩行者にとってどんなに危険な物か、みっちりと叩きこまれた。


 後でスマホを見ると、無事新幹線に乗れた希夢ちゃんからお礼のライムが何件も来ていた。

 俺が希夢ちゃんのゴスロリ姿に驚いた事を返信すると、これはゴスロリではなく地雷系女子だという返事が来た。はえー。色々あるのね。


 だけど希夢ちゃん、東京に何をしに行ったんだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作者みちなりが一番力を入れている作品です!
少女マリーと父の形見の帆船
舞台は大航海時代風の架空世界
不遇スタートから始まる、貧しさに負けず頑張る女の子の大冒険ファンタジー活劇サクセスストーリー!
是非是非見に来て下さい!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ