5.襲撃
そんなこんなで話していると鐘の音がガランガランと鳴った。
「…発見したみたいだ。そろそろ奴らが来るぞ。」
ガルさんが険しい顔をしながら空を見つめる。
空にはまだ何もない…と思うが張りつめた空気がこれから何か来るのを示しているかのようだ。
ガルさんと一緒に空を見ていたら何か小さいものが見えた気がした。
「…来たな。狙いはお前だ。くれぐれもこの部屋から出るんじゃないぞ。」
ガルさんが緊迫した声でそういった。
ただガルさんが守ってくれるのでさほど命の危険は無いのだろう。
僕はお父さん達から言われた通りここから動かない。
どんどん近づいてきて気付いたがどうみても1体だけじゃない。
体が黒い個体が数十体はいる。それが一直線にこっちに向かってきているんだ。
「体が黒くなってるよね…あれってなんでなの?」
「分からん。あの生物に関してはまだ未知な部分が多いんだ。
ただ、あの集団の中に透明な奴が1匹入ってることが多い。それを気を付けなきゃならない。」
僕が見たやつだ。見にくいし、力も強かった。僕が死んでもおかしくなかったはずだ。
今回の作戦で誰も死ななければいいけど…。
そして黒い集団に2色の煙を纏った集団が近づいていく。
煙はまるで兵士たちの身を守るかのように体の周囲にとどまっていて
そのまま敵集団に突っ込んでいった。
敵は一直線に僕の方に飛んできていたが攻撃を受けたことで散開。
攻撃をしかけてきた人達にターゲットを切り替えたようだった。
黒色と紅色が衝突していることが多い。白色は一定の距離を保っている。
黒色の数が着実に減っているが、なぜか怒号のような大きな声が聞こえる。
「まさかあいつら透明のやつを見失ったんじゃないだろうな…。
非常事態か、すまん!ちょっと我慢してくれ!」
そういった後にガルさんは持っていた筒から白い煙を出した。
少し煙たいが、僕を守ろうとしてやっていることなのでただ見守る。
煙は部屋に薄く充満した後、部屋の外までじわじわと広がっていく。
ガルさんは集中しているようで目をつむりじっとしている。
だが、急にガルさんの物より密度の濃い煙が、周囲を覆い始め僕らを包み込んだ。
敵襲かとも思ったがガルさんを見る限りなんだか嬉しそうな顔をしている。
「せっかく俺が護衛の役割しようとしてるのに結局心配が勝つんじゃねえか。
そんなに心配なら変に意地張ってないで一緒にいてやりゃあ良かっただろ。」
僕らの周囲を包み込んだ煙はなんだか安心できた。
「この煙ってもしかして…。」
そうガルさんに聞こうとした時に大きな音とともに窓が割れて外の風が吹き込んできた。
煙の中で見えにくい視界の先に見えたのは父さんが何かを抑えているところだった。
「【着色黒】。捕まえたぞ、このくそ野郎が。」
父さんが何かを言った後に化け物の体がどんどん黒色に染まっていく。
化け物は父さんと同じくらい大きくて人を真っ黒にしたような見た目をしている。
抑え込むのもかなりギリギリのようで化け物もまだ暴れている。
「ガルさん、父さんの事手伝ってあげてよ!父さんが怪我しちゃうかもしれない。」
「…そうだな。あれさえ排除できれば危険はないだろう。」
そういってガルさんが父さんの方に近づこうとした時に父さんから声が飛んできた。
「来るな!こいつが一体とは限らん!守ることだけに集中しておけ!」
確かにそうだけど…父さんだって苦戦してるじゃないか…。
遠くで戦っていた人たちも数人がこちらに飛んできているのが見える。
父さんが暴れてる化け物を徐々に抑え込んでいく。
どうやら殺さずに捕獲しようとしているようだ。
「あれを捕獲するつもりか。…抑え込めるのか。」
ガルさんがなんだか信じられないような物を見る目で父さんのことを見ている。
化け物と父さんの周りの床は削れた跡が残る。化け物の力がそれほど強いのだろう。
だが徐々に化け物がおとなしくなっていく。疲れたのか、逃げれないと思ったのかは分からない。
そして数人が合流して化け物を拘束していく。
「これで今回は終わりだな…。ヒヤッとしたが結果大丈夫だったな。」
結果、透明個体が1体と黒い個体が20体ほどでの襲撃だったようだ。
兵士の人たちも大きな怪我はなく終わったようだった。
あとから兵士の人達にたくさん謝られたけど父さんに守ってもらったから問題なかった。
今回は謝られることが多かったけど、全員があの化け物と戦えるほど強いと思うと
頭を下げさせるのも悪いように思えてくる。
今から軍の会議があるそうなので父さんも母さんもいないから
まだ護衛で僕についてくれているガルさんにいろいろ教えてもらうことにした。
「もうすぐ兵役だけどやっぱ厳しいの?いざってなるとちょっと不安で…。」
「そりゃあそうだな。でも兵役って言ったってそんなにいつも厳しいもんじゃねぇ。
戦闘と軍がかかわってくると大変になるがそれ以外は遊んでるようなもんだ。」
「そっか…。僕も白煙隊に入りたいけどどうやったら入れるとかあるの?
ガルさんはどうやって入った?」
「白煙隊は援護が主の部隊だからそこら辺を鍛えてたら配属の時に白煙隊になるだろうな。
でも確実じゃない。そこで、成績優秀者は自分で行きたい隊が選べるから確実に白煙を狙うなら
優秀者になったほうがいいな。」
「成績優秀者か…何か基準があるってこと?」
「あぁ、全体で何人いるかは分からないが上位10位にいればいいだろう。」
「10位か…うん。頑張るよ。絶対に白煙隊に入るからね。
それまでガルさんも頑張ってよ!」
「あぁ、分かったよ。それまで絶対に白煙にいてやるからな。…待ってるぞ。」
ガルさんは力強い目つきでこちらを見つめながら手を差し出してきた。
僕もその手を取って握る。父さん達に追いつくためにもこの約束を叶えるためにも。
僕は兵士となり白煙隊に入るんだ。
お読みいただきありがとうございます!
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ここで5話連続投稿が終わりになります。
次作から兵役編が始まりますが
まだ中途半端なのでキリのいいところでまた投稿させてもらいます。
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