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護るために僕は飛ぶ  作者: 轍
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4.新種

 目が覚めた時、そこはいつもの僕の部屋だった。

 痛かった右足にはびっしりと布が巻かれ、固定されている。

 あちこち痛む体を動かし体を起こすが、足首が固定されているため床に立てない。

 壁に手を付けようと体をもぞもぞ動かしていたら、突然扉が開いた。


「あっ!ライ兄ちゃんが起きてる!

 お父さー---ん!起きてるよおぉぉぉ…」


 レイルだった。…もういなくなったけど。 

 村長を呼びにいったのだろうし、この部屋で待つしかない。


 しばらくして村長と父さん、半泣きの母さん。そして知らないおじさんが入ってきた。


「ライ、まずは命があって良かった。そしてこの方はキワン軍隊長。

 お前の両親の上司にあたる方だ。今回の件で聞きたいことがあるそうだ。」


 そういって村長と父さん、母さんが1歩下がる。

 そして知らないゴツイおじさんがしゃべり始めた。


「私がキワンだ。まずは、危険な目に遭わせてしまってすまない。

 君のとっさの判断で助かってはいるが、命を失ってもおかしくなかったはずだ。 

 今回、君が怪我をした状況について話を聞かせてもらってもいいかな?

 何か辛いこと、思い出したくないことがあるのならば心の整理がついてからで構わない。」


 僕はちょっとおじさんにビビりながらも

家出して、畜産の村についたこと。

 村には誰もいなかったこと、動物の鳴き声もしなかったこと。

 夜に襲ってきた透明人間の事を間違えないように思い出しながら喋っていった。


 その時の父さん、母さん、村長は驚いた顔をして話を聞いていたけど

 軍隊長の人はただうなずいて聞いているだけだった。

 そして話終わった後、軍隊長が口を開いた。


「ふむ、その透明人間は追いかけてこなかったのかい?

 何か空腕のような物を伸ばしてきたり、空を飛んだりしなかったのか?」


「何も無かったと思います。ただ相手が見えずらいので100%無かったとは…。」


「分かった。ありがとう。

 それではもう1つ聞くが、相手に攻撃はしていないんだね?」


「特に何も。…怖くてすぐに逃げました。

 あ、でも相手を空腕で掴んだ時に腕が潰れたような感じでした。

 実際にどうなっていたかはちょっと見てないですが…。」


「そうか、それでは質問はこれくらいで大丈夫だ。

 ラヴァ、イナ。子供との時間を邪魔してすまなかったね。」


「「ありがとうございましたっ!」」


 去っていったキワン軍隊長を両親が敬礼で見送る。

 その様子を見た村長も慌てて敬礼しようとするがその時にはキワン軍隊長は扉の向こうだった。

 そしてこの部屋に僕と村長、両親しかいなくなる。


「その、すまなかった。ライが兵士になりたいのを理由も言わずに否定してしまって。

 だが理由としては今回の事だと考えてくれればいい。

 最近は透明な獣が現れ始め、その戦闘力も非常に高い。

 村が襲われたり、兵士が襲われたりして亡くなる人が増えている。」


「ライ、私たちは自ら危険な地に行ってほしくないのよ。

 私たちはもう兵士として軍での重要な立ち位置も任されているから、未知の危険にも立ち向かわなければいけない。

 でもライは違う。まだ兵士では無いし戦闘訓練も受けてないわ。

 …私たちが守りたいの。今回の事でもどれだけ心配したか…。」


 2人が真剣な目で僕を見てくる。確かに今回、怪我をして怖かったし痛かった。

 いまでもあの透明人間に勝てるとは思えないし、実際に今のままでは勝てないだろう。

 …でもあのにぎやかだった村から人がいなくなっていた事。

 でも、

 ”ああなってしまうのを僕が止められていたら”

と、そう思うしそれが出来るのが兵士なんだと思う。

 だから僕は兵士になるのを諦めたくない。


「お父さん、お母さん。ごめん。僕は兵士になるのを諦めるつもりはない。

 確かに怪我は痛かったし、死にそうになったのも怖かった。

 …でも最後に僕は逃げれた。でも、村の人は逃げれなかった人ばかりだったんだ。

 そういう人を助けたいし、守りたい。だから僕は兵士になりたいんだ。」


 2人をまっすぐと見つめ返す。

 少しの間ただ見つめあうだけの時間が過ぎた。

 そして、父さんと母さんが見つめあって笑った。


 「やっぱり、無理かぁ…!」


 「しょうがないわ、若いころのあなたにそっくりだもの。」


 「あははっ…ッ…、痛ッ…うぅ…。」 


 2人が笑ったのでつられて笑ったら、凄く痛かった。

 慌てて2人が僕を寝かせてくれる。少しして落ち着いた後にふと気づいた。


「うぅ、痛かったぁ。ありがとう。

 …そういえば軍の人が多い気がするんだけど何かあったの?」


 今日は軍隊長の人もいたし、治療してくれる人もいた。

 僕が怪我をしたくらいでここまで来るのは不自然だと思う。

 それを聞きお父さんが真剣な顔で口を開く。


「そうだな、説明しておくべきだろう。

 今回ライを襲ったのは新種の生物なのは言ったがな、かなり獰猛なため手当たり次第に襲い掛かる   ようなんだ。どこからか浮島に来て襲い掛かる。その場で仕留められなかった場合

 …かなりの被害が出ている。視認しにくいという性質も厄介だ。

 どうしてもそれを食い止めたい。兵士の常駐人数を増やすようにしてはいるがあまり良くない。

 …そして逃げた人を何らかの方法で認識しているようでな。」


 …逃げた人を認識している?


「あれがここに来るっていうの!?僕が逃げたせいで!」


「ライ!そうは言ってない。あくまで今までの行動からしてここに来る可能性が高いっていう意味だ。

もし来ても必ず倒せるから安心してくれ。」


 そうか、だから兵士の人が多くいるのか。…でもこの村が戦場になるのには変わらない。

 あんなに強いのが来るなら兵士の人たちも怪我をするだろうし。


「…ライ、せっかくだから安全なとこで兵士たちの戦いを見ているか?」


「兵士の人たちの邪魔になるでしょ?僕は地下にでも隠れてるよ。」


「大丈夫だ。兵士の人たちもある程度近くにいてくれた方が守りやすいんだ。

 もちろん地下のほうがいいなら止めはしないけどな。」


 「それなら…見てみよっかな。どこにいった方がいいの?」


 「特別に拠点の中にいれてもらうから絶対に周りの人に迷惑かけるんじゃないぞ。

 一応、手の空いてる部下をつけておくからそいつから離れちゃだめだぞ。わかったか?」


「うん、わかった!離れないようにするよ!」


 そうしてお父さんが何度か連絡を取った後、僕は怪我人移動用のベッドで兵士の人たちの拠点に運ばれた。

 その拠点は僕らの住む島と隣接するように止められている、自由に空を移動できる島【遊島】にある。

 僕はその遊島の中にあるお父さんの部屋へと運ばれていった。


 お父さんの部屋は広く、外の景色が良く見えるように大きな窓がついていた。

 遊島と僕たちの村の島を確認することが出来る。

 遊島に入った時から僕についてくれていたが男の人が口を開いた。

 

「今回、坊主の世話役として任命されたガルだ。よろしくな。

 奥の部屋には非常時以外入らないように言われてるから入らないようにな。つっても動けないか。

 ここが危なくなることはほぼ無いが、避難命令が出たら担いで運んでくから痛くても我慢してくれ。

 …こんぐらいか?ここにいるから何か欲しいのがあったら言ってくれ。」


「ありがとうございます!何かあったら聞きます。」


 そしてこの部屋でしばらく待っていたら、遊島の中央に兵士の人たちが集まり始めた。


「おっ、そろそろ軍会だな。ここからが一番見どころじゃないか?

 本当なら俺もいかなきゃならないが今は任務中だからな。」


 待っている間に僕の隣に座っていたガルさんが立ち上がる。

 よく見てみると赤ベースの軍服の人、白ベースの軍服の人が左右に分かれている。

 ガルさんは白ベースだ。それを聞こうと話しかけようとした時、兵士の人たちの方から大きな音が鳴った。


「紅煙軍、白煙軍、双方整列!!

 今回も新種の獣の討伐を目的としている!

 我らが防衛線だと忘れるな!民を守り抜け!」


「「「ハッ!!!」」」


「双方、色煙点火!配置につけッ!!」


「「「【天の守は我らなり】!」」」


そう答えた兵士たちから赤い煙と白い煙が立ち上る。

そして飛び立っていく兵士たちの後に煙の跡が残っていく。

瞬きも忘れ今の一瞬の光景に見入っていたらガルさんが口を開いた。


「今のが軍会。一瞬だっただろう?作戦とかは事前に決められているから配置の合図だけだな。

 今回は赤白で綺麗になったが風が強い日に全軍揃うとあんまり綺麗じゃないんだぜ?」


「もっと色んな色があるのか…かっこいいね!」


 そこで僕は小さいころに会った兵士のおじさんの黒色の煙を思い出した。


「黒色の煙の軍もあるの?やっぱりそこが強い?」


「…黒色を見たことがあるのか?あいつらは化け物だよ。

 【黒煙】に軍は無い。個人での最強だ。今は3人しか所持を認められてないんだよ。」


「うん、黒煙は見たことあるよ!よく商店街のいた兵士のおじさん。

 黒色だけだからどこの軍の人か分からないけど…。」


「黒色だけ?…あー多分それ先代だな。数年前に辞めちまった人だぞ。

 今の黒色にはいないと思うわ。」


「そっか、やめちゃったんだ…。」


 あのおじさん凄い人だったんだな。

 もしまた会えたら訓練方法の事とかしっかりお礼を言っておかないと。

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