3.別の島
そして飛び続けた僕がついたのは配達に来たことのある島だった。
確か、畜産の島って呼ばれてたはずだ。30人ほど人が住んでいる。
最近はこの島へ配達に来ることが無かったが
修行を始めたばかりの頃はたまに配達に来ていた。
確かあまり多くは無いが島の中央部分に人が住んでいたはずなので
少しだけご飯を分けてもらおう。
今日は家に帰るつもりはないし、どこかで野宿かな。
そして島の中央に向かって飛んでいたがふと違和感を感じる。
「あれ、どこからも煙が上がってないな…
もう夜ご飯とか食べ終わった後なのかな。」
もう食べ終わってるのだとしたらもう無い可能性の方が高い。
まあ、1日くらい食べなくてもいいか。ダメ元で行ってみよう。
そして村に着いたが人の話し声もしなければ何かがいる気配もない。
だが村の中は綺麗だし、畑も整備されている。
配達に来たときは明るい人が多く、話し声が絶えず聞こえているような村で
配達のお礼としてもらえた卵や牛乳もおいしかった覚えがある。
村の見た目としてはあまり変わっていないのだろう。
ただ生物の気配が何もないだけ。
そのせいで不安がより一層掻き立てられる。
「すみませーん、誰かいませんかー?」
声を上げても何も返事は無い。
さすがに他人の家の中に入るわけにもいかず、村の広場に座り込む。
「誰もいないし、鳥の声さえもない。
さすがにおかしいし、いったん帰るしかないかなぁ…。」
もしただ外出してるだけであれば村の空きを狙った
不審者に見られても何も文句は言えない。
でも誰かに言っておいた方がよさそうだし
村に帰って村長のところに行くしかないが…
「…帰りたくないんだよなぁ。」
僕は結構長い間座り込んでいたんだけど、結局何も起こらないし
ここでひと眠りしてしまった…。
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そして起きたのは夜。なんだか悪寒がして目を覚ました。
なんだか足首がひんやりしているような気がする。
ハッとして確認しようとした瞬間にものすごい力で足を引っ張られ、持ち上げられる。
とっさに空腕を出して周囲の物に捕まり、これ以上持っていかれないようにするが
相手の力が強く、掴まれている足に鋭い痛みが走る。
まだ起きたばかりで視界がぼやけているため
はっきりとは見えないが、明らかに人の形をしている気がする。
「待ってくれ、怪しい者じゃない!
だから足を離してくれ、とても痛いんだ!」
喋りかけても話すばかりかさらに力を込めて引っ張ってくる。
たまらず、足で蹴ろうとするが当たらない。
これ以上引っ張られてもたまらないので複腕を出し
足を掴んでる相手の腕を引っ張ろうと掴んだらそのまま潰れてしまった。
まるで綿を握ったかのような柔らかさだったのだ。
相手の腕が急に潰れて無くなったので反対方向に引っ張っていた自分の空腕の方に吹っ飛ぶが
空腕と痛む足を無理やり動かし着地する。掴まれていた足は鋭い痛みが走り、折れているかもしれない。
相手の腕を潰した感触から普通の人間だとは考えていなかった。
相対し、目視した時に相手の姿を見た。
相手の輪郭は人間だった。だがそれははっきりと見えてはいない。
ただ、人の形にぼやけた空間が確かにそこに何かがいることを伝えている。
僕を襲ったのは人でもなく、獣でもない。まさに…
「…透明人間?」
少し赤いように見えるがまさに透明人間だった。
僕を襲おうとしたので敵意があるのは間違いないが、向こうは動き出さない。
僕も戦い方がわからないのでじりじりと後退していくしかない。
徐々に離れていったら相手の場所が分からなくなったので空に飛び、逃げる。
振り返らず飛び、ただ島から距離を取る。
「逃げ切った…かな。」
空中で痛む足首を確認するとびっしりと血がついていた。
慌てて上着を脱ぎ、足に巻く。痛む足をさらに締め付けたため痛みが走るが我慢できないほどではない。
もう親に会いたくないとか言ってる場合ではない。
村を飛び出した時とは逆にまっすぐ村に進む。
後ろを見ても透明人間はいないように見えるがよくわからないので止まらず飛ぶ。
速度を維持したまま村長の家の前まで行き、ドアをたたく。
ドアが開いた瞬間、村長に飛びついて。
「畜産の島に透明人間がいる!人が…誰もいなくなってる!」
伝えた瞬間に長時間飛んだ疲れが来たのか倒れこんでしまう。
足にも力が入らず顔も上げられない。
何か体を叩かれて声を掛けられている気がするが、うめき声しか返せない。
僕はそのまま気を失ってしまった。
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