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護るために僕は飛ぶ  作者: 轍
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2.変化

あの姿を見た僕は必死に操空術の練習をした。

ただ村の手伝いもしっかりとやらなければいけない。

僕の両親は兵士なのでたまにしか家にいないから

帰ってきたときに悪さをしたことがバレると説教が始まる。

会えるのは嬉しいけど怒られるのは勘弁だ。


「ねぇ、今日の届け物ってこれでおしまい?

 他に物を運んだり別の島に行く仕事ってないの?」


「無いな、毎日毎日運ぶものもそんなにないしな。

 ライが運んでくれるもんだからもう何も残っちゃいねぇ。」


両親がいないときは村長の家にお邪魔してるから

手伝いと練習を一緒に出来るように配達とかを多めにやらせてもらっている。


「ライ兄ちゃん、また配達してるの?そんなに楽しいの?」


「いや、修行のためだよ。もっと飛ぶのがはやくならなきゃ。

 優秀な兵士になるんだから。」


この男の子は村長の子供のレイル。

村長の家に住まわせてもらっている僕のことをお兄ちゃんと慕ってくれる

かわいい弟だ。


「そういえば村長も元兵士だったって言ってたよね?

 何か鍛え方ってあったの?」


「俺が兵士だったのは兵役の5年間だけだがな。

 鍛え方って言っても授業があったくらいだな。

 結構きつかったからまだ覚えているぞ。」


この国には兵役があり15~20歳の5年間は男女問わず集められる。

兵役が終わっても優秀なものは志願して兵士になることが出来るので

僕の両親はそのまま兵士を続けているらしい。

たまに手紙を送って連絡しあってる。


「そうなの!じゃあそれを教えてよ!

 僕は早く強くなりたいんだ!」


「…駄目だ。まだ身体が成長しきってないから過剰に筋肉をつけるのは良くない。

 今でも色んな作業の手伝いをしているのだからそれで十分だ。

 だから今はその操空術の練習だけにしておきなさい。」


「…分かったよ。じゃあ操空術の練習法だけでも何かない?

 はやく飛ぶだけじゃなくてもっと色んなことをした方がいいと思うんだ。」


だって速く飛ぶのは現場に駆け付けるためっていうのと

あのおじさんに追いつきたいから練習してるけど

やっぱり力は大事だし、強くなりたいと思う。


「そうだな、確か訓練内容に操空術があった…な。

 その時はとにかく操作するのを細かく多くするっていう感じだ。」


「そんな訓練があるの?もっと相手を倒す技とかの訓練が良いんだけど

 そういうのは無いの?」


そういう細々とした訓練もあるんだろうけど

もっと一発凄いのをやりたいんだけどな。


「はぁ…お前は今操空術で何が出来る?」


操空術で出来ること?えぇっと何があったかな…


「うーんと、空を飛ぶことと離れた所の物を取ること、くらいかな?

 まだ他の物はしっかりできないや。」


「だったらなおさら操作する練習をしなさい。

 どうせ倒す相手にもここじゃ会わないんだ。

 今のうちに基礎を固めておきなさい。分かったな?」


「分かったよ…。ちょっと練習してくる。」


これ以上言うと怒る感じを出してきたので素直に引いておく。

村長にだけは怒られたくない。怖すぎる。

…でも操作するのを細かく多くするったって何をすればいいのさ?

どうせ飛ぶのと遠くのものを掴むくらいしか出来ないんだし…。

遠くの小物とかをどれだけたくさん浮かせられるかやってみるか!


こうして僕の修行は始まった。

村の手伝いなどをこなしながら合間に修行をする。

最初はいつもの様に空気の腕をイメージして2つ持ち上げた。

頑張ってもう2本までは増やせた。でも4つから先がうまくいかない。

増やそうとしてもぎこちない動きしか出来ず、物を掴めない。

そもそも4つ操作するときでも相当集中するので空を飛ぶことは出来ない。


そうして僕の修行もだんだん行き詰っていた。


_____________________________________



修行中、遠くから走ってくる音が聞こえる。

ここに来るのはレイルか村長くらいで、この足音からして村長だろう。


「おい、ライ!お前の両親が帰ってきたぞ!」


「ほんと!今行くよ!」


いつも帰ってくる前に手紙とかに書いてくれるのに

今回は無かった。何か急用で帰ってきたのかな?


「母さん、父さん!おかえりなさい!」


 2人ともパっとこっちを向いて固まってしまった。

 手前にいるのがラヴァ父さん、奥にいるのがイナ母さんだ。

 父さんはがっしりした身体と短髪で威圧感を与えそうな見た目と驚いた表情がミスマッチだ。

 母さんは細身な身体と後ろでまとめられた髪で凛とした雰囲気だが目を見開いて驚いた表情でこれもミスマッチだ。

 2人とも軍所属の兵士で結構たくさん仕事を回されてるっていうのがよく手紙に書いてあってたまにしか帰ってこれなかったはずだけど…。

 少し経って父さんと母さんが口を開いた。


「…ライ!?お前どうしたんだその空腕!?」


「…ライ!?なんで空腕がそんなに出しっぱなしなのよ!?」


「え?あぁ、父さんと母さんは初めてみるかもしれないね。

 これが僕のやってる修行で、つい最近4本出しながら歩けるように

 なったんだよね!」


まだ自由自在にとはいかないけど修行前と比べても確実にうまくなってるし

兵役に行ってもいい成績を残せることになる、と思う。


「ライ、お前兵士になりたがっていたのは知っていたが

 いったいどんな修行をやってきたんだ?」


「なにって普通に空腕を出しっぱなしにしてただけだけど…。

 あとは数を増やすようにしてたかな?」


「それってどのくらいだ…?」


おそるおそるといった感じで父さんが聞いてくる。

母さんも真剣な表情で聞いている。


「もうちょっとで1年くらいの修行だね。

 今年で兵役に呼ばれるはずだからより頑張れた気がするよ!」


「そうか。そんなに修行を続けてたのか…。」


深刻そうな顔をして父さんも母さんも顔を見合わせている。

…なんだか不安になってきた。間違った修行方法でもしてしまったのだろうか?


「父さんも母さんもどうしたの?

 そんなに深刻そうな顔をして…。」


「…いいか、ライ。よく聞くんだぞ。 

 父さんと母さんはライに兵士になって欲しくないと思っているんだ。」


 …え?いつも手紙でも応援してくれてたのに、急になって欲しくないだなんて…。


「…どうして?いつも応援してくれたじゃないか!」


「状況が変わったんだ。今はライにとっても厳しいだろうし

 なにより命を失う危険が大きい。

 兵役には行くしかないが、その後正式に入るのはやめないか?」


僕に諦めろっていうの!?いつも応援してくれてたのに…。


「…修行してくる。それじゃ。」


 僕は家を飛び出した。

 すぐにお父さんに追いつかれて肩を掴まれるが振り切って空に飛ぶ。

 後ろからお父さん、お母さんの声が聞こえる。

 でも僕は振り返らずまっすぐ飛ぶ。

 今は会いたくないんだ。顔も見たくないんだ。

 島の端へ来たけどそのまま空へと飛び出していく。

 …ただ周囲も見ずにまっすぐと飛んで行った。


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