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護るために僕は飛ぶ  作者: 轍
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1.教え


ある日、多くの人間が死んだ。

戦争や自然災害ではない。

たった3体の獣によって殺されたのだ。

【地】【海】【空】の3体の獣はどこからともなくやってきて人間を襲い始めたのだ。

だが数々の兵器を持ち、数多くいた人類は多大な犠牲を払いながら

深手を負わせることに成功した。

だが、【地】は地中深くに逃げ仕留められず、

【海】も深海へ逃げ込んだため仕留められなかった。

だが【空】はどこまで高く飛ぼうと攻撃を続けることが出来た。

そして犠牲を払いながら【空】を倒したとき、人間に不思議な力が宿った…。


----------------------------------------------------------------------------------


鳥の鳴く声がする。爽やかな風が吹く音もする。

だがそんな時に相応しくないような声も下から聞こえる。


「…おい、ライ!はやく屋根から降りてこんか!

 今日はお前が島までの買い出し担当だろうが!」


「…はっ!そうか今日は僕が買い出しの日だった!

 いまから準備するから怒らないで!」


屋根の上から僕の部屋に飛び移り荷物を取り出す。

そのまま部屋から飛び降りてゆっくりと村長の前に着地する。


「準備できたよ!」


「あぁ、これが買い出しのメモだ。

 お釣りで好きなものは買っていいが

 質の良くないものと変なものは買ってくるなよ。

 あとくれぐれも【雲海うんかい】に近づくんじゃないぞ。」


「うん、分かってるって。それじゃ買い出しに行ってきます!」


そういって自分の島から大空に飛び立つ。

目的地は少し離れた島にある商店街だ。

家からでも分かるほど大きな浮島だし、まっすぐ行くだけから

道に迷わないし安心して飛ぶことが出来る。


ただ僕たちの浮島のはるか下に真っ黒な雲が広がる【雲海】がある。

小さいころから近づくなって言われてる。

言われなくても怖いから近づかないのにね。


「今日は気持ちのいい飛び日和だなぁ,,,

はやく買い出しを終わらせて好きなことしよ!」


商店街のある島に着いた。

ここはいろんなものが売ってるから人がたくさん集まる。

だから面白い話がたくさん聞けるんだよね。

なかでも特に面白いのが兵士さんのお話かな。


「おっ、坊主また来たのか。

 相変わらずきれいに飛ぶ奴だ。将来は届け物屋なんかどうだ?」


「嫌だよーだ、僕は将来立派な兵士になって

 みんなを守るんだから!」


「はっはっは!そうかお前も俺のような兵士になりたいのか。

 それなら兵士になった時に役に立つ話をまたしてやろうか?」


「うん!聞かせてよ。役に立つお話!」


このおじさんは兵士をやっているそうだけど、

よくこの商店街にいるんだ。

巡回だ!っていってるけどあんまり信じてない。

だって何か食べてるか寝てるかのどっちかの姿しか見たことない。


「じゃあ、今回は何の話をしようか,,,

 そうだな、お前は兵士になりたいんだろ?

 そろそろ飛び方を教えてやろうか。」


「飛び方?そんなの誰でもできるよ。

 そんなんじゃなくてもっと凄いのがいいな。」


「まぁまぁ、飛び方にもいろいろあるんだよ。

 まずはなんで俺らが飛べるのか知ってるか?」


,,,なんで飛ぶことができるか?


「なんでって,,,空の王を倒したから?」


「確かにそうだな。空の王を倒すまでは空を飛べず歩くことしかできなかったらしい。

 あくまでおとぎ話だけどな。そんなんじゃなく今飛べてる理由だよ。」


「そんなの分かんないよ。飛ぼうって思うから飛べるんじゃないの?」


「違うな。確かに歩こうと思えば歩けるし飛ぼうと思えば飛べる。

 だが実際にはそうなる理由があるってことだ。

 俺らが飛べる理由は周囲の空気を操作することが出来ているからだ。」


周囲の空気を操作?そんなの意識したこともない。

周りの人達が飛んでるのを見て飛べるようになったんだから。


「それじゃあ操空術として未熟だな。

 まず、周囲の空気を思うがままに操作する技術を操空術っていうんだ。

 兵士たちはこの操作する技術で強さが決まるといっていい。」


「操空術かぁ、じゃあどういう飛び方をすればいいの?」


「まずは飛び続けられる体力をつけることだな。

 ただひたすらに飛び続けろ。たまに急停止、急加速を入れるといいな。

 足と違って最高速に一瞬で行けるし、その逆もしかりだ。

 そしたら――――ん?来たか。」


「…どうしたの?」


急におじさんが真剣な顔で立ち上がった。

こんな真剣な顔は初めてだ。


「ちょうどいい。今から特別に兵士の仕事を見せてやる。

 坊主、ちょっとついてこい!」


そういっておじさんは飛んで行った。

とてつもない速さで。もうおじさん自体はどこにいるかもわからない。


でもおじさんの通った後には黒色の煙があるからそれを追いかける。

そして黒い煙が消える前に必死に追いかけて。

そこで見つけた。おじさんが大きな魚を吹っ飛ばしてる姿を。


「おっと、ちょうどいま終わっちまったんだよ。

 兵士は被害が出るまえに着くように速度が大事だからな。

 わかったか?飛び方の大切さ。」


そうやっていいながら僕の何倍もある魚を横に浮かせながら

いつものように笑うおじさんは僕の人生の目標で。

僕の夢がはっきりと形を持った瞬間だった。


そして買い出しにいって何も買わずに帰ってきた僕を見て

唖然とした表情の村長の顔も忘れられない僕の思い出だ。


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