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謁見 2-2






 □






 王太子の私室にて。


「…………なぁ(じい)、やはり」

「ダメです」


 せわしなく室内をうろつく王太子の主張に対し、爺と呼ばれる少年執事は、けんもほろろに一蹴(いっしゅう)する。


「国王陛下の御意により、殿下にはここに留まっていただきます。王の査閲、もとい、ガブリエール嬢の謁見が終わるまでは」

「言ったな? 今、査閲って言ったな? やっぱりそういう意図があったんじゃないか!」


 聞き分けの悪い子供のように激発する王太子エミール。

 御年二十五歳の王太子に対して、扉の前で悠然と「封鎖の魔法」をかけ続けるサージュは、彫像のような無表情に呆れの感情を眉の形で示します。


「もう謁見は始まっている頃です。ガブリエール嬢がうまくやってくれることを祈るほかありません」

「だが……」


 そう願いたいのはエミールも同調するところ。しかしながら、彼の不安は尽きない。


「ガブリエールは、俺が言うのもあれだが、たった十五の娘だぞ?」

「そのような年齢と知らずに婚約を持ち掛けたわけではありますまい?」


 無論だと(うなず)くエミール。しかし、それでも、今回の事態は予想外の急展開だった。


「せめてあと半年……いや三月(みつき)……いいや、ひと月でもいい。時間があれば」


 王に何の文句もつけられない淑女の作法を教え込めただろう。それには王族との付き合い方や、特に、国王との謁見時の注意事項なども含まれている。

 ところが、そんな王太子の企図を、少年執事たるハーフエルフは一笑に付す。


「そんな付け焼き刃などが通じる相手だと?」


 その言に、言い返す言葉を探して、そんなものがないことに絶望する王太子は、身を投げるようにカウチの上へ腰を落とす。

 黒髪を掻き乱し、胃に穴でも空くような緊張の針を感じつつ、顔面を両手で覆うばかり。

 そんな王太子の様子に、サージュは肩をすくめてみせる。


「今は祈りましょう。国王陛下がガブリエール嬢を、認めて下さることを」

「だが、ガブリエールは…………いや、いい」


 (いたずら)に言葉を繰り返すだけとなっている己を自覚し、うなだれる王太子。

 ガブリエールへの言伝(ことづて)で、罪科はすべて自分が背負うと明言してみせたが、それで王が納得しなければ……


(らち)もないことを考えるな)


 エミールは諦めて、両手を組み合わせた。

 そして、一心に祈った。

 ガブリエールが救われる事態となるように、と。

 王の判断が、すべて王太子の不始末に向けられることを。

 そんな王太子の様子を眺めやりつつ、サージュは大きく肩をすくめ、ついで小声を漏らした。


「……まったく、困った殿下ですよ」







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