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かすみ草の夢渡り  作者: りぃこ
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夢の中の目覚め

遠くから声が聞こえる。夢の中、真っ暗闇で聞く声と同じ。ただ1ついつもと違うのは、聴き取れない言葉が、徐々にはっきり聞こえてきた、ということ。


それだけじゃない。微睡(まどろ)んだ感覚が覚めて、どんどん意識が鮮明になる。


あれだけ動かなかった(まぶた)が抵抗もなく開いた。両目が取り込む光がとても眩しい。思わず「わっ」と小さな声が出て、私は両目を手のひらで覆った。暗くなると同時に、静かになる。先程までずっと聞こえていた声が聞こえなくなって、私は不安に襲われた。


____徐々(じょじょ)に指をひらいてみる。指の隙間から、知らない男性がこちらを覗き込んでいるのが見えた。

短い無精髭(ぶしょうひげ)が生えていて、少しやつれた顔。痩せ気味なのか、少し頬が張っている。西洋の顔立ちだ。彼は固まったままで、何も喋らない。


私は今の今まで夢を見ていると思ったのだけど、違ったのだろうか。もしかして、何かに巻き込まれて誘拐でもされたのか。警戒心を抱きつつ、


「あなたは一体誰ですか」


と口にしようとして、私は思わずぎょっとした。ひどく掠れて、その上随分(ずいぶん)と高い声がでる。舌っ足らずで上手く喋れない。さらに私は自分の身体が小さくなっている事に気がついた。一体これはどういう事なのか。


私は驚いた拍子(ひょうし)に、思わず勢いよく飛び起きようとして____



鈍い音が響く。お互い(ひたい)を抑えて(うな)る。


「〜〜ッッ……だいじょうぶですか?」


「大丈夫…いや、驚かせたかな?すまない」


そう言って男性は眉を八の字に下げ、微笑んだ。

頭への衝撃と彼の優しそうな声色で、私の緊張は解けたと同時に、申し訳ないという気持ちになる。


「こ、こちらこそ、ごめんなさい…」


「いいんだよ。気が動転してたんだろう。暖まるものを持ってこようか」


「ありがとうございます……」


喋る度に飛び出す舌っ足らずな言葉。落ち着かないという気持ちで視線は自然と小さくなった手元へ行く。


ここは、どこなのだろう。



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