続く夢
はじめまして。小説を書くのはこれが初めてのため、未熟さ故に目をつぶって頂くような事が多々あるかと思いますが、楽しんで頂けると幸いです。
この10年間。ずっと、同じ夢を見ている。
暗闇の中、男性が私に語りかける夢。
答えたいのにいつだって叶わない。身体はおろか、目ですらぴくりとも動いてはくれない。
____あなたは、誰なの。
「う……」
カーテンの隙間から細く伸びる陽光が私の目を照らす。その眩しさに身動ぎして、意識が段々と覚醒して行く。眠たい瞼をどうにか持ち上げ私は起きた。
階下から朝ごはんの匂いがしてくる。
「おはよう」
「叶澄、おはよう。先に食べてたわ」
「ん」と短く返事をして私は席に着き、温かい目玉焼きをゆったり食べる。そのうち母は、会社へ行く準備を始めた。
「食器洗うのお願いね〜!」と言って、忙しそうに家を出ていく母。まだ食事を終えていない私は「はぁぃ」と手を振り見送る。
さくりと軽い音がして、香り高いトーストを完食した。
「ごちそうさまでした。」
食事を終え、お皿を洗う。私は高校に行くべく、部屋に戻って身支度をする。
ふと何気なく視界に入ったカレンダー。
今日の日付は4月26日。
「あ」
その日は父がいなくなった日。
そして、不可解な夢を見始めた日。
____あれ
新しくはじまった高校生活にも慣れてきた。学校へ行くのが楽しくなって、浮かれていた心。それが一気に急降下して沈んで行くのを覚える。
「(なんで…?もうずっと昔に、吹っ切れたはずなのに…)」
去年のこの日だって、こんな風には思わなかったはずだ。なのに、なんで。
“ さみしい ”
その一言が口の端から洩れ出すと同時に、突然やるせなさと切なさが喉元でちりちりと火花をあげた。
「____ッッ」
堪らず私は首を抑える。入学と同時に買ったブラウスは、私の手によってグシャリと握られる。足には力がなくなり、私はその場で座り込んだ。
私は動揺した。身体が自分の意志と関係なく動いているような錯覚を覚えたから。
今だって、そう。思い出したくもない記憶は、けたたましく頭で再生を繰り返している。
「(目が熱い…)」
泣いてる。私、どうして?さみしいって、なんで。
あまりの出来事に私は為す術もなく、気を失った様に眠ってしまった。