遭難者達Ⅰ
「ところで、さっきから点滅してる赤いランプは何?」
この船のこの部屋に入った時から気になっていた。
何か、センサー的な物だと認識していたが、そうでもないようだ。
『これは、現在の浮遊地が限界に近いことを意味します。役一メートル以下の高度になると点滅します』
「…大丈夫なのか?」
『はい。問題ありません。許容範囲内です』
ならいいんだが。
そう言えば、今俺は未来のことを知れるというチャンスを得た。
まあ、あんま興味ないけど。
この後、艦長室に案内された。
中は窓がなく、椅子と木製の机、ペン類など必要な物、シャワー室には小さなバスタブが付いていた。
余裕で体を伸ばせるくらいだ。
「食料とかはどうなっているんだ?」
『この船はある程度の回収、輸送、建造、修理、貯蓄、加工の工程が可能になっているため、燃料や食料は尽きることはありません』
そうなのか。
ちょっと心配だったから一安心。
シャワーを浴びた後、クリーニングしたてのシャツとスーツを着て、先ほどのモニターのある部屋に来る。
「なあ、ここは何の部屋なんだ?」
『ここは指揮所です。艦橋の上に存在します』
「じゃあ、この下に行けば自分で動かせるのか?」
『私がサポートして初めて機能します』
つまり、この船を単独で動かすことは不可能か。
もし誰かが侵入してきても大丈夫なんだな。
先ほど座ってしまった艦長の椅子に腰かける。
「よし。出航よーい!」
映画で見たようなセリフを言う。
一度やってみたかったんだ。
『出航準備用意良し。反射パネル起動、光学偽装良し」
「出航!」
『出航します』
周りのモニターの外の景色が動き出し、入江から海へと出て行く。
「高度を上げた方が良いんじゃないか?」
『了解、高度上昇、度約二十メートルに設定』
電子図面には、先ほどの島?から離れていく矢印。おそらく、これがこの船の現在位置なのだろう。
暫く眺めていると、、進行方向の方に灰色の矢印が五つ現れた。
周りのモニターを見てみるが確認できない。
「なあこの矢印って何?」
『これは現在補足できている所属不明艦です』
「…見つかったらたらやばいんじゃない?」
『生体反応確認、約10名の生存を確認』
10人で船5隻は動かせないだろ。
いや、武蔵みたいな船だったりするのか?
『どうやら、遭難中のようです』
「遭難?そうなのか?」
『はい。進行速度、進路を計測しましたが、塩の流れに沿っているだけで、特に何もありません』
モニターを拡大しながら説明してくる。
そうか、遭難か。
「じゃあ、助けるか」
『よろしいのですか?』
別に、この船だって俺が持っていた物じゃない。
偽善以前に、これは運だ。
「ああ、まず水上移動に切り替えてくれ」
『了解、光学偽装一時停止、ミラーコーティング解除、着水します』
揺れているので、着水したのだと分かる。
水上移動をしてからは、少し速度が遅くなったような気がする。
「これ以上早くできないのか?」
『いえ、可能です』
「なら上げてくれ、速く助けてあげたい」
武蔵のグラフィックが、げんなりした表情になった。
『これ以上上げるんですか?まあいいですけど」
なんか、このグラフィック時間がたつごとにフリーダム化してないか?
「なんかお前キャラ変わってない?」
『そうですか?まあ気長にやりましょう。私はあなたの味方と言うことは変わらないので』
う~ん。
何だろう。指示に忠実に従ってくれるのはいいし、話し相手がいるのもいいんだけど、なんか隠してるような気がする。
あからさまな表情転換、従順な性格、そして侵入者の俺にこんなにも優しいなんて。
ちょっと、おかしいだろう。
「なあ、お前何か『船を発見。マスター、指示を』
どうやら、質問する前にやるべきことが出来たらしい。
とにかく、救助が先だ。
「武蔵、勧告をしてくれ」
『了解。<こちらは日本国防軍武装護衛艦武蔵。救助に来ました>』
やがて、遭難した船の一隻に密着するように止まる。
『どうやら、この船にすべての遭難者が集まっているようです』
「わかった。タラップを下ろしてくれ」
『艦長が降りるのですか?』
驚いたように言う武蔵。
コイツ結構表情豊かだ。
「ああ、その方が保護しやすいだろ」
俺はさも当然かのように言う。
すると、武蔵が少し顔を怖くして言ってくる。
『その提案には反対です。難破船、遭難事故などを装った海賊は多々あります。このままワイヤーで、船を引っ張っていくことも可能です。どうか、ご再考を』
なるほど。
確かにそう言う事もあるかもしれない。見たところ、船は手漕ぎ船、帆船ですらない。
「…わかった。そうしよう」
結局、武蔵の案でいくことになった。
船にワイヤーをひっかけて、そのまま引っ張る。
一応、食料や水などをワイヤーを経由して渡していく。モニター越しの会話で、彼女達の故郷はここから南東にある島だと言われたので、一応南東に進んでいる。
「なあ、本当に南東にあると思うか?」
先ほどからかなり南東に進んでいるが他にすれ違う船も、島や陸すらも存在しなかった。
『衛星がないので確認できません。艦載機の発艦許可をください』
「艦載機があるのか?」
『はい』
なるほど。
艦載機か。それなら、確認できるかもしれない。
「わかった、許可する」
『了解、無人艦載機発艦」
すぐに映像が艦載機、F/A-18E/Fからの物に切り替わる。
「どうだ?」
暫く待つこと、小さな島と住人を発見。
『どうやら、存在するようです』
「そうか」
これで彼女たちを届けたら、いったんどこか落ち着ける場所を探さないとな。
この後も何事もなく安全な航行をしていた時だった。
目の前には、多くの船が海域を塞ぐようにこちらに向かっていた。
見た目はバイキングそのまんま。
「おいおい、なんだ」
『どうやら、彼らは本物の海賊のようです』
マジか。
「ごまかせないかな?」
『本艦の浸水面を降下、見た目を偽装しました。これで、ただ少し大きい船にしか思われないはずです』
本当か?
そもそも鉄でできてる時点でやばいと思うだろ。
「まあ、いいや。とにかく前にう進ぞ」
波乱の予感がしてきた。
彼らの行動はいかに。




