白村江の戦い
安麻呂:「『こいつらどうしようもねえなぁ……。』と見捨てても良かったようにも……。」
大海人:「既にたくさんのヒトとお金使っていますので、引くに引けないところもあります故。」
安麻呂:「ただまぁ困りましたな。」
大海人:「我が国の部隊は朝鮮半島南部に駐屯しているのに対し。」
安麻呂:「豊璋王様が居るのは遥か北。かつて百済の首都があった場所辺りを右往左往。」
大海人:「もはや頼りに出来る状況には無いけれども、30年我が国で暮らして来た豊璋王をただ見殺しするわけにもいかず、朝鮮半島南部に居る我が国の部隊を水陸両面から北へと向かわせるのであったが。」
安麻呂:「そこには既に唐と新羅の遠征隊が手ぐすねを引いて待っていた……。」
大海人:「そこで我が国の部隊が採った戦術は?と言うと。」
安麻呂:「勢いに騙されて相手が引いてくれることを願いながら突撃を繰り返す。と言うモノでありました。」
大海人:「地の利は唐にある中、入江奥深くまで侵入し。元に戻ることが出来ないところまで誘い込んでおいての。」
安麻呂:「火計。」
大海人:「これが枯草が満載された船であったら、展開もまた変わっていたのかもしれないのだが。」
安麻呂:「でも潮の干満すら把握出来ていなかったことを思いますと、よしんば枯草船に火が付いたとしましても……。」
大海人:「自分のほうに飛び火していたんだろうな……。」
安麻呂:「風を変える秘術を持ち合わせているものもおりませんので……。」
大海人:「柵に向かって突っ込んだら予想以上の銃火器に阻まれ……か……。」
安麻呂:「豊璋王様を救うためには、あそこを通らざるを得なかった以上。」
大海人:「ほかに戦術が無かったのが残念でならないのであるが……。」
安麻呂:「……前方。燃え盛る火の中、異国の地で命を落とす同胞を目の当たりしていた後方の部隊は……。」
大海人:「ここで戦いを続けることの愚を悟るには充分であったであろうな……。」
安麻呂:「その頃、陸路での戦いにおいても唐と新羅に敗れた我が軍……。」
大海人:「海と川を使っての補給が出来ないのもあったであろうが……。」
安麻呂:「そんな中、救いと言えば救いなのが、あの負け戦にも関わらず全滅にはならなかったことでありまして。」
大海人:「既に戦意が喪失していたこともあるとは思われるが。」
安麻呂:「あと朝鮮半島南部にはまだ拠点があったことに加え、制海権を失っていたわけでは無かった幸いしまして。」
大海人:「各地の部隊と渡来を希望する百済の知識人らを収容しながら本国に戻ることが出来た……。」
安麻呂:「これがのちのちになって生きて来ることにもなり……。」
大海人:「このいくさを持って我が国による百済救援活動は終わり。」
安麻呂:「既に組織的な活動が出来なかった百済の抵抗も見られなくなり。」
大海人:「豊璋王は高句麗へ去っていった。と……。」