国内世論=
安麻呂:「ところで兄上様は、百済救済について当初から乗り気だったのでありましたか?」
大海人:「共通の知人からの話を聞くと、『早く船を出せないのか?出すことは出来ないのか?』と月が満ちるのを待ってたらしく、ノリノリだったらしいよ。」
安麻呂:「大海人殿も兄上様と一緒に九州へ……。」
大海人:「私どころか天皇も同行しましたよ。」
安麻呂:「首都機能の移転とも言えますな。」
大海人:「朝鮮半島に拠点を築くためには大和の地はチト遠い。」
安麻呂:「未だ水稲文化が根付いておらず。しかも気候が必ずしも温暖ではないことも手伝い、数年に一度は必ず訪れる凶作に苦しむ関の東に手を伸ばすよりは……。」
大海人:「先進地域である大陸に近い朝鮮半島からの折角の要請である故。」
安麻呂:「これを好機に。と兄上様は百済救済に舵を切った。と……。」
大海人:「百済だけでは国を維持することは出来ない以上。」
安麻呂:「少しでも百済に近い九州に首都を置く必要が生じた。と……。」
大海人:「国内情勢もとりあえず落ち着いていましたし……。」
安麻呂:「兄上様に逆らうことが出来る勢力も無く。」
大海人:「兄の仇であります安麻呂殿の御実家も……。」
安麻呂:「敵対するよりは、兄上様の発信力を上手に利用しつつ、我が氏の利益となるよう……。」
大海人:「黒子とも言える官僚として活路を見出すことになった。と……。」
安麻呂:「目立ち過ぎるとどうなってしまうのか?を経験した身内がいますので……。」
大海人:「……目立ち過ぎるとどうなるか(苦笑)。」
安麻呂:「大海人様も今は静かにしている時ですな。」
大海人:「でもまぁ洋の東西問わず安定し、富が蓄積されると。」
安麻呂:「より多くの富を求め。外へ外へと張り出していくのは国だけで無くよくあることでありますし。」
大海人:「その最たる『唐』の膨張によって朝鮮半島の均衡が破られてしまい。」
安麻呂:「このままではいづれ我が国に唐や新羅が侵攻してくるかもしれないことを考えますと。」
大海人:「冊封体制にあるとは言え、唐の言うことを聞き続けるのも危険。」
安麻呂:「百済はたぶん。唐に狙われているとは思っていなかったでしょうから。」
大海人:「……そう考えると新羅も唐に騙されているのかも……?」
安麻呂:「ところで大海人様は、兄上様の行動をどう見ていたのでありますか?」
大海人:「基本。兄者について行くだけだけど。」
安麻呂:「百済救済についても特に反対するわけでも無く。」
大海人:「兄者の考えが=国内の世論であるからな……。それにこれまで兄者に従って今の私である由。……流れとけ。が私の考えでもあるのかな。と……。」
安麻呂:「大海人様は、兄上様と違い昔からの氏族との関係も良好であるように見受けられますが。」
大海人:「もしもの時の神輿と思われていることもあると思うが……。たぶん……。弟利点。兄が怒られているのを見て学ぶ。と言うズルい手をフルに活用しているからかもしれぬな……。でも実際の世論も、私有財産が認められて居ない以上。今以上の収入を得るためには新たなフロンティアの開拓。それもコメ作りに向いているわけでは必ずしも無い関の東ではなく、先進地域で。……の思いは何処かにあったとは思うがな。」