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製図錬金術師と三種の神器  作者: にるぽ77
10/14

010 【閑話】とある製図錬金術師の休日 side 悠理

世界観を紹介する為に10話ごとに閑話を設けていこうと思います。

本編とは関連性はありませんので、気軽にどうぞ。

「おはよう、待たせちゃった?」

「おはよう! 悠理。ううん、さっき来たばっかりだったし、大丈夫だよ」

 目の前で私を待っててくれたのは幼馴染の佐々木美咲。ものすごく童顔で背も小っちゃくて、とっても可愛い存在。でも中身はすんごく大人びいている。清楚なブラウスの下には子供っぽさを冗長するかの様なフリルスカート、これまた童顔にマッチしたボブカットを揺らしながらこちらに近づいてきた。


「美咲ちゃんは今日も可愛いねぇ、お姉ちゃんはうれしくなっちゃう」

「こらこら、そんな事は言わない。同じ年でしょ。周りが本当だと信じちゃうからね。だめよ」

 頭を撫でる手を払うように言い返してきた。うん、やっぱり、注意の仕方も見た目とは違い、大人な注意の仕方だ。でも、そのギャップもいいんだよね。


「はは、冗談、冗談だよ」

「もう、わかってるけどね」

「さて、行こっか!」

 今日、待ち合わせしたのは隣町に先月オープンしたショッピングモールに行って、買い物を楽しむのが目的。


 二人で改札口でICカードをタッチし、駅構内へ。電車に乗り込み目的の駅に到着する。

 大型ショッピングモールは駅から直結で入ることができる。これなら雨でも安心だね。

 先月オープンしたばかりか、駅からショッピングモールへ向かう通路は家族皆で来ている人、カップルで来ている人など多くの人が流れている。その流れに乗り、エントランスの自動ドアをくぐる。


 1階は大型の食品スーパー、周りにはパン、ケーキなどの専門店が並ぶ。

「ま・ず・は~、やっぱデザートのチェックだよね~、えーと」

 とりあえず、館内マップを確認しようとしたところ、

「はい、フロアガイド」

「い、いつの間に!」

「さっきの入り口に置いてあったよ。気付かなかった?」

 いつの間に取ってたんだろう?というか、あの人混みの中でもフロアガイド見つけるとか、どんだけしっかりものなんだか。


「ありがと、チェックチェック」

 美咲からフロアガイドを受け取り、今日の一番の目的の店の場所を確認する。一緒に美咲の顔がフロアガイドに近づく。

「今、ここでしょ。この店がこっちだからあの通路を進んだところにあるね」

 すかさず、美咲が場所を把握し店までの行き方を教えてくれる。

「さっすが~、美咲は頼りになるね、見た目とはち……」

「うんうん、見た目はカンケー無いよねっ、悠理ちゃん!!」

「う、うん。じ、じゃぁ、行こっ」

 私の言葉を遮るようにすかさずツッコミが入ってきた。美咲の満面の笑みが怖い。あまりからかうのは止そう。


 美咲が教えてくれた通りに進んで行くとなにやら長蛇の列が見えてきた。列の切れた所に店員さんが最後尾プラカードを掲げている。そのプラカードを見て思わず驚いてしまった。

「えー、ここまで並んでるのぉ~、結構長いよねぇ」

「うーん、この列の長さから推測するに……。ブツブツ……。40分待ちってとこね」

「えー、そんなに待つのぉ、いきなり~、なんで40分ってわかったの?」

「前に作ってる動画見たでしょ? あの時、一人前を作るのに約1分10秒掛かってたわ。注文や受け渡しで20秒とみて1人当たり約1分30秒。列の人数はよく見てみると、1店舗の幅に丁度、10人ほど並んでいるわよね。お店の幅はほぼ等間隔でこの最後尾まで5店舗で約50人が並んでいる。そしてお店にはジェラートを作る機械が2台。単純計算で1分30秒カケル50人ワル2台で、37分30秒。その他多少時間を多めにして40分ってところ。どう?」

「そんな所、見てたの?」

 いや、すごいね。って何がって、一緒に動画見てた時って、『美味しそう』とか『何を食べよう』とかしか考えてなかった。作る時間も見てたなんて。

「これからもっと人が増えてくるから、今のうちに並んでおいたほうがいいよ」

「そ、そうね。んじゃ、急ごう」

 美咲の計算と予想を聞いて慌てて列の最後尾に並ぶ。


 私たちが並んだこのお店は、注文を受けてから新鮮なフルーツとこれまた新鮮な北海道の牛乳を超低温プレス機で一気にプレスして、一瞬でジェラートを作るというもの。超低温のおかげで果汁やおいしさが逃げず、ジェラートが出来るというのが売り。そして、この超低温プレス機は厨房機器大手メーカーのホシガキが製図錬金術師と共同で開発したという。超低温の液体窒素をプレス断面に定着させているらしい。


 二人で他愛ない話をしながらのんびり待つと、次第に列が縮み、もうすぐ注文のところまできた。レジの横ではフルーツと牛乳をプレスにかけるたびにジュワーっという音とともに水蒸気が上がる。

「いらっしゃいませ! メニューはお決まりでしょうか?」

 やっと注文の番が回ってきた。時計を見ると列に並んでから約30分強。美咲の予想よりは少し早かった。けど、美咲は多めにて言ってたし。

「あまおうイチゴと濃厚ミルクで!」

 ここはやっぱりイチゴよね。それに北海道の濃厚ミルクを使った練乳のセット。これは楽しみ~。

「私はフルーツミックスで」

「オーダー入ります、あまおうワン、ミックスワンです」

 レジの人が横の超低温プレス機を操作する人達にオーダーを伝える。


「あまおうイチゴのお客様、450円になります。フルーツミックスのお客様、500円になります」

 それぞれお金を渡して横のプレス機の前に立つ。奥から注文したメニューの材料が運ばれてくる。プレス機にイチゴが乗せられ、そこに濃厚ミルク、そして北海道牛乳が掛けられる。その後、プレス機のスイッチが入り、食材がプレスされると同時に水蒸気が上がる。ほんの数秒、プレス機の断面が持ち上がり、中は鮮やかな赤とオフホワイト、そして真っ白の3色が綺麗に斑模様を描いている。

 ぺちゃんこになって出来たジェラートをヘラですくい上げ、ワッフル生地のコーンに乗せ、最後にスプーンを刺して渡される。

「あまおうイチゴと濃厚ミルク、お待たせしました」

「フルーツミックス、お待たせしました」

 同時に美咲が頼んだフルーツミックスも出来上がる。


 店を離れ近くのベンチに座り、さっそく頂く。

「くぅ~、このイチゴの香りと甘み、そして濃厚ミルクたまんないぃ~」

「普通のアイスと違って、独特のシャリシャリ感があって、それでいて口の中でまろやかに溶ける。その後もおいしさが残ってておいしい」

「はい、あーん」

「はい、どうぞ」

 お互いに一口、交換して味見をする。フルーツミックスは大阪のミックスジュースのような沢山のフルーツ一気に楽しめて、それでいてさっぱりとした後味でこれもおいしい。

「さっぱりとし感じでおいしいね」

「イチゴの方もずっしり食べごたえがあるね」

 などと感想を言い合い、一気に食べてしまう。まずは一つ目の目的達成!


 次は上の階に移動し、ファッションフロアを見て回る。有名なブランドショップから、お手軽ブランドの洋服店を見て回り、気になる店には中に入ってチェックする。

 一通り回った後、コスメショップにていつも使っているリップクリームを購入する。

「服はタイミングが悪かったかな~」

「そうねぇ、やはりこの時期はセールもないし、特段珍しいのもあまりなかったね」

「やっぱり、服は季節の変わり目前の入れ替えシーズンとセール狙いだね」

「そうそう」

 美咲もこれといったものは無かったようだ。


 ぐるるぅ……。

「うっ、」

「うふふ、悠理の体内時計は性格だね。丁度お昼も近いし」

「おなか減ってきたぁ~、お昼行こっ!」

「オッケー」

 体は正直だ。早速、レストラン街へと歩き始める。


 向かった先はヘルシーを売りにしたビュッフェスタイルのレストラン。野菜を中心としたメニューが豊富で女性にはうれしい。そしてデザートの存在も忘れはしない。既にチェック済み。

 少し並んだ後、店の中に入る。席に着いた後、交代で食事をとりに行くことに。

「先に行っていいわよ。荷物見てるから」

「ありがと、じゃ、先に行かせてもらうね」

 美咲はお姉さんの様に広い心で送り出してくれる。って、見た目は……。言わないでおこう。


 最初にサラダ、そして和風、洋風、中華風の料理を少しずつ、まずは味見も兼ねて一口ずつ分だけお皿に乗せていく。ある程度回った所で席に戻り、美咲と交代する。

 美咲が戻ってきたところで、

「いっただきまーす」

「いただきます」

 うんうん、お手軽なのになかなかのおいしさ。これなら十分満足できるね。

 美咲と二人で料理を取り分け、お互いの学校での様子などを話しながら食事を進めて行く。


「すみません。幼児用の椅子ありますか?」

 隣のテーブルで2歳くらいの男の子を連れた若い夫婦が店員さんに声を掛けた。

 見た所、やはり小さい子供を抱えたままでは食事が取りにくいのだろう。幼児用の椅子の用意をお願いしていた。

「申し訳ございません。ただ今、幼児用の椅子は全て利用中でして」

「そうですか……」

 返答を聞いた奥さんが残念そうにうなだれる。普段の育児疲れもあるだろうし、このままでは折角の休日の食事もリラックスして取れないだろう。よーし、いっちょ、人助けだ。


 ポーチの中の製図セットを取り出し、向こうで使われている幼児用の椅子をトレースする。サイズは手前の椅子を見ながら調整し、角度を変えてシートに書き込み図面に起こす。

「どうしたの?」

「うん、折角の休日なんだから少しでも楽しく過ごしてほしいから、ちょっとだけ手助け」

 動かす必要が無いので、プログラミングは必要ない。固定時間は今日の閉店時間までを設定する。

「ビルド」

 掛け声と同時に幼児用の椅子が物質化する。製図錬金術は有機物を物質化できないので、持ち運びできる重さを考えて今回は中を空洞化したアルミで椅子を作る。


「すみません。宜しければ、これを使って下さい」

 物質化した椅子持って隣のテーブルの旦那さんに声を掛ける。

「え? あ、はい、ありがとう」

「いえいえ、折角の休日ですから。お子さんを座らせてゆっくりを食事をしてもらいたいと思ったので。すみませーん、タオルか何か敷くものありますか?」

 店員さんを呼んでクッションとタオルを敷いてもらい椅子をセットする。

「これで良しと。今日の閉店時間までは物質化していますので、今日みたいな事が無いように幼児用の椅子の追加をお願いしますね」

「あ、はい。かしこまりました」

 店員さんに椅子の追加を依頼して、セットした椅子をテーブルの方に向ける。


「助かります。これって製図錬金術ですか?」

「そうです。私はまだ学生の身ですが」

「すごいですね。初めて見ました。生活の役に立つものを開発するお仕事と聞いていたもので」

「そうですね。普段は企業の開発部門などで仕事をしていて、一般には出回る事は少ないですね」

「ありがとうございました」

「お役に立てて良かったです」

 若い夫婦がお子さんを椅子に乗せ、席に着いたところで自分の席に戻る。


「いいの? 人前で使っても」

「大丈夫、大丈夫。折角なんだし、ね」

「そぉ?」

 とは言ったものの、本当は気軽に使っちゃいけないんだけどね。見つかると、ちょっと小言を言われるかも。

「さぁて、食べよう。デザートも待ってるよぉ~」

「そうね」

 手助けもでき、気分良く食事を再開した。


本当は1話完結で書いていたのですが、こういう他愛ない話を書く方が筆が進んでしまいました。

この続きは20話で公開予定です。ちょっぴりアクションなど混ぜたいと思います。


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