001 世界を冠する男『ゼロ』
001 世界を冠する男『ゼロ』
剣や魔法が人々の短に存在する世界。
人族、エルフ、獣族、ドワーフ、竜族、魔族、などなど様々な種族が時には手を取り合い、時には国を挙げて争う世界。
『エイルランド』と呼ばれる人間国家が約1200年前に世界で初めて『国』という概念を作り、人族、エルフ、獣族、ドワーフ、竜族、魔族、人種の垣根を取り払い”人間の王が治める国”でありながら多種多様な種族が暮らす国である。
そしてそんな国の、繁華街にある路地を通った場所にある縦長な家。
全部で5階まである家は、この国ではあまり見ない建造方法で建てられた家。
そしてこの家の主がこの物語の主人公であり、0〜21まである『アルカナ』の称号において”最強”であり”絶対”であり”不滅”の存在『世界』を冠する男。
『アルカナ』この意味を知らない者はこの世界には居なく。
0〜21からなるアルカナの称号のどれかを持つ者達は個人で一国を相手にでき、最悪の場合何千、何万、何億もの命の消滅を起こす災厄。
その中でも時々変わるアルカナの称号を持つ者達とは違い、世界開闢の時から存在すると言われ、彼が悪意を持って世界に力を振るえばその時が世界の終わりと言われる存在『世界』を冠する男『ゼロ』。
そんな彼は今、最大の人間国家『エイルランド』にいると言われ。
対価を払えばどんなことでも完遂すると言われる『請負人』をしている。
そしてこれから始まるは、彼の英譚であり狂譚であり破壊譚である。
* * * * * * * * * *
「なあ『節制』、最近暇だな」
「あなた様、それではまるで『最近何もないな』とおっしゃっているように聞こえますよ」
「あ?だってそうじゃん」
「はぁ〜、依頼に関して言えば七日前も五日前も二日前もありましたが、全部あなた様が『つまらない』と仰った為受けなかっただけですよ」
「うっ」
「そんなに暇なのでしたら、今日来る依頼を受けてはいかがですか?確か今日の依頼者は何代か続いている大手の奴隷商人だったと思いますよ」
「・・・・わかったよ、何を頼みに来るか知らないけど受けるよ。は〜節制は俺に対して少し厳しくない?」
「まるで私があなた様にだけ、厳しいような言い方はよしてください。
私はあなた様の事を思って言ってるだけで、他の事などどうでもいいだけです」
「う〜・・・まあいいか。たまの仕事だし、久々にあの刀を出してこようかな」
「刀・・・・まさか”あれ”を使うおつもりで?」
「うん!たまには使ってやんないといけないし、なんか勘だけど今日はいっぱい人を斬るような気がするんだよね」
「また勘ですか、しかしあなた様の勘はもはや予言の如く、ですからね」
「それじゃあ今日も元気良く行こうか」
「そうですね」
黒髪黒瞳の少年のような青年のような男と銀髪灼眼の若い美女。
少年の方は、あどけなさを残しながらも時折見せる大人びた雰囲気に一種の狂気がかいま見える。
恐ろしく整った顔と美しい肌、ありすぎるわけでもない引き締まった筋肉に黒くて黒い漆黒の双眼は星のない夜闇を埋め込んだような引力を感じる。
美女の方は、若い見た目と反して妙齢の女性を思わせる雰囲気に仕草。
こちらも整いすぎた容姿に、出るとこ出ていて引き締まった体。
しかし『あなた様』と呼ぶ少年と話している時の雰囲気が、なぜか狂気的で狂信的な感じがにじみ出ている。
彼らの事を知らないものはこの世界には誰一人としていない。
美女の方は、いろいろな面で有名人だがやっぱり『あの事』が一番有名だろう。
『あの事』彼女を語る上で必ず通る事になる道であり出来事。
彼女の主である少年が一国の王との会談中に、その国王のお付きのものが少年を『化け物』と呼んだ事によって、その国に住む人族約5万人を惨殺し虐殺した出来事。
詳細はわからないし発端も定かではないが、しかし結果はありそれは悲劇。
5万という人間が住む国家が、一方的に殺された結果のみが真実。
そして少年の方を語る事は出来ないだろう。
彼の事を語れる人間はこの世界に存在せず、しかし彼のやった事を語る事ならできるだろうしあまりにも有名だ。
世界に最悪をもたらした魔王を討伐した勇者として、一国を暇つぶしの為に滅ぼした事、移動の邪魔になった大山を消しとばした事、知り合いが殺されたから殺した相手の事を知っている者を全て拷問し殺した事、挙げればきりがない。
そのくらい有名で、ある意味英雄であり魔王的だと言える。
しかし忘れてはいけない、彼と彼女の本質でありその存在を。
彼女の本質であり称号であり呪いである所の『アルカナ』ナンバー14『節制』
彼の存在であり称号であり根源である所の『アルカナ』ナンバー21『世界』
なぜ彼と彼女が一緒にいるのかはわからない、しかしアルカナの称号を持つ者が群れる事はまずなく、彼と彼女は特に異様だった。
しかし結果はあり現象はある、彼と彼女は共にいて存在する。
それだけが事実で真実だ。