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女々しい

 

「僕は呼べるだけ女子を呼べって言ったよね」


 僕の言葉に誰も顔を上げることは無い。

 この部屋に集まった僕を除く4人は何も言わずにただ足元を見つめていた。


 そう、この部屋には僕、秋介、優ちゃん、ハンゾー、新山の5人しかいない。

 この理科準備室に、女子はいないのだ。


「なんて体たらくだ!女子1人も呼べないなんて!」

「黙るでごさる! 女など忍道には不要! というか春殿には呼べる女友達がいた筈でござる! 断られたのでござるか⁉︎」

「茜にそんなこと言えるわけ無いだろ⁉︎ 次に悪巧みしたら殺すって言われてるんだよ⁉︎ 僕に死ねって言うのか!」

「理想の為に命を捨てる覚悟も無く理想を口にしたのでござるか! 拙者が介錯してしてしんぜよう、切腹するでござる!」

「それは忍者じゃなくて侍だエセ忍者!」


 忍者を名乗るんだったら仲間のくノ一の1人でも連れてこいって話だ!


「やめましょうよ! みっともない。我々は誰も女子を誘えなかった。それだけが事実でしょう!」


 言い争う僕達の間に新山が入った。その瞳からは一筋の涙が流れている。


「ぐずっ……というか(さかき)君には飼いぬ……ご主人様がいた筈ですが、誘ったのですか?」

「おい、何も言い直せてねぇぞ新山死ぬか?」


 秋介が額に青筋を立てながら新山の襟首を強く掴んだ。

 因みに榊というのは秋介の苗字だ。


「俺は別にそのバレンタイン殲滅どうたらってやつには興味ねぇんだよ。手伝う義理がねぇ」



(そんなこと言ってしっかり集会には来ているのでござるな)

(友達いないんだよ、ヤンキー気取りだから。でも1人は寂しいんだよ、ヤンキー気取りなのに)


「こそこそ話してんなよテメェら聞こえてるからな!」


 秋介が小声で話す僕らを睨みつける。

 聞こえたら気分悪いだろうと思ってこそこそしてあげてたのに失礼な奴だ。



「しかし、どうするのでござるか?結局女子の助けなしでは罵煉汰淫殲滅作戦が成立しないでござるよ?」

「そうなんだよね……このままじゃ照れ臭そううにチョコを渡す女子とそれを嬉しそうに受け取る男子、そんな幸せな状況をその場でぶち壊さないといけなくなる」


 直接殺るのは流石にまずい。何と言っても僕らは学生なのだ。何とか間接的にバレンタインをぶち壊さなくては……。


「べ、別に邪魔しなくても、一緒に楽しめばいいんじゃ……ないのかな?」


 優ちゃんがそんな事をもじもじしながら言う。

 まったく、優しいのは名前だけにして欲しい。


「優ちゃん、そんな女々しいこと……女々しい、こと…………女?……………あぁーーー!!!」

「どうした、とうとう気でも触れたか?」


 未だ僕の大発見に気付かない秋介が何か言ったが気にしない。

 僕は驚いて固まる優ちゃんの肩をしっかり掴んで。



「僕のために、女になってくれない?」


「えっ、うえええええぇーーー⁉︎」


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