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正義という名の方程式の解き方  作者: クロノイト
3/4

正義は転生する

目を覚ますと見慣れた天井...ではなく一面白色の世界が広がっていた。


寝ぼけ目を指で擦ってもう一度あたりを見渡してみても変わらない景色に疑問符を浮かべていると どこからともなく声が聞こえた。





「目を覚ましたか、要悠里くん。」





しゃがれていながらもはっきりとした声を発した主は辺りを見渡してみても見つけることはできない。


「ここじゃよ」

「っ!」


背後から耳元に囁くような声が聞こえ、距離をとりつつその背後の主に視線を向ける。

そこには長く流れるような銀髪をゴムで一つにしばり、その目は強気な意思と確かな優しさを感じさせる瞳をした老人が杖を持って佇んでいた。


「いきなり人の耳元で喋るな気持ち悪い!」

「それはすまんかったのぉ」


そう謝ると老人は頭をかいた。


「まぁいいです、それであなたは誰ですか?」

「わしは神じゃ!」

「.......」

「.......」

「そうですか」

「なんじゃ驚かんのか?」

「すいません。ここがどこなのかわからないので病院へ案内することができなくて。」

「病気だと思われてる!!」


逆にいきなり神ですと言われてはいそうですか、なんていうやついねーよ。最初、わしは神じゃ!

なんていうからいつ宗教の勧誘にくるか気が気じゃなかった。


「冗談はそれくらいにしてあなたは誰なんですか?」

「だから、神じゃというとるじゃろうが!」

「冗談はそれくらいにしてあなたは誰なんですか?」

「いやだから!「冗談はそれくらいにしてあなたは誰なんですか?」


俺の質問攻めに業を煮やした自称神は、黙って俺に杖を向けると



「話を聞けーー!!」



そう叫ぶと杖から一瞬で生成されたと思われるバスケットボールほどの炎の玉を30個ほどこちらに向けて放ってきた。


「うおっ!」


俺はなんとか一つ避けると自称神に向かって怒鳴った。


「おい!やめろ!殺す気か!」

「ふっふっふ、これで神と信じたか?」

「信じる!信じるからさっさとやめろ!」


そういうと自称神は今放ってきた炎の玉を一瞬で音もなく消した。

まぁ少し落ち着いて考えればわかったことだ、俺があの犯人に殺されて目を覚ましたら地球では見たことないような真っ白などこまでも続く地平線、そして神と名乗る老人ここまできてわからないほうがおかしいだろう。

つまりは...



























「転生する権利ですか?」

「そうじゃ!」


俺は今さっきの神〔自称神という名称は、さすがにもう神と信じたので神と表記する〕から、これまでとこれからをどうするかの話をしている。

さっきは死ぬなんて思っていたけどよくよく考えればもう死んでいたから死ぬなんてことはなかっただろう。


「普通、死んだ人間というものには二つの選択肢が与えられる、転生か消滅じゃ。

転生は記憶を無くして同じ世界か違う世界を選び、産まれなおすこと。そして消滅は輪廻の輪から外れ、そのなのとおり消滅することじゃ。

じゃが今地球とは違うもう一つの世界で災いが起きようとしとる。それを防ぐために要悠里、お主にその世界に転生してほしい。もちろん記憶はそのままで」

「それは嫌です。俺は消滅を選びます」

「君が昔ヒーローに憧れていたのは知っている。もちろん、それを諦めたのも」

「ならなぜ俺に頼むんですか?」

「だからこそ、お主に頼んどるんじゃ。お主には昔、確かにヒーローになりたいという信念があった。損得で動くのではなく純粋に助けたい、力になりたいとそう思ったからだろう。だが成長するにつれて現実を目の前に突きつけられる。己の無力さを知り助けられないもの、力になれないものも明確になってくる。ヒーローに力がなければ優しい一般人とできることはそう変わらん。それに気がついてしまったのじゃろう?」

「...」

「お主が心の底からヒーローに憧れていたことは知っている。じゃからまだヒーローへの憧れが捨てきれないなら転生して災いから世界を救ってほしい」

「...」


しばらく神に言われてみたことを自分のなかで整理してみる。己の無力さを呪ったことなど一度や二度なんかじゃない。その度に自己嫌悪と罪悪感に苛まれ瞼を泣き腫らしてきた。


本当の意味で助けられた人間なんてごく一部だったのだろう。すごく悔しくてとてもじゃないが充実した人生だとはいえなかった。だからもし次があるならと考えたこともある。


神が俺に言ったことは全部図星で少し怖くもなった。まぁ神だからそれぐらいわかってても不思議じゃないがな。


「わかった、転生してやる。だがヒーローに力がなければ優しい一般人とできることはそう変わらないってあんたが言ったんだ、もちろん俺に力を与えてから転生先に送るんだろうなぁ?」

「最初からそのつもりじゃ。それよりお主口が時々悪くなっておるぞ。なぜ口が悪い時と丁寧な時があるんじゃ?」

「それはまぁ簡単にいえば猫を被ってるってことだ、正義のヒーローが口が悪くちゃそれっぽくないだろ?」

「ははは!確かにそうじゃのう」


最初は真っ白で落ち着かない空間だと思っていたが今はどこか居心地がよく感じている自分に驚きつつも神にいう。


「んでどこに飛ばすんだ?」

「おぉ!すっかり忘れておった、今から送る世界はトリスティアという名前の剣と魔法が舞台のファンタジーな世界じゃ。お主がヒーローとなるにはぴったりの舞台じゃろう?」

「どうでもいいから次は力についてだ、なにをくれるんだ?」

「どうでもいいって酷いのぅ。力についてはよく考えておらんかったわ。なにがいいかのぅ?」

「考えとけよ。まぁいいや、どうせRPGと一緒だろ?トリスティアは」

「そうじゃ」


いっていなかったが俺は大のRPG好きだ。子供の頃親に一度買って貰ってから好きになったのが始まりだ。


その頃は勇者が魔王を倒す、つまり正義のヒーローみたいでカッコいいと思いひたすらやりこんでいた。そんな背景もあり結構剣と魔法の世界は楽しみだったりする。


「なら全魔法使えるようにと経験値を上げやすくしといて。あとなんかレアなスキルとかあれば欲しい。それくらいでいい。」

「レアなスキルはこっちで決めていいんじゃな?」

「あぁ。というか災いって魔王か?」

「それはわしにもわからん」

「つかえねーな」

「なんじゃと!!」

「さっさと送れ」

「言われんでもそうするわい!」


そう神が怒鳴ると杖をこちらに向け、俺の足元に魔方陣が浮き出てくる。

それだけでトリスティアに送られるんだなということがわかった。


神は俺が正義のヒーローを続けると思っているみたいだがそんなことは一言もいっていない。あちらの世界ではのんびり暮らさせてもらうか。

そう考えたところで俺の意識は深い夢の中へと吸い込まれた。

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