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ヤツガレの所望。  作者: 坂戸樹水
9/57


(まさか、な……)



  ムギュ。



(ん?)


 左腕には由嗣。

右腕に押しつけられる柔らかい感触に、斡真はライトを向ける。


「うぅぅ、眩しぃ!」

「ぁ、ワリぃ、」


 右腕に しがみついているのは薫子だ。

この柔らかい感触は豊満な胸の弾力であると察するなり、斡真の口元には妖笑が浮かぶ。


(イイモンもってんなぁ、女子高生!

まぁ、こうゆうサービスの1つくらい無きゃ、やってられねぇよなぁ!)


「足元、気ぃ付けろな」

「はぁい!」

「うん。気をつける」

「由嗣、テメェにゃ言ってねぇ」

「冷たいなぁ……」

「何か、肝試しみたいですよねぇ!」

「そんなノリにしかなれねぇはなぁ」


 一瞬の不安は薫子の巨乳によって追いやられるから、斡真も存外ゲンキン者。

3人が団子になって歩く中、勇敢にも先頭を行く結乃の足が止まる。



「行き止まり……」



 何と無しに歩いて来たが、落し物と言える物はあっただろうか、

結乃が呟けば、斡真は額を抱える。


「それらしいモン、見たヤツいるかぁ?」

「アタシ、何も見てませぇん」

「ごめん、怖くて目ぇ閉じてたよ、僕……」


 見た目ばかりは貴公子な由嗣は使い物にならない事が判明。

斡真は由嗣の手は強引に払い、薫子には やんわりと制して腕を取り戻すと、ライトの光で虫を追いやり、行き止まりの壁をドンドンと叩く。だが、ビクともしない。


 半ば焼けっぱちに蔦やらを引っぺがせば、そこには3両目に続く貫通扉が見つかる。

洞窟コンセプトの車両とでも言えば良いのか、そんな名を打って切符を売り出せば、乗車率は上がりそうだ。


「見る限り、3両目も停電してるぞ。そもそも、ミクロ? ……何だっけ?」

「クロミカズラ、だったと思います」

「ソレが何だか分かんねぇっつのが問題だっつぅ話」

「ホントですよねぇ! 1度戻って国生サンに聞いてみませぇん?

ヒント貰ってぇ、もぉちょっと探しやすいようにして欲しいかなぁって!」

「言えてる。なぁ、由嗣」

「ソレもそうだね。じゃ、戻ろうか。えっと……結乃チャン、良いかな?」

「え? ぁ、はぃ……そうですね、」


 まだ時間は10分と経っていないから、出直した所で支障は無いだろう。

ソレよりも、この薄気味悪い空間から早く退散したいのが本音。

4人は踵を返し、1両目の灯りに向かって歩き出す。


(この番組プロューサー、謎とかせる気ねぇだろ?

こんな、ただ暗いだけの車内にシロートぶっ込んで、

暗視カメラ映像だけで何分の尺が埋められると思ってんだか。

リアクション芸人じゃねぇぞ、俺はと。

つか、これを本気でリアルだと思う現代人がいると思ってんなら、もぉちっと頭使えって、テレビマン)


 斡真が心中で文句を垂れていると、背中がピンっと引っ張られる。


「ぁ?」

「! ……す、すいません、」


 今度は最後尾に付ける結乃の心細さの表れ、シャツの裾を摘まれた様だ。

左右に由嗣と薫子。背中は結乃に縋られるとは、随分とアテにされたもの。


「別にイイけどよ。つか、由嗣、テメェにゃプライドはねぇのか」

「僕を呼んだのは斡真だろっ? 我慢しろよ、コレくらいっ」

「あの、スイマセーン。何かアレ、変じゃないですかぁ?」

「アレ?」

「1両目の灯り、遠くなってるよぉな気ぃしませぇん?」


 そう言えばだ。

歩いても歩いても、目標とする1両目の灯りが近づかない。

訝しんで立ち止まれば、薫子が感じた通り、灯りが遠のいているのがハッキリと解かる。



「ど、どうなってやがんだ!?」



 周囲にライトを向ければ、左右の岩肌が嚥下する様に波打ち、退路を延ばして行く。この儘では道標を見失ってしまう。


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