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ヤツガレの所望。  作者: 坂戸樹水
49/57

四八


〈アァアァ……斡真サぁぁぁン……やっと会えたァアァアァ……〉


「ぉ、お前、大丈夫……じゃねぇよな……?

つか、それ以上近づくのはアウトだ、マジでっ、」


〈寂しかったァアァ……斡真サンがいなくて、寂しかったァアァ……〉


「こ、小金井サンがいるだろッ、俺に入る隙はねぇよ、今んトコ!」


〈逃げないでェエェエェ、斡真サぁぁぁン、逃げないでェエェエェ……〉


「く、来るなっつの!

顔見知りの、ソレも女を蹴り飛ばすとか出来そうにねぇんだから!」


 枕木の1枚を上がるのも精一杯の斡真とは裏腹に、薫子はズンズンと その距離を縮めにかかる。


〈ココに残ってェエェ、斡真サンがいればぁアタシ、こんなトコでも我慢できるゥゥゥ〉


「待て! タイム、タイム! 俺にもその内に迎えが来るんだって!

つか、ココで自然消滅する! 晴れて お前らの仲間になる! ソレまで待て!」


〈こんな姿見せられるのは、斡真サンだけェエェエェ……〉


「頭ウジ湧いてんだろッ、人の話を聞けっつの!」


〈アタシのモノになってェェ、この世界もそんなに悪くなァいィィ……〉


「俺は兎も角、他の連中は結構イイ線いってんだからッ、そこを邪魔するのは無しだ! お前だって、仲間の1人や2人、無事に帰って貰いてぇだろ!?」


〈仲間……〉


「そうだ! 仲間だ!」


〈ウゥウゥウゥ……〉


 何かを思い出そうとしているのか、薫子は苦しげな唸り声を上げる。

まだ人間としての理性が残っているのなら、この場では力強い戦力になるだろう。

だが、斡真が期待した矢先、薫子は大きく口を開ける。


〈アァアァアァアァ!! あの女ァアァアァアァ!! あの女ァアァアァ!!

アタシがカレを好きって知ってたクセにィ、横からチョイチョイ邪魔してェエェ!!〉


「な、何の話だっつの……」


〈アイツこそ ココに引き摺り込んでやりたいィイィイィ!!〉


「そ、そうゆうの、よそうぜ……な?」


 誰の話をしているのか判らないが、怨言を唱えれば唱える程、薫子の体は腐敗する。


〈あの女ァアァ、あの女に似てたンだァアァ、

大人しそうな顔してェエェ、イイ女ぶってェエェエェ!! 結乃ォオォオォオォ!!

あの女の代わりに、あの女を引き摺り込んでやるゥウゥウゥ!!〉


「結、乃……?」


〈今度はアタシが迎えに行くゥウゥウゥ!!

あの女もアタシみたいに、化け物みたいにグチャグチャにしてやるゥウゥウゥ!!〉


「お前……」


 薫子の恋敵の素振りに結乃は酷似していたのだろう、

だからこそ薫子は最初から結乃を目の敵にしていたのだ。


 然し、それは逆恨み。

黄泉に堕ちた事で醜い感情に染められてしまったのか、ソレとも端からこうした感情を抱いていたのか、斡真には知る由も無いが、1つハッキリした事がある。



「やっぱ。地獄に堕ちるわ、俺」



 地獄よりマシだろう黄泉の世界。

然し、醜い感情に汚染されるくらいなら、延々と続く痛みに耐える方が性に合っている様に思う。


「薫子、お前には同情する。でも、チビは渡さねぇ。ゼッテェに俺が助ける」


〈斡真サン、アタシと一緒にィ……〉


「チビが待ってる」


〈ウゥ、ゥ、ウゥ、ウアァアァアァアァ!!〉


 絶叫を発すると共に、目玉は飛び出し、爪は剥がれ、薫子の体からは蛆が溢れ出す。

そして、薫子の気持ちに応える様に、蛆は斡真の体を伝い上がるのだ。


「ッッ、、しつけぇ女は嫌われるんだよ!」


 蛆を手払い、透き通ってゆく体の輪郭を確認しながら枕木を上る。


〈逃がさないィイィイィ!!〉


「!!」


 薫子に足を掴まれ、ガクン!! と枕木を1枚滑り落ちる。


(ヤバイ、力が……)


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