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ヤツガレの所望。  作者: 坂戸樹水
42/57

四壱 「4両目」


「必ず見つけて来る! だから諦めるな!

絶対に2人をココから出してやるから!! 国生サン、お願いします! 

次のドアを開けてください!」


 由嗣の強い意志に、国生は深く頷く。


「ヤツガレの所望は、意富加牟豆美命。制限時間は60分。

ソレ迄に意富加牟豆美命を探し出し、ヤツガレに届けて頂きたい。宜しいか?」

「はい!」


 国生が片手を上げれば、4両目に続く貫通扉が開錠される。


「由嗣ッ、」

「斡真、僕を信じて」

「!」


 由嗣の背には、必ず帰ると言う強い信念が感じられる。

もう何を言っても由嗣を引き止める事は出来ないだろう。


「俺も行く」

「斡真っ、」

「まぁ、1度は行くって決めたんだ。仲間が減ってビビるってのも恰好ワリぃ、」


 次は誰が死に迎えられるか分からない。

同じく黄泉が迎えの主だったなら、今動かなかった事を後悔するだろう。

地獄であったなら尚更だ。


(俺の体力が次のエリアで どんだけもつのか、ハッキリ言って期待できねぇけど。

でも、どーせ地獄行き。黄泉に掴まったって結果オーライ。

上手くすりゃ、由嗣とチビを元の世界に戻してやる事が出来る。

ココで引き下がるわけにゃいかねぇ、)


 斡真は結乃の頭を一撫ですると調子よく笑う。


「お前の迎えが来る前に何とかしてやっからさ」

「斡真サンっ、」

「でも、もし間に合わなかったら、ごめんな?」

「っ、」


 この言い草、斡真は黄泉から戻れなくなる事を覚悟している。

言い残す言葉が無いよう謝罪を言って聞かせられれば、結乃の目には忽ち涙が溜まる。



「国生、チビを頼む。最期まで、頼む」



 斡真と由嗣が4両目から戻れなければ、結乃はたった1人で迎えを待つ事になる。

最期を看取る者もいないでは余りにも気の毒だ。

せめて結乃の恐れが少しでも和らぐよう、国生には見守っていて貰いたい。

斡真のその思いに、国生は頷く。



「無論、笑い話の1つでも」



 3両目に突入する際、斡真が冗談で言った言葉を引用。



「ハハハ! イイな、ソレ。お前を見直した!」



 2人は4両目の闇に消えて行く。



*



 訪れた4両目は、やはり暗い。

携帯電話をポケットから取り出すも、どうやら3両目の水没のダメージが効いている。

ライトはチカチカと点いたり消えたりを繰り返す。


「ヤベェな、」

「1つ消そう。その間に乾いてくれれば復活するかも知れない」


 言下、由嗣は自分の携帯電話のライトを消すと、斡真に預ける。


「あ? 何で俺だよ?」

「僕のスマホ、預かってて。落しそうで怖いから」

「なーんだ、そりゃ?」

「良いじゃないか。役に立つかもよ?」


 勇んで4両目に飛び込んだ割りに、由嗣は情けない事を言う。

コレだから一緒に来て良かったとも思う斡真だ。

携帯電話を受け取り、ボトムのポケットに捻じ込む。

そして、頼りないライトを周囲に向け、状況を確認する。



「今度はトンネルか……」



 足元には線路。


「地下鉄……もしかしてココ、山武本線が通る地下トンネルじゃないかな?」

「ソレっぽいな。つか、コレまでと様式が違わねぇか?」

「うん」


 2両目は洞窟。3両目は冠水した沼地。

今回の4両目は、蔦や蔓が張り巡らされているでも無ければ、虫が這っているでも無い。

暗さを除けば常識的な景観だ。

足元は線路の骨組みで歩きにくいが、慣れたコンクリートの質感には安心させられる。


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