四壱 「4両目」
「必ず見つけて来る! だから諦めるな!
絶対に2人をココから出してやるから!! 国生サン、お願いします!
次のドアを開けてください!」
由嗣の強い意志に、国生は深く頷く。
「ヤツガレの所望は、意富加牟豆美命。制限時間は60分。
ソレ迄に意富加牟豆美命を探し出し、ヤツガレに届けて頂きたい。宜しいか?」
「はい!」
国生が片手を上げれば、4両目に続く貫通扉が開錠される。
「由嗣ッ、」
「斡真、僕を信じて」
「!」
由嗣の背には、必ず帰ると言う強い信念が感じられる。
もう何を言っても由嗣を引き止める事は出来ないだろう。
「俺も行く」
「斡真っ、」
「まぁ、1度は行くって決めたんだ。仲間が減ってビビるってのも恰好ワリぃ、」
次は誰が死に迎えられるか分からない。
同じく黄泉が迎えの主だったなら、今動かなかった事を後悔するだろう。
地獄であったなら尚更だ。
(俺の体力が次のエリアで どんだけもつのか、ハッキリ言って期待できねぇけど。
でも、どーせ地獄行き。黄泉に掴まったって結果オーライ。
上手くすりゃ、由嗣とチビを元の世界に戻してやる事が出来る。
ココで引き下がるわけにゃいかねぇ、)
斡真は結乃の頭を一撫ですると調子よく笑う。
「お前の迎えが来る前に何とかしてやっからさ」
「斡真サンっ、」
「でも、もし間に合わなかったら、ごめんな?」
「っ、」
この言い草、斡真は黄泉から戻れなくなる事を覚悟している。
言い残す言葉が無いよう謝罪を言って聞かせられれば、結乃の目には忽ち涙が溜まる。
「国生、チビを頼む。最期まで、頼む」
斡真と由嗣が4両目から戻れなければ、結乃はたった1人で迎えを待つ事になる。
最期を看取る者もいないでは余りにも気の毒だ。
せめて結乃の恐れが少しでも和らぐよう、国生には見守っていて貰いたい。
斡真のその思いに、国生は頷く。
「無論、笑い話の1つでも」
3両目に突入する際、斡真が冗談で言った言葉を引用。
「ハハハ! イイな、ソレ。お前を見直した!」
2人は4両目の闇に消えて行く。
*
訪れた4両目は、やはり暗い。
携帯電話をポケットから取り出すも、どうやら3両目の水没のダメージが効いている。
ライトはチカチカと点いたり消えたりを繰り返す。
「ヤベェな、」
「1つ消そう。その間に乾いてくれれば復活するかも知れない」
言下、由嗣は自分の携帯電話のライトを消すと、斡真に預ける。
「あ? 何で俺だよ?」
「僕のスマホ、預かってて。落しそうで怖いから」
「なーんだ、そりゃ?」
「良いじゃないか。役に立つかもよ?」
勇んで4両目に飛び込んだ割りに、由嗣は情けない事を言う。
コレだから一緒に来て良かったとも思う斡真だ。
携帯電話を受け取り、ボトムのポケットに捻じ込む。
そして、頼りないライトを周囲に向け、状況を確認する。
「今度はトンネルか……」
足元には線路。
「地下鉄……もしかしてココ、山武本線が通る地下トンネルじゃないかな?」
「ソレっぽいな。つか、コレまでと様式が違わねぇか?」
「うん」
2両目は洞窟。3両目は冠水した沼地。
今回の4両目は、蔦や蔓が張り巡らされているでも無ければ、虫が這っているでも無い。
暗さを除けば常識的な景観だ。
足元は線路の骨組みで歩きにくいが、慣れたコンクリートの質感には安心させられる。




