表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤツガレの所望。  作者: 坂戸樹水
25/57

弐四


 10メートル程進んだだろうか、電車の中央部辺りに差しかかるも発見は無い。

『丹念に探したつもりだけど……』と言いたげに、由嗣は首を傾げる。

背後からは2人の溜息が連投される。


「本当に不気味な所だな……

壁には海虫も這ってるし、水の中も実際どうなってるんだか……」

「ゃ、やめてくださいよ、小金井サン、僕、何も考えないようにしてるんですから、」

「あのぉ、クシがどんな形になってるかって、国生サンには分からないんでしょぉかぁ?」

「見ないと分からないって言っていたよ?」

「ハァ……何々だ、あの男は本当に! 人を使うばっかりで自分は何もしやしない!」

「自分ではどうにも出来ないから人に頼んでるんでしょうね」

「人に物を頼む態度じゃないって言ってるんだ、俺は!」

「あ~も~、ヤダ~、どんな形なんだろぉ……」


 薫子と小金井は不満を吐露するばかりだ。

闇空間にエネルギーを吸収されている事もあってか、捜索の集中力すら欠いている。

この儘では勝手な行動を取られかねない。由嗣は立ち止まり、考え込む。


「オイ、どうたんだ? 何か見つけたのか?」

「いえ。闇雲に探しても疲れるだけかも知れないなぁ、と」

「何だ、そんな解かり切った事を今更!」

「2両目の黒御鬘は葡萄でしたが、それには少し心当たりがあるかもと……」

「心当たりって何だ!?」

「以前に読んだ日本神話の記述にあったような……」

「―― く、下らない!! もっと現実的な話をしろよ、キミは!」

「でも、小金井サン、国生サンはココを【ヨミヒラサカ】と言っていました。

それは日本神話、古事記にあった黄泉比良坂なのかも、と。違うでしょうか?」

「そんな事知るか! どうでも良いから先に進め! でなけりゃキミを置いて戻るぞ!」


 実際にあったかも分からない神話を思い返せる程、小金井は博学でも無ければ信心深くも無い。頭ごなしに由嗣の思考を跳ね除け、先を急がせる。



*



 一方、待機組の斡真は貫通扉の前に座り込み、ロープを確りと握って闇空間を見据える。

やれる事も無い結乃は、せめてもの思いで斡真の隣に膝を抱えて座る。


「チビ、椅子に座っとけ。ケツ痛くなんぞ」

「だ、大丈夫です、」


 こんな時に自分だけ座席で寛ぐ訳にはいかない。

そんな謙虚さに斡真は笑う。


「なぁ、女って仲良く出来ねぇもんなのか?」

「ぇ?」

「なーんか あの女子高生、お前の事、目の仇にしてるみてぇだったから?」

「……、」


 敢えて口を挟みはしなかったが、結乃と薫子の不穏当な遣り取りには斡真も気づいてる。

結乃も薫子の態度や言い草を腹立たしく感じているのは事実で、事の成り行きに愚痴の1つでも零したいのは山々。

だが、そんな事を言っても信じて貰えるか分からない。

薫子の調子からして、猫なで声で斡真達を上手い事 丸め込みそうだ。

そんな不信感に結乃は口を噤む。


(男の俺が、女の社会を理解できるわきゃねぇか、)


「つか、さっきビックリしたわぁ。

代わりに行くとか言いだした件。根性あんのな、お前」

「そ、そんな事、無いです……」

「ンな事あんだろ。

ちっと前まではビビッて泣いてたヤツがソレを言うかって。ハハハハ!」

「だ、だってっ、帰るって、絶対に帰るって決めたから……、」



『前向いて走ってりゃ いつか追いつくんだよ!

ユキトってヤツに会って言う事があんだろが! 勝手に諦めてんじゃねぇ!』



「帰るなら行かなきゃって、行かなきゃ帰れないと思ったから……」


 あの時の斡真の励ましが、結乃の生きる事への執着を目覚めさせたのだ。

最愛の弟と再会するには、決して逃げてはならないのだと、今は強く感じている。

そんな結乃の確信ある言葉に、斡真はやはり笑う。


「何だそりゃ、メチャクチャ格好イイじゃねぇか。ハハハハ!」

「……ぁ、ありがとう、ございます、」

「つか、お前、年は?」

「17です、」

「高校生か!? 中坊かと思ってたわ!」


 顔容を隠す長い前髪もあって、華奢で小柄な結乃は実年齢よりも幼く見える。

肉づきの良い薫子と比べれば尚の事。


(分かっちゃいても、女のピンキリ具合はスゲぇなぁ。

巨乳もいりゃぁ、コイツみてぇにモヤシみたいなのもいるんだから)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ