弐壱
由嗣は話を続ける。
「2両目と性質が同じだと仮定しての考えですけど、
あの中に入ってしまえば、目視できるのは2メートルも無い距離です。
その間隔を保ちながら、1列になって進むのはどうでしょう?
なるべく、見落としが無いようにしたいから」
行ったり着たりを繰り返す事は出来ない。
見つけにくい物を見つけなくてはならない点も併せれば、何度でも確認できる目をとっておきたい。団子になって歩くのは賢明では無いと言う事だ。
「斡真、結乃チャンを助けに行った時、僕の声は聞こえていたか?
ずっと声をかけていたんだけど」
「いや、何も聞こえなかった」
「そっか。ソレじゃ、外は中の、中は外の声や音が聞こえないようになっているのかも。
だったら、シートを剥いでロープを作って、1人に括りつけるってのはどうだろ?
ソレを引っ張る事で、中と外で合図が送れると思うんだけど」
「ロープと言っても、どれくらいの長さが必要だッ? 見当もつかないぞッ、」
「一先ず、1車両分を考えましょう。行きの距離は その程度だったと思います。
ソレらしい物が見つかったらロープを引いて2両目の斡真に合図を送る。
そうしたら、僕達が無事に帰れるようにロープを引き戻してくれ。
ココの灯りを見失う心配も無くなると思う」
「ど、どうせなら、全員分のロープを作った方が良くないかッ?」
「駄目ですよ、小金井サン。
そんな事したら、いざって時にお互いのロープが絡まってしまうかも知れない」
退路が成長する事も考慮すれば、ロープは命綱にもなる。
然し、提案通りに遂行できるかが問題だ。小金井は脂汗をかく。
「じ、じゃぁ、見つからなかったら どうするんだ!?」
「そうしたら、そう合図を送る事にしましょうか。
往復するのは危険だから、斡真と結乃チャンには悪いけど、探しに出て貰う事になる。
斡真達がユツツマグシを見つけるまで、僕達は行き止まりで待機するような感じで」
見つける迄は戻るべきでは無い。
ソレ等を一貫する為にも、向かう行為を繰り返す事。
「ソ、ソレでも見つからなかったら どうする……?」
「ダッシュで戻るしかないと思います」
「そんな計画性の無い方法、誰が賛成するんだ!」
「ソレ以外、何があるってんだよ? 俺は由嗣の案に乗っかるぜ?」
斡真は鞄の中からペンケースを取り出し、文房具のカッターを手に取る。
コレでシートを剥ごうと言う魂胆だ。
ならば、薫子も遅れを取ってはならない。素早く学校鞄を取りに戻る。
何にせよ、無事に元の世界に生還するには国生の所望を見つけ出さなくてはならないのだから、今できる限りの事をすべきだろう。
不服は残るも、小金井は項垂れる様に頷く。
「しょうがない……」
決まれば膳は急げ。
斡真は目を閉ざしたまま動かない国生を見やる。
「なぁ国生サン、その刀、アンタの何だろ?
だったら剣術でも披露してくれねぇかなぁ?
この辺のシートにパッパと切れ目を入れてくれりゃ、俺達の手間も省けるってもんだ」
車両1両分の長さは約20メートル。
ある程度の余裕も作る事を考えると、持ち寄った文具のカッターで処理するには時間がかかりそうだ。
冷やかし半分で斡真が頼めば、意外にも国生は剣を手に腰を上げる。
「ならば、吝かでは無い」
まさかの協力態勢。
その後、国生の見事な剣捌きに一同が驚愕したのは言う迄も無い。
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