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ヤツガレの所望。  作者: 坂戸樹水
18/57

壱七


 小金井は恐る恐る閉まった貫通扉の窓を覗き込み、2両目を見やる。


「ん?? 何だ、キミらがあんまりにも怯えるもんだから、一体どうなっているのかと思えば……何て事ないじゃないか」


 聞き捨てならない言い草。

斡真は勇んで立ち上がり、小金井を押し退けて2両目を覗き込む。



「は!? な、何だよ、コレ!?」



 2両目は照明を取り戻し、貫通扉のドアノブを捻れば今度は難なく開いてしまう。

何度 見返そうと、あの暗闇で見た醜悪なモノは1つとして存在しないから、狐に摘まれた気分だ。


「化け物は!? 動く壁は!? アレは全部 夢だったってのか!?」

「お主らが見事ヤツガレの所望を果したがゆえ、そこな黄泉を切り離す事に成功した」

「どうゆう事だ……その刀、お前の欲しがってたモンじゃねぇって……」

「ヤツガレの所望は、羅川結乃、お主の手の内にある」

「!?」


 座り込んだ儘の結乃は、慌てて手を広げる。

そこには、葡萄の1粒。


「コレ、持ったままだった……」

「ソレよ、ソレ。ソレこそが黒御鬘」


 葡萄に黒御鬘と言う品目なぞあっただろうか、然し、コレこそが所望の品。

国生の喜色は言い知れない。

結乃の掌から葡萄の1粒を摘み上げると、忽ち国生の手の内で髪を結う飾り紐に変化する。


「嘘!?」

「葡萄が、どうして……?」

「まじないが施された物は黄泉の世界では形を変える」

「そ、そんなん分かるかよ!?」


 剣は剣の儘であったにも関わらず、葡萄が髪飾りに変化するとは誰も想像しないだろう。

斡真は頭を掻き毟って地団駄を踏むと、息を荒げて国生を睨む。


「テメェの話は何度聞いても解かる気がしねぇが、お望み通りゲームはクリアだ!

これで満足だろ! 約束通り、俺達を元の場所に帰せよ!」


「否」


 喚き立てる斡真を素通る国生は貫通扉を跨ぎ、2両目へ。

そして、3両目に続く貫通扉を指差す。



「ヤツガレの所望は、」


「まだあんのか!?」



 落し物の多い男だ。

由嗣は駆け出し、2両目の貫通扉の先を覗き込む。



「さ、3両目、まだ停電してる……」



 この先にも、あの恐ろしい世界が広がっている。そんな予測に由嗣は青褪める。

国生は黒御鬘を懐に仕舞うと、一同の顔色を窺いもせずに続ける。



「ヤツガレの所望は、湯津津間櫛ゆつつまぐし。次の車両の何処かにあると思うのだが」



 又も聞きなれない言葉だが、一同には言い逆らう気力も湧かない。


「制限時間は60分。

それ迄に湯津津間櫛を探し出し、ヤツガレに届けて頂きたい。宜しいか?」


「ま、待て。待て待て待て。ちと、タイム!」


 この展開は、2つ目の所望も果さなければ地上に帰さないと言う事なのだろう。

帰る手段を持たない一同に拒む権利が無い事は悟ったが、失った体力を回復させない事には、次に臨む事は出来ない。


「今更お前の言う事を疑いやしねぇが、連戦連勝できる程メンタル逞しくねぇぞ、俺は……」


 コレに同意する結乃は強く頷く。

すると、国生は顎に手を添え、目を細める。


「お主等らの余命は黄泉比良坂を上りきる迄の事。

ココを過ぎてはヤツガレの力は及ばぬぞ」

「コ、ココが何処なのか分からないままだが……

ココを過ぎてしまったら、どんなに我々が頑張っても、元いた場所へは戻れないって事かっ?」

「小金井良男に相違無し」

「え? え? え? ソレじゃぁ、え~っと……

ヨミヒラサカってトコを上ったらゴールで、終わりってコトですよねぇ?」

「然様。列車は止まる」

「ソレって、いつ何ですかぁ?」

「置管薫子、ソレはヤツガレにも知れぬ事」

「いつ止まるか分かんなくても、どっち道、止まったら降ろして貰えるんですよねぇ?」

「須らく」


 国生が頷けば、薫子は手を叩く。


「何だぁ、だったら終点まで座って待ってればイイだけじゃないですかぁ。

降ろして貰ったトコから、皆で帰ればイイだけでぇ」


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