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ヤツガレの所望。  作者: 坂戸樹水
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壱六


「俺に縋ったのは お前の方だろ!

ビビッて泣いてたクセに、今更つまんねぇ事気にしてんじゃねぇよ!!

前向いて走ってりゃ いつか追いつくんだよ!

ユキトってヤツに会って言う事があんだろが! 勝手に諦めてんじゃねぇ!!」


「!」


 結乃の遺言じみた言葉を、斡真は聞いていたのだ。

こうして言い返されては、諦める事は許されない。

結乃は下唇を噛み、今に消えそうな灯りを見つめ、前へ前へと足を運ばせる。

その決死の思いが、徐々に灯りを引き寄せるのだ。



「斡真! 結乃チャン!」



 1両目から伸ばされる由嗣の手が、結乃の腕を掴む。

結乃を引っ張り込み、抱きかかえる様に横転。その上に、斡真が転がり込む。

2人が無事に生還するとは思いもしない薫子と小金井は、驚きを隠せずに硬直。


「ぉ、重いぃ、」


 斡真と結乃の下敷きにされ、由嗣はくぐもった声を上げるも表情は晴れやかだ。


「つか、マジに戻って来られっとは……俺、強運っ、」

「ゎ、私も、強運、」


 全力疾走に体力は完全燃焼。

2人は起き上がれず、そのままゴロリと寝転がる。

由嗣は斡真の肩をポンポンと叩く事で労いの言葉に換えると、次には首を傾げる。


「斡真、ソレは?」

「あ?」


 斡真の手に握られる茶色く錆びた剣らしき物を、薫子と小金井も遠巻きに覗き込む。


「拾った」

「向こうでか!?」

「ああ。何か良く分からんけど、落ちてたから拾った。スゲェ役ん立ったっつの」


 照明の下で見れば、激しい刃零れ。

切れ味は期待できない代物に見えるが、こんな場違いな物が あの闇空間に落ちていたとは驚きだ。


 薫子は手を叩き、声を上げる。


「もしかして、ソレじゃないですかぁ!? あの人が欲しがってた物ってぇ!?」


 国生が所望した黒御鬘。

そう噂をしてやれば、間を置くでも無く国生が現れる。



「まさか危険と承知で黄泉へと舞い戻るとは、底の知れぬ男よ、高槻斡真」


「国生!」



 霧の様に消えた筈の国生が再び車内に姿を現せば、一同は言葉を失う。

国生は斡真の手に握られた剣を見やり、小さく息を吸う。


「それは、十拳剣とつかのつるぎではないか。変わり果てたものよのぉ、」


 黒御鬘では無い。一同の肩は自然と落ちる。

斡真は床を滑らせる様に、国生へ向けて剣を放る。


「的ハズレだって わざわざ笑いに来たか、フザケたヤローだッ、」


 国生は爪先にぶつかって止まる剣を懐かしむ様に拾い上げる。


「ヤツガレの剣だ。遥か昔、出会った人間に貸し与えた」

「そぉかよ。そいじゃ、アレが その人間だったんだろな」

「高槻斡真、あの者に逢ったのか?」

「死んでんのを見かけただけだ」


 斡真が言い捨てれば、国生は目を伏せる。

2両目の様子を一切知らない小金井は、斡真の物騒な言葉に駭擾がいじょうを隠せない。


「し、死んでた!? 死体を見たって事か!?」

「ああ、そうだよ。

あ~~もぉ、ソレっぽっちじゃ驚かねぇ神経になっちまったよぉ、」


 相手にして来たのは無数のリビングデッド。

死体として素直に留まった あの男には感謝して止まない。

却って、噢咻うくを見せる国生が練れ気者に見える。


「テメェ、俺達の前にも結構な数の人間をあっちに派遣してやがっただろ?

お陰で 半ナマ死体がわんさか湧いて来たっつの」

「無事、生還したのは お主らくらいなもの。人間とは、まっこと奇なり」

「奇っつぅのはテメェみてぇなのを言うんだよ!

大体な、こんなゲーム、クリア出来るヤツぁいねぇぞ!

諦めて俺達を解放しろ! つか、そうしてクダサイ!!」


 怒っているのか嘆願しているのか、頭を下げる斡真の混乱を余所に、国生が手を上げれば、開いていた貫通扉がバタン! と閉まる。



「丁度、60分が経過した」



 時間が経てば こうして容赦なく扉が閉ざされていた事を知れば、遅ればせながら背筋が凍る。


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