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ヤツガレの所望。  作者: 坂戸樹水
13/57

壱弐


 さて、勇敢にも1人で2両目に飛び込む斡真は、強い生臭さを放つ空間に鼻を押さえる。


(さっきより臭せな……でも、壁の成長は止まってるみてぇだ。

帰るヤツがいねぇからってなら、チビはもう向こう側の住人になっちまったって事か?)


 2両目は森閑としている。

然し、全方位から向けられる睥睨は確かなもの。


(冗談じゃねぇよ、

大学デビューを機に やっとヤンキー卒業して、所謂プレイボーイに昇格したってのに、そんな俺が どうしてこんなクソキモイとこで勇者ゴッコしてんだよ?

そもそも、そうゆうキャラじゃねぇだろぉが。然も、あんなパッとしねぇガキ相手に)


 結乃を思い出せば、ドンヨリとした暗い印象。

前髪が長すぎて顔も見えない様は、ソレこそ絵に描いたような幽霊だ。

何処ぞのホラー映画の妖怪と 笑い飛ばしてやりたくなる。

どうせなら、薫子の様な多少なり花のある女の為に体を張りたかった所。


(他人の事より自分の事。

ソレを地で行く俺様に反論できる程 立派な生き方してるヤツぁそういねぇ。

チビっ子1人見殺しにした所で、多くの人権屋が『緊急避難デス』って、俺を擁護してくれんだよ。その辺、賢くも理解してんだけどなぁ、俺はぁ……)


 後悔 先に立たずとは言うが、今がまさに その状況。

然し、不思議と引き返す気にはならないから平和ボケか、自分の馬鹿さ加減に嫌気が差す。


(なぁ兄貴、ちたぁ俺も成長したんかな?)


 こんな時にも関わらず、以前の出来事が思い返される。



『斡真、何で母サンの葬儀に来なかった? バイクで走る約束の方が大事だったか? 母サン、斡真がいなくて寂しかったと思うよ?』

『うるせぇな! 死んじまったもんにかける時間とか無駄だろぉが!』



(以前の俺はクズすぎた。

そんな俺を、兄貴はいつも悲しそうに見ていたっけな……)



『辛すぎて、母サンの側にいられなかったたけだろ?』

『ちげぇよ、バぁカ!!』



(違わない。母サンは優しかった。出来損ないの俺にも優しかった……)



『でもな、斡真……どんなに悲しくても、逃げちゃいけない時がある。

堪えなきゃならない時がある。そうゆう事、お前は しっかり解かる男だよ。

母サンが そう言ってた』



(いきがる事でしか自分を主張できずにいた俺には、返す言葉も無かった。

ただ、無性に後悔して、泣けた……)



『バカだな、斡真は』



(兄貴は母サンに似て いつでも優しかった。

いつか俺も、優しい人間になりたいと思った。

相変わらず、憎まれる選択しか出来ねぇ毎日だけど……)


 だからこそ、違う選択をしたい。

例え無謀な行為だとしても、この期に及んで無神経でいては、いつになっても優しい人間にはなれない。そう気づいている。


「チビ! いねぇか!? 探しに着てやったぞ! 出て来い!」


 襲撃覚悟で声を上げれば、壁が再び動き出す。

沸騰した湯に気泡が浮かび上がる様に、ブクブクと壁が盛り上がる。


「今度は何だよ!?」


 壁が成長した時とは様子が違う。

膨れ上がった気泡は徐々に緩やかな輪郭を成し、その正体を明かす。



(ひ、人!?)



 壁に人が埋め込まれていたとでも言うのか、醜態がモゾモゾと姿を現す。



「壁から化けモンが産まれてきやがった!!」



 壁からは あの黄泉醜女と八雷神が続々と湧き出し、天井から産まれる様に、ボトリボトリと落ちて来る。



「全体が化けモンで出来てる何て聞いてねぇぞ!!」



 国生の言った通り、1度 乱してしまった闇空間は醜態の巣窟。

何処かに先へ進む突破口は無いものか、斡真は携帯電話を握り、ライトを隈なく当てる。

然し、肩を寄せ合って斡真を追い詰める黄泉醜女に隙間は無い。

ライトに浮かび上がるおぞましい形相を確認するばかりだ。



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