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ヤツガレの所望。  作者: 坂戸樹水
11/57


「――行きは良いが、帰りは怖い」

「歌って誤魔化そうって!? もう我慢ならねぇ!!」

「待て、斡真っ、」


 我慢の限界に斡真が国生に詰め寄ろうとすれば、由嗣は肩を掴んで制する。

そして、国生を真っ直ぐに見つめるのだ。


「国生サン!

ココで何が起こってるのか、本当の事を解かるように説明してくれませんか!?

でなきゃ、斡真がアンタを殴る前に、僕がアンタを蹴り飛ばす事になる!」

「ゅ、由嗣、」

「あの中はどうなってるんです!?

作り物にしては手が混んでる……いや、作り物とは思えない!」


 有り得ないだろう非現実的な状況を由嗣が肯定して聞かせれば、国生は伏せていた目を見開く。


「然様、全てが偽り無き事実」

「戻って来られないかと思った、」

「そうであろう。行きは良いのだ。

だが、帰ろうとする者を、ああして飲み込もうとする」

「飲み込む?」

「見てはならぬのだ。決して。

見る事……即ちソレは、黄泉の者を辱める事となる。

故に、立ち入った者を帰さぬよう襲いかかるのだ」

「それが本当だとして、アナタはソレを知ってて僕達をけしかけたんですか!?」

「すまぬな、中谷由嗣。ヤツガレは何としても黒御鬘を取り戻さねばならぬ」


 国生にとって、黒御鬘は大事な物。

然し、知った事では無いのが無関係な斡真達だ。


「テメェで探しに行くって考えはねぇのかよ!?」

「ヤツガレは、あらゆるものの中で最も黄泉に憎まれし者。

そして、ヤツガレこそ、黄泉に囚われてはならぬ者」

「所謂、そこのオッサンと同じか! 危険なトコには行きたくねぇって!?」

「なッ、俺は無闇に動きたくないだけでッ、」

「逃げ遅れ、囚われれば、戻る事は適わん。今のヤツガレには許されぬ事」


 誰が黄泉に囚われようと、国生だけは その身を守らなければならない。

そんな手前勝手な言い草が通じると思っているのか、

国生の言葉が真実か否かは別として、未だ戻らない結乃を探す様に、一同は貫通扉の先に目を向ける。


「結乃チャンは……」

「戻らぬのなら、黄泉に堕ちたのであろう」

「堕ちると、どうなんだよ?」

「窓の外にいた物と同一の物となる」

「!」


 国生が黄泉醜女や八雷神と呼んでいた、醜態の化け物だ。


「ゾンビ、かよ……」

「捕まれば、黄泉の物を屠らされる。黄泉の物を口にすれば時機に ああなる」

「食べなければ……?」

「あるいは」


 助かる可能性はあると言う事だ。ならば、こうしてはいられない。

由嗣が再び2両目に飛び込もうとすれば、国生は呼び止める様に続ける。


「その先は既に異形が目覚め、闊歩する場。

今度は無事に向かう事も出来なければ、戻る事は一層と困難であろう」

「ッ、」

「信じるも信じぬも お主ら次第。

然し、黄泉に囚われれば浄土へ向かうは適わぬ事。

皆には、向かいの道中にてヤツガレの所望を果して貰いたかった」


 行きは無条件に向かう事を許される。

然し、踵を返す行為が異形を目覚めさせる。

向かったならば危険を最小限に抑え、その1度きりで用を果さなければならなかったのだ。



(コイツの言う事を信じるのか、俺は……)



 そもそも、黄泉と浄土の違いが良く解からない。


  浄土と言えば極楽。

一切の迷いを捨て去った清い魂が向かう、所謂、天国と言う次元と捉えれば良いだろうか、

あの おどろおどろしい闇空間と比べれば、どちらに向かいたいかは一目瞭然。


「俺達が死んでるって設定は相変わらずか、」

「でなくば、ヤツガレが お主らと逢うも適わぬ事」


 自分が死んでいるとは思えない。

だが、黄泉とされる この場に留まるのは遠慮したい。


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