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第82話 便利な収納アイテムは貰っておきましょう

 祝詞以外は全員いつもの格好でウェスタの巫女神殿へと向かう。祝詞の制服姿は街中で目立って仕方ないのは良くないと終がマントだけ貸したので祝詞は高校の制服にマントを被ると言う妙な格好になっている。

 そもそも普段の彼方の着物姿と祝詞の巫女装束はどうなんだと終にツッコミを入れたくなったが徒人はそれどころじゃなかった。

 勿論、さっきの感覚のせいだ。

 あとアニエスは周囲を調べると言って家に残った。


『教えてもらった感覚で調べて見ましたが直接徒人に試してみないと判別できないかもしれません』


 トワは執務室の本棚から取り出した本を開いてため息を吐いているのが見えると言うか見させられてるんだろうが。


『試すと言う単語が非常に恐ろしいんですが兎にも角にも分からないと言う事ですね』


『はい。似たような感覚を与える事を出来る方法には心当たりがありますが他は全く。取り敢えず、あの感覚を与えた相手が近くにいるのか敷地外に居たのかを判別できる材料が必要ですね』


 徒人にとって嬉しくない返答が返ってくる。街中は曇で薄暗くても人々は活気づいているがとてもそんな気分にはなれない。


『いつでも仕掛けられると言う事なんでしょうか?』


『わたしが考えてる方法が正しければいつでも殺せる能力を持った上で徒人を試しているのかも』


『試してるとは……何をですか?』


 その問いにトワが押し黙る。


「神蛇さん、遅れてるよ」


 その指摘に徒人は少し遅れていたので慌てて歩くスピードを上げて仲間たちに追いつく。


『徒人を自陣営に引き込めるかどうかではないでしょうか?』


『殺せる方法で人を試して欲しくないな。……トワの事は責めてないから』


『……徒人、後で証明してくれたら信じます。それにわたしも命を掛けましょう』


 心の中で分かったとだけ答えて徒人は仲間たちと歩調を合わせて歩く。トワと話している間にウェスタの巫女神殿の近くまで来ていた。見慣れた建物が目と鼻の先にある。


『徒人、わたしの方でももう少し調べておきます。では』


 トワはそう言って指輪による通信を切った。


「じゃあ、入ってワームポットを受け取って話を聞きましょう」


「話ってお偉いさんのか? 捜査状況なんて教えてくれるのか?」


 祝詞の説明に和樹が疑問を口にする。


「別に全部教えて貰う必要なんかないよ。推理し始める訳じゃないし、必要なのは(わたくし)たちに関係あるかだけ」


「リーダー、割り切ってるな」


 祝詞の態度に彼方はあくびをする。


「じゃあ、貴女は関係もないおっさんの死因でも探るの?」


「当方は頭脳労働は嫌いなんだ。誰か別の人に任せるよ」


 興味なさげな態度に祝詞はこれ以上の話し合いを無駄と思ったのか巫女神殿への階段を上り始めた。徒人たちもそれに続く。

 建物内に入って受付ロビーでカウンターの向こう側にはカルナと手前に居るもう一人はアストル・ブランシュ。神前が亡くなった時に会った尼僧だった。


「こんにちは。すいませんね。お呼び立てして」


「別に構いませんよ。あたくしは暇な方ですから外に呼び出された方が出かける口実になりますので」


 祝詞が頭を下げるのと同時にアストルが頭を下げた。


「挨拶よりも妾はワームポットを早く受け取って貰いたいんだけど、受け取ってもらえないとずっと誰かが受付に居ないといけないから……ちなみに今日の担当は妾ね」


 ようはさっさと受け取って解放してくれと言ってるのと同じだった。


「先にもらっておこう」


 徒人が祝詞に促す。彼女も一々余計な横槍が入るのを好ましいとは思わなかったようだ。


「ありがとう。さすが徒人。察しが良い。ここに居ると本当に息が詰まるのよね。妾、客商売とか向いてないと思うのよ」


「受付業務から解放するから渡して10分でいいから部屋を貸して」


 カルナの愚痴に祝詞は言うだけ言って続きを喋られなかった。10分って通じてるんだろうかとも思ったがツッコミを入れて話をあらぬ方向にやるのは望むところではないので黙っておく。


「はいはい。引き下がるついでに案内するよ。受け取ったらその紙にサインしておいて。あ、貴方たちも文字でいいからね。どうせ、魔法で翻訳して読むから」


 祝詞の顔と態度は見知っているのかカルナは受付の向こうに置いていた袋を受付の机の上に置いて4つ取り出した。終のと同じで一見しただけなら大口を開けている麻袋のようにしか見えない。


「これがワームポット?」


 祝詞はそのうちの1つを受け取って腰のベルトに麻袋の紐を巻きつけた。


「そうだよ。4人がそれぞれ受け取ったらこの紙の下に名前を書いて。あと何か入れて取り出してみて確かめてね。不良品でしたとか言われたら困るから」


 カルナの説明に祝詞は自分のハンカチを麻袋に入れてみた。そして麻袋に手を突っ込んで取り出してみせる。


「慣れるまで変な感覚ね。さっさと受け取りましょう」


 背を向けて受け取りのサインを祝詞に促されて徒人を含めた残り3人は黙って受け取って麻袋を確かめた後、紙にサインした。


「じゃあ、こっちだよ」


 やっと肩の荷が下りたと言いたそうな表情でカルナは椅子から立ち上がって受付から出て徒人たちの前に出た。そのまま、受付の札を終了に変えてから歩き始めた。



 徒人たちとアストルはカルナによって人が居ない部屋に通された。徒人には見覚えがあった。アニエスと一緒にカルナを訪問した時に雑務をこなしていた部屋だった。


「ちゃっちゃっと話し終えてね」


 そういうとカルナは聞きたくないのかドアを閉めて出て行く。アストルは徒人たちから離れて相対する位置に立つ。


「怪しまれるからさっさと済ませましょう」


「まずバルカ様は遠距離から殺された可能性はあります。体には外的要因で傷付けられた痕跡はなく魔法いえ呪術によるものだとしか分かりませんでした。そして死んだ後に鎌のような物で斬られて首を切断されてました」


 祝詞の言葉にアストルは前置きなく要点だけは話し始めた。


「首はあったような気がするけど」


「切断した後に縫い止められていました。操り人形の揶揄でしょうとの見解が出されています」


 祝詞の問いにアストルが返答する。その答えに和樹だけが顔を顰めた。


「そして原因は分かりませんがバルカ様は命が殺され尽くしていました。死神にでも吸い取られたかのように」

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