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第77話 水の回廊

 流れる水と濃密な湿度に囲まれる水の回廊。周囲は流れる水の音と背の高い水草に囲まれていた。その中を鮫としか形容のしようがないモンスターが襲ってきた。

 しかもそいつは後ろからパーティに襲い掛かり、祝詞を狙っている。


「ほらよ!」


 素早く後ろに移った終は地面に両足で線を作りながらも突進の一撃と噛みつきを大剣を盾にして受け止めた。大口を開けていた口に揃ったノコギリ状の刃すら器用に大剣で防いでいる。


「無駄ぁ!」


 振り解くように鮫を大剣で薙ぎ払う。それを好機と捉えた彼方が突撃して長船兼光を一閃。顔の付いている辺りから斬り飛ばす。


「来ます! 水棲(すいせい)系が5です。前と後ろから」


 十塚の言葉に徒人は魔剣に掛かった魔法を掛け直しながら正面へ向き直る。ワニが2体襲ってきた。


「《プラズマコクーン!》」


 持っていた魔剣に掛かっていた魔法が炎から電気に変わる。勢いそのままに徒人は口を大きく開けて襲ってくる左側のワニの鼻面を突いて斬り裂く。魔剣は脳まで達し、左側のワニは絶命した。

 徒人がワニから魔剣を引き抜こうとした瞬間、右のワニが襲いかかってくる。後ろから戻ってきた彼方が疾風の如く右のワニに突進。その口に横から長船兼光を食わさせるように振るう。彼方は勢いを殺さずに口の端から尻尾の先端まで2つに下ろす。

 その様はまるでマグロを下ろすみたいだった。


「大気を覆う闇の力よ。今我が呼びかけし氷の精霊に力を分け与え給え。地獄の凍結を再現せよ。《ヘル・アイシクル・フリーズ!》」


 和樹が闇と氷の複合魔法を唱え終わる。同時に後方に居た3体の半魚人が闇を纏う氷に覆い尽くされて閉じ込められる。そしてその氷はひび割れて中に居た半魚人たち諸共、氷は粉々に砕け散った。

 和樹は上級魔道士(アークウィザード)になってから闇系の魔法を覚えたらしく得意の氷系と組み合わせて使う事が多くなった。ただ、アスタルテから借り受けたサンダーロッドなどのアイテムから生みされた魔法とは組み合わせられないらしい。


「やるな。さすが上級魔道士(アークウィザード)。当方、火力不足か悩むよ」


 彼方は周りを警戒しつつ、ぼやく。徒人は魔剣を一振りしてワニの血を落とす。


「ワニや鮫を一刀両断にしておいてそれを言うのか」


「当方、か弱い女の子なのに」


「どこがだよ」


 わざとらしく首を左右に振ってみせる彼方に徒人はツッコミを入れていた。


「えー酷いな。もっとも賛同したら睨んでたけど」


「睨むのかよ」


 であの2人どう思う。と彼方は小声で聞いてきた。


「そりゃそうだよ。神蛇さん、酷くない?」


 今のところは怪しいとは思わないな。むしろ、フレンドリーだ。と徒人も小声で返す。


「女アピールするなら髪伸ばせばいいじゃないか」


 レオニクスみたいにツンケンとした態度なら最初から怪しいと汲み取れたりもするんだけどね。と彼方が続ける。


「やだよ。こんなところに来たら一々濡れて乾かさないといけないんだよ。面倒過ぎる。伸ばしても肩までのショートだね」


 あれはあからさまでも黄色人種に対する嫌悪もあった気がするけど。と徒人は捕捉する。


「ならかんざしでも着けたらどうだ」


「戦闘中に落としたらそれこそやだよ。神蛇さんが思ってるよりも当方は女の子なんだ」


 確かに。でもフレンドリーなスパイの方がやり辛いよ。当方なら斬って捨てられるけどねと彼方。その言葉は同時に徒人にも刺さる。人の事は言えないか。


「処置なしじゃないか」


「リーダー、そこから離れて!」


 彼方はこっちに反応せずに叫んだ。

 言われた祝詞はかえって硬直してしまった。それを好機と見たのか近くの滝から伸びた赤い触手が伸びて祝詞の胴を締めあげて彼女を持ち上げて連れ去ろうとする。


「滝なのにタコかよ。何でもありだな」


 徒人は祝詞を助ける為に登れる所を探す。


「犯される」


 祝詞は遊び半分、強がり半分で叫ぶ。どっちか判断し辛いからこんな時にネタは止めてくれ。


「漫画の見過ぎです」


 十塚が素早くボウガンを構え、滝の裏に隠れたタコを狙う。狙いを付けたのか引き金を引き、矢は放たれた。

 この場の空気を震わせる叫び声を上げて口に矢を受けた巨大なタコが滝の裏から姿を現す。同時に祝詞が祝詞が触手から投げられてしまう。酷い扱いだなとか一瞬考えてしまったせいで徒人は走りだすのが遅れる。

 このままだと祝詞が滝下に叩きつけられてしまう。

 既に走りだしていた終が落下地点に到達。大剣を川に突き刺して両手で受け止める。

 祝詞は滝に引っ張られたせいで全身びしょ濡れだった。


「これが水も滴るいい女ってやつ?」


「ノーコメントやね」


 祝詞を川に下ろした終が大剣を引き抜いて適当に答える。


「氷の精霊たちよ。今、お前たちの魔手をこの場に現出させよ。《アイシクル・プリズン!》」


 巨大なタコの足が川の水ごと氷の棺に取り込まれた。

 動きを止めたのを見計らい、十塚が第2射を放ち、巨大なタコの目を射抜く。終はその隙を狙って和樹が作った氷の上を乱れる事なく突っ走ってジャンプ。大剣を巨大なタコの頭部に振り下ろして叩き潰す。

 その一撃を受けて真っ二つに引き裂かれて絶命した。辺りの水面はタコから溢れだした墨で真っ黒に染まっていく。終は何かの加護を受けているのか、氷を割る事なく着地。


「かなんな、汚いわ」


 京都弁で罵りつつ、墨に染まった部分を避けて水草の生えた道まで戻ってきた。


「素材はどないする?」


「墨が流れてから回収したらいいでしょう」


 アニエスが淡々と返した。

 彼方が手を叩いた。


「思ったんだけどさ、ここでブーツ履いてると水虫にならないかな。当方、さすがに水虫は嫌なんだけど」


「え? 今頃そんな事を言うの?」


 全身ずぶ濡れで髪や服を絞りってる祝詞が呆れていた。


【神蛇徒人は剣騎士の職業熟練度クラスレベルは110になりました。魔剣士の職業熟練度クラスレベルは357になりました】

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