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第76話 新たなる仲間

 おいおい。ただでさえレオニクスの穴を埋める人材を探さないと行けないのに冗談きついぞ。土門の脱退宣言は荒れると思われた。


『冗談きついね。せめて代わりの前衛と盗賊さん見つけるまで待ってくれないかな』


 徒人が反対する前に彼方が口を挟んだ。そしてキリと妥協点も着けて。彼方の奴は馬鹿で無鉄砲の振りをしてるだけなのかもしれない。


『土門、最長で1ヶ月待ってもらえるかな。その間に代わりを見つけるわ』


 祝詞の言葉でその場は収まったのを徒人は思い返す。

 あれから1ヶ月。岳屋弥勒を倒した功績をユリウスや元老院に認められたが総合ランキングは8位から変わらなかった。思うにこのランキング上位に勇者が潜んでいるのなら祝詞のパーティが上位に食い込めないのも無理はない。

 そんな焦りを感じつつ、土門が離脱する約束の日がきた。そして熊越と合流する彼を見送った後で新たなる仲間を訓練所へと迎えに行った。

 転移陣のある部屋の前で約束の2人は徒人たちを待っていた。

 目の前に立ってるのは2人の女性。1人は長身でコバルトブルーの長髪でカナリアイエローの瞳で全身鎧を着た美女。獲物である大剣を大地に突き立てるようにして置いている。もう1人は栗色のショートカットでオレンジ色の瞳。軽装に褐色で手足が長い女性。モデルみたいで格好いいと評価しても遜色ないと言える。


「うちは剣峰終(ツルギミネツイ)職業(クラス)は初級が戦士から始まって中級は騎士へ行って今はパラディンをやってる。前のパーティとは反りが合わなくてな別れてもうたんよ。出来れば長い事よろしくな」


 長身の美女はヘラヘラとした軽い感じの本物の関西弁かよく分からない言葉で自己紹介した。


「盾役と言うか抑え役を頼んだのですが見た感じ盾を持ってないようですが」


 祝詞は顔には出さないが違うの着ちゃったと言わんがばかりの態度を取っている。


「隊長さん、心配しなくてもええよ。うちの盾はこの大剣。攻防一体なんよ。うちらの実力を見る為にここの水の回廊を選んだんやろう? 納得するまで見せてあげるけど、ここやと敵が弱くない? 魔骨宮殿の上層階でもええし」


 斬るよりも叩き潰すを体現した大剣を見せながら終は気にした様子もなく笑う。大人の女性の余裕なのだろうか、それともこの世界で生き残ってきた者が持つ図太さなのだろうか。


「リーダーがピリピリしててすまない。普段はこうじゃないんだが」


「別にええよ。隊長さんのパーティは人数4人しか居らんみたいやし、使えないのが来たら命の危機に直結するしねぇ。責任感ないヘラヘラとした隊長よりもええと思うよ。うちだって後衛職だったらパッと見た感じで前衛を判断してしまうもの。それにうちは大人の女やからこのくらいは平気や」


 和樹の謝罪に終はええよ、ええよと返している。年と言うか来た年代がバレてから和樹は副リーダーとして宥め役に回ってくれてるのがありがたい。

 だが祝詞はいつにも増して機嫌が悪い。


「それ、関西弁ですか?」


 徒人は流れを変える為に聞いてみた。


「いいや。うちは京都の生まれや。そやから京都弁やな。関西に居った頃は変やとかよく言われてもうたけどな。学校出てからは東京で適当にOLやってたんやけど、こっちに呼び出されてしまってな、それ以来、自分を忘れん為に使ってるんよ。自分のルーツを忘れたらどこへ帰るかどこに向かうかも分からんようになるやろ」


 なんか最も過ぎる答えが返ってきてしまった。しまった。空気が変わらない。


「……剣峰さんは刀を使ってたことある?」


 彼方は何かを感じ取ったのか、獲物について聞く。


「初期職で戦士だった頃は使ってたよ。高校の時に剣道部だったからね。でもイマイチ合わなくて薙刀とか使ってみたんだけど最終的にこれにしたの」


 終は自分の相棒である大剣を誇らしげに見せる。


「なるほど。どうして大剣に?」


「モンスターバウンドと言う狩りゲーで使ってたのが大剣だったのよ。使ってみたら抜群の相性だっただけだよ」


 彼方と視線が合う。彼女は首を横に振った。


「あれか。小生はランス使ってました。でもここでは魔盗ですけど……申し遅れました。小生は十塚里見(トヅカサトミ)と言います」


 それまで黙っていた栗色のショートカットでオレンジ色の瞳。軽装褐色で手足が長い女性が、十塚が口を挟んだ。


「やった事あるんだ? やった事があるのはGシリーズ? 2015年からだよね?」


「はい。同じ年から来た人を初めてです」


 終と十塚が握手して喜び合う。その来た年代を聞きながら徒人も含めて4人は微妙な表情になる。やはりここでも時間のズレが──


「えーとみんなはその話は初めてやったん?」


「いえ、最近知りました。だからイマイチ慣れなくて」


 和樹が取り繕ってくれるが祝詞は仏頂面でイマイチ反応が薄い。2人の反応を探っているのかもしれない。


「そうだよね。それを知ったらちょっとショックだよね」


 十塚は握手していた手を離してこっちへと向き直る。


「いや気にしないでくれ」


 徒人がフォローを入れておく。あれから、召喚時期のズレを事実を知ってから一ヶ月経っているのだから引きずっても仕方ない。


「改めて自己紹介するね。小生は十塚里見(トヅカサトミ)と言います。職業(クラス)は盗賊から始まって怪盗行って今は魔盗。戦闘は得意じゃないけど斥候とかは他は得意だからお任せを」


 手の長い十塚が徒人たちに向かって手を振る。


「一応、うちらは自己紹介が終わったけど貴方たちもお願いできるかな」


 終の言葉に祝詞から和樹に彼方。そして徒人が簡単に自己紹介した。アニエスはメイドで観測員とだけ名乗ってそれ以外は一言も発しない。

 徒人はずっと様子を見ていたが2人に怪しい仕草はない。勿論、あったら困るが。


「じゃあ、隊長さん、水の回廊でいいのなら命令してよ。早くうちの実力見て欲しいから」


 祝詞は終に促されて転移陣へと歩き出した。

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