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第50話 神前早希を調べろ

 朝から彼方の声がするので徒人は瞼を擦りながら起きた。窓から日も差し込んで居ないのでまだ夜が明けきってないのは分かった。もう少し寝ていたのだが掛け布団を蹴り飛ばして起き上がる。浴衣を直して部屋を出て階段を降りて玄関に顔を出す。

 そこには既に身支度を終えていつもの格好の彼方と浴衣姿の和樹とメイド姿だがエプロンを付けてないアニエスが居た。


「朝からなんだよ。彼方が朝早いのは知ってるが勘弁してくれ」


 徒人が抗議の声を上げるが三人の視線は冷たい。非常事態らしい。


「ご主人様、笑えない事態です。これを見て下さい」


「矢文ですよ。当方、まさか異世界に来てまでこんな物を目にするとは思いませんでした」


 終始冷静なアニエスと興奮している彼方が対照的で和樹は浴衣姿でまだ寝ぼけていた。


「また古風な……でなんて書いてあるか読んだのか?」


「これからですよ。ほら、師匠様、ちゃんと起きて下さい」


 アニエスは和樹の肩を揺さぶって起こそうと試みるが二言三言喋るのだが寝ぼけていて起きてこない。


「先に読もうぜ。後から伝えたら良いだろう」


「いえ、手紙に罠があっても困りますので師匠様に解除してもらうかと」


「すまん。なら和樹は水でも掛けるか。風呂場に突き落とすかした方がいいのか」


 その意見にアニエスが冷たい視線を徒人に向ける。


「ご主人様、さすがにそれはどうかと思いますが、仮にご主人様が起きなかったらそうなさった方が良いですか?」


 機嫌が悪いのか朝からアニエスの反応は本当に冷たい。


「ごめんなさい。普通に起こして下さい」


 徒人の脇を白い腕が伸びてきて慌てて逃げる。だがその白い腕は和樹の額に触れた。


「《アラート・クロック!》」


 祝詞の声が廊下に響き、和樹が目を醒ます。


「スッキリした。でも眠いんだけど」


「無理やり起こしただけだから後でちゃんと寝るのよ。あくまでも睡眠魔法に対する抵抗だからね。徒人君に刀谷さん、おはよう」


 いつもの通りに巫女装束を着た祝詞が笑いかける。昨日の夜の件があるから余り素直に反応できない。


「おはよう」


「おはようございます。それより、解除を……今やってるのか」


 彼方が催促しようとしたら既に和樹は簡単に解除し終えていた。そしてアニエスに支えられている。本当に朝が弱いのか既に寝ていた。


「寝かせておいてあげようか。取り敢えず、それ読んでみてよ」


 祝詞が矢文を持っていたアニエスに頼むがそれを横から彼方が奪って開封する。


「読むね。『神前早希が勇者になって知った事と色街が会っていた貴族を調べろ。そこに今回の遠因がある』この一文しか乗ってない」


 彼方が読んでいた矢文を覗き込むと見た事のない文字しか書いてない。だがそれでも徒人にも分かるのだから習得してる[異世界言語3]のスキルのお陰なんだろうが。


「……タレコミか。でも何の為に、ミスリードか?」


「少なくとも帝國に叛意を持って欲しいんじゃないかな。勇者関連でのトラブルみたいだし、取り敢えず、神前早希関連で生きてる人に話を聞くしかないね」


「場所なら知ってるぞ。オレが案内する。日が昇ってからでいいか」


 徒人と祝詞が話していると土門が口を挟んできた。


「それでいいよ。冬堂君を寝かせないと、でも彼は夜が早かったと思うんだけど」


 祝詞が和樹を支えてるアニエスを見る。


「申し訳ございません。師匠様に自分が色んな話を頼んで夜更かしさせてしまったので」


「……違う意味での話じゃないよな?」


 アニエスに対しては興味はないがさすがにそこは気になるので徒人は聞いてみた。


「ご主人様、いい加減にしないと怒りますよ」


「アニエス、本当にごめんなさい。心から謝ります」


 アニエスの人を殺せそうな視線に徒人はすぐに謝る。実力で考えれば向こうが圧倒的に上だったのを忘れていた。それに変に突っついてトワさんが覗きに来たらとんでもない誤解を受ける。それだけは死んでも避けたい。

 彼女が手段を選ばないヤンデレなのはこれまでの経験で思い知ってるので他人を巻き込むのは避けたい。勝手に巻き込まれにきた祝詞の心境は分からないが──


「取り敢えず、一眠りしてきて。守りはアニエスさんが起きてたらなんとかなるよね?」


「そうですね。自分が起きてたら問題ありませんね。この家にも結界が張ってありますし、この区域は見回りが厳重ですから」


 祝詞の確認にアニエスが同意する。


「飛んできた矢は危害を加える気が無かったから結界が反応しなかった?」


「はい。基本的に害意や敵意がない行動に損害がない行為には反応しませんから」


 彼方の問いにアニエスは寝息を立てている和樹を運びながら答えた。土門もそれに手を貸し、反対側から和樹を支える。


「なら安心ね。もう一眠りしましょう」


 祝詞の言葉にその場は解散となった。

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