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第46話 リターン・マッチ

 次の日、案の定、盗賊団の討伐命令が下された。祝詞パーティが請け負ったのは港町ジュノーに近い教会跡だった。

 盗賊や獣系のモンスターを蹴散らして最下層まで難なく降りてきた。見たところ、最深部の奥の部屋は祭壇のようになっている。ここまで構造から疎い徒人にもレンガ造りで金が掛かっていたのは分かった。


「ここはハズレじゃないのか?」


「宝も何もないから骨折り損のくたびれ儲けだな」


 光量源である光球で辺りを照らしながらぼやく和樹にレオニクスが冷たい言葉を返す。

「調べた所、この教会は結構昔に建てられた建造物でそれなりに信者が集まってきていたらしい。帝國に追い出されるまでは」


 土門が辺りを警戒する。


「追い出された理由は?」


「同性愛の禁止だそうだ」


 彼方の問いにはレオニクスが答えた。徒人と和樹と土門が黙りこむ。ラティウム帝國で同性愛を禁止を訴えるのは無謀としか形容しようがない。それは最近に来たばかりの徒人でも分かる。


「別に禁止してもらって構わないな。と言うか禁止してくれ」


「だな」


「異議なし」


 徒人の独り言に和樹と土門が頷く。


「やめとけ。気持ちは分かるが公の場で言ったら問題発言だ」


 レオニクスが警告するように口を挟む。


「お客さんか」


 アニエスとレオニクスはとっくに気付いているとは思ったが徒人は祭壇の左奥を見る。現れたのは仮面の男。やはりその腰には双剣が、一対の小剣がぶら下げられていた。


「神蛇さん、土門さん、こいつは当方が1対1で相手する。みんなは白咲さんを守って」


 彼方が鞘から長船兼光を抜き放ちながら前へ出る。こうなったら止められないと感じているのか誰も口を開かなかった。


「大丈夫なのか?」


「大丈夫。一度見た技なら対処できる。カラクリが分からなくともね」


 背を向けたまま、彼方が言った。


「愚か者が……貴様に用はない!」


「じゃあ、当方を殺してから神蛇さんに相手してもらうんだね。当方も神蛇さんの事が結構気に入ってるんだよ。あくまで仲間としてだけど」


 怒る仮面の男に対して彼方は敷き詰められたレンガを踏みしめながらゆっくりと歩み寄る。


「ならば貴様から死ね!」


 徒人は口調に微妙な違和感を覚えた。だがその違和感を打ち消すように仮面の男が一対の小剣を抜き放ち彼方へと襲い掛かった。

 この間とは違い、彼方は何かを待っているようで一対の小剣を捌きながら積極的には攻めていかない。その顔はこの前と違って余裕に満ちていた。


「おちょくってるのか?」


「悪いけど当方はその方言が分からない稀人(まれびと)さん」


 仮面の男は更に怒って左右の小剣で嵐のような斬撃を叩き込むがその全てを彼方は長船兼光だけで防ぎきる。


「あの時の再現にならないか不安なんだが」


「さすがに無策じゃないだろう。信じるしかない」


 和樹の声に徒人は前を向いたまま答える。彼方が何を考えてるのか分からないが奴の一挙一動を逃さずに覚えようと努めるが違和感の方が気になってイマイチ集中できない。両者ともかなりの速度で動いているのでその違和感を確定できない。


「逃げまわるだけなのか?」


「そうかもね」


 仮面の言葉に彼方は笑い声を漏らして返すだけで挑発には乗らない。徒人には本当に何かを待っているようにしか思えない。

 仮面の男が仕掛けようとした瞬間、彼方はその場に屈んで足払いする。予想外の事態に仮面の男はバランスを崩す。彼方がその隙を見逃す訳もなく攻守が逆転する。だが徒人の脳裏にはこの間の戦いの結末がチラついて離れない。


「有利と言えるのかな」


 祝詞が呟くがその手にした弓では下手に介入すれば彼方に当ってしまう。


「ほら有利だぞ。くるがいい」


「そうだね。そろそろ茶番は終わりにしようか」


 彼方はその煽りに冷たく答える。


「おい! 止せ!」


 和樹が叫ぶ。徒人は彼方を信じて黙って見守る。だがいつでも鞘から魔剣を抜けるように準備をする。


「飛燕三連星!」


 彼方の声と同時に左上からの袈裟斬り、右下からの斬り上げ、右上からの振り下ろしの三連撃が仮面の男に迫る。だが再び仮面の男の姿は消える。

 そして後ろに現れた仮面の男はあの時を再現するかのように左の小剣が彼女の喉に迫った。そして血が宙に舞った。

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