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第25話 魔骨宮殿

 次の日、許可を貰ってリーダーである祝詞は早速魔骨宮殿で向かうと言い出したので徒人が提案するまでもなかった。魔骨宮殿を外から眺めてみるがポツンと荒野に佇むそれはその名の通り薄気味悪い赤と白で形成された外装は血管と骨を連想させる。

 最初に見た時はこの建物生きてるんじゃないかと思わずには居られないほどだった。正直、本当に趣味が悪い。そして建物の上の方では翼竜(ワイバーン)らしき物体が鷹のように飛行している。

 アニエスの説明によるとあれがヘルワイバーンでゾンビ化した翼竜(ワイバーン)らしい。そして魔骨宮殿の外で戦闘しているとたまに襲いかかってくるので戦闘を長引かせたり、大ぴらに目立って行動するのは厳禁らしい。

 今はコソコソと隠れながら魔骨宮殿の入り口へと向かっている。


「怒られてしまいましたね」


 彼方が呟く。

 一度、魔骨宮殿へやってきて祝詞がアンデッドを浄化しまくって中級職の正巫女になったまでは良かったのだがあまりにアンデッドを浄化しすぎた為に他の稀人(まれびと)にチクられてユリウスに呼び出され注意を受けたのだった。

 幸い彼の説明不足を理由に注意だけで済んだが──


「ここが北の大陸の侵略を食い止める拠点になってるとか知らないわよ。巫女としてはアンデッドを見たら成仏して欲しいと思うでしょう」


「それは坊主じゃないかな」


 愚痴る祝詞にツッコミを入れたのはアスタルテからファイアーロッドとウインドロッドを借り受けた和樹だった。アンデッドに有効なのは燃やせる炎とスケルトンに衝撃を与える雷か風。どれも彼の覚えてない魔法系等である。注意を受けた時に彼女が状況を察して貸してくれたのだ。


「そのロッドのお陰で手持ち無沙汰にならなくて済んだな」


「でも1日30銀貨とか高い気がするんだけどな。氷以外覚えたいけど俺は才能ないんだよ」


 溢す和樹を宥めているが徒人も剣撃が通じにくい相手である以上、人の事は言えない。剣魔法がなければ役立たずだったかもしれない。どこが初心者向けなんだろうかと思わなくもない。


「雑談は魔骨宮殿の中に入ってからに」


 祝詞に怒られてしまった。仕方ないので中に入るまでは黙っている。


「本当に気持ち悪いところだな」


 土門が魔骨宮殿内部の茶色くくすんだ壁を見ながら呟く。その茶色はまるでミイラ化した遺体のような色をしている。彼方は黙って周囲を警戒している。当然、その胴太貫にはウインドコクーンの魔法を掛けておいた。


「さて、どこに行きますか?」


 アニエスは地図を広げながら呟く。当然、勇者の資料がある所に行きたいのだがそんな事は言い出せない。


「ヤバイ所は避けようぜ。俺は上層階へ行くのは御免だからな」


 レオニクスが頭を振りながら拒否する。


「ヘルワイバーンやデュラハンロードにヴァンパイアが守ってるらしいけど具体的は上層階には何があるんだ?」


「……北の魔王の体があるそうです。この大陸で人間魔族含めた美の基準で並ぶほどがない美しさを誇るとの話だそうで。自分も見たことはないし、上級特殊兵や他の国にいる冒険者たちもそれを確認できた人間は居ないそうですで詳しい事は不明です」


「体? 魂とか精神は抜けた状態なのか?」


 この大陸に来た時に体だけ置いて行ったとかトワが言ってたのを徒人は思い出した。


「人間との覇権争いに疲れたとか異世界へ人類を全滅させる武器を探しに行ったとか言われていますが詳細は不明です」


 アニエスが真面目な表情で説明する。北の魔王と会った事があるのかと聞いてみたいが覗き込んだ地図には上層部への階段の途中までしか書かれていなかった。


「取り敢えず、敵が大した事なさそうで何かありそうな箇所を探ってみた方が楽かも」


「ここはクソ馬鹿冒険者共の来る場所だぜ。何も残ってはいないと思うが」


 夢も希望もないレオニクスの反論に祝詞が眉を歪める。


「取り敢えず、居住エリアに行ってみましょう。少しは何かが残っているかもしれません」


 アニエスが提案したのを祝詞が頷いて受け入れる。ナイス。これで勇者の資料が調べられるかもしれない。


「じゃあ、決まったなら行こうよ。こんな薄気味悪い光景見ていたくない」


 見張りをしていた彼方がぼやくように言った。こんなホラー映画に出てきそうな宮殿には居たくないのはよく分かる。素人にさえ分かる建築的な美的センスさえ伺わせる黒鷺城と違って本当に悪趣味としか言いようがない。


「どうしてこんなに陰険で悪趣味なんだ?」


「聞いた話によりますと北の魔王は容姿こそ神すらも凌ぐ美貌を誇っているようですがそのセンスが致命的に最悪と言われているそうです。特に体を形成する物に美を覚えたと……それで内装をこのように作り上げたらしいとの事」


「天は二物を与えず、か。いくら美人でもそんなのと相対したくない。人型の機械みたいなんだろうな。いや機械よりも気持ち悪そう」


 アニエスの返答に祝詞は肩を震わせた。

 そんな愚痴を聞きつつ、アニエスの示した方向へレオニクスを先頭に歩きだした。


「二刀流でなんとかしますか」


 和樹がファイアーロッドとウインドロッドを両手に構える。


「宮本武蔵じゃないんだからさ」


 彼方が1人でウケている。後ろからはアニエスがロッド二刀流格好いいなどとほざいていた。


【神蛇徒人は盗賊剣士の職業熟練度(クラスレベル)が9になりました。[気配察知1]は2にレベルアップしました。[罠感知1]を習得しました】

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