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第18話 犠牲者

アニエス以外の女性陣はスカートを履いていなかったので降りる順番は揉めなかったのだが彼女が降りてくる際の方が面倒だった気がした。

徒人はアニエスが降りてくる間に地下水道を確かめる。光ゴケなのか思ったよりも暗くはなかったが予想よりかなり広い通路にはやはり焦げ跡が残っている。あと地下水道にしては内部は妙に暑かった。


「あ、この辺りは火山が活発なのか。だから炎の妖精が集まってくるわけか」


 土門が妙に張り切って喋っていた。


「詳しいのか」


「建築や火山に興味があってね。その延長線だよ。しかし、こんなに広ければ地図でもないと迷うかも」


 土門は懸念を口にした。今いる通路ですら横に8人は並んで歩けるだろう。


「地図ならありますよ。今居るのはB3Fの東側ですね」


「アニエス有能」


「さすが我が弟子」


「ありがとうございます。アニエスは有能ですから」


 徒人と和樹が褒めるがアニエスは珍しく礼だけ言って何処からともなく就学旅行の冊子みたいな地図を広げる。ただし、その様が中二病っぽく見えなくもないが。


「炎の妖精だから温度が一番高い場所に居そうだけど」


「なら、温泉が湧いてる辺りですかね。今ここで温泉があるのはこの辺りです」


 彼方の案にアニエスは二枚めくって五枚目の地図を広げる。一区画に大きな広場らしき場所があってそこを指差す。


「妙に精巧な地図なのね。そこから温水を汲み上げたりしてるの?」


「はい。汲み上げているパイプが公衆大浴場へ繋がっています」


 祝詞の疑問にアニエスがサラリと重要な事を言い放つ。


「おいおい。それって壊したらマズイんじゃないか?」


「だからこその討伐依頼ですよ、ご主人様」


 身も蓋もない事を言われてしまった。


「つまり、施設を破壊しないように炎の妖精を討伐しないといけない訳か」


 何故か彼方が徒人と和樹を見た。壊す確率が高いと思っているのだろうか。


「むしろ、俺らよりも彼方の方が壊しそうだけどね」


「揉め事は帰ってからね。全員施設を壊さないように注意すること。じゃあ、先を急ごう」


 喧嘩しそうな空気になりかけた途端、祝詞が遮った。そして、徒人たちは温泉が湧いている区画へと移動し始めた。


「刀谷、言い忘れてたけど、剣魔法は他人の武器にも掛けられるみたいだから炎の妖精が出たら先に突っ込むなよ」


 徒人は彼方に助言する。


「じゃあ、面倒だから今掛けてよ」


「俺が今使えるのは準備中に掛けられないんだ。継続時間が短いから……準備中に掛けられる魔法はまだ覚えてない。それに炎の妖精を斬って刀が歪んだら嫌だろう?」


 徒人は少し考えてそう言った。こう言えば彼方も無闇に突っ込んだりしない筈。


「それは超嫌だ。突撃はちょっと我慢するから最初に掛けて」


「了解」


 なんか扱い方が分かってきた事を少し喜ぶ反面、いつか裏切らないといけない事を思うと徒人は寂しく感じた。



 幾度か戦闘を得て地下ネズミや地下Ḡなどと言ったモンスターを倒しながら進んでいた。B4Fの通路で徒人は早速覚えた剣魔法を、彼方の刀にアイスコクーンの魔法を掛ける。


「これで氷で刀が守られてるから炎で歪んだり溶けたりしないしない」


 彼方が正面を向いたままで通路の奥を見据えてる。抜き放った同田貫は青い魔力を帯びて何かを待ち構えていた。徒人にもそれで気が付く。誰かがこっちに来る。魔法を掛けるのに集中していたせいで周囲への警戒が疎かになっていた。

 足を引きずってる者が複数、誰かに肩を借りている人物が見えた。向こうもこっちに気が付いたみたいで歩みを止めて武器を向ける。


「お前たちも俺たちを狩るつもりなのか」


 相手はいきなり喧嘩腰だった。しかも僧侶らしき茶髪の少年が気を失い、全員浅くはない傷を負っている。見た感じ、一番酷いのは僧侶の少年で胸元の傷を包帯で止血しているものの血が滲んで包帯の白い部分を徐々に赤へと変えていっている。


「あんたたちを倒すことにメリットなんかない。デメリットはあるが……誰かに闇討ちされたみたいだがそいつの情報をくれたら──」


「その僧侶君を回復してあげてもいいわ。迷うのも襲いかかって来るのも勝手だけどそんな事をしてたら彼の治療は間に合わないと思うけど」


 徒人の提案を祝詞が引き継いだ。命預かってる回復系が脅していいのかよと思わなくもないがここは黙ってみている。


「……分かった。武装を解除する。情報も話す。だから頼む」


 戦士らしき少年が剣を収めている鞘をコンクリの床の上に置く。


「いいのかよ!」


「リーダーを助ける為には他に選択肢がない。戦えば確実に殺される」


 その一言に反論してた狩人らしき少年が押し黙る。正しい判断だろう。降伏したふりで襲ってくる可能性はあるが。

 向こうのパーティが武装を解除したのを見てから祝詞が呟く。


「レオニクスさん、彼を受け取って下さい」


 彼を選んだのは体格ががっしりしていて一番不測の事態に備えられるからだと判断したからだろう。

 レオニクスは何事もなく少年僧侶を運んできた。


「みんなで尋問と見張りをお願い」


 祝詞は少年僧侶を脱がせながら指示を出す。チラッと見えたが相当酷い火傷も同時に負っていた。思った以上に酷いわねと祝詞が愚痴っている。


「早速聞かせてもらうけどどういう状況で誰に襲われたんだ?」


 徒人は先頭に出て問う。勿論、何かあった時に邪魔にならない右側に立っている。


「俺らがB5Fの広間に炎の妖精の親玉を追い詰めた時、横槍が入った。襲ってきたのは炎の妖精だがけしかけたのは色街だと思う」


修道僧(モンク)でギャルみたいな格好した奴か」


 パーティを組む時に早希に断られていた少女だ。


「そうだ。間違いない。雑魚妖精も倒してもう少しだったのに」


 アニエスと同じく監視役らしき執事に肩を化している盗賊の男性が悔しげに愚痴る。監視員は気を失ってるだけのようだ。


「あいつら熊越(くまこし)のチームを狙ってる」


「熊越?」


「神前のチームのリーダーが熊越だ。ほら、おっとり僧侶でタレ目の女。あいつら、神前と女魔術師が成長チート持ってるから職業熟練度(クラスレベル)が上がるの早いんだよ。チートが羨ましいぜ」


 徒人は1位のチームが誰だったのかようやく合点がいった。


「あんたらはランキングで何位だったんだ?」


「寝ずに戦って2位だよ。慌ててくるんじゃなかった」


 何気に聞いたら彼らはすんなりと答えてくれた。

 徒人は周囲が暑くなってきている事に気付く。


「炎の妖精が来てる?」


「治したわよ。貴方たちは急いで離れなさい」


 祝詞の言葉に武器を慌てて拾って彼らは逃げ出した。そして熱源が近付いてくる。徒人はロングソードを抜き放った。その刃は予め掛けていたアイスコクーンのお陰で青い光を宿している


【神蛇徒人は錬金剣士の職業熟練度(クラスレベル)が9になりました。[デュアル]を習得しました。[知識欲3]と[成長促進3] が4にレベルアップしました】


[デュアル] 効果 現代就いてる職と任意の職に経験値を習得できるスキル。

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