表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/368

第16話 炎の妖精の討伐

 仲間たちの勘ぐりをなんとか誤魔化して休日を乗り切った徒人は次の日の朝にパーティ全員と兵舎のロビーに張り出されたランキングを見つめていた。これは自分たちの召喚された回の稀人(まれびと)たちのチームランキングだ。

 ランキングは職業熟練度(クラスレベル)の合計や討伐したモンスターの素材など総合的に判断するらしい。他の回の稀人(まれびと)たちのランキングも貼り出されているが元々12チーム居ないのか12チームに満たない回や間が飛んでる回などがあった。

 最悪、稀人(まれびと)たちが全滅したのだろうと徒人は考えるが騒ぐ仲間たちの声で思考は遮られた。


「5位ですね」


「5位だな」


 そんな仲間たちとは対照的に土門はただ黙って見ている。

 自分が居ながら上位じゃない事に徒人は多少驚いていた。他に成長速度系のスキルを持った人物が居るのだろうか。トップになって目立ちまくるのは避けたいところだが微妙に自尊心を刺激されるのが困ったところだ。

 ちなみに1位はリーダーの名前だけ書いてあったが徒人には誰かは分からない。


「そりゃ寝ずに順位を上げてるのが居るんだからそうなるさ」


 レオニクスが呆れた態度を取っている。先に召喚された稀人(まれびと)で元は他のパーティだった補充要員なので距離を置いた発言をしている。もっとも年が離れているせいもあるだろうが──徒人はそんな感慨を抱いていた。


「寝ずにか……命知らずね」


 祝詞はつまらなそうに呟いた。


「無理させる気はないと」


 徒人が質問してみる。こき使われないのはありがたいが手を抜きすぎて最下位も困るからだ。


「取り敢えず死なない程度に頑張って足固めをする方が先だと思うけどね。ただ装備を整えたらちょっと割の良いのと戦ってみようか。出来るならトップ3には入って維持して居たい、最低もう1つくらい上げていつでもトップ3を狙える4位くらいには付けておきたいかな」


「なるほど」


 祝詞の提案にトップ4ならある程度充足感も得られるだろうしそんなに目立たなくて済むかもしれない。


「ならあれでも受けたら良いんじゃないか?」


 やる気のなさそうなレオニクスが人差し指で掲示板の張り紙を示す。そこには炎を纏った妖精みたいな絵が描かれていた。近付いて文章を読むと炎の妖精討伐者求むなどと書かれていた。

 最近、暴れ出した妖精で新市街地を荒らしてるなどと説明されている。


「討伐されたチームの貢献としてランキングに反映されます」


 和樹が張り紙の一部分を読み上げた。


「近くの受付担当者に名乗り出て観測員と共に討伐に向かわれたし」


 彼方も音読して読み上げる。


「取り敢えず受けて炎の妖精とやらの顔を拝んでみるかな」


「だが当然他の連中も同じ事を考えてると思うぜ。下手したら取り合いになるかもな……いや取り合いじゃなくて殺り合いにならなきゃいいがな」


 レオニクスの言葉には含みがあった。直接、稀人(まれびと)同士の喧嘩が御法度なら殺し合いがどうなるかは想像が付きそうだが──とは言え、勇者を殺さなければならない徒人には避けられない話ではある。

 徒人は歯抜けになっているランキング表に視線を移す。


「神蛇、気付いたのか。そうだよ。討伐の間に別のチームの連中を狙ったりするチームが居るのさ。そこのランキングで空白の回があるのは同士討ちやチームの争いで全滅した連中がいるのさ。ちなみにお前たちが呼ばれる3つ前の連中は全滅した。学生とか言ってた子供たちだったがチーム同士の争いで疑心暗鬼に陥って最後には同士討ちさ」


 近寄ってきたレオニクスがけだるそうに語る。だがその言葉には何処か不穏な空気が混じっているように思えた。彼がお助け要員的に別の回に送られるのならば仲間の死を経験していて当然なんだろうが哀愁や仲間を失った怒りとは別の物を感じる。


「学生? 今回みたいな召喚の仕方ではなく?」


「その中の1人がクラス召喚とか言ってたそうだぜ」


 祝詞の問いにレオニクスが言葉を返す。


「クラス召喚あったのか? しかし内ゲバで崩壊って笑えないよ」


 和樹が肩を竦める。


「クラス召喚と言うけど、平時のいがみ合いがあろうとそんなに簡単に全滅するもんなのかね」


「と言うと」


「誰かに仕組まれた。と考える説は? 誰かがいがみ合うように仕向けたとかなら話は変わってくるだろう?」


 徒人は祝詞の疑問につい答えてしまった。スパイがスパイの可能性を示唆してどうする。己の間抜けさに頭を抱えたくなった。


「スパイが稀人(まれびと)の中に居ようと居まいと祝詞は受けるんでしょ? なら受けよう。戦ってみて駄目なら逃げたらいい」


「まあね。装備を更新してから受けに行こうと思ってる。みんなはそれでいいかな」


 彼方の指摘に祝詞は答えを出して採決をとる。黙っていた土門も賛成側に回り結局誰も反対しなかった。


「聞くまでもない話だったか。新しい装備を買いに行こう」


 祝詞の一言で早速装備を買いに武具屋へ向こう事となった。

 徒人はロングソードと背当てに胸当てと小手。彼方に新しい刀である同田貫(どうだぬき)、胴丸に鉢金とブーツ。祝詞と和樹は魔力を高める石の着いたグローブ。祝詞はそれに胸当て、和樹は新しいローブ。土門は兜と盾を新調した。


【神蛇徒人は錬金騎士の職業熟練度(クラスレベル)が1になりました。剣魔法が使えるようになりました。[職業鑑定1]のスキルを習得しました】

出来たてほやほや

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ