表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/368

第104話 鎮守の迷宮

 何度か植物系の魔物に襲われたがトワに関しては徒人の心配は的外れだった。

 トワは徒人には何の変哲もない木にしか見えない物の変化に気付いたり、最後尾ではぐれそうになった徒人に声を掛けたり、大活躍だった。そんな状態なので徒人は自分の認識力のなさが情けなかった。

 もっともトワの戦闘力に関しては何も心配してなかったので間違いはなかったが。むしろ、心配する事態になったら笑えない。

 随分上がってきたと思うのだが休息地すら見えない。しかも徒人にはずっと針葉樹林の森が続いているようにしか見えないので飽きと慣れが加わって油断しそうになる。だが上に登って行くに連れて湿度が上がり、霧が辺りを漂い始める。

 そしてこの霧の中でトワが見られていると心の中で何回か警告してきたが徒人には感じ取れなかった。


「駄目」


 倒れた鳥居を超えると言う指示に鳥居の下を潜ろうとして十塚が終の肩を掴んで止めた。


「なんでなん?」


 ビックリした終が鳥居から体を離して後ろを向く。その表情にネタでやろうとした様子はない。


「そこの鳥居に罠がありますから。動物を捕まえたりする初歩の罠ですが上手くすれば人でも殺せますし、その罠は鳴子が付いてて音が鳴ります」


 トワが前に出て倒れた鳥居の柱に細い紐みたいなのが仕掛けられていた。ウサギとかを捕る為にも見えなくもないが妙に細い糸なのが怪しい。


「魔法が掛かってますから下手したら首が飛びます。シュッパーンて感じで」


 トワは右手で自分の首を触ってそれをゆっくりと左から右へと動かした。首が飛んでいくと言う比喩だろう。でも例えた目は笑ってない。


「そんなにヤバイの?」


 終の問いにトワと十塚が頷く。金属で出来た糸には見えない。恐らく魔力を通す事によって強度を増しているのだろう。そしてそんな知識がある獣人たちは魔法を行使する事が出来る知性と戦闘力を兼ね備えていると言う事実がこの鎮守の森が危険な場所だと教えてくれる。


「そう言えばここの獣人は西の魔王軍とかと関係あるの?」


 黙って横たわっている鳥居を飛び越えていた彼方が口を開く。言われてみれば獣人はラティウム帝國のある大陸では殆ど見かけない。


「ここの獣人たちと関係があるかと聞かれると分かりません。ただ西の魔王軍は各所から選りすぐりの荒くれ者たちを集めたとかそういう話は聞いた事があります」


 なるほどと言わんばかりの表情で彼方は黙って聞いていた。

 徒人は乗り越える終や十塚を眺めながら最後である自分の番が来るのを待つ。横をカルナがすり抜けて鳥居を何とか鳥居を乗り越える。


「つまり、身も蓋もない話をすると分からないと言う事ね」


「そうなりますね」


 終の言葉を余裕で受け流しつつトワは微笑む。


『ちょっと肝が冷えました』


 徒人が心の中で聞いてみた。うっかりミスしてしゃべらないか不安があるのは偽りない気持ちだった。


『徒人、正体がバレるような事は喋りませんよ。まあ、魔族の時点でかなり怪しまれては居ますが魔王がこんな所をうろついているとは思われないでしょう。たまには外に出て色々やらないと体が鈍りますから良い機会ですし』


 トワはニコニコしながら徒人を見る。見ようによってはちょっと怒ってる気にも見えなくもない。


『魔王がウロウロしてても嫌でしょうけどね。それより本当に出てきて問題なかったんですか?』


 徒人の一言にトワに若干凍り付いたような間があった。

 そして徒人を見るトワの目は訴えていた。頼むからその話はしないでくれと。仕方ないので黒鷺城に戻ったら一緒に謝るくらいしかないなと。

 トワはそれを読み取ったのか、1人で嬉しそうにしていた。こんな風にはしゃがれると怒りを削がれてしまう。


「トワさんはよく迷わないですね。こんなに暗くて同じような景色だと目印になるものもないのに」


 和樹が倒れた鳥居の端を乗り越えながら言う。


「え? リーダーさん、ちゃんと木や岩に特徴がありますよ。例えばそこの左の木は犬の顔みたいですし、右の木は枝が羽を広げたカラスみたいです。あとそこの巨大な岩は人の顔みたいです」


 トワが喋りながら手で徒人に先に行くように勧める。

 徒人は先に横たわる鳥居を跨って上に乗って手をトワの方に差し出す。彼女はその手を取り握りしめた。それを確認してから徒人はトワを引っ張り上げる。

 トワは軽々と鳥居の上に着地した。


『徒人、ありがとう。それより気付いてますか?』


 徒人に向けてトワは満面の笑みを浮かべている。その笑顔は親が慕う子供みたいで相手を全く疑うつもりのない無垢なる信頼だった。それが徒人には少し気恥ずかしい。何故ならそんな信頼は受けた事がないからだ。


『森の中に隠れてこっちを見てる視線の話? 俺にはイマイチ分からない』


 森の中に入ってから何回か言ってる視線の話だと言うのは徒人にも分かる。


『わたしだって注視してようやく分かるレベルですので落ち込む必要はないかと。厄介なのは仕掛けてくる様子がない事です』


『襲ってくるタイミングを待ってる?』


『そういう事ですね。恐らく中間地点で仕掛けてくるつもりでしょう。中間地点に罠にかけるしかないですね』


 トワの言葉に徒人は中間地点に入ったら和樹に敵に見られている事と相手を罠に掛ける事を伝えておくべきだと思った。


【神蛇徒人は剣騎士の職業熟練度(クラスレベル)は111になりました。魔法騎士の職業熟練度(クラスレベル)は102になりました。神蛇徒人は[対植物特攻1]を習得しました】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ