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第五話 試合に向けて

長くなりました。

土曜の練習以降、緋野は毎日小学校に顔を出しては、練習に参加している。彼女も子供が好きらしく、康人を通じてちび達と仲良くやっているようだ。



今日は水曜日。普段なら休みなのだが、軽い練習程度でいいからサッカーをやりたい。というちび達の熱意に負けた先生から、


『涼くん、悪いんだけど、こども達がどうしても練習したいらしいから、放課後にちょっと学校まで来てくれない?』


珍しく、まともなメールだと思った。・・・・・・が、空欄になっているメールを最後まで下げていくと・・・・・・・・・・・・。










『来てくれないと、先生寂しいよ〜ぉ(泣』




すぐにメールを返したのだが、文章では表せないような××××や□□□□などの先生の恥ずかしい秘密を添えたら、



『ごめんなさい。許して下さい!!』







と、直ぐに返信が来た。やっぱり、持つべき友は、情報通の友人(伶)である。情報源は教えてくれないが、奴ならきっと、裏社会の情報まで知っているのだろう・・・・・・・・・友人でよかった。




そんなこんなで、小学校に来ているが、なぜか当然と言わんばかりに緋野も着いて来た。


余談たが、日曜日の夕方に、緋野から電話があり、練習のある日は見学に行きたい。というお願いをされ、承諾。今日も練習がある。と話したら、


「マジ?行く!」



と、着いて来て今に至る訳だ。






→→→→→→→→→→→→




今日の練習は一時間程度で終了。パス練習やシュート練習、トラップ練習等の軽い練習で、ゲームはしなかった。明日に疲れを残すわけにもいかない・・・。


「今日はこれで終わりだが、明日は結構キツイ練習になると思うから、覚悟するように!」

《ハイッ!!》



元気に返事をするちび達・・・・・・・・・に混ざって返事をする緋野さん・・・明日も、来るんですネ・・・・・・。



「オ〜イ!プリント持って来たよ〜♪」


先生が、以前作成したプリントに手直しをして、人数分コピーして持って来てくれた。


プリントを配り終えた俺に、ちび達は不思議そうな顔をしたのだが、そのうちの一人、翔太が質問をして来た。



「コーチ!この最後の『お楽しみ』って、なんですか?」

「ん?それは秘密だ」



とりあえず、困惑したちび達は置いといて、俺は明日の練習内容を簡単に説明し、解散を促した。






→→→→→→→→→→→→




「お疲れ様でーす」

「お疲れ様♪」

「おや、黒崎くん。お疲れ様」



職員室には、仕事を終えた赤凪先生と校長先生が、のんびり麦茶を飲んでいた。


「あ、校長先生お疲れ様です!!」



頭をさげると、校長先生はニコニコしながらソファに招いてくれた。



「黒崎くん、麦茶でも飲まんか?」

「あ、すみません。友人を待たせてるんで・・・」

「おや、そうか・・・」



残念、とばかりに肩をすくめ、校長は自室(校長室)へと戻って行った。



「あ、そういえばあの件、どうなってます?」

「ふふん♪保護者達も参加してくださるそうよ。ただ・・・」

「ただ?」

「緋野さんのお宅はご両親がお仕事で来られないらしいのよね・・・」

「あぁ、それは大丈夫でしょう。緋野さんが試合を見に来るそうなんで」

「ふふん♪よかったじゃん」



またニヤニヤした気持ち悪い笑みを俺に見せる先生。


「先生」

「なに〜♪」

「××××・・・」

「ごめんなさい!!」



効果は大きいようだ。真っ青になるあたりが、伶の情報の正確さを表している。


「そろそろ帰ります。緋野姉弟が待ってますんで」

「あ〜最近かまってく

「××××」・・・ごめんなさい」



学習しなよ・・・。




→→→→→→→→→→→→




帰り道が一緒・・・という事で、ここ三日は緋野姉弟と帰っている。まぁ俺にはうれしい事だが、所詮はただのクラスメイト。緋野も俺をその程度にしか思っていないだろう・・・。



「んで、改めてお願いしたいんだけど?」

「なに?」

「今度の試合、練習試合だけど、こども達にとっては初めての試合なんだ。保護者の人達にも連絡はしてるけど、応援してくれる人は、一人でも多いほうがいいから」

「いいよ!元々応援には行くつもりだったし」

「ホント!?助かるよ!」



これで、『お楽しみ』のメンバーは集まりそうだ。

しばらく雑談をして、緋野姉弟と別れ、俺は帰路に着く。




→→→→→→→→→→→→










あぁ、素晴らしき快晴だ・・・・・・。今日も一日うだるような暑さ・・・。



今日は授業も昼で終わりを迎えるのだが、一時間目の国語(漢文)から始まり、日本史、物理と睡眠を誘う科目が続き、眠気もピークを迎えた最後の授業・・・。




「よーし、今日も楽しい数学の授業を始めるよ!!」




そう、楽しい数学の・・・



「オラァ吉岡!!アタシの話を聞かずにどこか見てんだよっ!!」



楽しい・・・



「東ぃ!!ね・て・ん・じゃねー!!」



・・・・・・



「水川ーっ!!・・・・・・」

「・・・・・・・・・」



・・・・・・・・・



「・・・・・・っ、なんでも・・・ない」




スゲーーーーッ!!!!!!由香先生が・・・向かうとこ敵なしの『スナイパー由香』が・・・。






伶よ、お前は一体どんな弱みを握ったんだ・・・。




すっかり鎮静化した由香先生の授業も終わったのだが、教室を出て行く際に、物凄い形相で睨まれた・・・。




俺、なんにもしてないのに・・・・・・。










→→→→→→→→→→→→




近くのコンビニで弁当を買い、一度一家に戻り、弁当を食べて着替えを済ませる。


時効はまだ1時過ぎ、練習開始は3時なので、まだ充分に時間がある。



リビングでソファに座り、テレビを見ながら麦茶を飲む・・・。あまり興味のない昼ドラや時代劇の再放送を見て時間を潰し、ちょうどよい時間になって、家を出る。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




「集合!!」


準備運動を済ませたちび達に声をかけ、すぐにポジション毎に練習内容を振り分ける。今回の練習で一番ハードなのは、MFとFWのちび達だ。




「今回、ロングパスをメインに試合をする。たくさん走る事になるかもしれないけど、頑張ってくれ!!」

《ハイッ!!》



まずはお手本を見せる。サイドからのパスが出た瞬間にダッシュ!ボールを上手くトラップして、相手陣内に侵入。チャンスを作る・・・というわけだ。


それからオフサイドなどの注意点を挙げて、練習を始める。



「康人!ダッシュ!!」



「山上、サイドから上がれ!!」



今日も今日とて激が飛ぶ!!パスをもらう瞬間の飛び出し方、パスの出し方など、それぞれ注意しながら形を作り上げていく。



「よーし、10分休憩した後、ゲームをする!!」

《ハイッ!!》



ちびが休憩に入ってすぐに、緋野姉がやって来た。土曜日の時みたく、上下揃いの黒いウェアを着込んでいる。


「ヤッホー♪黒崎くん、お疲れ!!」

「あ、緋野さん。今日も土曜日の時みたく、ゲームに参加してもらえるかな?」

「OK!!」



すでにノリノリの状態だが、今回ばかりは緋野さんには感謝。いくら試合形式とはいえ、相手はいつもと変わらないメンバーである。たまには違うメンバーを入れて、臨機応変に対応させなければ、いざ試合をしても、戸惑うだけである。



「今回は俺も混合チームに参加するから、緋野さんも頑張ってよ」

「気合い入ってるね!任しといて!!」



笑顔を向けて、彼女は準備運動を始める。それぞれ休憩を済ませたちび達が集まり、自分のポジションにつく。



今回、俺と緋野さんはDFに参加。防御陣を厚くして、いかにこの壁を突破出来るか考えさせる。



ピーーーーッ!!



ホイッスルを吹きゲームはスタート。DFの緋野さんはすぐに動き出し、つられるように他の奴も動き出す。






→→→→→→→→→→→→







ハァ・・・ハァ・・・。つ、疲れた・・・。




「お、お疲れ・・・」



さすがの緋野も、疲れを隠せないようで、肩で息をしている。ちび達も、喋る事すら出来ずに木陰でぐったりしている。




ロングパスからの攻撃・・・カウンター・セットプレー・・・et cetera。



それらの練習を取り入れて、今回のゲームをやったわけだが・・・。



「や、やっぱり50分ぶっ続けは、き、きつい・・・な?」




そう、今回のゲーム。60分の前後半戦だが、ゲームをまとめる為にやった結果、50分ぶっ続けでゲームをやっていた。ちび達も、疲れを見せてはいるものの、どの顔も満足げな表情・・・。




兵達つわものどもが、夢の後・・・・・・。今度の試合、楽しくなりそうだ・・・・・・。

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