ちょっと番外編 美咲の本音
今回は、緋野美咲の視点で書きましたが、かなり短いです。
何をするわけでもなく、私はベッドに横たわり、携帯の画面に視線を落とす・・・。
『黒崎涼』と表示された画面に、自然と笑みが零れてしまう。何故だろう?話してみるまでは、意識する事なんてなかったし、『同じクラスの知り合い』程度にしか感じる事はなかった。
そんな彼に惹かれたのは、容姿ではない。性格とも違う・・・。・・・知らないうちに、意識してたんだ。
弟の通う小学校で、サッカーのコーチをやってると聞いた時、無性に嬉しかった。いてもたってもいられなくて、黒崎くんの友人の水川くんに、彼の電話番号を教えてもらった。それから、弟のコーチをやってる事を口実に、電話で言葉を交わし、土曜日の練習にも参加出来た。
私服姿の黒崎くんは、制服姿とは違う一面で、こども達に教える表情も、凄く生き生きしているから、私も嬉しくなった。
ちょっと強引な感じもしたけど、『また今度!』って言ってくれた一言・・・周りから見れば、それは当たり前の事かも知れない。でも、私にとってこの言葉は、『また逢える』と同じ意味なんだ・・・。
もう、自分でもわかっている。
私は、黒崎くんが好き・・・。
でも、今は言わない。私は今の関係で満足しているから・・・。下手に告白して、今の関係を壊したくない。彼が私の事をどう思っているかもわからない。
私は、一歩先に進む事を望んでいても、そんな気持ちを伝えられない臆病者だ。
嘲笑うといい・・・馬鹿な女だって思われても構わない。
だから神様もう少しだけ、今の関係のままでいさせて下さい・・・。
携帯の画面をもう一度開き、再び名前を口にする。
「黒崎涼・・・」
夢じゃない・・・。履歴も残ってる。
「明日も、楽しみだなぁ・・・」
通話ボタンに手をかける・・・・・・。
「もしもし、黒崎くん?」
「また、サッカーの見学に行ってもいいかな・・・・・・」




