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第三話 静けさは、何かの始まり・・・ 後編

前編の続きなので、短いです。

「えーっと・・・」


カバンから、プリントを取り出し目を通す。どれどれ・・・お、これだ!


「来週の18日、時間は3時に学校に集合だ。」

「わかりましたっ!」


元気な返事だ。よっぽど試合が出来る事がうれしいんだな。


「試合って、サッカーの?」


話について来ていなかった一名が、首を傾げている。言うまでもなく、緋野(姉)である。


「康人、話してなかったのか?」

「あ、忘れてた!」

「でしょうね。まぁうちは両親が帰って来るのが夜遅いから、大体康人は寝てるし」


・・・はぁ〜っと溜め息を吐き、弟に呆れ顔を見せる姉。傍観者の俺には、その光景がほほえましい。


「で、どうするの?お父さんもお母さんも、お仕事だから来れないよ?」

「・・・・・・」


途端に悲しそうな顔になる康人。


「・・・暇なら、緋野さんも学校来る?」


口を開いたのは、勿論俺である。実際、練習試合ではあるが、保護者がある程度集まらないと、俺と先生の計画が無駄になってしまう・・・。


「見に行ってもいいの?」

「勿論、応援する人は多いほうがいいからね」

数秒位で、彼女の顔から笑みが零れる。


「絶対行くよ!!」

「う、うん」


どうも女性の笑顔には弱い・・・男ならわかるよね!?


「あ、もうこんな時間だ!そろそろ帰らないと」


確かに、携帯の画面には18時38分と表示されている。俺も帰り着く時間は7時を過ぎるだろう。


「あ、そうだね。じゃあまた、学校で!康人も、またな!」

「うん、コーチもね!」


手を振る緋野姉弟に、片手を上げて、俺は自宅へと帰った。


途中、お袋から電話があり、内容は・・・


『牛乳二本買って来て!』

ブツッ! ツーーッ ツーーッ ツーーッ・・・。


通話時間4秒。携帯を使い始めて一年ちょっとだが、過去最短の通話だった・・・・・・しかも、拒否権は無い。


仕方なく近くのスーパーで牛乳を買い、ついでにお菓子も少々・・・。つい最近、自宅に補完(?)して置いたお菓子を、知らない間にお袋が処理(胃の中に)したという悲しい出来事があった為である。

今度から、補完場所は自室にしよう・・・・・・・・・。




⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒




ただ今自宅で夕飯を済ませた後で、のんびりお茶を飲んでいる。既に時刻は7時30分、親父はまだ帰って来ない。




風呂から上がり、ほてった身体を扇風機で冷ます。クーラーを入れてはいるが、今は扇風機のほうがいい。

自室に戻り、ラフな恰好でベッドにダイブする。冷房に晒されていたベッドは、ヒンヤリして気持ちいい。とりあえず、何もする事もないので、ボケッとしていると、携帯の着信が鳴りだした。

知らない番号・・・


「もしもし・・・?」

「あ、もしもし!黒崎くん?あたし、緋野だけど・・・」


緋野だった。ってか、なんで電話番号を知ってる?


「水川くんに番号聞いて電話したんだけど・・・」

「あ、うん・・それで、どうかしたの?」


電話番号を教えたのは、伶だということがわかったが、それにしても・・・奴の繋がりは謎だ・・・・・・。


「あのさ、康人から聞いたんだけど、明日って小学校で練習するんだよね?」

「そのつもりだけど・・・」

「私も行っていいかな?」

「ヘ?」

「サッカーって、イマイチわかんないんだけど、康人が楽しいって言うから、どんなものか見てみたいっていうか・・・」

「いいんじゃない?俺も明日学校に行くから、入れないって事はないから来るといいよ」

「うん、ありがと!あ、コレあたしの携帯だから、登録してね!」

「う、うん。それじゃ!」

電話ごしに頭を下げ、通話を終える・・・。き、緊張したー!!あんまり女の子と話す事ないから余計に・・・。




それに、緊張したのはそれ以外にも理由がある。それは、電話の相手だ。なるべく意識しないようにさりげなく喋っていたが、相手はあの『緋野美咲』である。今まであまり喋った事もなかったのだが、俺は少なからず、彼女に惹かれていたんだ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




明日が、楽しみだな・・・。

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