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第一話 コーチをしている理由

週一で更新していこうと思います。まだヒロインは出てきません

「コーチ〜!練習始めていいですか〜?」

「んあ!?あ、ゴメンゴメン。よーし、それじゃ各自軽く準備運動したら練習しようか!!」

「は〜いっ!!」


物思いに耽っていた所を、小学生の声で我に帰り、俺はグラウンドに散らばる小学生達に指示をする。


俺の名前は黒崎涼くろさき りょう。高校二年生で現在十七歳であり、ボランティアで小学生のサッカー部コーチをしている。事のいきさつは後で説明しよう。今は目の前で練習をするちび達の世話をするほうで手がいっぱいだ。


「全員集合ー!!」

声をかけて部員達を呼ぶ。今日はちび達に重大発表をしなければならないのだ。

「よーし集まったな!今日は皆にお知らせがある」

どこからともなくこども達はざわざわとしだした。まぁ無理もない。コーチとして練習を教えてきて初めて、皆を集めてお知らせをするのだ。


「突然の事だが、来週の土曜日に、練習試合をすることになった」

「「「えぇー!!」」」


予想通りのリアクションが返って来た。

驚愕、というよりも歓喜に近い表情をしている。

どうやら試合をした事がないらしい。元々人数が足らなかったので、試合を出来なかったのだろう・・・。現在は男子13名、女子9名であり、試合に出場出来る人数が揃った次点で試合をしようと、先生と相談をしていた。今回急に試合をする事になったのも、試合をしてくれる相手の都合にあわせたものだった。

「もちろん、急に決まった事なので、用事がある人は言って下さい」

「・・・・・・・・・」


どうやらいないようだ。次はいよいよメンバーの発表だが、今回は練習試合なので全員参加させるつもりだ。


「それじゃ、メンバーを発表します」


シーン・・・と、水を打った静けさに包まれ、グラウンドにはメンバーを発表する俺の声だけが聞こえていた。


「今選ばれたのが最初から試合に出る人達です。選ばれなかった二人だが、途中交代で試合に参加してもらうので、落ち込まないで下さい」

「「ハイッ!!」」


試合に参加出来る事を知った二人は途端に元気になる。

今日からは試合形式のゲームをメインに練習をする。男女合わせて22名なので、先発メンバーのチームと、先程の二人と女の子達を合わせた混合チームでゲームを開始する。


「FW!声を出してボールをもらえっ!!相手の隙が出来たら突破しろ!」


基礎は出来ているが、試合ともなると、一つのボールに子供達が群がってしまう。そこを細かく注意をして、少しづつ自分のポジションがどういうものかを教えていく。試合も二十分もすれば、形が出来てゆく。


「よーしそこまで!!これが前半の時間だ。後はもう一度、自分のポジションがどういう役割かを理解するように!!」

『ハイッ!!』

「それじゃ今日はここまで」

『ありがとうございました!!』


息の上がったちび達は、思い思いに体操を済ませて、グラウンド整備を終わらせた後、帰って行った。


ちび達が全員帰って行ったのを確認し、俺はグラウンドに一礼をして、職員室ヘ向かった。



「お疲れ様でーす」

「あら、お疲れ様」


職員室に入り、先生に声をかけると、まだ若い先生が視線を向けて、笑顔で迎えてくれた。


「今日の練習は終わりました。グラウンド側の門は閉めてあります」

「ご苦労様です・・・それにしても、涼くんも成長したわねぇ」

「しみじみ言わないで下さいよ、それに、俺だってもう高校生ですからね」


苦笑気味に言葉を返すと、先生はケラケラ笑ってコーヒーを差し出してくれた。この若い女の先生こそ、俺が小学生の頃に、サッカーを教えてくれた赤凪沙織あかなぎ・さおり先生である。現在29歳・独身。美人で人気があり、俺が四年生の時に、新米教師としてこの秋槻小学校に来たのだ。


「先生には感謝してるんですよ」

コーヒーを口に入れて喉奥に流し込んだ後、俺は昔の思い出を回想しながら呟いた・・・。


「あの出来事の後だったから、私はてっきり断られると思ったんだけどね」

「あの出来事があったから、俺は引き受けたんですよ」


あの出来事とは、中学最後の試合で、予定より早く家を出た俺に、脇見運転をしていたトラックが衝突するという事故だ。命に別状は無かったものの、利き足の左靭帯を切る大怪我で、昔のように、激しい運動をする事が出来なくなった。リハビリで快復したものの、俺はサッカーを諦めるしか出来なかった。昔のように、縦横無尽に走り回る事が出来ない事で、俺は毎日を自堕落に過ごしていたんだ。


そんな時、情報を聞き付けた先生から電話があり、今はこうしてサッカー部のコーチを引き受けているのだ。サッカーを続ける事が出来なくても、こうしてサッカーに関わる事が出来るのも、一重にこの先生のおかげなのである。


「まぁ私も一人で指導するのはしんどかったからな。部活以外にこのような仕事もある事だし・・・」

「ハハハッ!そのプリントの山を見ればわかりますよ」


俺の視線の先には、何百枚ものプリントの山が、机を囲むように置いてある。今夜は徹夜になるでしょうね・・・。


「それじゃあ俺は帰ります」

「あら、それじゃ明日もお願いね!」


手を振る先生に片手を上げて、俺は自宅ヘと帰った

初の連載です。まだ拙い文章ですが、よろしくお願いします!

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