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流石に一回投稿に15000は長すぎてひく

「ぐ……痛い……」


仁志は呻きながらも起き上がり、目を開けた。

そして目の前の光景に驚いた。


「なんだここ?」


雪は消え失せている、周囲を見回すと、木々が鬱蒼と生い茂り、地面は泥っぽいほどに湿っている、少し離れた場所に、自転車が倒れており、籠の中身が散乱していた。

駆け寄って自転車を見ると、驚くことに踏切にぶつかったであろう後輪がひしゃげることもなく、健在だった。

自転車を起き上がらせて、引きながら歩いて、此処がどこなのか教えてくれる人影を探していると、途中、茂みがガサリと動き、俺は肩をビクリと揺らし、まじまじと茂みを見た。

自然豊かな場所だ、イノシシとか……居ないよな?

そう考えながら身構えていると、そこから現れたのは、


「女の子?」


年端もいかないような女の子だ。

フラフラとしており、着ているものはボロボロ、しかしそれでも天使のような愛らしさを見せる少女だった。

ライトブラウンの髪はウェーブをかかっており、順調に成長すれば、クラスの女子なんて目じゃない美女になるだろう。


「たべ……もの」


呆然としていると、少女がかすれ声で何か呟いた。

その声は仁志の耳へと聞こえ、その意味を瞬時に理解した。

そして少女は、その言葉を言った瞬間に、力なくパタリと倒れる、仁志は反射的に少女へと飛び出して、抱える、恐ろしいほどに軽かった、栄養失調、医学の知識がない仁志にも瞬時に頭によぎった。

すぐに病人にも食べられそうなものを手持ちから探し出していった。


(米は、無理だ、野菜もダメだ、肉は論外……あっ!)


自転車のかごに、調味料の群れにつきささる、ゼリー飲料を見つけた。

それを取ってキャップを開けると、少女の口に突っ込んだ。


「食べろ、食べ物だぞ」


そう言うと、力なくではあるが、少女が喉を鳴らして飲み込んでいく、それを見て、ハァッと安どのため息をついて、そのとたんに、心の奥底から怒りが湧いてきた。


(何をやっているんだ!このの親は!)


怒りを抑えながら、ゼリー飲料を絞って最後まで飲ませる。

飲み終えた少女は、すぐにスヤスヤと眠り始めた、しっかり消化して吸収するがいい、なんて思いながら、周辺を見まわして、携帯を開いた。

圏外、救急車も呼べなかった。


(携帯会社ぁぁぁ!)


苛立ちながら携帯を地面へと叩きつける、何が繋がりやすさ№1だコラァ!

携帯電話に怒りをぶつけたことにより、少しばかりスッキリした、すぐに携帯電話を拾い上げると、コートを脱ぎ捨て、すぅすぅと眠る少女へと巻きつけて担いだ。

突き刺すような寒さに身を震わせる、そして一歩を踏み出した。

先ほどの重さでも苦労していたというのに、さらに重量が増え、何度も倒れそうになりながらも、仁志は歩き続けることにした。


「人……人……」


周辺を見まわすと、はるか先に広大な山が見えた。

――ここ、どこなんだよ。

仁志はさぁっと顔から血の気が引くのを感じた。

既に周囲は暗くなっている、どこか、眠る場所が欲しい。

藪から何もない空間へと出て、その幸運に目を丸くした。

小屋だ、少女を寝かせるために中へと入ると、火を扱う囲炉裏のような場所さえあるではないか、鞄の中からライターを取り出し、火種を探した。

探せば木はあったが、それだけじゃあ燃えない、燃やす種を探さなければ。

見つかったのは、ノートや教科書類、そして配られたプリント類だ。

迷わずプリント類を選んだ、これなら訳を話して、頭を下げて印刷してもらえばいい。

しかもケチッてるのでわら半紙だ、良い感じに燃えそうだ。

着いた炎は、突き刺すような寒さだった小屋内部を温め、照らし始めた。


「……ここ、どこなんだ?」


すやすやと少女の寝息が聞こえる小屋の中で、ポツリと呟いた。

その言葉に誰も返答せず、オレンジ色に照らされる小屋に溶けて行った。

沈黙していると、腹の音がそれを破った。

ちらりと少女を見ると、今もすやすやと眠っている、聞かれなかったようだ。

周囲を見まわす鍋一つぐらい合ってもいいだろう、そう考えて、小屋の中を探し回る、それはすぐに見つかった。


(……誰かが使ってたのだろうか?)


そう考えながらも、軽く水で洗い流し、火にくべて、水を入れた。

めんつゆの分量を量り、入れる、野菜は面倒だ、適当に引きちぎって突っ込んでいき、最後にお肉、食べる途中からうどんを入れよう。

ぐつぐつと煮えるそれを眺めながら、ごくりと唾を飲むと、隣で眠る少女が呻いた。

そちらへと視線を向けると、パチッと目を開けて、周囲を見回した。


「大丈夫か?」


そう問いかけると、少女はこちらへと視線を向けてくる、警戒するだろうかと思いつつ、笑顔を向けると、目を丸くした。


「あの……助けてくれたんですか」


風鈴を思わせるほどに、綺麗な声だった。

ここまで恵まれている少女はいるのだろうか。

そう考えながらも、頷いた。


「うん、まぁ」


「なんで……ですか」


「うん?」


聞かれている意味がわからなかった、栄養失調で倒れている相手を、見捨てるのだろうか、そんなわけがない。


「人的に」


やはり、人と話してこなかった弊害だろうか、まともにしゃべることはできなかった。

そこで止まってしまった言葉を、何とかひねり出していく


「見捨てられない」


そう言って、もう限界だった。口を閉ざして、少女を見ると――涙を流していた。


「ど、どうしたん!?」


「ありがとうございます……ありがとうございますっ……」


その様子を見て、虐待でもされてきたのだろうか、そう考えて沸々と怒りが沸騰してきた。

まぁ、とにかくだ。


「ご飯食べよう」


胃が弱っている時には、たしか……うどんだったか。

箸は……あった、面倒な時にコンビニで買ったときに貰ったものだ、整理してなくてよかった。

皿も発見した、被っていた埃は、ペットボトルの水で押し流し、お玉で鍋の中身を掬って皿へと放り込み、一気にかっ込んでいく。

横で、少女の腹の音が聞こえたので振り向くと、顔を真っ赤にしてお腹を押さえていた。


「いいにおいだったから……」


「ちょっと待ってろ」


一人前に小分けされたうどんの包装を切り取って、鍋へと放り込み、煮えたところで、汁と共にめんを取り出し、箸を割って少女に差しだした。


「なんですか?これ」


「え?箸とうどんだけど……」


意外な反応に目を丸くしてみるが、おずおずと少女はそれを受け取り、じっと俺を見てきたので、実演するために、鍋に残ったうどんを取り出し、見せつけるように、箸で挟んで口もとへと運び、啜った。

少女を見ると、コクコクと何度か頷くと、たどたどしく箸を動かすが……簡単にはいかないようだ、つかめなくて四苦八苦していたので、俺はグーで二本の箸を握ると、それを使ってかっ込んでいく。

其れを見て、少女もグーで箸を握り、うどんを口元に運んだ。


「何度もかめよ」


そう言うと、コクコクと頷いた後、かっ込むように食べて行った。

――噛めといったのに。

そう考えながら眺めていると、少女の涙がこぼれ、それでも食べるのは辞めず、鼻水がたれ、それでも食べるのは辞めず――どれだけ食いたいんだ、と少し引いた。


「おいしい、おいしいよ……」


「そうか」


その声を聞きながら、仁志は鍋の中身を掬い、皿へと載せていった。

少し心を許して、頭へと手を載せて、撫でてやると、気持ち良さそうに笑みを浮かべた。

愛らしいその姿を見ると、再び苛立ってくる、こんな女の子を、何故こんな状態にしたのだと。

空になった少女の皿へと野菜や、細かい肉を入れて、


「噛めよ、100は噛めよ」


と言うと、少女はコクコクと頷いた後に、また、泣きながら食べるのだ。

何かこちらが泣きそうだった。

鍋はすぐに空になり、少女は満足そうにすやすやと眠り始めていた。

其れを見て、横に置いておいたコートをかけてやると、木々をさらに放り込み、俺は横になった。

携帯を見ると、時刻は10時だそうだが、精神的に疲れた、もうさっさと眠りたかった。

目をつぶると、睡魔が襲いかかり、思考はすぐに奪い去られていった――





リーシャは、起きた時、その目の前にあった顔に見惚れた。

とてつもなく美しい顔がそこにあったのだ、そして彼は自分を助けたという、信じられないことだった、こんなにも醜い自分を助けるなんて、と思った。

横でスヤスヤ眠る仁志へと起き出して視線を向けると、その顔は何の警戒もなく安らかだった。

自分に掛けられたコートを手に取り、顔に近付ける、ほのかに横に眠る彼の香りがして、心落ち着いた。

そして、それを抱きしめると、涙が溢れてきた。


『まぁ、なんてばけものみたいな顔でしょう!』

『おええ、いっしょにごはんたべるなよ!』

『きもちわるい!』


リーシャの脳裏に、嫌な記憶がよみがえる、そのたびにコートを抱きしめて、その記憶を打ち消していく、しかし何度やっても完全には消えない。

何度やっても、よみがえってくるのだ、カタカタと震える体を抱きしめて、目を開いて仁志の姿を見つける、這い寄るように彼へと近付き、その腕を抱きしめた。

体の温かさが、まるでリーシャの心も温めているようだった。

嫌な記憶は、打ち消されていく、


(この人がいれば、嫌な記憶はなくなっていく)


彼の横に居れば、よみがえることもない。

優しい言葉、とてもよくしてくれた、行動の一部一部から、優しさが垣間見えた。

それを感じ取り、リーシャは頭を彼へと擦りつけた。

温かさを感じながら、リーシャは寝入って行った。

彼女の、久しぶりの心安らぐ夜だった。


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